第2戦：真の強さとは　作：名無しのゴーレム

「……さぁって、初戦はミトラが勝利を収めて、現在私たち織姫組が一歩リード！ じゃあ次、第2戦の対戦相手を決めるよ！ カモン、ドラムロール！」


ﾃﾞﾝ、ﾃﾞｹﾃﾞｹﾃﾞｹﾃﾞｹ…………ﾃﾞﾝ!!


「第2戦は…………ゴースvs、フローラ！ 2人とも、準備が出来たらデュエルフィールドに移動してね！」





〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜





「……ってことで、頑張ってねフローラ！」
「ええ、もちろん。ここで勝てば2連勝、一気に突き放せるから……全力で行くわ」
「おお、心強いねぇ〜！ 頼りにしてるよ？」
「ありがとう。それじゃあ……」
「…………フローラ」
「？ ……クリム、どうかしたの？」
「…………デュエル中、決して気を抜かないことです。相手の実力は未知数……最悪、あなたのデュエルが出来ないことも想定して動くのですよ」


…………？


「…………大丈夫よ。これまでずっと修練を重ねてきたんだから……こんなところで、負ける訳にはいかないの」
「……ここは戦場ではないのです。……負けて学ぶものも、きっとあるのですよ」
「……クリム、それってどういう意味……」



「おーい、早くしてくれー！ じゃないとゴースが眠っちまうー！」



「……まあいいわ。必ず勝つから、ここで応援していてね」
「…………分かったのです」






〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜






「ここが、デュエルフィールド……それで、私の対戦相手は……？」
「…………」
「……あの、大丈夫？ 座り込んだりして……」
「…………ぁ。ごめん、ちょっと寝てた……」
「え？ …………」


……何よ、こいつ。寝惚けた頭でデュエルするつもり？


「…………」
「…………？ ねぇ、なんでそんなに怖い顔してるの？」
「何でもないわ。さあ、さっさと始めましょう。あなたみたいなデュエルを舐めている相手に、私は負けられないの！」
「……別に、舐めてるつもりはないんだけどなぁ……」
「御託はいいから、構えなさい！」
「…………分かったよ。まったく、僕はもっとのんびりしたデュエルの方がいいんだけどなぁ……」





「「デュエル！！」」





フローラ LP8000 手札5
ゴース LP8000 手札5


「先攻はもらうわ！ 私のターン！」


この手札なら……


「手札の『龍翔剣の女姫士アルマ』の効果発動！ 私の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、このカードを墓地に送ることでデッキからレベル4以下の女姫士モンスター1体を特殊召喚する。来なさい、『多節鞭の女姫士チャロ』！ ……私はこれでターンエンド」


フローラ LP8000 手札4 モンスターゾーン 多節鞭の女姫士チャロ（表側守備表示）
ゴース LP8000 手札5


「……じゃあ、僕のターン。『冥騎士カザード』を召喚。そして手札の『冥騎士デスピナ』を捨てて通常魔法、『冥騎士の到来』を発動。デッキから冥騎士と冥剣を1枚ずつ手札に加える。僕が手札に加えるのは……」
「させないわ。手札の『魔杖の女姫士アント』の効果発動！ このカードを墓地に送って、相手の魔法カードの発動を無効にする！」
「…………バトル、カザードでチャロを攻撃。この瞬間、カザードの効果発動。相手は自身のフィールドのカードを1枚選んで墓地に送る……」
「私のフィールドにはチャロだけ……ペンデュラムモンスターのチャロはエクストラデッキに送られるわ」
「なら、カザードでダイレクトアタック」


フローラ LP8000→6100


「っ、これくらい……！」
「……カードを1枚セット。ターンエンド……」


フローラ LP6100 手札3
ゴース LP8000 手札2 モンスターゾーン 冥騎士カザード 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚


「……私のターン、ドロー……エクストラデッキのチャロの効果を発動。このカードを墓地に送って、あなたの墓地のデスピナを除外するわ！」
「……このタイミングで、墓地を除外……？」


