107話 ヘイル・ブリザード　作：紅瑠璃

「ほら…ここ。」

黄蜂一行はYの能力者、ワーカーに案内してもらい外に出る事が出来た。数分ぶりの日差しだ。

「ほ、ほかに…手伝うことある？」
「ワーカー。半分スタンドとられてるって言ったけど…トラップは作れる？」
「それぐらいなら…。」
「よろしく。」

一行はオジェルとマキシマムを探しに歩いている。しかしこの森は広いため中々会わない。もういっそうの事分かりやすく氷の柱でも建てようかと思ったが話し声が聞こえた。あの二人だ。

「あー。マジでいねぇな！」
「このLとNの力があるわてくしに任せときな！」

どうやら気づいてないらしい。黄蜂はすでにとある作戦を皆に伝えている。あとはそれの通りにうごけばこの戦いは終わる。

「ブリザード・シュティンガー…行けっ！」

オジェルの足元を凍らせる。当然二人は気がつき、攻撃を仕掛けるがマキシマムの体が杉山のオペレーション・ナイチンゲールによってジグソーパズルのようにバラバラにされてしまう。

「ニードルワーム！」
「来たわね…。」
「くっそぉ！やれ！」

それでも二人はスタンドを出す。ニードルワームと呼ばれたオジェルのスタンドは針を飛ばす。それを避ける黄蜂。相手は進化しているスタンドと攻撃力が高いスタンド。このままでは黄蜂と杉山は負けてしまうが秘策があった。ワーカーのトラップだ。一人では辛いがニコルとクエローがいる。今二人の目の前には黄蜂と杉山。その違和感をオジェルは今感じだ。

「マキシマム！これは罠だ！」
「遅いよ…。ど、どうだ。ウール！…この立ち方…やってみたかった。」

ワーカーのスタンド。Y…Yarn…糸。しかし半分とられているので自力で動かすのには辛い。なので糸の先端にクエローのスタンド。アースクエイクの赤のシールを張り、そのシールは青のシールを追いかける。だが、青のシールは常に動いていなければならない。そこでニコルのスタンド…Dの能力…Doll…ネクロドールの登場だ。ネクロドールは何かに憑依し、憑依したものを操る能力。大きなものを操るには体力を使うためまだ子どものニコルには難しいが、シールのような小さなものなら今のニコルでも十分操れる。

「う、うごけねぇ！俺のスタンドがぁ！」
「今だ！俺の半分の力であいつのスタンドを吸収する！」
「な、なんですとぉ！？させるか！」
「ブリザード・シュティンガー！やつを押さえつけろ！…んぐっ！力強すぎ…。」

マキシマムとそのスタンドが動けない間に永峯がマキシマムのスタンドを吸収することに成功。100％吸収した。これでおしまいだ。と、皆が思ったが突然黄蜂が苦しみ出した。それに高笑いするオジェル。

「わてくしが吸収したのはL…Lance(ランス)。P…Poison(毒)。Y…Yarn(糸)。と言ってもPとYは半分ずつ。けど、言ったよね？その小娘にPの能力をちょっと注入してあげたのよぉ！」

オジェルは黄蜂のスタンドを通して毒を注入していたのだ。それの前にも最初の攻撃で刺さっていたらしい。

「黄蜂！今行く！」
「動いちゃやーよ？あの子達にいたーい思いさせる？」
「くっ…」

ワーカー達の回りにはランスが無数に漂って待機していた。彼次第で彼らは串刺しになってしまう。いくら死んでも甦るとは言えまだ進化しきっていたいので対処出来ない。

「待てやゴラァ！」
「バカっ！下手に動くな！」
「コレが進化したN…ニードルの力よ！」

オジェルのスタンドの一撃が永峯を吹き飛ばす。永峯は丁度スタンドを出していたのでその部分もダメージを受けている。右腕だ。右腕を負傷した。

「さぁて次はM…メディカルを頂こうかなぁ。能力を使ったらわかってるよねぇ？」
「ここにいるやつらをスタンドごとやるのだろ。なら、能力を使わずに倒そうじゃないか。」
「はっ！あなたのスタンドは攻撃が苦手なようだけど？それでやろうと？笑わせるわぁ！」

