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HOME > 遊戯王SS一覧 > Episode84:望まぬ決戦

Episode84:望まぬ決戦 作:カズ

~現在の状況~
KUREHA→LP:3900 手札:4 デッキ:17 Mゾーン:2 M&Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:2


 V S


SOPHIA→LP:10700 手札:0 デッキ:24 Mゾーン:2 M&Tゾーン:5 Fゾーン:0 Pゾーン:2



 同時刻、メルクーリ家ではソフィアがこの場に戻ってきたことで慌ただしさが増していた。その余波はデッキ調整をしていたカレン達にも広がり、事の深刻さはさらに増していった。


「胡桃。早く紅葉先輩の所に行くわよ」
「うん。もしこの騒動の発端がソフィアさんなら、急がないと危ない!」




*TURN07
「私のターン、ドロー!」


 前のターン、ソフィアのエースモンスター『始原の創世姫パルテノン・エヴァ』によって築かれた5枚のカウンター罠による強固な要塞に紅葉は圧迫されそうになりながらも何とか耐えきった。しかし全てにおいて劣勢となった今、封印竜を頼りにこの鉄壁を打ち砕かなければ勝ち目はない。


「アブソリュート・デモンの効果発動!1ターンに1度、攻撃力3000以下の特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、1体につき600ポイントのダメージをそのコントローラーに与える!」
「カウンター罠『創世聖書-ノアの方舟』を発動。フィールドのカードを破壊する効果が発動した時、それを無効にして破壊するわ」
「でもアブソリュート・デモンは、カード効果では破壊されない!」


 破壊耐性効果のおかげでほぼ無敵の封印竜だが、先ほどソフィアが発動したカウンター罠『創世聖書-ノアの方舟』にはもう1つ、墓地で発動する効果がある。その効果を使われてしまえば否応なしに封印竜も消されてしまい、紅葉は間違いなく呪縛竜の贄になる。それを阻止するために次に取った策は、第一の壁であるパルテノン・エヴァを喰らうことだった。


「墓地のドミネイテッド・フュージョンの効果発動!このカードを除外し、相手フィールドのペンデュラムモンスター1体をアブソリュート・デモンの装備カードにするわ。そして、装備したモンスターの攻撃力は2000ポイントアップ!」
「……魔法・罠カードの効果を通告で止めることは不可能。パワーアップに特化したデュエルも、ここまで真っ直ぐだと面白いわ」
「そんだけ命懸けてるってことよ!」


 デュエル中に一度しか発動できないドミネイテッド・フュージョンの効果は儀式召喚や融合召喚主体のデッキを相手にすると腐ってしまう。というのも対象に取れるモンスターがシンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・ビヨンドの4種類に限定されているため、それ以外のデッキを相手にする場合、パルテノン・エヴァのように複合ペンデュラムモンスターでなければ発動すら許されないのだ。しかし紅葉はソフィアのデッキにある極僅かな弱点を見逃さず、それでも本来の攻撃的なデュエルスタンスで果敢に挑んでいた。


「バトル!アブソリュート・デモンで創世姫サラを攻撃!ビッグバン・フォース!!」
「……!サラがフィールドを離れたことで、デッキから創世姫リベカを墓地へ送るわ」
SOPHIA→LP:8000


 続くデモンズ・ルシファーでダイレクトアタックを狙うも、パルテノン・エヴァの効果でセットされたカウンター罠『攻撃の無力化』によってバトルフェイズを終了されてしまった。しかし封印竜の攻撃を受けた瞬間、ソフィアの心に「何か」が生まれようとしていた。それが何なのかをこのデュエル中に知りたいという思いが強まったが、今は紅葉に勝つことを優先すべきだと踏みとどまった。
 紅葉も死に物狂いで攻め続けているが、未だソフィアには追いつけない。かといって少しでも攻撃の手を緩めればソフィアのライフもあっという間に回復し、それこそ本当に手が付けられなくなる。


