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HOME > 遊戯王SS一覧 > 43話 強者の孤独

43話 強者の孤独 作:名無しのゴーレム













「…………ふぅ」






デュエルが終了すると同時に、部屋中を覆っていた異様な熱気が消えていく。フラムさんが放った最後の一撃は、部屋の壁を突き抜け跡形もなく焼き尽くしてしまった。これまで見てきたデュエルとは桁違いの破壊力に、思わず言葉を失ってしまう……












「フラム、今の音は……っ!!?」



僕たちの後ろ……部屋の入り口からクリムの声が響いた。この惨状だ、驚くのも無理はない……



「……何なのですか、これ。一体……」
「妾がやった。そういえば、妾の本気を見るのは初めてじゃったか」
「…………相手は? 大方、異臭騒ぎの犯人辺りだとは思いますが……」
「……相手はウルフじゃよ」
「えっ……そう、なのですか」



最初は慌てる様子を見せていたクリムだが、少しすると冷静に部屋の中を観察し始めた。



「……それで、彼はどうしたのですか?」



……ウルフさんはデュエルで敗北した。ライフも0になった以上、まず生きては……



「そこでのびてるじゃろうよ。軽くても全身火傷じゃから、数日は意識を取り戻さんと思うが」
「…………え?」
「なんじゃ、何か疑問でもあるのか?」



思わず出てしまった驚きの声にフラムさんが反応する。



「い、いや……だって、この世界の人たちはデュエルで負けたら消えてしまうんじゃ……」
「フッ、妾を誰じゃと思うておる。最後の攻撃はあ奴には当てておらんよ。直撃はしていないだけで、余波はモロに受けたはずじゃがな」
「そんな……なら、ウルフさんはまだ生きているんですか!?」
「もちろん。言ったじゃろう、従業員の処罰は妾が与えると。死をもって償う、なんてことはせぬよ」
「…………」



……改めて、フラムさんが僕たちの理解の範疇を大きく越えた人物だということを認識した。いや、させられたと言うべきか……



「……簡単に言うけどよ、相手のライフだけを0にするなんて今まで見たことも聞いたこともねぇ。あんた、本当に何者なんだ?」
「神代が何とか……って、ウルフは言っていたわね。その辺りについても説明してもらえると助かるのだけれど」
「説明、か……それもいいが、まずはこの場の後始末……差し当たっては負傷者の治療から始めさせてもらおうかのう。クリム、ウルフの奴を空いている客室へ運んで手当てしてやれ。あのまま放っておいたら、本当に死んでしまうからな」
「わ、分かったのです……」
「うむ、任せた。あとは……」



ゆっくりとこちらへ近付き、僕の方を見つめるフラムさん。



「……えっと、あの……?」
「まったく、無茶をしよって。下手を打てばお主の命は無かったぞ」
「あっ……その、本当にありがとうございました」



僕とのデュエルでは、明らかにフラムさんは手を抜いていてくれた……さっきのデュエルを見れば嫌でも分かる。最初から全力でかかってこられていたら、作戦どころでは無かっただろう。



「礼など要らぬ。とにかく、まずはお主のケガを治すところから始めるとしよう。よっ、と」
「え、うわぁぁ!?」
「な、何してるのよ!?」
「この傷は妾がつけたもの、なら治すのも妾の仕事じゃ。少し借りていくから、他の者たちは自分の部屋に戻っておくといい。朝食はさすがに遅れるが…というか、もう昼食の時間か。まあ、軽いものは出そう。それまでは大人しく休んでおれ。そちらの娘のことでも看ておいてやれ」



僕のことを担ぎ上げたまま、プリンセスさんたちに指示を出すフラムさん。その後、ずんずんと歩き始めてしまう。



「ちょっ、どこに……!?」
「黙っておらんと舌を噛むぞ。これ以上怪我を増やすでない」
「……はい」



そこから何も話すことはなく、僕は皆と別れフラムさんにどこかへと連れていかれた……












「さ、着いたぞ」
「え? ここって……温泉?」



担がれたまま連れてこられた先……そこは、小さな露天風呂だった。



「うむ。普段は妾専用なんじゃが、今回は仕方ないじゃろう。ほれ、さっさと入るがいい」
「……いや、なんで?」
「なんじゃ、男の癖に思い切りが足りぬのう。とにかく、早く服を脱げ。妾に無理やり剥かれたくはなかろう?」
「っ、脱ぎます! 今すぐ脱ぎます!」



