87話 蜻蛉と花札　作：紅瑠璃

とある少女は目を覚ます。日の光に当てられて目を覚ます。その部屋は真っ白な壁、隣には机、本棚には同人誌。後ろには窓…そして…。

「おはよう。」

１つの植木鉢。少女はその１本の苗木に話す。まるで友達と話すかのように…。

「…。お父さん、お母さんはいないか。」

まぁ、いつもの事だ…いつも朝起きるといない。だから一人で朝食を食べる…ふと、カレンダーを見る。日曜日…その前の日は遊戯王のパックが発売していたか…まぁ、1つしかないし、やる相手は…。

「気晴らしに行こうかなぁ…」

着替えるために自分の部屋にいく。そこで昨日日記を書いていたことを思いだし、読み返す。

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10月15日(土)

私は今日も苗木に話しかける。親が遅くに帰る。友達もいない。だが、今に始まったことではないし、慣れてしまったこと…腕のアザも慣れてしまった。…おやすみ。私…桐谷真澄。
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この少女…桐谷 真澄。着替え終えデッキとお金を持って外に出る。デッキは「花札衛」。
時同じくして別の家。

「お父さん！お母さん！少し、出掛けてくるね！」

人間の少女が怪異に話しかける。お父さん、お母さんと呼ばれた怪異は無邪気な少女に話す。怪異の言葉は本来人間には理解できないがこの少女は理解できる。怪異に育てられたからだ…とは言え怪異から生まれたのではない…。人間が産み落とし、捨てられたのだ。ちょうど生後片手で足りてしまうぐらいの時、橋の下で捨てられた。そして、怪異に拾われ育てられた。怪異は「気を付けてね風那」とその少女に怪異の言葉で語る。その少女は神無月 風那。向かった先はカードショップ。店内に入るとデュエルをしている人達がいた。遠目で眺める人がいた。

「こーんにちは♪」

好奇心の塊のような神無月風那はその女性に挨拶をする。

「ひゃぁ！ご、ごめんなさい！」
「んやぁ？何がです？あぁ、なんか、私と同い年で女性だったんで気になって」
「は、はぁ…。」

中々目を合わせない。

「私は神無月 風那です。あなたは？」
「き、桐谷…真澄…です。」
「へぇ～真澄ちゃんか。遊戯王…してるの？やろうよ♪」

オドオドしながらも怯えながらも答えた。

「真澄ちゃん！なんで、オドオドしてるの？」
「あの…その…私の事気持ち悪く思わないのですか？」
「別に？逆に綺麗だよ♪」

桐谷真澄は嬉しそうな顔をして席についた。

「私は…花札衛しかないけど…。」
「私も1つしかないんだーwドラゴフライって言うレベル4とレベル8軸の蜻蛉モチーフの風属性。まぁ、そこまで強くないよwあ、五光って買ったの？」
「う、うん。桜に幕もあるよ。」
「こりゃー勝てないなw」

一人で楽しそうな風那、明るい顔が眩しい。私は学校でもいじめられ、変わらなきゃって思っているのに中々変えられない。遊戯王のデュエルは五分五分ってとこだ。ドラゴフライは守備型で昆虫族のレベル4軸から攻撃型でドラゴン族のレベル8軸に切り替わった時の強さがある。
遊び疲れ、近くの公園で二人は会話をしていた。

「いやぁ～。楽しかったよ♪」
「わ、私も！楽しかったです！」
「学校は何てとこ？」
「山谷中…」
「山谷…ここまでバスか…私は渚中だよ。」
「あの！風那さんは…。」
「風那ちゃんで良いよ。」
「風那ちゃんは優しいですね。」
「え？」

何があったかを話す。学校でいじめられ、酒によった親から殴られることはあり、腕にアザがあること。

「大変だね…。」
「はい…一人ぼっちのような気がして…。」
「私も一人ぼっちだからね…わかるよ♪私はね捨て子だったんだ♪赤ん坊の時にね…けど、怪異に拾われ、今に至るわけ。あなたも一人ぼっちなら、来ない？アストライアーに。」
「アストライアーってあの！？風那ちゃん…もしかして…。」
「あ、この事は秘密ね。実は私、それの一員なのよ。」
「…けど、私何もできないし、みんなの足手まといになるのは…。」
「そんなことはないって！まぁ、ならなくても良いし…それじゃぁ帰るね！」

帰ってしまう。友達になれそうだったのに…。変わらなきゃ…思いを伝えなきゃ。

「風那ちゃん！」
「んぇ？」
「私と！友達になってくれませんか！」
「んやぁ？友達になってくれませんか…ではなく、なりましょうでは？それに、もうすでに友達ですよ♪」

嬉しかった。クラスではみんなが私をいじめる。苦しめる。「醜い。汚い。いらない。邪魔。」と…友達はいなかった。しかし、今胸はって友達だと言える人が出来た。 初めての友達。

「んやぁ？変なこと言いました？…まぁ、もう少し…。もう少しお話をしましょう♪真澄ちゃん！」
「は、はい！」

今日の日記にはたくさんの事が書けるだろう。心の癒しを見つけた。私の大事な友達…。神無月 風那。初めての友達…心は満たされる。