「モンスターを裏守備表示でセット。これでターンエンド!」
「エンドフェイズに、カウンター罠『創世聖書-禁断の果実』を発動!私のライフを4000ポイント回復するわ。そしてリベカのペンデュラム効果も発動し、自らを破壊。そしてデッキから『創世姫ディナ』を墓地へ送る」
SOPHIA→LP:12000 デッキ:21
KUREHA→LP:3900 手札:4 デッキ:16 Mゾーン:2 M&Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:2



*TURN08
(赤城紅葉が封印竜を召喚したこの辺りが、頃合いかしらね)
「私のターン、ドロー!」


 パルテノン・エヴァを失ったが、まだソフィアの方が圧倒的に優勢だ。この状況をキープしている内にトドメを刺すことが最も効率的だと判断した彼女は、より一層攻めに重きを置いた。


「スタンバイフェイズ開始時、墓地の『創世の儀式』の効果発動!エクストラデッキからリベカとナアマ、そして墓地のディナをデッキに戻すことで、3体の儀式モンスターをリリース無しで召喚できる。エヴァを奪われたお返しよ」
「相変わらずえげつないわね、その儀式魔法」
「褒め言葉として受け取っておくわ。降臨せよ、『創世姫ハガル』『創世姫サラ』『創世姫ラケル』!!」


 このデュエルで初めて3体同時の儀式召喚を使い、ハガルの効果で攻撃力5300のアブソリュート・デモンの攻撃力を2500に固定させた。サラの「カウンター罠をセットする」効果は墓地及びエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスターが合計3体以上存在しなければならず、その条件を満たせなかったことでセットできなかったが、それを抜きにしても「レベル8のモンスター」を降臨させたことで別の条件は達成された。そう、呪縛竜だ。


「レベル8の創世姫ハガル1体で、アナザー・ディメンションゲートを解放!!」
「……呪縛竜が来る!」





──────3000年の時を遡り、蘇りし禁断の力よ!新たな世界を創造する礎となれ!!──────




─────ビヨンド召喚!!降臨せよ、『呪縛竜Leviathan(レヴィアタン)』!!──────




 Leviathanとは、旧約聖書「ヨブ記」「詩編」「イザヤ書」などの作品に登場する海中の悪魔のことだ。創世記に記されている7日間の創造神話は有名だが、レヴィアタンはその中で5日目に生み出された存在だとされており、遊泳するだけで海が逆巻くほどの巨体と如何なる武器も通じないほどの固い鱗を持ち、口から炎を吐き、鼻から煙を吹く。元から持ち合わせていた凶暴かつ冷酷無情な性質はZオーラによって更に研磨され、その姿もより邪悪になっていた。
 しかし紅葉はこの時を待っていたようで、セットされたカードを得意げに発動した。


「この瞬間!永続罠『パンドラーズ・ボックス』を発動!相手がエクストラデッキから攻撃力2500以上のモンスターを特殊召喚した時、そのモンスターを裏守備表示にするわ。これで呪縛竜は封じた!」
「だけどハガルがフィールドを離れたことで、墓地の『創世聖書-禁断の果実』を再びセットする」


 ソフィアのエクストラデッキはペンデュラムモンスターを除けば1枚しかない。今や多くのデッキがその領域からモンスターを特殊召喚するのがメジャーとなっているが、【創世姫】が儀式召喚を得意戦術としているためメインデッキのみで自己完結しているのもあり、『パンドラーズ・ボックス』の①の効果を使う機会をこれまで与えなかった。しかし「本来の自分のカードではない」呪縛竜が穴となり、ソフィアの鉄壁の戦術を突き崩せる好機が生まれた。


(呪縛竜は戦闘に参加できない。だったらここは……)
「バトル。創世姫サラで封印竜アブソリュート・デモンに攻撃」
「うぐっ…!」
KUREHA→LP:3400


「続けて創世姫ラケルで、そのセットモンスターに攻撃」
「デモンズと名の付くモンスターが破壊されたことで、永続罠『パンドラーズ・ボックス』の効果が発動し、相手モンスターの攻撃力を次のターン終了時まで0にする!そして破壊された『デモンズ・リリス』の効果を使い…」
「カウンター罠『神の通告』を発動。モンスター効果の発動を無効にして破壊するわ」


