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HOME > 遊戯王SS一覧 > Episode86:愛するもの

Episode86:愛するもの 作:カズ

 日本時間の8月17日午前0時。世界のリセットが実行されるまでもう24時間しか残されていないが、その間に代わる代わる仮眠を取りつつ、必要な情報の再確認などを行い、万全の状態で大戦を乗り切るための準備は完了していた。


「世界地図に7つのレーダーが浮かんでいる。オーバーハンドレッドナンバーズの所有者が、その場所にいるはずだ」
「ちょっと待て、4箇所も日本にあるじゃねーか!」


 世界地図には日本だけでも4箇所、ロシア、ギリシャ、フランスに1箇所ずつレーダーに反応が示されていた。ロシアにはトワ、フランスには翼、ギリシャには葵、日本の3箇所に固まっている関東エリアにはほぼ確実にX・Y・Zの3人が待機していると推察したが、関西に1箇所だけ存在するものは誰なのか分からず、そこにはレインが出向くことになった。


「日本のオーバーハンドレッドナンバーズは、私達に任せてもいい?」
「希ちゃん?それに皆も!」


 3箇所に集中しているエリアに希、うらら、小町、カレン、胡桃の5人が出陣を希望した。希は奴等が欲しているシャイニングナンバーズを守り抜きホープ・ゼアルを真の姿へと目覚めさせるため、うらら達は洗脳されていた時の借りを返すために、これまで培ってきた全てを懸けているのだ。


「凛ちゃんは、お兄さんとのデュエルに全力でやってきて」
「でも私が勝ったら、お兄ちゃんが消えちゃう……」
「お兄さんの意志を無駄にするの?」


 どちらかが一方でも消滅する結末は生涯を共にした兄妹にとって胸が張り裂けそうなほど哀しいものだが、このまま決闘を放棄しても世界はエースの手に渡ってしまう。兄妹愛と世界守護、両者を天秤にかけてどちらに傾くかは明白だが、先ほどのメールを見た凛は迷っていた。しかし翼もそのことを理解したうえで妹に新たな力を託してくれた。希の言うように、今の凛には兄の繋いだ「意志」を継ぎ、それに応える義務がある。


「意志ってのはね、人から人へ受け継がれていくものなんだよ?」
「…うららが、珍しくまともなことを……」
「んもー!それってどーゆー意味?!」


 世界の運命が懸かっていることを忘れさせるような、いつも通りの親友達のやり取りを見て凛の心にあった重石が軽くなったような気分になった。今の凛に出来ることを全力でやり抜くため、希達からもらったものを胸に秘め、凛は巣立っていった。


(もしかして、ユートさんが言っていたことって……)
「…行ってくるよ、皆!」
「「「うん!」」」



 凛の旅立ちを横目で確認した花奈は、ユーリのもとへ歩み寄った。


「あの、ユーリさん」
「ん?」
「…やはりこの2枚は、貴方に返しますわ」
「僕が貸すって言ったんだから、そのまま持っていてもよかったのに」
「気持ちは嬉しいのですが、私は、自分の力でルーナさんに勝ちたいのです。でなければ、私自身に決着をつけられませんわ」


 花奈の実力は戦ったユーリが一番よく分かっていた。その彼女に超融合というジョーカーを持たせれば鬼に金棒なのだが、その力は花奈が今まで積み上げてきたものではない。呪縛竜決戦でも自分の実力で勇敢に戦い、ルーナを感服させるほどにまで強くなっていても勝利には及ばなかった。だからこそ、あと少しで掴める未来を自分だけの力で勝ち取りたかったのだ。
 ユーリも彼女の熱意に根負けし、その2枚を懐にしまい込んだ。エースが創り上げた超融合を使うのは彼にとっても耐えられなかったのだろう。


「ユート、ユーゴ。これからのこと、分かっているね?」
「…ああ」
「待ってろよ、遊矢…!」


 ユート・ユーゴ・ユーリの3人に別途で届いたエースのメールには、「遊矢に組み込んだ例のプログラムを作動させた。彼を取り戻したくば私のアジトに戻ってこい」とだけ記されていた。必要ないと処分したはずの遊矢と無理矢理戦わせるのは裏切り者への制裁なのだが、3人にとっては彼を取り戻せるまたとない機会でもあった。ずっと温存していた三種の色龍をこのデュエルで使えば心に届かせることができる。そう信じて、繋がった絆が本物であることを伝えるため、ユート達は沈黙を貫きながら目的を果たしに飛んだのだった。



