Episode94:最強の双子　作：カズ

　月が地球に落下するまであと１５時間を切り、もう何度目かも分からない夜空はずっと真っ赤に染まっている。
　中国・上海の繫華街にある廃ビルが立ち並ぶ工事現場に、宮崎裕人・尚志の２人はいた。その場所にまた１人、戦いを挑むため、『封印竜ビューティ・ライフ』を従える少年がワープしてきた。


「裕人くん……いや、『呪縛竜Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇ』。君の蛮行をこれ以上許すわけにはいかない！尚志くんがどれだけの想いで君と戦ったのか、分かっているのか！？」
「無論。だからこそ、此奴は我に従っている。そうだろう？」
「……」


　Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇに連れ去られた後、必死の抵抗も虚しく自由を奪われ、この時を迎える直前まで「お前の知る宮崎裕人はもういない。戦うべき相手は霧野命慈だ」と暗示を刷り込まれ、尚志の目には今目の前にいる人物を敵だと思い込んでいる。
　説得が無理である以上、デュエルに勝って目を覚まさせるしか道はない。


「で、霧野命慈。貴様がここに来たということは、我を倒しに来たということだ。貴様如きが勝てるとでも？」
「僕じゃない……僕達で倒すんだよ。そうだろ？『命慈』」
「うん。『兄さん』」
「……何！？」


　「ビューティ・ライフのカードを持っているデュエリスト＝霧野命慈」だとＨｕａｎｇ Ｌｏｎｇは思い込んでいた。しかし自分が命慈だと思っていた相手がエターナル・エンシェントを従える霧野精一であり、たった今ワープしてこの場所に現れたのが霧野命慈だった。
　つまり２人は、自分を騙すためにお互い「入れ替わって」いたのだ。精一曰く「成功するか分からない危険な賭け」だったが、Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇの逆鱗に触れるには十分だった。


「…面白い。ならば貴様等の望み通り、２人まとめて倒してやろう。タッグデュエルだ」
「勝負だ。２人の魂、必ず取り戻す！」


　精一・命慈と裕人・尚志の双子決戦。その戦いが今、始まった。



「「「デュエル！！！」」」



ＳＥＩＩＣＨＩ→ＬＰ:８０００ 手札:５ デッキ:３５ Ｍゾーン:０ Ｍ＆Ｔゾーン:０ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:０

ＭＥＩＪＩ→ＬＰ:８０００ 手札:５ デッキ:３５ Ｍゾーン:０ Ｍ＆Ｔゾーン:０ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:０


Ｖ　Ｓ


ＨＩＲＯＴＯ→ＬＰ:８０００ 手札:５ デッキ:３５ Ｍゾーン:０ Ｍ＆Ｔゾーン:０ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:０

ＮＡＯＳＨＩ→ＬＰ:８０００ 手札:５ デッキ:３５ Ｍゾーン:０ Ｍ＆Ｔゾーン:０ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:０



＊ＴＵＲＮ０１
(タッグデュエルは全プレイヤーの最初のターンは攻撃できない……なら、最初から全力で行く！)
「先攻は僕がもらう。自分フィールドにモンスターが存在しないことで、『ＰＴスパナ』は手札から特殊召喚できる。そしてこのカードが特殊召喚に成功したことで、デッキからチューナーモンスター『ＰＴステープラー』を手札に加える。そして２枚の永続魔法『アイテム・ボックス』と『リサイクル・ボックス』を発動！」


　命慈のデッキ【ＰＴ】の起点となる永続魔法、『アイテム・ボックス』はデッキトップを公開することで、それがモンスターであれば特殊召喚できる効果を持つ。運要素も絡んでいるが彼のデッキは半数以上がモンスターカードで固められているため、特殊召喚できる確率も高い。
　それを裏付けるように、命慈はその効果でデッキトップの『ＰＴシザーズ』を特殊召喚した。通常召喚を行わず一気に展開できる強みを、存分に活かせている。