 呪縛竜が裏守備表示にされたことでダメージを与える手段が減ってしまったが、デモンズ・リリスのサーチ効果は使わせまいと阻止した。次のターンでのペンデュラム召喚よりも先に出る杭を打たなければデュエルには勝てないという判断だが、これが後にどう響くのか。


「……私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
SOPHIA→LP:13300 手札:1 デッキ:23 Mゾーン:3 M&Tゾーン:3 Fゾーン:0 Pゾーン:1



*TURN09
「私のターン、ドロー!」
「この瞬間、私は墓地のカウンター罠『創世聖書-ノアの方舟』の効果発動!今から2ターン毎のスタンバイフェイズ開始時に、フィールドのカードを2枚墓地へ送る。パンドラーズ・ボックスとデモンズ・ルシファーには消えてもらうわ」
「…どうして封印竜を墓地へ送らなかったんですか?」
「これは呪縛竜決戦。封印竜は呪縛竜で倒さなければ意味が無いわ」


 呪縛竜決戦という土俵の上で戦っているソフィアにとって、ノアの方舟の効果で封印竜をフィールドから消し去る行為は「邪道」でしかなかった。だからこそ、ソフィアは互いに同じ条件で封印竜を討ち取ることを是としていたのだ。
 ターンを重ねる度にソフィアのセットカードは減っているが、それでもまだ3枚残されている。パルテノン・エヴァの効果でセットされたカードは残り1枚、そして残る2枚の内1枚は、ライフを回復する禁断の果実。このターンでは2枚の伏せカードを警戒しつつ最善策を取らなければ、今度こそ紅葉は終わるが……?


(今までのターンで通告、攻撃の無力化、ノアの方舟は使わせた。ハガルがいない今、モンスター効果もフル活用できる。だったら……)
「このターンに全て懸ける!まずはデモンズ・ソウルイーターを通常召喚し、効果発動!手札を1枚捨てて、デッキから『魔王デモンズ・レイ』と『デモンズ・オーガ』を手札に加える」


 ライフポイント13300を相手にすることを全く視野に入れていなかったわけではないが、自分のライフとの差や盤面の状況を考慮し、1ターンでも早く勝負を決めなければ先手を打たれて敗北するという算段がついたのだ。


「ペンデュラム召喚!最後に力を貸して。デモンズ・オーガ、魔王デモンズ・レイ!!」
「これ以上、好きにはさせない。カウンター罠『ペンデュラム・ホール』を発動!そのペンデュラム召喚を無効にし、それら全てをデッキに戻す」
「だけどデモンズ・レイのペンデュラム召喚は無効化されないから、デモンズ・オーガのみデッキに戻るわ」


 デモンズ・オーガのペンデュラム召喚を無効にされたことで、エクシーズ召喚とその先の『RUM-デモンズ・ラプソディ』の発動も見込めなくなった。しかしデモンズ・レイはペンデュラム召喚を無効化されなかったおかげで、葵とのデュエルでもワンキルに一役買った、封印竜に並ぶ紅葉のエースへと昇華した。


「レベル10の魔王デモンズ・レイ1体でアナザー・ディメンションゲートを解放!!怒れる魔神よ、飽くなき野望を以て極限の壁を突き破り、全宇宙を統べる皇となれ!ビヨンド召喚!!これが私の全力!『魔神デモンズ・レイ・グレート』!!」
「…何?赤城紅葉のデュエルから感じる、この熱さは……」


 アブソリュート・デモンが攻撃不能とはいえ、デモンズ・レイ・グレートの攻撃を受ければ5500のダメージが入る。封印竜と魔神、今の紅葉を象徴するこの2体が並び立つということは即ち、彼女が最大限の覚悟を持って戦場に脚をおろしているということなのだ。


「貴方に勝てば遊弥を救える。だから今、私はここにいるの!」
「だったら1つだけ聞くわ。貴方が藤堂遊弥を取り戻すことで再び彼が苦しむ結果になるとしても、その決意は変わらない?」
「えっ…?」


