119話 君のために　作：紅瑠璃

「せいやっ！」
「フォッフォッフォ…まだまだぁ！」

まだ相手にそれらしいダメージは与えることが出来ない。黄蜂はまだボロボロで援護してくれそうにない…。捨て身で行くしかない…。

「うおぉぉ！」
「もうしまいじゃ！」
「っ！？」

No.10白騎士イルミネーターの攻撃で自分の刀「永華」の刃が折れてしまった。剣士にとって刀は心。そう蕪木様から教わっていた…。刀が折れれば剣士の負け。つまり私はもう剣士としては負けた…。だがこのまま蕪木様の背中を追うだけで良いのか？良くない…いつまでも追うだけでは強くなれない！白騎士の剣が私の腹に突き刺さり、同時に私は折れた刀を白騎士の胸に突き刺すが急所に届かず。ダメージをおったのは私だけだった。

「暦…お主の刀は折れたり…お前の負けよ。」
「私は確かに…剣士としては負けた…しかし！アストライアーとしては負けぬ！黄蜂っ！撃て！」

良い終えてから気がついた。何を私は言っているのかと…。

「なんじゃと！」
「おっけー。お二人さん…グッドラック…。」

黄蜂は左手で人差し指と中指を交差させた手を降ったあと肩幅に足を開き、両手で銃を構える。

「うぐっ…動けぬ！」
「逃がすかバーカ。」

黄蜂は馬の動きを氷付けにして止め、その手のリボルバーの引き金を引く。私はそれに合わせ避ける。弾は先程私が折れた刀で刺した胸に当たった。白騎士は馬から落ちたとても苦しそうだ…黄蜂はそこに容赦なく白騎士の頭を撃ち抜く。すると白騎士は光り、カードになった。

「やっぱり…倒せばカードに戻せる。世話になったわ…バカ侍」
「おまっ…」

反論しそうになったが黄蜂は元々そういうやつだ…。少しは態度を変えよう。

「さて、本部に行こう。応急措置はしてくれるでしょ…優衣…。」
「だ、大丈夫？」
「そう見える？」
「そうね…黄蜂は私が連れてくわ。」

私は重症だが歩ける範囲内なので歩いてついていくことにした。

～鈴菜の付近～

私はとある場所を走っていた。すると一組の夫婦が名前を叫んでいた。

「何がありましたか！」
「あなたは…鈴菜ちゃん？」
「はい！アストライアー所属藍野鈴菜です。加奈人君は！」

私が声をかけたその夫婦は加奈人君の両親だった。私がした嫌な予感は加奈人君がそこにはいないと言う予感だった…それは見事に的中。両親が視線を向けた方にいるらしい。視線の目の前には瓦礫が壁を作っている。逃げている途中塞がってしまったようだ…両親は息子の安否が心配だった。母親の目には涙流れるのを見た。

「私がいきます！お二人はこの中に入れそうな場所を探して加奈人君の来るのを待っていてください！」

私…藍野鈴菜は瓦礫を飛び越えて中に入る。中は瓦礫に埋もれた人…何か引っ掛かれた傷がある人がたくさん倒れていた。皆息をしていない。私は感覚を頼りに走った。自慢できる程ではないがこの町の12歳以下の男の子の特徴。寝顔は見てきた…匂いも覚えている。たまに忘れることがあるが加奈人君だけは忘れたことも考えないこともなかった。なぜこんなに思うのか…今でもわかる。
とある年の夏だったか…スタミナ切れで動けなく倒れていた私…周りは見て見ぬふりで通りすぎた。熱中症で死にかけた。もうだめだと思ったがただ一人…私に手をさしのべてくれた人がいた。それが加奈人君…。その当時私は幸せを感じることがなかった…自分のお父さんをコロシアム相手を探して復讐することを考えていた。愛が欲しかった…。けどその愛をどうやって表すのかはわからなかった。だからあんなにしつこく追いかけてしまった…。

「わ、わぁぁ！」

とおくで加奈人君の声がする。私は声のした方に走る。そこにあった光景は…

「次はお前だ！」

見たことある姿…No.82ハートランドラコだった。No.82は自身の爪で加奈人君を刺そうとしているのか攻撃を仕掛けた。私はそれを止めるため間に入る。もちろん爪は私の胸を貫いた。

「れ、鈴菜さん！」
「大丈夫？もう安心だよ」

僕はピンク色の小さな竜に殺される。そう思ったときに鈴菜さんが間に入ってその攻撃を止めた。僕は怪我はしなかったが、ピンクの竜の腕が鈴菜さんの胸から貫通している。血が止まらない…それでも鈴菜さんは笑顔でいる。僕に不安を与えないために…本当は痛くて死にそうで声をあげたくなるほど痛いはずなのに僕のためだけに痛みを押し殺し笑顔を見せる。

「お前は…鈴菜か！」
「ハートランドラコ…久しぶりね…さ。加奈人君…そこの角に隠れて…。うっ…。」
「おいおい…フラフラじゃないか。」

私は守る。加奈人君を…命の灯火消えようとも、全てを捨てようとも…それが私ができる愛情表現だから。

「クワァァ！」

No.82は口からホーミング弾を放ってきた。その弾は私にではなく加奈人君を狙っていた。私はそれも身を呈して庇う。すでにボロボロだ…。
それでもNo.82は攻撃をやめない。接近、遠距離…どちらでも攻撃をしてくるので手も足もでない。やっと攻撃を当てることができたのは私の体に12回攻撃が当たってからだった。

「はぁ…はぁ…。」
「もう終わりかぁ？」
「うるさい…まだよ！」
「そうかい！」

No.82は全速力で攻撃をしてきた。また加奈人君に攻撃かと思ったらその爪は私の目の前にあった。やつの攻撃は交わせなかった…私は右目を攻撃されてしまった。右目がなくなってしまった。とても痛い…苦しい…。その間にも加奈人に攻撃をしようとするが私はその痛みを押し殺し加奈人君を守る。私は…残った左目だけで勝てるのか…いつ倒れてもおかしくない。見えないタイムリミット…私は怖い…けど加奈人君の方が怖い思いをしているのだろう。そんなものに比べれば私の恐れ、痛みはまだ優しい…私はナイフを構えた。