「僕は魔法カード『再充填』を発動！自分フィールドの『パワー・ツール』１体につき５００ポイントのライフを回復した後、デッキから新たな『パワー・ツール』を呼ぶ。現れろ、『ＰＴボルト』！このカードが特殊召喚に成功したことで、『ＰＴシザーズ』のレベルを６に変更する。そして、レベル６となった『ＰＴシザーズ』にレベル１の『ＰＴボルト』をチューニング！シンクロ召喚！！現れろ、『パワー・ツール・ドラゴン』！！」
「『パワー・ツール・ドラゴン』か……だがそのカードは所詮、封印竜への中継でしかない。結局のところ貴様の戦術はワンパターンだな」
「さあて、それはどうかな？自分フィールドの『パワー・ツール』がシンクロ素材として墓地へ送られたことで、永続魔法『リサイクル・ボックス』の効果発動！墓地の『ＰＴシザーズ』を手札に戻し、デッキから装備魔法『慈しむ命(ビューティフル・ライフ)』をセットし発動！」
「『慈しむ命』？僕も知らない装備魔法だ……」
「ほう……」


　命慈が新たに用意した装備魔法『慈しむ命』はこの場にいる誰もが知らないカードだった。意外性だけで発動したカードでないのは容易に想像できるが、どのような効果を秘めているのか。


「『パワー・ツール・ドラゴン』の効果発動！デッキから装備魔法３枚を相手に見せて、その中から１枚を選ばせる。そして選んだ１枚を手札に加え、残り２枚をデッキに戻す。さあ、どれにする？」
「……全て『ＵＳＢメモリー』か」
「うん。だからどれを選んでも結果は同じ。じゃあ君が選んだ真ん中のカードを手札に加えるね。そして僕はこの『パワー・ツール・ドラゴン』１体でアナザー・ディメンションゲートを解放！世界の平和を守るため、勇気と力をフルチューン！ビヨンド召喚！！グレード７、『フルパワー・ツール・ドラグーン』！！」


　命慈は１ターン目から早速封印竜を呼び出すかと思いきや、その素材として重要な『パワー・ツール・ドラゴン』をビヨンド召喚のために使用した。封印竜以外にも『ハイパワー・ツール・ドラグーン』という切り札を持っていたが、それを更にフルチューンし、完全武装した新たな姿こそがこの『フルパワー・ツール・ドラグーン』だ。
　しかし装備魔法を装備した『パワー・ツール・ドラゴン』を除外してまでこのカードを呼び出したのも命慈の戦略の内であり、『慈しむ命』の効果を発動するための布石だった。


「装備魔法『慈しむ命』の効果発動！装備モンスターがビヨンド召喚の素材として使用されたことで、エクストラデッキからこのカードを特殊召喚する。遥か未来を守護する竜よ、艶麗なる命繋ぐため、勇気と力を解き放て！シンクロ召喚！！現れろ、『封印竜ビューティ・ライフ』！！」
「１ターン目から封印竜を、しかもこんな簡単に……」


　尚志は過去に二度、命慈とデュエルした経験を持つが、ビューティ・ライフを召喚するためにカード名をコピーする等の変則手段を用いてシンクロ召喚していた。しかし命慈が使用した装備魔法はその過程を踏まず、『パワー・ツール・ドラゴン』の命を紡ぐことでより容易に呼び出せるようになっていた。予想を超えるパワーアップにＨｕａｎｇ Ｌｏｎｇも怪訝な顔を見せたが、命慈はお構いなしにデュエルを進めていく。


「『ＰＴリサイクラー』を通常召喚し、効果発動！墓地の『ＰＴボルト』を特殊召喚する。そしてボルトの効果で、リサイクラーをレベル２に変更。更にビューティ・ライフの効果発動！僕のフィールドのモンスター１体につき１０００ポイント、ライフを回復する。僕のフィールドにはモンスターが５体いる……だけど『フルパワー・ツール・ドラグーン』がいる限り、僕のライフポイントを回復する効果は倍増する！」
「馬鹿な…１万ポイントも回復だと！？」
「そして『フルパワー・ツール・ドラグーン』の効果発動！僕のライフが回復したことで、デッキから永続魔法『カスタム・ボックス』を手札に加える」
ＭＥＩＪＩ→ＬＰ：１９０００


　かつて精一と命慈のタッグデュエルは「攻めの命慈、回復の精一」と言われるほど役割が出来上がっていた。封印竜が目覚めるきっかけとなった遊弥・紅葉との戦いでもその役割通りのプレイングで終始優位にデュエルを展開していたが、その命慈までも回復手段を獲得すれば、たとえ呪縛竜が相手でも手を付けられないだろう。
　圧倒的な生命力を得た今の２人は、タッグデュエルに於いて「最強」といっても過言ではない。