 お互いにビヨンドモンスターを召喚し、いよいよデュエルも大詰めへと差し掛かったが、ここでソフィアが遊弥に関連する新事実を言い放った。
 通常、Zオーラを抜き取られた人間が目覚めるためには他人が持つZオーラの力を半分だけ投与することが必要だ。しかしその力も元を辿れば呪縛竜のもの。遊弥はここ数ヶ月間その力に何度も苦しまされてきたが、彼の中に再びZオーラを注ぐということは、彼を同じ目に遭わせることと同義なのだ。


「そこまで考えた上で、貴方は彼を救いたいって言ったのかしら?!」
「……それでも、このデュエルに勝たなきゃ!失くしたものは取り戻せない!デモンズ・レイ・グレートで創世姫ラケルに攻撃!」
「っ…!」
SOPHIA→LP:7800


 自分の勝利が再び遊弥を苦しめることに繋がるが、呪縛竜決戦に負ければ自らの生命は絶たれ世界も終わる。どちらか一方を捨てることなど紅葉には出来ないが、この二律背反の中で揺らいでいるのもまた事実。そしてその迷いから抜け出すためには、このデュエルを全力で戦い抜いて勝利するしかないのだ。
 デモンズ・レイ・グレートの攻撃で5500の大ダメージを与えたが、まだこのターンで勝利するには至らない。しかし、ここまでの流れを総合的に見れば紅葉の方が与えたダメージ量は多い。着実に勝利へと近づいてはいるのだが、ソフィアのカウンター罠を駆使した戦法の方が僅差で上回っている。


「デモンズ・ソウルイーターで、創世姫サラを攻撃!」
「カウンター罠『創世聖書-天地創造』を発動!相手モンスターの攻撃宣言時、私の墓地から創世姫を5体まで選んで特殊召喚し、バトルフェイズを終了させるわ。ただしこのターンのエンドフェイズに、私はこの効果で特殊召喚したモンスターと同じ数だけ手札を捨てなければならない」
「だけどソフィアさんの手札はゼロ。捨てる手札がないからノーコストで……」


 ソフィアが特殊召喚したモンスターは先ほど破壊されたラケルと、墓地へ送られたペンデュラムモンスターのディナの2体。モンスターを4体揃えただけでなく紅葉の攻撃も塞き止め、一転して守りの態勢を取った。これ以上デュエルが長引けば紅葉も精神的に保たないが、遊弥のためなら彼女はどれだけ辛いことでも耐えられる覚悟を決め込んでいた。


「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
「この瞬間、カウンター罠『創世聖書-禁断の果実』を発動。ライフを4000ポイント回復し、フィールドの光属性モンスターの攻守を500アップさせるわ」
SOPHIA→LP:11800
KUREHA→LP:3400 手札:4 デッキ:13 Mゾーン:3 M&Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:2



*TURN10
「私のターン、ドロー!」


 紅葉とは3倍以上の差をつけてアドバンテージを得ているが、永遠に続く命はない。パンドラーズ・ボックスの効果は前のターンで切れているが、デモンズ・レイ・グレートによって攻守を300にされているLeviathanの効果を使っても意味を成さない。
 裏守備表示にされた呪縛竜を反転召喚した刹那、紅葉が再び仕掛けてきた。


「速攻魔法『ペンタグラム・ロック』を発動!これでソフィアさんのモンスターは全て裏守備表示になり、次の相手ターン終了時まで表示形式を変更できない!」
「…あくまで呪縛竜を封じ込めるつもりね」
「それだけじゃない!デモンズ・ゴブリンのペンデュラム効果発動!相手モンスターの表示形式が変更された時、Leviathanの攻守を500ダウンさせて、ソフィアさんに500ダメージを与える!」
SOPHIA→LP:11300


 強制的に表示形式を変更させることでデモンズ・ゴブリンのペンデュラム効果を発動させる条件を達成しただけでなく、合計で4ターンもの間、呪縛竜を封じ込めることに成功した。創世の儀式による儀式召喚も行えない今、ソフィアには呪縛竜を使って相手モンスターを弱体化させる以外に選択肢がなくなったのだが、その唯一の逃げ道さえも完封されてしまい、為す術なしだった。
 ソフィアがターンエンドを宣言したその時、駆けつけたカレンと胡桃が2人のいる玄関前に辿り着いた。