つい数分前の光景を思い出すと、とてもじゃないけれど彼女の怒りを買うようなことはできない。急いで支度を行い、温泉へと向かう。



「えっと、先に身体を洗ったりは……」
「不要じゃ。言ったじゃろう、ここは妾専用の湯だと。細かいことは気にするな」
「……それじゃあ、お言葉に甘えて」



理由も分からず、言われるがままに温泉に浸かる。かけ湯すら行っていないためその熱さに飛び上がりそうになったが、間もなく全身にこれまで感じたこともないような心地よさが駆け巡る。



「!? こ、これって……」
「何故かは知らんが、ここの湯に浸かると身体の傷がみるみるうちに癒えるんじゃよ」
「まさか、そんなこと……」



あり得ない、そう言いたかったが……もはや何が起きてもあり得ないなんてことはないだろう。事実、さっきまで確かにあったはずの節々の痛みが、温泉に入ってからはほとんど感じられない。



「……ありがとうございます、フラムさん」
「礼を言うのはこちらの方じゃ。お主が無茶をしたおかげで、大きな被害もなく騒動を終息させられた。妾1人では、あのようなことは出来なかった……本当に、感謝しておるよ」



感謝を述べるフラムさんだったが、その口調は何故か悲しげであった……



「…………」
「……お主は、この世界の歴史についてどれくらい知っておるのじゃ?」
「え? ……メシアさんが結界を張るまで、英雄と呼ばれるようなデュエリストたちが争いあっていたというのは聞いたことがありますけど……」
「……なら、『それ以前』については全く知らんのか」
「それ以前、ですか……?」



僕はこの世界の歴史について、ほんの断片しか知らない。しかし、何故今その話を……?



「英雄なんてものが現れ始めたのは、ほんの100年前くらいからじゃ。それより前にこの世界を支配していたのは……神じゃ」
「神……!?」
「神と言っても、他の連中と根本から違うという訳でもない。ただその力が人智を超えていた……そんな者たちが、神と呼ばれていただけだったのじゃ。そんな怪物どもが世界中にのさばっていた時代を、今では『神代』と呼んでいるのじゃよ」



神代……ウルフさんもそんなことを言っていた。確かフラムさんを、『神代の生き残り』と……



「……まさか、フラムさんは……」
「そのまさか、ということじゃな。妾は神代の末期に産まれた。それ故神代を終わらせた戦いに巻き込まれずに済み、こうして生き長らえておるわけじゃな」
「神代を終わらせた戦い……ですか?」
「妾も実際に見たことがある訳でもないが……かつて、邪知暴虐な神々を討伐し続けた大英雄が居たそうじゃ。其奴の働きにより神々のほとんどは消え去り、生き残った者も続く動乱に巻き込まれ消息を絶った。結果として、神々の時代はたった1人の手によって終わらせられたということじゃな」
「……フラムさんの他に、生き残りは居ないんですか?」
「元々繋がりも薄い以上確かなことは言えんが、ここ数年で出会ったことは無いのう。妾が知る範囲では、精々三賢者くらいか」
「三賢者……それって、ダイスさんたちのことですか!?」
「ん? なんじゃ、あ奴と知り合いなのか。奴らは神代生まれの中でも古株中の古株、妾とは比べ物にならんほど長生きしてるはずじゃ」



……フラムさんの話を総合して考えると、ダイスさんたちの年齢がとんでもないことになるが……話のスケールが大きすぎて、到底ついていけそうにない。



「……それで、今の話と僕たちに何が関係があるんですか?」
「おっと、少し話しすぎたか……ともかく、そんな事情で妾には対等に付き合えるような友がほとんど居なくてな。昔は何人か居たが、其奴らも今は……」
「……でも、クリムたちが居るじゃないですか」
「ああ、そうじゃな。しかし妾にとってあ奴……いや、このフィアンマに住む者たちは守らなければならないものなんじゃよ。妾はこの街を、この街に住む者たち全てを子供のように大切にしておる。しかしな、それは決して対等な関係では……友というわけではない」
「…………」
「……そして、それらを守る手段も……妾には、戦うことしか思い付かなかった。守るために他者の命を奪う……そんな矛盾にうんざりしていた。命を奪わぬ方法も、長年の修練の果てに身につけたものだったが……その頃には、妾に楯突こうとする者も居なくなっていた。もはや、妾には敵すら居ないのじゃよ……」
「…………そう、だったんですか」