そうだ。オペレーション・ナイチンゲールは戦闘をしない。回復がメイン。いくら進化したとは言え反撃するほどの力はない。だから避ける。永峯の状態を見て自分もくらったら只ではすまない。

「動くなぁ！？動けばこの坊やはスタンドごと串刺しだ！」
「卑怯な手を…」
「卑怯？弱いやつの台詞だわ！あんたが強くなればぁいいのよ！」
「そっか。強くなれば良いんだね」

声のした方を振り向くと黄蜂が銃を構えていた。そして引き金を引く。オジェルの頭を撃つことが出来た。しかし油断は出来ない、本番はここからだ。黄蜂は永峯に近づく。

「なんだよ…毒を注入されたとわかったとき一度死んだのかよ。心配して損した。」
「いやギリギリだった。そんな馬鹿な事を言えるぐらい元気ってことね。」
「永峯…待ってろ今すぐ治してやる。」

杉山が永峯の怪我を直している間も会話を進める。そして永峯はこんなことを話した。

「なぁ、俺のスタンド…お前が持っててくれないか？俺にはスタンドを操るのは難しくてさ…。」
「確かにあんたはバカね。でもいいの？亜人として生き返るのに苦労するよ？死ぬと勝手に出てくるスタンドは幽体離脱みたいなもの。魂の一時的な避難なのよ？」
「死ななければ良いんだろ？」
「ほんっとバカね。」

黄蜂は永峯のスタンドを吸収した。なんだろうかこのみなぎる力、溢れる力は黄蜂のスタンド…ブリザード・シュティンガーの姿を変化させた。 仮面をつけたような顔、真っ黒のロングコート、ロングブーツ、大きく変わっているのは粒子が濃くなったことだ。黄蜂が言うには300操れるそうだ。

「新しく…名前をつけなきゃね…。何にするか。」
「ヘイル…ブリザード…。」
「え？」
「雹や霰…あと確か英表記で悪口…銃雨だっけな？」
「ふふっ…悪口…。嫌な響き。けどそれって私自身だよね…本当は一人が嫌なのにトラウマから人と関わるのを嫌う。けど本当は…本当は皆と一緒にいたい。」
「なぁにいい雰囲気になってんのさぁ！甘いわ。止めをさせたはず！」

オジェルが生き返った。すでにクエローは二人をつれ逃げている。これも作戦だ。終わったら先程出てきた穴の近くで待つように言っている。

「止めを刺さなかったのはさ残りの能力者。知らない？って話。」
「し、知るわけないでしょ！」

オジェルはスタンドを出して攻撃する。が、黄蜂の前にはほぼ凍り付けにされてしまった。使っていてわかったことは…このスタンド。永峯が名付けたヘイル・ブリザードは操れる温度も違った。今までは-10℃までだったがヘイル・ブリザードは絶対零度まで操れるそうだ。それによりいとも簡単にオジェルを凍り付けにしてしまった。マキシマムは杉山がオペレーション・ナイチンゲールの能力でバラバラにしている最中に能力解除してしまったためそのまま血が流れている。その時点でマキシマムにスタンドはいないので生き返らない。オジェルのスタンドを黄蜂が吸収したところでオジェルを凍り付けにしたまま粉砕する。これでまた二人、いなくなった。指示した穴の近くにいくと３人は待っていた。黄蜂はワーカーにワーカーのスタンド、残り半分を返し小屋があったところに戻った。戻ってきても小屋はバラバラのまま。だが、ここには杉山がいる。オペレーション・ナイチンゲールの能力により壊れていた小屋を直すことが出来た。

「皆、ありがとうね…。私、自信がついたよ。前に１歩踏み出さなきゃね…ワーカーはここにすむの？」
「いや、あの…また戻ろうかなって…。」

相変わらず人が苦手なようだ…早く皆にあって。前に進まなくては…人が嫌いなんて言ってられない。黄蜂は山を降りる。町が見えてきたところで鈴菜と朱音に見つけてもらった。黄蜂らしくない二人に抱き付く行動をした…体温が冷たいが心は温かい。黄蜂は１歩前に踏み出した。