「2人とも、どうして…?」
「紅葉先輩が心配だったからに決まっているじゃないですか!」
「っていうか、相手のライフポイントが1万超えって……カレン、これどういうこと?!」
「私に聞かないでよ!」


 2週間とはいえ共に切磋琢磨してきた2人の後輩に心配をかけさせてしまった紅葉だが、これほど危機的な状況にも関わらず笑みがこぼれた。2人のやりとりを面白がったつもりは一切無く、今までの自分に対して笑っていたのだ。


「どうしたんですか?急に笑ったりなんかして……」
「…2人の顔を見たら、気付けたの。さっきまでの私が、遊弥を取り戻すことしか考えていなかった大馬鹿野郎だって」
「「紅葉先輩……」」
「私がこのザマじゃあ、覚醒竜にもそっぽ向かれて当然だよね。だけど、もう大丈夫!」


 カレンと胡桃のおかげで真に守るべきものを思い出し、改めてデュエルに対して全力で向き合う決意を固めることができた。そのことを胸の内で感謝しつつも、彼女の紅に輝く瞳には倒すべき標的をしっかりと見据えていた。



*TURN11
(カレンちゃん、胡桃ちゃん。今から瞬き禁止だからね!)
「私のターン、ドロー!」
「スタンバイフェイズ開始時、墓地のノアの方舟の効果発動!デモンズ・レイ・グレートとペンデュラムゾーンのデモンズ・ゴブリンを墓地へ送るわ」


 墓地にあるカウンター罠『創世聖書-ノアの方舟』の「墓地へ送る効果」はあと2回続く。紅葉の全身全霊を込めた魔神も大洪水の前に沈み、紅葉に残されたモンスターは封印竜のみ。これ以上の長期戦は紅葉にとって不利だからこそ、ソフィアのセットカードが1枚もないこのターンで決めるしかないのだ。
 このデュエルでの覚醒竜降臨は果たせなかったが、自分のやるべきことをこのターンで見出した紅葉は決死の思いで最後の切り札へと繋げた。


「私は、レベル8のアブソリュート・デモン1体でアナザー・ディメンションゲートを解放!!紅蓮の息吹と紅き翼で全てを焼き尽くせ!ビヨンド召喚!グレード8『紅蓮魔竜ビッグバーン・デモン』!!」


 背水の陣に立たされた彼女が最後に呼んだのは、真紅に映える一頭の巨竜。紅葉がEオーラによって初めてデュエル中に創造したカードであり、アブソリュート・デモンが掴み取った、覚醒竜とは異なる未来の姿。


「ここで、アブソリュート・デモンを進化させた…?!」
「ビッグバーン・デモンの効果発動!アブソリュート・デモンを素材としてビヨンド召喚に成功したことで、エクストラデッキから3体のシンクロモンスターを墓地へ送る。このターン中、この効果で墓地へ送った全てのモンスター効果をビッグバーン・デモンは獲得する!」
「っ…!」


 紅葉が墓地へ送ったシンクロモンスターは『格闘王デモンズ・バトラー』『酔拳魔女デモンズ・デビルガール』『薙刀の覇者デモンズ・ブレードマスター』の3枚。バトラーの全体攻撃、デビルガールのバーンダメージ、ブレードマスターの貫通ダメージに加えてビッグバーン・デモンの攻撃力3500。ソフィアのライフが10000ポイントを超えているとしても、この局面では最高のフィニッシャーだ。


「ビッグバーン・デモンが獲得した、デモンズ・ブレードマスターの効果発動!デッキから永続魔法『デモンズ・ダークハウリング』を手札に加え、攻撃力を300ポイントアップするわ。更に獲得したデビルガールの効果で、このカードの攻撃力を400ポイントアップ。これで攻撃力は4200!」


 このターン中に手札に加えたダークハウリングは発動できないが、今までにない程に紅葉とビッグバーン・デモンの親和性が高まっていた。この時、ソフィアは自分が感じていた「何か」の正体に漸く気付くことができた。最初は紅葉の放つEオーラの力によるものかと思ったが、それは間違いだった。自分のデュエルに真っ直ぐ正面から向き合い、そして激しくぶつかり、ソフィアの中に湧き上がった感情。ソフィアは、生まれて初めて「闘志」を宿したのだ。