「レベル２のリサイクラーにレベル１のボルトをチューニング！２つの魂、鋼の絆で繋ぎ止め、新たな命ここに生まれる。シンクロ召喚！！レベル３、『ＳＰＴツイン・ドライバー』！！このカードが特殊召喚に成功したことで、墓地の『ＰＴボルト』を特殊召喚する。効果は無効にされていないけど、今回はレベル変動効果を使わないよ」


　命慈が新たに呼び出したシンクロモンスターはプラスとマイナスの両方の性能を併せ持ったドライバー。その効果で墓地に眠る『ＰＴボルト』を再度特殊召喚し、このターン４回目のシンクロ召喚を行おうとしていた。
　しかし今回の「それ」は、この世界では誰もやったことのない「チューナー２体」を使用する所謂「ダブル・チューニング」だった。


「レベル４のスパナに、レベル３のツイン・ドライバーとレベル１のボルトでダブル・チューニング！」
「「「ダブル・チューニング！？」」」
「宇宙へ飛び立て、希望の船。シンクロ召喚！！レベル８『ＳＰＴユニバース・シャトル』！！」


　広大な宇宙空間でも飛べる乗り物、スペースシャトルを模したモンスターが舞い降りた。今まで切り札として使用した『ＳＰＴデルタギア』と比べて召喚難易度が上がっている分、それに見劣りしない性能を持っている。
　テレビの中でも『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』や『レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント』がその方法を用いてシンクロ召喚されていたが、命慈達のいる世界ではダブル・チューニングによって特殊召喚されるモンスターは存在しない。


「貴様、始めから……！？」
「やっと気付いたようだねＨｕａｎｇ Ｌｏｎｇ。僕たち２人にタッグデュエルを挑んだ時点で、お前の勝利が潰えたことに！」
「フン。だが所詮１ターン目。そうして粋がっていられるのも今の内だ」
「…装備魔法『ＵＳＢメモリー』をユニバース・シャトルに装備。僕はこれでターンエンド！」
ＭＥＩＪＩ→ＬＰ:１９０００ 手札:３ デッキ:２９ Ｍゾーン:３ Ｍ＆Ｔゾーン:３ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:０


＊ＴＵＲＮ０２
(霧野命慈……一体何が奴をあそこまで駆り立てる？)
「……まあいい。貴様等を倒せば、『世界のリセット』とやらの成就が確実になる。我のターン、ドロー！」


　精一・命慈を敗北へ堕とし世界のリセットを完成させる。Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇにとって至上の悦楽を果たすため、人の成をした怪物はカードを動かす。


「手札より魔法カード『おろかな副葬』を発動し、デッキから『月光小夜曲舞踊(ムーンライト・セレナーデ・ダンス)』を墓地へ送る。そして今墓地へ送られた『月光小夜曲舞踊』の効果発動！このカードを除外し、手札の『月光黄鼬(ムーンライト・イエロー・マーチン)』を墓地へ送り、デッキから『月光翠鳥(ムーンライト・エメラルド・バード)』を特殊召喚！」
「っ…この動き」
「前に尚志くんと戦った時と違う…！」
「力を得たのが貴様だけだと思ったか？」



○おろかな副葬(通常魔法)
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。①：デッキから魔法・罠カード１枚を墓地へ送る。


○月光小夜曲舞踊(永続罠)
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：自分フィールドに融合モンスターが融合召喚された時、そのモンスター１体を対象として発動できる。以下の効果を適用する。●相手フィールドに「ムーンライト・トークン」（獣戦士族・闇・星４・攻／守２０００）１体を特殊召喚する。●対象のモンスターの攻撃力は相手フィールドのモンスターの数×５００アップする。②：自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。手札を１枚選んで墓地へ送り、デッキから「ムーンライト」モンスター１体を特殊召喚する。


○月光黄鼬(Lv4 闇)
獣戦士族/効果
攻800/守2000
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。①：このカードが手札・墓地に存在する場合、「月光黄鼬」以外の自分フィールドの「ムーンライト」カード１枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻し、このカードを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。②：このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ムーンライト」魔法・罠カード１枚を手札に加える。


○月光翠鳥(Lv4 闇)
獣戦士族/効果
攻1200/守1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。①：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。手札から「ムーンライト」カード１枚を墓地へ送り、自分はデッキから１枚ドローする。②：このカードが効果で墓地へ送られた場合、自分の墓地のモンスター及び除外されている自分のモンスターの中から、「月光翠鳥」以外のレベル４以下の「ムーンライト」モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。



