123話 永久に捧げる許し合いの歌　作：紅瑠璃

「はぁ…はぁ…。何とか…倒した…。」

朱音と鈴菜はカードに戻ったNo.30を見ていた。触れてはいけない、遠距離攻撃もほぼ無意味。倒すのは簡単ではなかった。しかしこのコンビの前では勝てるものはない…だろう。朱音は鈴菜の顔を見るなり笑みを浮かべるが右足と左腕がない…しかも血が流れている。いつもならトラウマ、フラッシュバックで発狂するのに今はしていない。鈴菜が問うと…「確かに、痛い…苦しい…嫌なこと思い出してくるよ。でもね…鈴菜が生きていた。その嬉しさは今の痛みや苦しみよりも上だよ♪」逆に鈴菜に何があったのか、質問された。鈴菜は全ては話せないが言葉を濁し、言葉を作り、伝えた…。

～数分前～

朱音には「あんた一人じゃ気が楽になれなくてね…安心して眠れもしない。天にはまだ昇れないわ…。」何て言ったが本当は違う。天界で生き返られると知り、黄泉の試練を受けていた。試練の内容？そんなことを言ってしまったら「なるほどこれで生き返られる」と一人二人と生き返ってしまう…と言うのは無理だろう。何せとても暗く苦しい…辛くて絶望の海…自分が自分でなくなる感覚。無の境地と言えるだろう。しかし、誰かが私を呼ぶ…それは未発達の愛情で愛した年下の男か…。小学生だか中学生の時から他者を信用することを止めた凍てつく氷の花を咲かせる親戚か…。幼き頃から互いに信頼し合う紅蓮の炎を宿した女か…。それはわからない。もしかしたらそれ以外の人…。一年に一度会える母親か…この世にいない父親か…。私は声がする方に歩み始める…それが更なる絶望だとしてもその中に希望の光があると信じて…。

「ネメシス…彼女は帰ってくると思う？」
「待つだけ無駄…所詮人間…本当の絶望からは立ち上がれない。」

ネメシスが仕事に戻ろうとしたとき扉が音を立て開く。その光景に二人は…特にネメシスは驚きを隠せない。ある意味恐怖を感じただろう。何せふらつきながらも鈴菜は目の前に戻ってきたのだから。

「な、なんなの…この感覚…。私が恐れてる？」
「おかえりなさい。藍野鈴菜…帰ってきて早々待ってほしいわ…ネメシスの気持ちを落ち着かせてからでないと。」

ネメシスの手は震えていた。天界では二番目に強く。勝てなかった相手は隣に立っている黄泉だけ。ネメシスは息を整える…。自分もまだまだ弱いと更に実感した。ネメシスは金色の杖…金霊聖杖スピカを手に持つ。そして鈴菜に向ける。

「あなたの望みは生き返ること…それで良いわね？」
「…はい。」
「この事は…。」
「喋りませんよ。私は約束を守る人でして…現に私しか知らない秘密4個を抱えていますよ。」

金色の杖が光だす。鈴菜の意識が薄れていく。視界が狭くなる…もう、眠たい…瞳を閉じる。次に目を開けたのは誰かの背中の上。妙に体温が冷たい…水色の髪の毛にお下げ…黒のロングコート。黄蜂三咲だ。

「ん？起きた？」

黄蜂三咲は今までの事を話してくれた。夢月と優衣と共に行動していたが、伊月を見つけたので優衣を預け、夢月をたまたま居た杉山に預け一人で捜索しているとこ死んでいる私を見つけたが亜人に見られる症状があったからこうしておぶっていたとのことだ。亜人に見られる症状…死んだ体が炭酸のようにシュワシュワと言う事だろう。

「どう？生き返った感想は…」
「死んでから行き交えるまでの感覚はあった…とても気持ち悪かった。」
「それを私たちは行っているのよ。けど、もう死なないでね…次はないから。」

今回鈴菜が生き返ったのは天の奇跡だといきなり真相を突くがそれ以上はたずねなかった。右目がない。亜人なら治っているがないから本当にもう生き返ることができない。黄蜂も杉山も他の人も「もう次はないかもしれない。」そう怯えている。まぁ生き返ることが出来たとしても命は大切にした方がいい。にしても何か肌がかさつくと言うか…暖かいと言うか…何だろうか。

「今私は氷を出せない…全て溶けちゃう。」
「え？それって…。」
「そんなことができる人何て一人でしょ。」
「まさか…朱音！」
「あんたが死んだって感知したのだろうね…そして暴走。それによって回りの体温がわからなくなり今も暴走。これを止められるのはあなたぐらいでしょ。さぁ行きなさい。」