(これが、赤城紅葉の力……)
「バトル!ビッグバーン・デモンで、裏守備表示の呪縛竜Leviathanに攻撃!煉獄のバーニング・スパイラル!!」


 ビッグバーン・デモンは攻撃する時に自らの攻撃力を1000ポイント上昇させる効果が備わっており、獲得した効果を合わせて攻撃力は5200。対してLeviathanの守備力はデモンズ・レイ・グレートとゴブリンのペンデュラム効果によって0。いくら攻撃力を底上げしたところで呪縛竜は封印竜との戦闘以外では破壊されないが、ビッグバーン・デモンには「カード名をB素材としたモンスターと同じにする」効果外テキストが記されている。従ってビッグバーン・デモンは呪縛竜を破壊し、貫通効果で5200の特大ダメージを与えたが、全力を以て戦うと誓った紅葉はこれだけで終わらせなかった。


「ビッグバーン・デモンが獲得したデビルガールの効果発動!このカードの攻撃力の半分、つまり2100ポイントのダメージを与えるわ!!」
「……ふふっ」
SOPHIA→LP:4000


 ビッグバーン・デモンの2回目の攻撃によって1万以上もあったソフィアのライフを遂に削りきり、呪縛竜決戦における初勝利を齎したのだった。
 カレンと胡桃が安堵するも束の間、緊張の糸が途切れた紅葉は仰向けで倒れ、大きく息を吐いた。命懸けの戦いをしたのだから当然といえるが、そんな彼女にソフィアが手を差し伸べてきた。ソフィアもまた、この戦いで自分の成すべき事を見出せたのだ。


「…約束通り、藤堂遊弥の意識を元に戻す手助けはしてあげる。あと、これは宿命とか関係なく、1人のデュエリストとして言わなきゃいけないことだから、聞いてくれる?」
「は、はい……」
「貴方とのデュエル、とても楽しかった。それと、Zオーラを抜かれた藤堂遊弥を目覚めさせるには別の方法があるの。ただしそのためには、Eオーラを持つ貴方の力が必要になる」


 紅葉の持つEオーラの半分を遊弥の中に流し込むことでもZオーラを失った遊弥を目覚めさせることは可能ではある。そのことをエースのデータベースに一度アクセスしたソフィアは記憶していた。そしてそのデータの中には、これから起こる第二次アストラル大戦や覚醒竜降臨後の内容まで細かく羅列されており、その全容を閲覧したソフィアは彼が想像以上に冷血であることに気付き、こうして紅葉に助言を与えていた。


「それから、第二次アストラル大戦は『32時間で終わる』。いつか見たデータにそう書いてあったわ」
「1日とちょっとで?!っていうか、どうしてそんな大事な情報を……」
「…こんなこと言っちゃうのはデュエリスト失格だと思うんだけど、私、本当は呪縛竜決戦なんて望んでない。私の手でメルクーリ家を再興させることが出来れば、それで幸せなの」
「再興、ですか?」


 転生してから間もなくのこと。エースから「死に際に願ったことを1つだけ叶えてやる」と告げられた呪縛竜使いは、全員が神妙な面持ちになるほどの衝撃を受けた。彼らの生涯の幕引きはあまりにも早く、「生きている内にやりたかったこと」があったからこそ、魂が此岸と彼岸の間を彷徨っていたのだ。ソフィアもまた例外ではなく、「もう一度メルクーリ家に尽力したい」という願いを叶えるためにこのデュエルに挑んでいた。


「ここに来られてよかった。それじゃあ、また」




 アレックス然りソフィア然り、呪縛竜使いの中にもこの戦いを望んでいない人物はいた。しかしエースはそんな彼らの気持ちを汲み取ろうとせず、自分の目的のために呪縛竜を与え、いいように利用しているだけにすぎなかった。唯一そのことに気付いたソフィアも、Leviathanを手にした今となってはもう手遅れ。
 そして戦いは、8月15日に開戦する第二次アストラル大戦によって更に激化していくこととなる……。