　以前、尚志とのデュエルで見せた戦術はペンデュラムテーマの【メタルフォーゼ】とのハイブリッド構築だったが、少なくとも公開領域に見えたカードの中にはそのカテゴリのカードはない。それどころか精一や命慈でさえも知らないカードを揃え、より純粋な【ムーンライト】へと進化してきた。
　【ムーンライト】は戦闘能力に秀でており、もしこれが１ｖｓ１のデュエルであれば後攻ワンキルも可能だったほどだ。タッグデュエルでは全プレイヤーは最初のターンで攻撃できないというルールに救われたが、Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇの猛攻は止まらない。


「『月光黄鼬』が効果で墓地へ送られたことにより、デッキから『月光融合(ムーンライト・フュージョン)』を手札に加える。そして『月光翠鳥』が特殊召喚に成功したことで、手札の『月光彩雛』を墓地へ送り１枚ドロー。続けて我は『月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)』を通常召喚し、効果発動！墓地より復活せよ、『月光彩雛』。そして『月光彩雛』の効果発動！デッキの『月光紅狐』を墓地へ送り、このカードをそのモンスターと同名カードとして扱う。更に『月光白兎』のもう１つの効果を発動し、『ＵＳＢメモリー』と『アイテム・ボックス』を手札に戻す」
「クッ…！」
「さあ、ここからが本番だ。魔法カード『月光融合』発動！これにより『ムーンライト』融合モンスター１体を融合召喚する。ただし貴様のフィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合、デッキまたはエクストラデッキのモンスターも融合素材として使用できる！！」
「何だって！？」
「月明かりに舞う美しき野獣よ、黄色き光を徘徊する獣よ、月の引力により渦巻きて、新たなる力へと生まれ変われ。融合召喚！！現れよ、『月光舞豹姫』！！」


○月光白兎(Lv2 闇)
獣戦士族/効果
攻800/守800
①：このカードが召喚に成功した時、「月光白兎」以外の自分の墓地の「ムーンライト」モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。②：１ターンに１度、このカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」カードの数まで、相手フィールドの魔法・罠カードを対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。


○月光彩雛(Lv4 闇)
獣戦士族/効果
攻1400/守800
このカード名の②の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：１ターンに１度、デッキ・ＥＸデッキから「ムーンライト」モンスター１体を墓地へ送って発動できる。このターン、このカードを融合素材とする場合、墓地へ送ったそのモンスターの同名カードとして融合素材にできる。②：このカードが効果で墓地へ送られた場合、自分の墓地の「融合」１枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。③：このカードが除外された場合に発動できる。このターン、相手はバトルフェイズ中に効果を発動できない。


○月光紅狐(Lv4 闇)
獣戦士族/効果
攻1800/守600
①：このカードが効果で墓地へ送られた場合、相手フィールドの表側表示モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで０にする。②：自分フィールドの「ムーンライト」モンスターを対象とする魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、墓地のこのカードを除外して発動できる。その発動を無効にし、お互いのプレイヤーは１０００ＬＰ回復する。


○月光融合(通常魔法)
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。①：自分の手札・フィールドから「ムーンライト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター１体をＥＸデッキから融合召喚する。相手フィールドに、ＥＸデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合には自分のデッキ・ＥＸデッキの「ムーンライト」モンスターも１体まで融合素材とする事ができる。



　今までは『月光彩雛』の効果で『月光舞猫姫』のカード名をコピーすることで融合素材の代用にしてきたが、『月光融合』によって革命が起こった。デッキ・エクストラデッキから素材を調達できるのはいずれか１体までとはいえ、『月光舞豹姫』や『月光舞獅子姫』のように融合モンスターを融合素材とするモンスターの召喚も以前よりも格段に容易になり、デッキパワーも大幅に上昇した。


「墓地の『月光黄鼬』の効果発動。我のフィールドに在る『月光白兎』を手札に戻し、このカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚した黄鼬はフィールドから離れれば除外される……が、我はレベル４の獣戦士族モンスター、『月光黄鼬』と『月光彩雛』の２体でオーバーレイ・ネットワークを構築！エクシーズ召喚！！ランク４、『魁炎星王－ソウコ』！！」
「融合召喚を主体にした【ムーンライト】がエクシーズ召喚を……」
「ソウコの効果発動！このカードがエクシーズ召喚に成功したことで、デッキの永続魔法『炎舞－天璣』をセットし、発動。その効果処理により、デッキから『月光黒羊』を手札に加える」