「精一くん、早速だけどエレンちゃんの所に行ってくる」
「行くのはいいけど、どこにいるか分かるの?」
「アレックスさんとデュエルした場所。きっと、あそこよ」


 オーバーハンドレッドナンバーズを持たないエレンの居場所はレーダーでも特定できなかったが、洗脳される前のエレンにとっての思い出の場所──転生したアレックスとの再開を果たしデュエルを交わした海岸にいると彩は踏んだが、彼女が本当にその場所にいるのかは定かではなかった。それでも今は、この僅かな可能性に賭ける他なかったのだ。


「またね、精一くん」
「絶対に……帰ってきて。約束だよ」
「うん」


 今世の別れになるやもしれない大激戦の中、「バイバイ」ではなく「またね」と言葉を選んだのも、必ず自分が戻ってくるという誓いを立てていたからだ。いつか交わした約束を無下にしないため、彩は戦場へと発った。





「エレンちゃん」
「彩先輩、デスカ……」


 彩の予想は的中し、さざ波の響き渡る海岸線に一人佇むエレンを見つけたが、そんな彼女の横顔はこの世を憂いているようだった。彼女は常に笑顔で周囲に暖かさを振りまいていたが、それは最愛の人を早くに亡くした悲しみを必死に押し殺し、誰にも心配をさせまいと演じていた表面上の姿だったのだ。


「夢みたいデシタ。アレックスがまだボクのことを好きだと言ってくれたうえに、ボクの望む未来を約束してくれたんデス」
「エレンちゃん、アレックスさんはエース達に利用されているの!だからきっと、エレンちゃんの考えている未来もきっと来ない!」
「ボクとアレックスの世界を壊したいんデスカ…?」
「そうじゃない。エレンちゃんを、囚われた夢から覚ましてあげたいだけ」


 今のエレンには、彩の言葉は決して届かないどころか、その虚ろな眼に映るこの世界の全てが幻に見えていた。そんな彼女の目を覚まさせるためにはデュエルに勝利するしか道はないと覚悟を決め、ディスクを向けた。



「「デュエル!!」」


AYA→LP:8000 手札:5 デッキ:35 Mゾーン:0 M&Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0


 V S


ELLEN→LP:8000 手札:5 デッキ:35 Mゾーン:0 M&Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN01
(エレンちゃんのデッキがシンクロ召喚に滅法強いことは分かってる。なら……)
「私が先攻でいくわ!スケール2の『慧剣の魔術師』とスケール5の『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティングして、手札から魔法カード『デュエリスト・アドベント』を発動!デッキから『星霜のペンデュラムグラフ』を手札に加え、そのまま発動するわ」


○デュエリスト・アドベント(通常魔法)
「デュエリスト・アドベント」は1ターンに1枚しか発動できない。①:自分または相手のPゾーンにカードが存在する場合に発動できる。デッキから「ペンデュラム」Pモンスター1体または「ペンデュラム」魔法・罠カード1枚を手札に加える。



「慧眼の魔術師のペンデュラム効果発動!自らを破壊し、デッキからスケール8の『黒牙の魔術師』をペンデュラムゾーンに置くわ。そしてペンデュラムグラフの効果で、デッキから『調弦の魔術師』を手札に」
「……相変わらずよく回るデッキデスネ」
「目まで回さないように気を付けてよ?慧剣の魔術師のペンデュラム効果発動!このカードを破壊して、エクストラデッキの表側表示の『慧眼の魔術師』を再びペンデュラムゾーンに置くわ」