強すぎるための孤独と葛藤……きっと、安っぽい同情の言葉なんかに意味はない。僕には、フラムさんにかける言葉は見つからなかった。



「……だが、そこにお主らが来た。どうしようもない状況に追い詰められても、お主は諦めなかった……そして、仲間たちとともに勝利を掴んだ。……あの光景を見たとき、妾は思ったのじゃ。お主なら、妾にはなし得なかったことを……何も奪わぬ勝利というものを見せてくれるのではないかとな」
「何も奪わない、勝利……」



……僕たちの当面の目標は、メシアさんを襲った犯人の正体を暴くこと。そして、マキナさんを止めること……当然、その途中で誰かと争うこともあるだろう。そんな中で、誰からも何も奪わないまま戦い抜くことが出来るのか……?



「…………正直、僕にはそんな大それたことが出来る気がしません」
「……ほぅ」
「でも、『僕たち』なら……誰か1人の力じゃない、全員で力を合わせれば、きっと何だって成し遂げられると思います」



……そう。僕1人に出来ることなんてほとんどない、それでもマッハやプリンセスさんたち……いや、もっと大勢の人たちに支えられ助けられた結果が今なんだ。クロノスを助けることも、フラムさんの協力なくしては成し遂げられなかった。



「だから、フラムさんにも力を貸して欲しいんです。僕たちはインダストに行って、マキナさんに会わないといけない。そのためには、フラムさんの協力が必要なんです」
「……そう、じゃったな。しかし、妾の力か……まさか戦い以外で助力を求められる日が来ようとはな。以前では考えられぬ……これも、時代の流れか」



空を見つめて独り言のように呟いた後、フラムさんは再びこちらの方を向く。……その表情は、これまでにないほど穏やかなものだった。



「……いいじゃろう。確か、幻獣の聖域に行くと言っておったな。すぐに手配するとしよう」
「えっ……本当ですか!?」
「妾が冗談を言うとでも? ……先に失礼するぞ。お主の仲間たちにもそう伝えておく、お主はもう少ししたら自分の部屋に戻るといい」



そう言い終えると、フラムさんはすたすたと歩いていってしまう……ともかく、これで先に進めるようになったのか?



「…………分かってはいたけど、大変な旅になりそうだなぁ」



覚悟の上だったとはいえ、まさかインダストに着く前にこんな目に遭うなんて考えもしなかった。もちろん、これからも苦難は続くだろう。でも……僕は、1人じゃない。



『まあ、あなた1人ならデュエルも出来ないものね』
「わっ、アルム……うん、その通りだね」
『それにしても、フラムがあんなことを考えていたなんてね。かなり意外だったわ』
「……もしかして、アルムってフラムさんと知り合いだったり?」
『知り合いというか、顔見知りといったところでしょうね。豪放そのものな人だと思っていたから、てっきり何も考えずに生きているとばかり思ってた』
「前から思ってたけど、アルムって毒舌だよね……」
『私が感じたありのままを語っているだけよ……何も奪わない勝利、随分な無理難題を押し付けられたものね』
「あはは……でも、元から誰かと争うつもりなんてないからね。きっと不可能じゃないと思う」
『争うつもりなんてない、ね。あのマキナが、素直に話に応じてくれるなんて思わないけど』
「その時は……うーん、どうしようかな。でも、たぶん何とかなるよ。フラムさんの話を聞いて、そう思えた」
『そう。期待せずに見守らせてもらうわ』
「……さっきはありがとう。これからもよろしくね」
『ええ。出来るだけのことはするわ』
「……さて、そろそろ出ないと」
『そうしなさい。ネージュはとっくの昔に茹で上がってるから』
「えっ……あっ、忘れてた!?」
























「……おっ、ユージが帰ってきたぞ」
「た、ただいま……」



温泉から上がり、自分の部屋に戻ってきた僕をマッハたちが出迎えてくれた。どうやらプリンセスさんやクロノスも同じ部屋に集まっているようだ。



「……本当に温泉に入っていたのね。フラムから話は聞いたけど、まさか本当だったなんて」
「それじゃあ、僕たちに協力してくれるってことも聞きましたか?」
「ええ。さっきの騒動で、彼女も思うところがあったみたいね」
「ともかく、これで幻獣の聖域を通りインダストへ向かう準備が整ったわけだな」
「いやー、色々あったみたいですけどひとまず皆さんが無事で好かったですよ!」
「え……パイスさん?」



いつの間にか部屋の入り口に立ち、会話に入り込んできたパイスさん。……というか、何故ここに?