○炎舞－天璣(永続魔法)(準制限カード)
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。①：このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル４以下の獣戦士族モンスター１体を手札に加える事ができる。②：このカードが魔法＆罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの獣戦士族モンスターの攻撃力は１００アップする。



○魁炎星王－ソウコ(ランク4 炎)
獣戦士族/エクシーズ/効果
攻2200/守1800
獣戦士族レベル４モンスター×２
①：このカードがＸ召喚に成功した時に発動できる。デッキから「炎舞」魔法・罠カード１枚をセットする。②：１ターンに１度、このカードのＸ素材を１つ取り除いて発動できる。獣戦士族以外のフィールドの全ての効果モンスターの効果は相手ターン終了時まで無効化される。③：このカードがフィールドから墓地へ送られた時、自分フィールドの表側表示の「炎舞」魔法・罠カード３枚を墓地へ送って発動できる。レベル４以下で同じ攻撃力の獣戦士族モンスター２体をデッキから守備表示で特殊召喚する。



　獣戦士族がメインのデッキには基本的に投入される『炎舞－天璣』を確実に発動できるようにするため、今のように獣戦士族のレベル４モンスターを２体以上展開すればソウコをエクシーズ召喚するのは正しい戦術だ。そしてそのカードでサーチした『月光黒羊』には、自らを手札から捨てることでデッキから『融合』をサーチする効果がある。連続で融合召喚を行うつもりだ。


「我はスケール５の『月光虎』をペンデュラムゾーンにセッティングし、ペンデュラム効果発動。１ターンに１度、墓地の『ムーンライト』１体を特殊召喚する。蘇れ、『月光黒羊』。そしてこれで仕上げだ。魔法カード『融合』を発動し、フィールドの『月光舞豹姫』『月光黒羊』、そして手札の『月光白兎』の３体で融合召喚を行う。漆黒の夜空で輝く月光の下に集いし獣どもよ、華麗なる舞によりその力を重ねよ！融合召喚！！現れろ百獣の王、『月光舞獅子姫』！！」


　Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇのターンはまだ１ターンしか経っていないが、早くもこのデッキの切り札『月光舞獅子姫』を融合召喚してきた。効果の対象にならず効果でも破壊できないため、基本的に戦闘による破壊が求められるが元々の攻撃力は３５００もある。ユニバース・シャトルなら返しのターンで攻撃力を底上げして破壊することもできただろうが、ソウコによって効果を無効化されている現状では、命慈に打つ手はない。
　一方で融合素材として墓地へ送られた『月光黒羊』の効果で、墓地の「ムーンライト」を蘇生できる『月光白兎』の回収も怠らなかった。加えてこれだけ動いても残りの手札は命慈と同様に３枚。次の手番となる６ターン目が回ってきても全く展開ができない、という懸念点もない状態で終えられるのは精一・命慈のタッグにどう影響が出るのか。


「我はカードを１枚伏せ、ターンを終了。さあて、貴様等の絶望は何色かな？」
ＨＩＲＯＴＯ→ＬＰ:８０００ 手札:２ デッキ:２７ Ｍゾーン:２ Ｍ＆Ｔゾーン:２ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:１


＊ＴＵＲＮ０３
(このデュエル、サポートに徹するつもりだったけど、そんな余裕はなさそうだ)
「僕のターン、ドロー！」


　デュエルが始まる前、精一は命慈の提案に乗る条件として「自分が徹頭徹尾サポート役になる。僕はこのデュエルでは封印竜を使わないつもりだ」と要求した。傍から見れば無茶とも思われるが、彼にはまだアレックスとの戦いが残されている。この場で今ある手札を全て明かすことで不利にならないため、といえば聞こえは良いが、精一の戦術は既に把握されている。
　このデュエルは尚志・裕人の救うためであると同時に、自分の弟がどれだけ成長したのかを見届けるためのデュエルなのだ。


「魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動！手札の『エンシェント・カモノハシ』を墓地へ送り、デッキからレベル１の『エンシェント・フェアリー』を特殊召喚する。続けて墓地へ送られた『エンシェント・カモノハシ』の効果を発動し、フィールドの『魁炎星王－ソウコ』を墓地へ送る。そして僕のライフを７００ポイント回復する」
「チッ…」
「本当は舞獅子姫をどうにかしたかったけどね。続けて魔法カード『祖先との約束』を発動！手札の『エンシェント・アンモナイト』を捨てて、デッキから『エンシェント・フェアリー』と『エンシェント・アノマロカリス』を手札に加える。そして『エンシェント・アノマロカリス』を通常召喚！」


　アノマロカリスには墓地のカード１枚を手札に戻す効果があり、加えてそれが「エンシェント」モンスターであればもう１度「エンシェント」モンスターを通常召喚できる。その効果で２体目の『エンシェント・フェアリー』を召喚し、効果を発動するための条件を満たした。


「『エンシェント・フェアリー』の効果発動！自分フィールドの『エンシェント・フェアリー』２体をリリースして、エクストラデッキから『エンシェント』モンスター１体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚する！降誕せよ、『エンシェント・フェアリーテイル・ドラゴン』！！」
「フェアリーテイル・ドラゴン……これが兄さんの、新しいシンクロモンスター」
「封印竜は使わないって言ったけど、本気を出さないとは言ってないからね。フェアリーテイル・ドラゴンの効果発動！１ターンに１度、相手フィールドの魔法・罠カード１枚を破壊し１０００ポイントのライフを回復する。僕が破壊するのは、そのセットカードだ」
「…ソウコが破壊されていれば、このカードも使えたんだがな」
「『月光輪廻舞踊』……。相変わらずヒヤヒヤさせられるな。でもこれで終わりじゃない！フェアリーテイル・ドラゴンのもう１つの効果発動！光属性モンスター『エンシェント・カモノハシ』を通常召喚する。この効果の発動に対して、相手はモンスターの効果を発動できない」


　精一はフィールドの『エンシェント・カモノハシ』と『エンシェント・アノマロカリス』を素材にレベル５のシンクロモンスター『エンシェント・トリロバイト』をシンクロ召喚した。このモンスターは自分のライフが相手より高ければ高いほど攻撃力を増すため、精一の戦術と相性が良い。


「『エンシェント・トリロバイト』の効果発動！発動中の魔法・罠カード１枚を除外する。僕が除外するのは、ペンデュラムゾーンの『月光虎』だ！」
「…なるほど。墓地の『月光黄鼬』の効果と組み合わせてペンデュラム効果を２回発動されるのを避けたか。頭の回る奴だ」
「『炎舞－天璣』は確かに強いカードだけど、発動後は攻撃力を上げる役割しか持たない。墓地から特殊召喚できるペンデュラム効果を持つ『月光虎』を除外した方が、この先の影響も大きくなると思ってね」


　短い間でそこまで考えていたのか、と命慈は関心する一方、焦りの様子を一切見せないＨｕａｎｇ Ｌｏｎｇに違和感を覚え始めた。【ムーンライト】の攻撃力ならば１万のライフであれば削り切れると踏んでいるのだろうか、それとも別の思惑があるのか。


「魔法カード『眠る魂』を発動！墓地の『エンシェント』カード５枚をデッキに戻し、２枚ドローし、手札を１枚捨てる。永続魔法『超古代生物の琥珀』を発動し、エンドフェイズにその効果が発動。僕のフィールドの『エンシェント』モンスター１体につき６００ポイントのライフを回復する。これでターンエンドだ」
ＳＥＩＩＣＨＩ→ＬＰ:１０９００ 手札:１ デッキ:３４ Ｍゾーン:２ Ｍ＆Ｔゾーン:１ Ｆゾーン:０ Ｐゾーン:０


　命慈のライフは１９０００、精一のライフも１０９００。『エンシェント・トリロバイト』の攻撃力は相手より２９００離れているため３４００になっている。次のターン以降もライフゲインの環境が整っている以上、鉄壁となったこのタッグを崩すのは至難の業だろう。しかしそれでも尚、Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇから余裕の表情は消えていない。


「さっき、『タッグデュエルを挑んだ時点で我の勝利が潰えた』と言ったな？」
「…そうだね。僕達のライフを合算したら３万近くあるし、並大抵の攻撃なら削り切れないはずだけど？」
「恐れ知らず……いや、無知ほど怖いものはないな。我が何の準備もなしに手駒を従えてきたとでも思ったか？」