 慧剣の魔術師を初めて使ったのは精一とのタッグデュエル以来だが、その時はレベル変動効果により『涅槃の超魔導剣士』のシンクロ素材として使用されただけであり、ペンデュラム効果の発動までは行なわなかった。ターン1回かつ限定的な条件とはいえ、『慧眼の魔術師』の効果を1ターンで2度も使用できる効果に加え、手札のペンデュラムモンスターを公開することでそのスケール分だけPスケールを上昇させる2つの効果を持っている。専ら慧眼をリクルートする効果がメインだが、彼女のエースモンスターの『涅槃の超魔導剣士』をペンデュラム召喚するために後者の効果も役立つのだ。
 再び慧眼の魔術師のペンデュラム効果を活用し、デッキからスケール2の『賤竜の魔術師』をセッティングし、レベル3から7までのモンスターをペンデュラム召喚するための態勢を整えた。


「双剣に導かれし者たちよ、想いに応えて!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから『慧剣の魔術師』『慧眼の魔術師』、手札から『調弦の魔術師』!!」


 調弦と虹彩、今の彼女のデッキの要であるカードは改訂によって制限カードにまで調整されてしまった。デッキを改良し、デュエリスト・アドベントやペンデュラムグラフのようなサーチ要因を以前より揃えていた彩のデッキにとって大きな問題にはならなかったとはいえ、これまでとは動かし方を変えなければならないのも事実だ。
 調弦の効果でデッキから紫毒の魔術師を特殊召喚し、それらを素材としてランク4の『星刻の魔術師』をエクシーズ召喚した。


「星刻の魔術師の効果発動!オーバーレイユニットを1つ使って、デッキから魔法使い族の闇属性モンスター『EMドクロバット・ジョーカー』を手札に加えるわ。そして慧剣の魔術師のモンスター効果発動!私のペンデュラムゾーンのカード1枚を破壊して、デッキからスケール8の『虹彩の魔術師』をペンデュラムゾーンに置く。そして破壊された黒牙の魔術師の効果で、墓地の『調弦の魔術師』を守備表示で特殊召喚するわ!」


 魔術師の相乗効果で1ターン目とは思えないほどの大量展開を披露したが、融合・シンクロ・ビヨンド召喚までは見せていない。エレンの【機皇】を相手に戦うならばシンクロ召喚は迂闊に使えないと踏んでのことだが、涅槃の超魔導剣士を切り札とする彩がそれ抜きに戦うのは危険な賭けともいえる。


「私はこれでターンエンドよ!」
AYA→LP:8000 手札:4 デッキ:30 Mゾーン:4 M&Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:2




*TURN02
(彩先輩、ボクはアレックスとずっと一緒に居られる世界を守るため、貴女を倒しマス)
「ボクのターン、ドロー!」


 「最愛の人がいないこの世界など存在する価値もない。ならば自分の望む世界を自分で創り上げてしまえばいい」。そんな幻想の中にいるエレンはこの現実を都合のいいものに塗り替えるために、彩に牙を向けた。


「ボクは手札から『おとぼけオポッサム』を召喚!」
「……その効果で自らを破壊して、手札から機皇帝を呼ぶお決まりの戦法かしら?」
「甘いデス。ボクは手札の『真竜皇リトスアジムD(ディザスター)』の効果発動!フィールドのオポッサムと手札の『機皇兵ワイゼル・アイン』を破壊して、このカードを特殊召喚シマス!」


○真竜皇リトスアジムD(Lv9 地)
幻竜族/効果
攻2500/守2300
「真竜皇リトスアジムD」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分メインフェイズに発動できる。このカード以外の手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、地属性モンスターを含むモンスター2体を破壊し、このカードを手札から特殊召喚し、地属性モンスター2体を破壊した場合、相手のエクストラデッキを確認してその中からモンスターを3種類まで選んで除外できる。②:このカードが効果で破壊された場合に発動できる。自分の墓地から地属性以外の幻竜族モンスター1体を選んで特殊召喚する。


○機皇帝グランエル∞(Lv1 地)
機械族/効果
攻0/守0
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが効果によって破壊され墓地へ送られた時のみ手札から特殊召喚できる。このカードの攻撃力・守備力は自分のライフポイントの半分の数値分アップする。1ターンに1度、相手のシンクロモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードの攻撃力は、この効果で装備したモンスターの攻撃力分アップする。また、自分のメインフェイズ時に、このカードの効果で装備したモンスター1体を自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚できる。



「嘘?!エレンちゃんのデッキにリトスアジムなんか……」
「自分フィールドのモンスターが効果で破壊されたことで手札の『機皇帝グランエル∞』の効果も発動し、グランエルも特殊召喚デス!」


 胸部に「∞」の記号をあしらった橙色の巨大なロボットに加え、見るもの全てを圧巻させる一頭の巨竜がエレンのフィールドに降り立った。2体とも今まで彼女が使ってこなかったモンスターであり、エース達によってデッキを改造されたことは一目瞭然だった。
 彼女がリトスアジムの特殊召喚によって破壊した地属性のモンスターは1体のみだったため、彩のエクストラデッキが除外されることはなかったが、それを差し引いて考えても後攻1ターン目から大型モンスターを2体も召喚されたのはかなりの痛手だ。


「バトル!リトスアジムDで星刻の魔術師を攻撃デス!」
「くっ…!やっぱりそう来るわよね……」
AYA→LP:7900


 星刻の魔術師が持つ2つ目の効果を確実に発動させるためには、ペンデュラムモンスターを攻撃対象に選択させる必要がある。しかしペンデュラムの性質を持っていない星刻が攻撃された場合、墓地肥やしの役割を果たせぬまま破壊されてしまう。
 続くグランエルで攻撃表示の慧剣の魔術師を攻撃し、このターンだけでも1600のダメージを与えて彩を突き放した。


「ボクはカードを1枚セットして、ターンエンドデス」
ELLEN→LP:8000 手札:1 デッキ:34 Mゾーン:2 M&Tゾーン:1 Fゾーン:0 Pゾーン:0



*TURN03
「私のターン、ドロー!」


 エレンの扱う【機皇】はシンクロ召喚に対しての強力なメタデッキだ。そのことを誰よりも理解しているはずだったのだが、彩は前のターンで破壊されなかった調弦と慧眼を素材としてシンクロモンスターの『覚醒の魔導剣士』を呼び出した。


「魔術師と名の付いたペンデュラムモンスターを素材にしたことで、墓地の魔法カード『デュエリスト・アドベント』を手札に戻すわ」
「Why?覚醒の魔導剣士はシンクロモンスターデス。それを召喚すればみすみす機皇帝の餌食になることなんて……」
「分かってる。だけど相手を恐れて全力を出し切らないのって、失礼だと思わない?」


 【魔術師】の持ち味は多くの召喚法を一度に扱えることにある。それを殺すような戦術を取るようでは今のエレンには勝てないと踏んで、敢えてシンクロモンスターを召喚した。危ない橋を渡ったこの選択が吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知るだが、彩の真骨頂はこれからだ。


「見てて、私のペンデュラム召喚を」
「今までと違うのデスカ?」
「……行くよ、ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから蘇れ、『慧剣の魔術師』!そして──」





─────永遠の旅路を共にしようとする者と描く、光の軌跡!『オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン』!!─────





○オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン(Lv7 闇)
ドラゴン族/ペンデュラム/通常
攻2700/守2000
【Pスケール:青8/赤8】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。①:自分フィールドの「オッドアイズ」カードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「オッドアイズ」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
【モンスター情報】
雄々しくも美しき、神秘の眼を持つ奇跡の龍。その二色に輝く眼は、天空に描かれし軌跡を映す。



「アークペンデュラム……?」
「ズァークの支配から解放された後、デッキに入っていたの。このカードは今の私であって、私の誓いの具現化」


 アークペンデュラム・ドラゴンは通常モンスターであり、モンスターゾーンに出すよりもペンデュラムゾーンに置くことの方が重宝される。しかし彩は「今の自分の全て」をエレンに見せようとする一心でこのモンスターをペンデュラム召喚してみせた。
 彩からズァークとその眷属である四龍が分離した際、彼女のデッキにはこのカードが1枚だけ入っていた。初めは「ズァークが自分に残した呪い」だと思いデッキに投入することを避けていたが、「自分の過去から目を背けず前に進む」ためにこのカードを受け入れ、今となっては「愛するものと共に肩を並べて歩む」という彼女の意志がこのカードに宿っている。そして何よりも、その強い意志を持って戦う人は、強い。