……別に、それが狙いではないんだけどね。


「『光剣の女姫士トパーズ』を召喚！ さらに私のフィールドにチューナー以外の女姫士が存在することにより、手札から『反盾の女姫士アイ』を特殊召喚！ レベル4のトパーズに、レベル1のアイをチューニング！ シンクロ召喚、『黒魔奏杖の女姫士アント』！」
「シンクロモンスター……でも、ステータスは低めなんだね」
「そんなこと関係ないわ。……これで、ターンエンドよ」
「……じゃあ、リバースカードオープン。通常罠、『トゥルース・リィンフォース』。デッキから『冥騎士候補生アングラード』を特殊召喚するよ」


フローラ LP6100 手札3 モンスターゾーン 黒魔奏杖の女姫士アント（表側守備表示）
ゴース LP8000 手札2 モンスターゾーン 冥騎士カザード 冥騎士候補生アングラード


「僕のターン……僕も、シンクロ召喚といこうかな。レベル4のカザードに、レベル2のアングラードをチューニング。シンクロ召喚、『終冥騎士クラスヴェイン』」
「…………」
「クラスヴェインの効果発動。相手は自身のフィールドのカード1枚を選んで除外する……」
「そうは、いかない！ 手札の『風纏双剣の女姫士ローズ』の効果発動！ このカードを墓地に送って、そのカードの効果の発動を無効にするわ！」
「……また、カウンターかぁ……クラスヴェインじゃアントの守備力には敵わないし……墓地の冥騎士の到来の効果発動。このカードを除外して、ターンの終了時にデッキから冥騎士1体を手札に加える。……カードを1枚セットしてターンエンド。到来の効果で『冥騎士候補生フィリーチェ』を手札に加えるよ」


フローラ LP6100 手札2 モンスターゾーン 黒魔奏杖の女姫士アント（表側守備表示）
ゴース LP8000 手札3 モンスターゾーン 終冥騎士クラスヴェイン 魔法・罠ゾーン 伏せカード1枚


「私のターン、ドロー……」
「この瞬間、リバースカードオープン。永続罠、『冥騎士の怨嗟』。墓地の冥騎士を除外することで、ターン終了時まで相手が墓地に送るカードは除外される。墓地のアングラードを除外」
「！？ ……墓地のチャロの効果を発動。ドローしたカードが女姫士だった場合、さらに1枚ドロー出来る……」
「クラスヴェインの効果発動。相手が墓地のカードの効果を発動した時、500ダメージを与える」


フローラ LP6100→5600


「っ…………」
「……どうしたの？ 急に勢いがなくなっちゃったみたいだけど……」
「……なんでも、無いわよ……！！」


…………強がって見せてはいるけれど、この状況はかなりマズい。どうする……？


「…………スケール1の『撃龍砲の女姫士フェーン』とスケール9の『宝騎剣の女姫士ダイアナ』でペンデュラムスケールをセッティング！ これでレベル2から8のモンスターを同時に召喚可能！ 煌く刃の軌跡に導かれ舞い降りろ！ ペンデュラム召喚！ 来なさい、『月斬之薙刀の女騎士エメル』！」
「……ペンデュラム召喚……でも、怨嗟がある限りペンデュラムモンスターの特性も発揮されないよ」
「っ、エクストラデッキから再びアイを特殊召喚！ レベル7のエメルに、レベル1のアイをチューニング！ シンクロ召喚、『業炎天鎚の女姫士ルビー』！ アントの表示形式を変更……バトル！ ルビーでクラスヴェインを攻撃！」


ゴース LP8000→7300


「…………」
「ルビーの効果発動！ デッキから『炎天槌の女姫士ルビー』を手札に加えるわ。さらにダイアナのペンデュラム効果発動！ デッキから『斬鉄刀の女姫士カヤナ』を手札に加える！ ……アントでダイレクトアタック！」