　虚ろな眼を向ける尚志の肩にＨｕａｎｇ Ｌｏｎｇは手を乗せ、２人に不気味な笑みを向ける。ガワが双子の兄とはいえ弟のことを手駒としか見ていない彼に精一・命慈の両名が静かに怒りを覚えると同時に、Ｈｕａｎｇ Ｌｏｎｇの言う「準備」がどれ程のものか身構えた。以前の尚志の切り札『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』も相当強力なモンスターだったが、それすらも上回るカードがこの世界にあるとでもいうのだろうか。


「さあ見せてやれ、我が与えた力を！！」





＊Episode94初登場オリカ(掲示板投稿済)
○慈しむ命(装備魔法)
地属性Ｓモンスターにのみ装備可能。このカード名の③の効果は１ターンに１度しか使用できない。①：装備モンスターは自身以外のモンスターの効果を受けない。②：装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。相手フィールドのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、自分フィールドの地属性モンスターの数×２００ダウンする。③：装備モンスターがＳ・Ｂ召喚の素材となる事でフィールドから離れ、このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。ＥＸデッキからドラゴン族・地属性・レベル８以上のＳモンスター１体をＳ召喚扱いで特殊召喚する。


○ＰＴスパナ(Lv4 地)(テキスト修正版)
機械族/効果
攻1400/守800
このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。①：自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札または墓地から特殊召喚できる。②：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動する。デッキから「パワー・ツール」チューナー１体を手札に加える。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は地属性モンスターしか特殊召喚できない。③：このカードが墓地に存在する状態で、自分が装備魔法カードを発動した時に発動できる。墓地のこのカードをデッキに加えてシャッフルする。


○フルパワー・ツール・ドラグーン(グレード7 地)
機械族/ビヨンド/効果
攻3000/守2500
機械族・地属性・レベル７以上のＳモンスター×１
自分フィールドの「ハイパワー・ツール・ドラグーン」１体を除外することでもこのカードはＥＸデッキから特殊召喚できる。このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。①：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分のＬＰを回復する効果は、その倍の数値分だけＬＰを回復する効果になる。②：自分がＬＰを回復した場合に発動できる。デッキから魔法カード１枚を手札に加える。③：このカードが戦闘・効果で破壊された場合、自分の墓地からチューナー１体とチューナー以外のモンスター１体を除外して発動できる。そのモンスター２体のレベルの合計と同じレベルのＳモンスター１体を、Ｓ召喚扱いとしてＥＸデッキから特殊召喚する。


○ＳＰＴツイン・ドライバー(Lv3 地)
機械族/シンクロ/効果
攻300/守300
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。①：このカードが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地のチューナー１体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。②：自分の手札・フィールドの装備魔法カードを２枚まで墓地へ送って発動できる。墓地へ送ったカードの数だけ、このカードのレベルを上げる、または下げる。③：自分フィールドのこのカードを「パワー・ツール」ＳモンスターのＳ素材とする場合、このカードをチューナーとして扱う事ができる。


○ＳＰＴユニバース・シャトル(Lv8 地)(テキスト修正版)
機械族/シンクロ/効果
攻3000/守2000
チューナー２体＋チューナー以外の「パワー・ツール」モンスター１体
このカードはＳ召喚でのみＥＸデッキから特殊召喚できる。①：このカードの攻撃力は、自分フィールド・墓地の装備魔法カードの数×３００アップする。②：１ターンに１度、自分・相手の墓地のモンスター１体ずつ合計２体を対象として発動できる。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。その後、自分はこの効果で装備したモンスターの攻撃力の合計分のＬＰを回復する。③：Ｓ召喚したこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地のチューナー１体とチューナー以外の「パワー・ツール」モンスター１体ずつ合計２体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、墓地のこのカードをＥＸデッキに戻し、自分の墓地の装備魔法カード１枚を選んで手札に加える。


○エンシェント・フェアリーテイル・ドラゴン(Lv7 光)
ドラゴン族/シンクロ/効果
攻2100/守3000
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。①：このカードのカード名はフィールド・墓地に存在する限り「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」として扱う。②：自分メインフェイズに発動できる。光属性モンスター１体を召喚する。この効果の発動に対して、相手はモンスターの効果を発動できない。③：フィールドの魔法・罠カード１枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、自分は１０００ＬＰ回復する。