「彼女はさっきまでクロノスの看病をしてくれていたのよ。念のためってことで、薬もいくらか分けてもらったし……」
「そうだったんですか……パイスさん、ありがとうございます」
「いえいえ、気にしないでくださいな。まさか今朝にこんな大事が起きていたなんて気づけなかったので、何もお手伝いできませんでしたし……結果的には、私の命も守ってくれた訳ですから。これくらい、当然のことです」
「そう、ですか……」
「あ、そうだ。ほら、クロノスちゃん」
「え……は、はい」



パイスさんに呼ばれると、それに応えるようにクロノスがこちらの方へ歩いてきた。



「えっと、ユージさん……」
「クロノス……もう身体は大丈夫なの? いつからああなっていたのかは知らないけど、どこか具合が悪かったりしたら……」
「そ、それはもう大丈夫です! 皆さんに良くしてもらったので……その、ごめんなさい。私のせいで、ユージさんが危ない目に会ったと聞いて……」
「それは……気にしないで。僕は僕に出来ることをしただけだから」
「でも……私、ずっと皆さんに助けられてばかりで。これじゃ、私は足手まといに……」
「クロノスは、足手まといなんかじゃないよ」
「え……?」
「さっき、フラムさんとも話したんだけどね。僕1人じゃ、きっと何にも出来ない。でも皆の力を合わせれば……出来ないことなんてないって、そう思うんだ。もちろん、クロノスも皆の中に入ってる」
「ユージさん……ありがとうございます」



ずっと申し訳なさそうな表情をしていたクロノスは、ほんの少し嬉しそうな顔をしてみせる。



「そうそう、ごめんなさいよりもありがとうですよ。人ってのは謝罪されるより感謝される方が嬉しいものなんですから」
「確かに、パイスさんの言う通りですね。感謝されると、やっぱり気持ちが良くなります」
「そう、ですか……分かりました。これからは、気を付けるようにしてみます。パイスさん、ありがとうございます」
「早速実践できてますね、なんて。うふふ……」



「……ええと、そろそろいいのですか?」



再び、部屋の入り口から声がした。




「おっ、クリムじゃねえか。昼飯の準備でも出来たか?」
「そうなのです。何だか話し込んでいたようで、タイミングを見計らうのに苦労したのですよ……」
「ああ、気を使ってくれたんですね。ごめ……いや、ありがとうございます」
「? ともかく、配膳を始めるのでそちらも準備をして欲しいのです。昼食を終えたらすぐに出発なので、なるべく急いでくださいなのです」
「わ、分かったよ……」
「ちなみに、私もここで食べたりは……」
「パイスは自室に用意するので、そこで食べるのですよ」
「えぇ~、またなのぉ~」
「いいから、さっさと自分の部屋に戻るのです。私も自分の支度があるので、いつも以上に忙しいのですよ」
「……自分の支度?」
「あ、ユージには言ってなかったわね。クリムとはインダストまで一緒に行くことになったの」
「え……え? なんで?」
「いくらフラムの許可が下りたと言っても、ただの旅人が幻獣の聖域に入るのは危険なのです。でもフラムが長時間フィアンマを離れるわけにもいかないから、代わりに私が行くことになったのですよ。まあ、私としてもインダストの現状を確かめておきたいという思いはあるのですが」



確かに、実際に幻獣の聖域に入ったことのある人が案内してくれるなら心強い。クリムはしっかりしてそうだし、インダストでも頼りになりそうだ。



「そうだったんだ……じゃあ、しばらくの間よろしくね」
「……ユージ、と言いましたか。精々、自分の身は自分で守るようにするのですよ。私はフラムみたいに甘くはないので、駄目だと思えばあなたたちであっても切り捨てるのです」
「き、肝に命じておきます……」
「とか言っても、クリムちゃんは優しいから何やかんやで世話を焼いてくれるし心配しなくてもいいと思いますよ?」
「パイス、まだ居たのですかっ!? というか、別に優しくなんてないのです!」
「はいはい。赤くなっちゃって可愛いですね。それではそろそろお邪魔虫は退散しますね~」