ゴース LP7300→5400


「……ターン、エンドよ」


フローラ LP5600 手札1 ペンデュラムゾーン 撃龍砲の女姫士フェーン 宝騎剣の女姫士ダイアナ モンスターゾーン 黒魔奏杖の女姫士アント 業炎天鎚の女姫士ルビー
ゴース LP5400 手札3 モンスターゾーン 終冥騎士クラスヴェイン 魔法・罠ゾーン 冥騎士の怨嗟


「僕のターン、ドロー。墓地のクラスヴェインを除外して、怨嗟の効果発動。自分フィールドにモンスターが存在しない時、1000LPを支払ってフィリーチェを特殊召喚」


ゴース LP5400→4400


「フィリーチェをリリースして『妖冥騎士カーネイジ』をアドバンス召喚。通常魔法、『冥騎士の崩撃』発動。カーネイジに『冥剣ジェラス』と『冥剣カタスト』を装備するよ」
「…………」
「……やっぱり、そうなんだ……」
「……え？」


何を、言ってるの……？


「……君の戦術の基本となるのはカウンター、つまりは相手の動きを事前に制限することだ。確かにカウンター戦術は嵌れば強い。……でもその代わり、致命的な欠点も孕んでいる」
「致命的な、欠点……？」
「……そう。相手からの致命的な一撃を防げなかった場合、途端に戦線は崩壊する。……ちょうど、今の様に……」


……こいつ、今の数ターンだけでそれを……！？


「……だから、君は勝負を急いでる。ペンデュラムモンスターの利点である再利用の容易さを捨ててまで……裏を返せば、そうでもしないと勝ち目がないということでもあるよね」
「……そ、そんなことは……！」
「……まあいいよ。君のモンスターのカウンター効果のトリガーは【モンスターを墓地に送ること】。怨嗟がある限り、君は僕の行動を妨害出来ない……そして、君のデッキの特徴……すべてがモンスターカードで構築されているという都合上、魔法・罠カードに頼ることも不可能……ねえ、君のデッキに怨嗟をどうにかするカードはあるのかい？」
「っ！！」


…………全部、お見通しだとでも言うの……？



「……続けようか。バトル、カーネイジでルビーを攻撃。この瞬間、カーネイジと冥剣2枚の効果発動。合計して君のフィールドから3枚、手札から1枚を墓地に……いや、除外してもらう」
「…………フィールドからはルビー以外のすべてのカードを、除外するわ……」
「じゃあバトル続行、カーネイジの攻撃力は2400だから、その差600のダメージを僕が受ける」


ゴース LP4400→3800


「……でも、カーネイジがいる限り僕の冥騎士は破壊されない」
「ルビーの効果発動！ デッキから女姫士1枚を手札に加える！」
「……んー、じゃあこれでターンエンド。崩撃の効果で装備した冥剣を墓地に送るよ」


フローラ LP5600 手札1 業炎天鎚の女姫士ルビー
ゴース LP3800 手札1 モンスターゾーン 妖冥騎士カーネイジ 魔法・罠ゾーン 冥騎士の怨嗟


「私の、ターン……」
「墓地のフィリーチェを除外して、怨嗟の効果発動」
「っ……チャロの効果でもう1枚ドローするわ。バトル！ ルビーでカーネイジを攻撃！」


ゴース LP3800→3200


「…………」


……ダメージを受けても、顔色一つ変えない。幽霊だからなのかもしれないけれど、私にはそれが……


「……ルビーの効果発動。デッキから『蝶舞扇の女姫士ルチル』を手札に加えるわ。私は……これで、ターンエンドよ」


フローラ LP5600 手札4 業炎天鎚の女姫士ルビー
ゴース LP3200 手札1 モンスターゾーン 妖冥騎士カーネイジ 魔法・罠ゾーン 冥騎士の怨嗟


「……僕のターン。墓地のカザードを除外して、怨嗟の効果発動。通常魔法、『冥騎士の復活』発動。除外されているフィリーチェとアングラードを手札に加える。フィリーチェを召喚。レベル6のカーネイジに、レベル2のフィリーチェをチューニング。シンクロ召喚、『終冥騎士テリオスノート』。テリオスノートの効果発動。相手は自身のフィールドから2枚まで選んで墓地に送る……」
「……私のフィールドにはルビーだけ、よってルビーを除外する」
「墓地の崩撃の効果発動。墓地のこのカードを除外して、墓地のジェラスをテリオスノートに装備する。……バトル。テリオスノートでダイレクトアタック」
「っ……！！」