黄蜂が私を下ろし背中を押してくれた。私は朱音の所に急ぎ今に至った。

～梓の周囲～

お姉ちゃん…黒羽早百合の体がマスター・キー・ビートルに操られ私にデュエルを申し込んできた。既にターンは3ターン目。私のフィールドには「RR－ネスト」のみ。手札は6枚。相手のフィールドには「BF－星影のノートゥング」と「ABF－驟雨のライキリ」と伏せカード２枚、相手の手札は1枚。ここまでで私のライフは800下がった。

「私は…RR－バニシング・レイニアスを召喚！効果でRR－トリビュート・レイニアスを特殊召喚！RR－トリビュート・レイニアスの効果でデッキからRR－ミミクリー・レイニアスを墓地に送る。」
「ここで、ゴッドバードアタックを発動。ノートゥングをリリースし、先程召喚されたモンスター２体を破壊。」
「っ！？わ、私は…RR－ミミクリー・レイニアスを除外してデッキからRR－ペイン・レイニアスを手札に加える。RUM－ソウル・シェイブ・フォースを発動！ライフを半分払い…んくっ…墓地のRR－フォース・ストリクスを特殊召喚。そしてランクが二つ上のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する。現れて！RR－レヴォリューション・ファルコン！」

これにより自分のライフが3600になった。さらに手札からRR－ファジー・レイニアスを特殊召喚。ファジー・レイニアスの攻撃力500分のライフを削り、ペイン・レイニアスを特殊召喚。RR－ネストの効果で墓地のRR－トリビュート・レイニアスを手札に加える。ファジー・レイニアスとペイン・レイニアスでエクシーズ。

「現れて！RR－ブレード・バーナー・ファルコン！私とお姉ちゃん…。No.66のライフは3000以上の差で私が低い。よってブレード・バーナー・ファルコンの攻撃力は4000バトルッ！RR－レヴォリューション・ファルコンでライキリを攻撃。」

レヴォリューション・ファルコンの効果でライキリの攻守が0になり、早百合に2000のダメージが当たった。続いてブレード・バーナー・ファルコンで攻撃をする。そのときだった。早百合…No.66はBF－バックフラッシュを発動した。それにより梓のモンスター全てが破壊されてしまった。梓はカード1枚を伏せてエンド。

「ドロー。BF－月影のカルートを召喚して攻撃。エンド。」

黒羽早百合のライフが6000で黒羽梓のライフが1700。カードを引く。トリビュート・レイニアスを召喚し、ミミクリー・レイニアスを墓地に送り、除外し、ペイン・レイニアスをデッキから加え、トリビュートの守備力分の400のライフを削り、ペイン・レイニアスを特殊召喚。トリビュート・レイニアスで攻撃をする。早百合は手札からBF－月影のカルートを捨ててフィールドのカルートの攻撃力を1400上げた。2800…私は「RR－レディネス」を発動して破壊は無効にしたがダメージを受けた。1000のダメージ。残り300しかない。ネストの効果を使っていなかったので墓地のフォース・ストリクスを戻し、フィールドの２体でフォース・ストリクスを特殊召喚し、インペイル・レイニアスをデッキから加え、カード1枚を伏せてエンド。

「ドロー。BF－疾風のゲイルを特殊召喚。ゲイルの効果でフォース・ストリクスの攻守を半分にする。攻撃っ！」
「まだよっ！RR－レディネスを発動！エンドね…ドロー。うっ…フォース・ストリクスの効果！トリビュート・レイニアスを手札に加える。インペイル・レイニアスを召喚してゲイルを守備表示に変える。フォース・ストリクスにRUM－幻影騎士団ラウンチを発動。現れて！ランク5…RR－エトランゼ・ファルコン！エトランゼ・ファルコンの効果！BF－月影のカルートを破壊して元々の攻撃力…1400のダメージを受けて貰うわ！インペイルでゲイルを攻撃…エトランゼでダイレクトアタック！インペイルが攻撃したことによりメイン2で墓地のバニシング・レイニアスを特殊召喚！効果でトリビュート・レイニアスを特殊召喚RR－ネストの効果でデッキから…RR－ペイン・レイニアスを手札に加える…。」

早百合のターンで運命のドロー。アゲインスト・ウィンド。蒼炎のシュラを墓地から戻し、召喚。早百合のライフは800…シュラでバニシングを攻撃するがRR－レディネスでダメージを無くす。しかしシュラの発動条件が整った。デッキからピナーカを出した。シュラとピナーカでシンクロ…ホーク・ジョーを出した。ホーク・ジョーの効果で墓地からライキリが特殊召喚され、ライキリの効果でエトランゼ・ファルコンが破壊されてしまった。しかし、エトランゼの効果でレヴォリューション・ファルコンを蘇生して、素材となった。ピナーカの効果でデッキからBF－寒風のササキを加えた。寒風のササキ…この状況ならあり得るだろう。手札からこのカードを墓地に送り、墓地のこのカード以外のBFモンスター２体を除外して、フィールドのカード２枚を破壊する。もしくは手札から捨てて、相手のフィールドカードの効果をそのターン無効にする。万能手札誘発。