そう言い残し、パイスさんはそそくさとその場を立ち去っていく。そして、残されたクリムは……



「…………」
「……それじゃよろしくな、『優しいクリムちゃん』?」
「っ、ちゃん付けはやめるのです!! ともかく、早く昼食を終わらせたら玄関に集合しておくのですよ!」



顔を真っ赤にしたまま、走り去ってしまったクリム。まだ配膳も終わってないのに……



「マッハ、さすがに今のは……」
「悪い悪い、ついやっちまった。しかし、あいつはからかうと面白いなぁ」
「全く反省してないじゃない……」
「えっと、私たちのお昼ご飯は……廊下に置いてあるあれ、でしょうか?」
「そうだろうな。配膳する者も居ない以上、こちらで運び込むしかないだろう」
「ただの職務放棄じゃねえか……仕方ねぇ、さっさと持ってきて飯にしようぜ。朝から何も食ってねぇんだ、このままじゃ空腹で倒れそうだからな」



そう言われてみると、強い空腹感を覚えてきた。朝から色んなことがあったけど、ようやく一段落したな……これから幻獣の聖域を通ってインダストへ向かうんだから、まだまだ苦労しそうではあるけれど。まずは腹ごしらえをして、午後に備えるとしよう……


















急いで昼食を終わらせた僕たちは、出発に向けた支度を整え玄関へと移動した。



「……ようやく来たのですか」
「クリム……もう来てたのか。お前は昼飯食ったのかよ?」
「とっくの昔に済ませてあるのです。早く出発しないと日が暮れるまでに幻獣の聖域を抜けられないのです」
「その前に、フラムに挨拶しておきたいんだけど。さすがに忙しいかしら?」
「その通りなのです。私が居ない分までお客様の対応に追われる上に、自分で壊した部屋の後片付けまで……油を売ってる暇はないのです」
「そう。なら仕方ないわね……」



「仕方なくはないぞ。妾も、最後にお主らと話しておきたかったからな」



「なっ、フラム……!?」
「フラムさん……宿の方はいいんですか?」
「まあどちらかと言えばよくないじゃろうな。なので、さっさと用件を済ませることにしよう」



フラムさんは、その手に持っていた小包をクリムへと手渡した。



「これは……」
「お弁当じゃ。それをミトラの奴に渡してやってくれんかのう? あの森の中で暮らしとるから、きちんと食事を取っているかも分からんからのう……頼んだぞ」
「……分かったのです」



……ミトラ? 森の中に暮らしてるって、一体どういうことなのだろうか……



「それと……お主らも、気を付けるのじゃぞ。インダストは現在どうなっているのか、妾にも分からぬ。上手く侵入できたとしても、その後の保証はできんからな……それでも、必ず全員揃って戻ってくるんじゃ。必ず、じゃからな」
「……はい、分かりました。必ず全員でここに戻ってきます」
「ならばよい。妾はここで待っておるからな……さあ、行くがよい!」
「はい!」









フラムさんからの激励を受けて、僕たちは温泉宿を出発する。目指すは幻獣の聖域……そして、インダスト。これからもたくさんの苦難が待ち受けているだろう。それでも、みんなで力を合わせれば乗り越えられる……何故か、そう確信している自分がいた。












「……よし。みんな、行こう!」







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ギガプラント
温泉宿編・完!
「黙っておらんと舌を噛むぞ。これ以上怪我を増やすでない」←この言い回し好きです
フラムさん只者ではないのは分かりきっていましたが、思っていた以上に壮大なお方でした。神代という設定も中々に凝ってますね。(神代…つまりシャーk) (2019-10-23 22:14)
名無しのゴーレム
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
フラムの独特な口調は書いていて自分でもこれでいいのか分からなくなったりしてました…
段々と膨れ上がっていく世界観。フラム以上の連中がのさばってる神代とかこれなんて地獄? 状態でしょうねぇ… (2019-10-24 16:27)

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