71話 怒りに引かれる　作：紅瑠璃

夢月「うむ。これでよし。今晩の夕食等は言われた通りだ後は購入するだけ…んなっ！？」

夢月は蕪木に夕食の買い物を頼まれ、メモ用紙と財布を手に近くのスーバーに来ていた。レジの近くを通ったとき彼女は目に止まった。「極上デリシャス焼きそばパン」を…。在庫一つしかない焼きそばパンを…。普段はあまりの人気ぶりに店頭には見かけることはなく、どこの店舗を回ってもない。たしか…「デリシャス」と言うパン屋とのコラボだか聞いたことがあり、そこのお使いを頼まれたときにもこの焼きそばパンだけが無かったのを覚えてる。
今はそのパンが食べたい。私はアスパラガスと焼きそばパンが好きだ！

夢月「ほ、ほしい…が、た、頼まれてない…。頼まれてない物を買うわけには…しかし、ほしい。」

焼きそばパンを片手に数分考え込んだ…。店内の人の声、宣伝音楽等が徐々に聞こえなくなってくる。全てが夢月を中心に回ってるような感覚だった。

夢月「か、かわな…くっ！」

買ってしまった。微妙に罪悪感が漂うが自分の財布から出した…そう考えてないと罪悪感に押し潰されそうだった。

蕪木「おかえり…ん？目がうつろだよ？水分ちゃんと取りなね」
夢月「は、はい。」

食材をしまい焼きそばパンを片手に自分の部屋に向かおうとしたときピンクの髪をした美脚の女性…ヴァルゴがいた。

夢月「ヴァルル！今日はどうしたのだ？」
ヴァルゴ「むっちゃん♪遊びに来ました！」

互いにヴァルル、むっちゃんと言うほど親しい。夢月の可愛らしい顔を見て微笑みながら夢月の部屋に向かった。 夢月の部屋は八畳あり、クローゼットには私服が3着。下着が6着。修行用の衣服が3着。そして制服夏服冬服がそれぞれ2着。机があるぐらい。唯一可愛らしいのは千聖から貰った猫のぬいぐるみだけ。

ヴァルゴ「そういえばスマホを黄蜂さんから貰ったとか？」
夢月「うむ。あやつから貰うなど…」
ヴァルゴ「連絡の登録を…」
夢月「うむ。埋めた。」

埋めた…どや顔でそんなことを言われるなんて…夢月が言うに使い方が全くわからない。説明書を読んでも教えてもらってもさらによく分からないアプリ、設定が出て来て嫌になったらしい。だからって埋めないだろ…夢月は部屋を退室して、数分後戻ってきた。手にはスマホ…袋にいれてたらしく傷はない。登録をし、話をしていた。

ヴァルゴ「むっちゃん…憤怒の悪魔に取りつかれないでくださいね。憤怒に引かれやすいようだし…」
夢月「心配ない」

ヴァルゴが言ってること…憤怒に引かれやすい。その通りだ。幼いときに一人の女に人々は喰われた。私以外全員…。私は蕪木様に助けられたが…心に傷…と言うよりは大きな怒りを感じた。実際、その日以来蕪木様が管理している黒と金の鞘に納められた刀に引かれるようになっていた。時を忘れるほど見つめていたそうだ。蕪木様が言うにその刀には憤怒の悪魔が宿っているとか…。今でも気がつけば眺めている。そう思い出していたら家の方の電話がなった。警察の方からだ。内容は小さい男の子を誘拐しようとして…この時点で鈴菜の事であると確信した。仕方なくヴァルルと共に警察署に向かうと鈴菜がいた。引き取ったあと話を聞いた。

鈴菜「可愛い子がいたんだもん！」
夢月「しかし、誰も助けないのだな…。」
鈴菜「お母さんが仕事。多分あと1年は帰ってこない。友達はいつもの事かって…。」

いつもの事ってのもどうかと…まぁ鈴菜は家族がいないと言っても良いぐらいだ。寂しいのだろう。藍野の母親は一年に一度帰ってくるかわからない。が、お金の方は何故か届いてくる。父親は…いない。

夢月「藍野殿…自らの身体を傷つけてはいないだろうな」
鈴菜「っ！？」

寂しさ、悲しみから体を傷つけることもあった。

鈴菜「そ、そんなわけないじゃん。何言ってんのさ！わ、わたし帰るね！」
夢月「…仕方ない。ヴァルル…戻ろうか。」
ヴァルゴ「はい。…そうだ！帰ったら遊戯王と言うものを教えますね！」
夢月「皆がやってるようだが難しそうだ…。」
ヴァルゴ「ルールは一見複雑そうに見えて簡単です！」
夢月「そうなのか…ではよろしく頼む。」