※あとがき
相当長引いてしまいましたが、Episode52から続いた第3章が終了し、次回からいよいよ第4章「激闘!第二次アストラル大戦」に突入……と行きたいところですが、呪縛竜使いが使用したオリジナルカテゴリである【宇宙英雄】【太平洋兵】【幻想奇術師】【異界亡霊】【創世姫】及び「呪縛竜」の紹介コーナーを設けます(未投稿オリカ紹介⑥~⑩)。そして「IFシリーズ(part2)」を投稿した後、第4章がスタートになります。2018年に入ってから新たなssが数多く生まれる中、「準生きた化石」になりつつあるこのssですが(←シーラカンスに謝れ)自分のペースで更新を続けていきます。
そういえば前話を書いた後で気付いたんですが、通告で融合召喚を止められないんでしたね……(※本編では「矛盾が起こらない範囲で」修正を入れてあります。故に通告の発動タイミングが「何故ここで?」と思うかもしれませんが、ご了承ください)。←このss何年書いているんだこのドクズ!



第4章「激闘!第二次アストラル大戦」
~あらすじ~
呪縛竜使いとのデュエルで1度しか白星を挙げられずに迎えた8月15日の夜、エース達は第二次アストラル大戦の開戦を宣言した。それと同時に、時間の進みが4倍も速くなったのだ。1日が6時間で終了するこの状況で残された期間は、あと32時間。その間に全員が覚醒竜降臨を果たさなければ、世界はエースの手に堕ちてしまう。果たして紅葉達は、この地獄を生き残ることが出来るのか。そして、遊弥は……?!
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ター坊
土壇場でカード創造は見せ場ですね!
負け続きですがようやく一勝。しかし、時間は32時間、何処まで戦えるのか?最終決戦編、楽しみにしてます。 (2018-05-30 17:28)
とうかりん
ター坊さん
コメントありがとうございます。このデュエルは紅葉にもソフィアにも、次に進む一歩を踏み出せる切っ掛けとなりました。そしていよいよ第二次アストラル大戦に突入し、物語もいよいよ大詰めです。1秒たりとも無駄にできない戦いとなりますが、お楽しみに。 (2018-05-30 19:54)

