101話 厄日　作：紅瑠璃

…鳥の囀りが聞こえる…。なんだろうか…木？木の上に寝ているのか…。

「んぅ…ん？」

寝ぼけ眼で辺りを見渡す。見知らぬ森にいるようだ…私、藍野鈴菜は夢遊病だ。これはどうしようもない事だし打開策がない。また、いつ起きて、どこで起きるのかもわからない。病院で見てもらおうと行ったことがあるが困ったような顔をされた。何せ夢遊病は起きてもそこらをウロウロするぐらいで数分後には布団に戻る。が、私の場合外に出て、それっきり。もはや夢遊病といってもいいのかさっぱりだ。さて、この後の行動は木から降りることだ。私は早速その行動を取った…が、その木は音をたて倒れていく。

「ぬわぁっ！？」

私は地面に叩きつけられた。幸い気絶も怪我もしてなかったので立ち上がることは出来た。そのとき頭の上に鳥のフンが落ちてきた。その鳥は知らん素振りで飛んでいく。

「もぉ！なんなの…。厄い…。」

私はその場でしゃがみこみうなだれた。

～蜜柑の部屋～

蜜柑の部屋…猫の部屋でもある。そこで二度寝の楽しみをとっているのは他でもない猫山蜜柑だ。と言っても今は猫の姿になっている。

「ふにぁ～。」

とても気持ちいい中くしゃみが出そうだ…「クフン！」とくしゃみが３回出ると天井についている電灯の蓋が落ちてきた。私は驚いて扉の近くまですっ飛んだ。

「ミカ？何があったの？あっ！」

朱音が私を心配して来てくれたが足の置く場所が悪かった。朱音は見事に私の尻尾を踏んだのだ。当然それは痛い。例えるなら万力に小指を挟み、人体的に挟み込めるとこまで挟む。それほど痛い。猫の大事なことを踏まれたのだ。すかさず人間の姿になる。

「いったぁい！いったいぃぃよぉ…。」
「ご、ごめん！大丈夫？」
「にゃわけにゃいでしょ！うぅ…。」

私が痛がっていると玄関からチャイムが鳴った。朱音が扉を開けると服がボロボロで髪は臭うしボサボサ。生きた目をしていない鈴菜が立っていた。

「た、助けて…。」
「どうしたの？とにかく中に。」

話を聞く前に朱音は風呂場を貸してくれた。何て優しい奴なんだ…何て思いながら私は鳥のフンが付いた髪を念入りに洗う。5回ぐらいシャンプーをつけてしまうほどに。先程までの嫌なことを忘れかけていたときにシャワーの水がいきなり止まった。蛇口の近くを見るとそこには奴がいた。

「ト、ト、トカゲェェ！？」

私の大嫌いなトカゲがなんと蛇口の近くから現れたものだから私は尻餅をついてしまった。そこに朱音が心配して来てくれたが運悪く水がいきなり出た。しかも勢いよく 。しかもシャワーノズルは朱音を向いていたものだから水は朱音の顔や服を濡らした。当然朱音は怒るものだ。

「ま、まって！い、今のは悪気はないし、本当にトカゲがいたのよ！許してください！お願いします！」

なぜか私はその場で正座をして、土下座をしていた。しかも裸でだ。恥ずかしい限りだ。

～その数分後～

なんとか許してもらえた…のだろうか。私は今まであったことを朱音と蜜柑に語った。うなだれた後、家を目指そうと歩くと熊に襲われたり、蛇に巻き付かれたり…他にもあるがそれはさんざんだった。

「ミカも厄いのかにゃぁ～」
「私とあなたが厄い…いや、運がないのよ。ついてないわね…。」
「そういえば二人とも昨日怪異と戦ったんだよね？それじゃない？」
「いや、それなら神無月も黒瀬って人も猿柿って人も戦っている。いや！倒した後の煙！」
「ミカと鈴菜しか吸ってにゃい！」

二人が今日散々なのは怪異を倒した後の煙を吸ったからだと考えた。試しに神無月に電話してみる。

「んやぁ～？なんですか？」
「あんた昨日怪異と戦ったんだよね？その…散々な目にあってない？」
「は？」

そりゃ理解できないか。少し嫌だが一から説明する。帰ってきた言葉は「そんなものありませんよ。」だった。どうしよう。私と蜜柑だけが散々な目にあっている。しかもいつまで続くのかわからない。

「じにゃぁ！」
「今度は何？」
「シ、シユゥ～…階段から落ちた…痛い…。」

二回へ上がるために階段を登ろうとしたが踏み外し転がり落ちてしまったようだ。

「とりあえず、今日は安静にしてて。鈴菜は止まっていきな。」

私はそんな言葉に甘えた。明日は学校なんかに行けない。こんなに厄いのでは恥をかくだけだ。早くなおって欲しい物だ。