フローラ LP5600→3000


「カタストの効果発動。……手札を1枚選んで、除外してもらうよ」
「…………」
「カードを1枚セットして、ターンエンド」


フローラ LP3000 手札3
ゴース LP3200 手札1 モンスターゾーン 終冥騎士テリオスノート 魔法・罠ゾーン 冥騎士の怨嗟 伏せカード1枚


「……私のターン、ドロー……」
「墓地のフィリーチェを除外して、怨嗟の効果発動」
「チャロの効果発動！ もう1枚……」
「いいや、そうはならない。……テリオスノートが存在する限り、相手は墓地のカード効果を発動出来ない」
「！？ そ、そんな……っ、まだよ！ スケール9のカヤナとスケール2のルチルでペンデュラムスケールをセッティング！ 煌く刃の軌跡に導かれ舞い降りろ！ ペンデュラム召喚！ 来なさい、『炎天槌の女姫士ルビー』！ カヤナの効果発動！ 手札を1枚捨てることで、このカードと相手フィールドのカード1枚を破壊する！ テリオスノートを……」
「……テリオスノートは相手のカード効果の対象にならない」
「！？ ……バトル！ ルビーでテリオスノートを攻撃！ 私のペンデュラムゾーンにペンデュラムカードが2枚存在することにより、ルビーの攻撃力は200アップ！」


炎天槌の女姫士ルビー 攻撃力2800→3000

ゴース LP3200→2600


……っ、削り、きれなかった……！！


「…………ターン、エンドよ…………」


フローラ LP3000 手札0 ペンデュラムゾーン 斬鉄刀の女姫士カヤナ 蝶舞扇の女姫士ルチル モンスターゾーン 炎天槌の女姫士ルビー
ゴース LP2600 手札1 魔法・罠ゾーン 冥騎士の怨嗟 伏せカード1枚


「……僕のターン。墓地のテリオスノートを除外して怨嗟の効果発動。リバースカードオープン。永続罠、『闇次元の解放』。除外されているテリオスノートを特殊召喚。そしてアングラードを召喚。……レベル8のテリオスノートにレベル2のアングラードをチューニング。地獄から蘇りし怨念が、この世に破滅の災厄を齎す。シンクロ召喚、『終冥騎士ニューロフェイト』」
「……レベル10の、シンクロモンスター……！！」
「ニューロフェイトの効果発動。相手フィールドのカード3枚を除外する。……つまり、君のフィールドは全滅するよ」



…………ああ。私の、負けか…………



「……バトル。……ニューロフェイトで、ダイレクトアタック」
「くっ…………きゃあぁぁぁ！！！」








フローラ LP3000→0









「…………僕の、勝ちだね…………」
「……負けたのね、私……こんなところで、負けてられないのに……！！」
「……あんまり、深く気にしなくてもいいんじゃない？」
「っ……あなたには、分からないわよ。私は、もっと強くならなきゃいけないの……！！」
「…………だから、たった1回の負けを気にする必要なんてないんじゃない？」
「…………え？」
「勝ちも負けも一区切りでしか無いんだからさ。……大切なのは、一番大事な時に勝つこと……でしょ？」
「…………ねえ、あなたは何者なの？ 本当に、ただの幽霊？」
「…………さあ、僕もよく覚えてないや。ふぁぁ、久しぶりにデュエルしたから眠くなってきた……じゃあ、先に戻ってるね…………」
「あ、ちょっと……行っちゃった」








（……『負けて学ぶものも、きっとある』……クリムは、こうなることが分かっていたのかしら……）