「私のターン…ドロー。」
「ここで手札のBF－寒風のササキの効果…このカードを墓地に送り、墓地のこのカード以外のBFモンスター２体を除外し、フィールドのカード２枚を破壊する。除外するのは…カルート。グラディウス！私が破壊するのは…レヴォリューション・ファルコンとRR－ネスト。」
「これでどうやって戦えばいいのよ…。インペイルとトリビュートでエクシーズ。零鳥獣シルフィーネ。手札からペイン・レイニアスを召喚。シルフィーネの効果を使うわ。相手のフィールドの表側のカードの効果を封じつつ、このカード以外の表側のカード…3枚×300の攻撃力をあげる。2900でライキリを攻撃。エンド。」
「ドロー。ふふっ…ホーク・ジョーに装備魔法。妖刀黒羽を装備。ホーク・ジョーの攻撃力を400アップ。シルフィーネに攻撃。」
「ううっ…残り200…。」
「まだよ。妖刀黒羽を装備されたモンスターが相手モンスターを破壊した場合、手札のカード1枚か、魔法、罠ゾーンの1枚どちらかを墓地に送る。そうね…伏せカードを墓地に送るわっ！…エンド。」
「あ…。くっ！ドロー！…ペイン・レイニアスを守備表示にしてエンド。」
「ドロー。ホーク・ジョーの効果で墓地のライキリを蘇生。ホーク・ジョーで攻撃。手札を1枚墓地に送らせてもらおうか…なんだ神の警告か。ライキリで攻撃」
「最後まで…戦う…墓地のレディネスを除外する。」
「ふっ…エンド。」
「私のターンッ！闇の…誘惑。発動。」

今デッキに残っている闇属性はラスト・ストリクス…のはずだ。引けるか、引かなければ…負ける。馬鹿馬鹿しい事を言うがデュエルの神がいるのなら、力を貸してください！

「全て…この引きにかかってる…ドロー。来たッ！私は手札の闇属性を除外する。除外するのはラスト・ストリクス！そして…RUM－オーバー・ロード・フォース発動。自分の墓地のRRエクシーズモンスター１体を効果を無効にして特殊召喚し、自分の除外されているカードを任意の数までその特殊召喚したモンスターのしたに重ねてエクシーズ素材とする。その後、特殊召喚されたモンスターの素材の数分ランクが高いエクシーズモンスターをエクシーズ召喚させる。私はレヴォリューション・ファルコンを特殊召喚し、除外されているカード6枚を素材とする。」
「つまりレヴォリューション・ファルコンよりランクが6高い、ランク12を出すわけね…。」
「現れて！ランク12っ！数多の戦いにより嘆く魂達よ。全てを越え平和をつなぐ風と翼となり、永久に捧げる許し合いの歌を奏でよ。エクシーズ召喚！RR－ピースソング・ピジョン」

ランク12…ピースソング・ピジョンは天高く舞う。そして分厚い雲を別け、満天の夜空を見せた。渚町や回りの町に星の明かりが降り注いだ。

「ピースソング・ピジョンの攻撃力は4500…このカードが存在する限りお互いにバトルフェイズにはモンスター１体でしか攻撃できない。そして互いにバトルフェイズにはカードの効果を発動できない。さぁ…バトルッ！ピースソング・ピジョンでBF－驟雨のライキリを攻撃。ハート・フル・アライブ！」

やっと倒した…。私はお姉ちゃんに近づく…

「ふふっ…負けたわ。」

とても元気そうなお姉ちゃんに戻っていた…と言うか聞く限り途中から回復して熱中していたそうだ。体から分離し、実体となったNo.66を見て微笑む…お姉ちゃん。

「ほら、力を貸しなさい。」
「よし来たッ！」

No.66…マスター・キー・ビートルの背中に乗り空を飛ぶ。空は先程ピースソング・ピジョンが開いた夜空が浮かぶ。

～宇佐美の周囲～

「ふふっきれいな夜空ね…しかも今日は満月。」

宇佐美真奈子は余裕そうに歩く…回りには目に見えない物を追いかける機械やら怪異やらで溢れていた。これは宇佐美の刀の能力…弧卯の力だ…。彼らの目に映る宇佐美真奈子は宇佐美真奈子ではない。別の物だ…。満月に笑う卯は宴に踊る。