127話 背負うべき罪　作：紅瑠璃

蕪木様が語った言葉…。特には傷つくような話ではないが寂しくもあった。

「近々…この街を離れるよ。それにあたって…夢月。君を、ここに残ってもらうよ。」
「そ、そんな…どうしても私もつれていってくれないのですか…。」
「僕と君は今までいろんな所を転々としていたが楽しそうな顔を見たのはこの街が初めてだよ。」

蕪木は夢月の頭を撫でる。夢月は顔をうつむき蕪木に顔を見せないようにしているが、蕪木は夢月がどのような思いをしてどのような顔をしているのか予想ついた。

「最後に、この刀を渡しておこう。名は…「桜花ノ舞」。」

その刀はとても美しい鞘に納められていた。私は蕪木様からそれをいただくと、一言入れてからその場を後にした。幼き頃より助けられてからいつのときも恩を返すために蕪木様とすごし、刀を手に取った。久山…あの日起きた事件は忘れない。暴食の女に抱いた憤怒…私は当時の町の最後の人間。蕪木様に助けてもらわなかったら私はここにいない…。

～蜜柑の付近～

明かりのついた廊下を二人は歩く…。蜜柑は部屋を一つ一つ探していた。しかし、ナンバーズが管理されている部屋は見つからない。

「ふみゃ～。疲れた。本当にこんにゃとこにあるってのも不思議だよね…。まさかグルか！」
「そんなわけないだろ。…俺は人に笑顔を届けたい。しかし、今回のような事になってしまった。しかも犯人は俺の部下、親友だ…それなのに気づきもしないでただのうのうとカードの事を…笑顔を広げるための事しか考えてなかった。」

確かにこの人は遊戯王の最高責任者。そもそも遊戯王に責任者がいるのか気になるだろうがこの人はデュエルディスクの製作に携わり、アニメ同様ソリッドビジョンを開発している。とはいえ一部の大会施設のみである…それに加え所詮映像、実態はないがその完成度に文句のひとつも聞いたことがない。また、全カードバランスが非常によく「このデッキのみが最強」というクソゲーはない。今という時まで遊戯王を越える作品は出ていないほどこの人はすごい人だ。最高のエンターテイナーだ。

「…私は…皆に笑顔を届けることができたのか？親友の事も気づかなかった俺に！…守れるもの、提供できるものがあるのか…。」
「みゃぅ…」
「今回の…ナンバーズ騒動を引き起こしたのは彼らかもしれない。しかし、私も同様に罪を背負わなければならない。」
「そ、そんにゃことにゃいよ！タカミネ社長は最高のエンターテイナー。あにゃたの活動で笑顔ににゃれた人はたくさんいる！…はにゃっ…は、はず…。」
「ふぅ…。そうかも…知れないな…。だが、私も同じように罪を背負わなければならない。これはけじめと言う奴だ…。さぁ、行こうか。」

二人は歩き続ける。早くこの件を終わらせるために…。

～渚町～

「本当に良いのかい？」
「はい…そもそも右足も左腕も溶けきってしまったので。」
「わかった。鈴菜も良いね。」
「右目なくなったし…早く治してください。」

鈴菜は朱音をつれ、杉山がいる場所に来た。杉山のスタンド。Mの能力…メディカルにより傷を治してもらおうと言うわけだ…。この数分前に杉山に「なんでも治せるでしょ？右目を治してよ」と言ったが「俺はどこかのイカれたダイヤじゃない。切開と切除と傷を塞ぐことしかできないぞ。」と言われた。不便だ…それに比べ黄蜂や杉山は生き返れば傷は治っているからたまに羨ましいと感じるが生き返る瞬間を感じた鈴菜はあの感覚がとても気持ち悪かった…そう考えると遠慮はしたくなる。

「ほら、朱音の傷は治したぞ。今後、歩くのは不便になるが生きてれば良いことあるさ…きっとな…。」
「それっぽい口を…。」
「酸味が強い君も治すよ。」

見事鈴菜の右目の傷も治した。がやはり右目としての働きはない。朱音に至っては車イス生活だ…残念ながらアストライアーとしてはもうやっていけない。もしかすると私もアストライアーをやめなければならないのか？悲しいことだ。

「もうこの街はがら空きよね？」
「わからん。鈴菜…この戦い負傷者はどれぐらいだろうか。」
「はぁ…わからん。でも、考えたくないわね…。もしかすると知り合い…もしかすると昨日会話していた人…もしかすると友達、家族…。悲しくなるわ。」

残りのナンバーズはいまだに破壊を続けている…数のわりにアストライアーのメンバーが少ない。他の町に行動範囲を広げるかは時間次第。朱音は右足と左腕がないのが違和感で今でもまじまじと見つめている。

「はぁ…私一人で行くわ…。」
「ダメだよ！レイは負傷者だから！」
「シユ…あんたに言われたくないわね」

朱音を置いて私は掛ける。私も無茶しすぎて死んだ。無茶しすぎないようにしなければ…。しかし、突然ブレスレッド型連絡機から連絡が入った。

「避難してください…。差出人は風那…何をするの…。」

～渚町上空～

すっかり人がいなくなってしまった。渚町の上空で巨大な怪異の上に佇む女…神無月風那。アストライアーのメンバー全員に同じような連絡をし、ため息を溢した。自分はこの街のとある人の夫婦から産まれ、捨てられ。二人の怪異に拾われ、育てられた。自分の事は理解した…誰がなんと言おうと私の親はその怪異。私だけが怪異の言葉を理解できる。普段は大人しいのが多い怪異。今はこの街の力に気をおかしくしたのもいる。そんな怪異は悲しいことに倒すしかない。彼女は空を見上げ笑みをこぼし、唄う。

「天地逆巻け神風よ！水面に刻め背徳の刄！銀色鬼楊魔早苗蜻蛉！」

夜空が覆い隠される程の数の怪異。１垓の数…。風那は声をだしながら笑い怪異たちにこう語る…。

「さぁ～ぁ銀色鬼楊魔早苗蜻蛉ぉ～ご飯の時間だよ♪」