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112 Episode42:涅槃の境地へ 1258 4 2016-07-02 -
62 Episode43:トワノキズナ 1181 3 2016-07-23 -
127 Episode44:銀河と宇宙 1369 3 2016-08-09 -
108 Episode45:銀河眼vs宇宙眼 1455 0 2016-08-20 -
50 Episode46:絶望の凱旋 1014 0 2016-08-24 -
76 Episode47:刻まれた記憶の欠片 1093 1 2016-09-06 -
108 Episode48:希望の行方 1322 0 2016-09-13 -
74 Episode49:悪夢の決戦前夜 1035 0 2016-10-03 -
62 Episode50:創世の星屑竜 1004 0 2016-10-25 -
109 Episode51:託された未来 1119 0 2016-10-30 -
108 番外編03:遊弥と花奈の... 1170 2 2016-11-02 -
93 未投稿オリカ紹介①(使用者:藤堂遊弥) 1184 0 2016-11-09 -
94 未投稿オリカ紹介②(使用者:赤城紅葉) 1116 0 2016-11-26 -
82 未投稿オリカ紹介③(使用者:茨木花奈) 1129 0 2016-12-08 -
46 未投稿オリカ紹介④(使用者:霧野命慈) 976 0 2016-12-20 -
49 未投稿オリカ紹介⑤(使用者:霧野精一) 1051 0 2016-12-30 -
78 Episode52:極寒の夏 1103 2 2017-01-01 -
140 Episode53:闇の邂逅 1208 2 2017-01-07 -
68 Episode54:呪縛竜復活 1026 0 2017-01-11 -
112 Episode55:届かぬ声で... 990 2 2017-01-15 -
125 Episode56:禁忌の目覚め 1069 5 2017-01-19 -
109 Episode57:共鳴する四龍 1073 4 2017-01-25 -
60 Episode58:本当の気持ち 1194 3 2017-01-30 -
62 Episode59:真実への鍵 1001 2 2017-02-08 -
66 IF01:バレンタインデー 1191 6 2017-02-11 -
56 Episode60:エレンとアレックス 1072 3 2017-02-16 -
156 ルール改訂と今後の進行について 1302 2 2017-02-18 -
54 Episode61:想いの証 996 5 2017-02-21 -
73 Episode62:茨の道標 1117 5 2017-02-27 -
119 Episode63:光と闇の花 1006 3 2017-03-20 -
74 Episode64:渇望と葛藤 1046 2 2017-03-23 -
70 Episode65:麗しき孤月 1006 2 2017-03-29 -
135 Episode66:月夜のイリュージョン 1340 2 2017-04-21 -
146 Episode67:常闇に消える月華 1325 1 2017-05-05 -
87 Episode68:模索者たち 1013 4 2017-07-22 -
102 Episode69:純黒の反逆者 1131 0 2017-07-27 -
105 Episode70:紅と黒の禁呪 1027 2 2017-08-07 -
84 Episode71:希望は往く 1153 3 2017-08-17 -
135 Episode72:リリーの過去 1153 2 2017-08-24 -
68 Episode73:異次元の亡霊 1098 2 2017-09-13 -
108 Episode74:覚醒の鼓動 1285 3 2017-09-22 -
119 Episode75:挑戦者の儀 1060 0 2017-10-05 -
123 Episode76:神速の決闘 1144 2 2017-11-14 -
52 Episode77:動き出す陰謀 832 2 2018-01-23 -
67 Episode78:最期の兄弟喧嘩 846 2 2018-03-03 -
138 Episode79:黄龍の手向け 922 2 2018-03-28 -
106 Episode80:堕天使の罠 896 0 2018-04-14 -
97 Episode81:断罪する魔神 882 0 2018-04-19 -
109 Episode82:姫君のバイブル 978 1 2018-05-07 -
116 Episode83:開かれたページ 1014 0 2018-05-11 -
153 Episode84:望まぬ決戦 1014 2 2018-05-29 -
68 未投稿オリカ紹介⑥(使用者:古城奏多) 875 0 2018-05-31 -
121 未投稿オリカ紹介⑦(使用者:清水ルーナ) 1108 0 2018-06-02 -
133 未投稿オリカ紹介⑧(使用者:アレックス) 996 0 2018-06-04 -
51 未投稿オリカ紹介⑨(使用者:リリー) 815 0 2018-06-06 -
185 未投稿オリカ紹介⑩(使用者:ソフィア) 1199 0 2018-06-06 -
110 呪縛竜のおさらい 829 0 2018-06-06 -
103 IF02:星 遊未 803 0 2018-06-09 -
70 Episode85:新たなる激闘へ 982 0 2018-07-10 -
103 Episode86:愛するもの 866 0 2018-07-27 -
68 Episode87:涅槃を超えた先 861 0 2018-08-10 -
113 Episode88:終焉の弧光 1244 0 2018-09-12 -
59 【重要】投稿再開のお知らせ 682 3 2022-06-04 -
40 Episode89:四竜が紡いだ奇跡 434 3 2022-06-25 -
44 Episode90:光臨者、天導レイン 434 2 2022-07-07 -
46 Episode91:舞い堕ちた天使 387 2 2022-09-03 -
47 Episode92:紅の決意 456 0 2022-09-19 -
36 Episode93:凛々しい黒羽 430 0 2022-10-04 -
51 Episode94:最強の双子 438 0 2022-10-24 -
32 Episode95:最凶の龍 451 0 2022-12-29 -
38 Episode96:神の恵 431 0 2023-01-18 -
51 Episode97:先導者vs時空竜 490 0 2023-01-22 -
30 Episode98:トワノチカイ 418 0 2023-02-14 -
37 Episode99:遊弥、復活 393 0 2023-03-12 -
33 Episode100:目覚めし星の光 396 0 2023-03-26 -
36 Episode101:決戦・冀望郷 349 0 2023-05-03 -
22 Episode102:最弱の意地 301 0 2023-06-28 -
15 Episode103:永遠の友達 191 0 2023-11-26 -

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