「虹彩の魔術師のペンデュラム効果発動!覚醒の魔導剣士が戦闘で与えるダメージは倍になるわ。その後自らを破壊し、破壊された虹彩の効果でデッキから『時空のペンデュラムグラフ』を手札に加え、星霜のペンデュラムグラフの効果で黒牙の魔術師を手札に。そして『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚し、デッキから『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』を手札に加えるわ」
「儀式モンスター……まさか」
「その通りよ。儀式魔法『オッドアイズ・アドベント』を発動!レベル7の慧剣の魔術師をリリースし、儀式召喚!降臨せよ、『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!!」



○オッドアイズ・アドベント(儀式魔法)
ドラゴン族の儀式モンスターの降臨に必要。「オッドアイズ・アドベント」は1ターンに1枚しか発動できない。①:レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドのPモンスターをリリースし、自分の手札・墓地からドラゴン族の儀式モンスター1体を儀式召喚する。相手フィールドにモンスターが2体以上存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のエクストラデッキの「オッドアイズ」モンスターもリリースの代わりに墓地へ送る事ができる。


○オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン(Lv7 地)
ドラゴン族/儀式/効果
攻2800/守2500
「オッドアイズ・アドベント」により降臨。「オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。この効果の発動に対して相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は500LPを払わなければ、カードの効果を発動できない。



「グラビティ・ドラゴンの効果発動!相手の魔法・罠カードを全て手札に戻すわ」
「Shit…!」
「さらに、レベル7のアークペンデュラムとグラビティでオーバーレイ!二色の眼の竜よ、絶対零度の冷気を纏い現れよ。エクシーズ召喚!!ランク7『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!!」


 彩はこの戦いで己のデッキを確立させ、儀式・融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・ビヨンドと、現存する全ての召喚法を体得した。これも仲間を取り戻す強さを得るためではあるが、より強くなって精一と肩を並べるためでもある。
 スケール8の黒牙をペンデュラムゾーンに置き、グランエルの攻撃力を半減させた。他の2体の機皇帝とは異なり、自らのライフの半数を攻撃力とするグランエルは最初のターンで出せば相当な壁になる。しかしそれを得意のペンデュラム効果で崩してしまえば、簡単に倒せるようになるのだ。


「バトル!まずは星刻の魔術師でリトスアジムDを攻撃!この瞬間、アブソリュート・ドラゴンのオーバーレイユニットを1つ使って、その攻撃を無効にするわ。その後、墓地のアークペンデュラムを特殊召喚!」


 アブソリュート、星刻、覚醒、アークペンデュラムの4体がフィールドに出揃い、彩の闘志に呼応するかのように咆哮を天に轟かせた。続けてアブソリュート・ドラゴンでリトスアジムDを破壊し、黒牙の魔術師で弱体化させたグランエルを、虹彩の魔術師によるダメージ倍増効果を付与された覚醒の魔導剣士で破壊し、合計1300ポイントのダメージを与えた。


「覚醒の魔導剣士が戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与えるわ!」
「But、グランエルの本来の攻撃力は0。だからボクに与える効果ダメージも0デス」
「でもこれで、エレンちゃんを守るモンスターも伏せカードも何もないわ!」
「そう……今のボクには何も残っていマセン。アレックスを失ったあの日のボクそのものデス」
「っ…」


 精一というライバルから恋人として認められた彩、アレックスという将来の婿を失い心に大きな穴が空いたエレン。両者は幸福に満ち溢れたものと絶望に打ちひしがれたものであって、今を真っ直ぐに生きるものと過去の亡霊に囚われたもの。対極関係である2人の心理が今のフィールドに形となって現れていた。
 エレンはこのタイミングで、新たな罠カードを発動した。この一手が後のデュエルを大きく動かすこととなるとは、彩は露にも思っていなかった。


「自分フィールドにカードが一切存在しない場合、罠カード『機皇崩御』は手札からの発動が可能デス!」
「まさか……グラビティ・ドラゴンでバウンスしたあのカード?!」


○機皇崩御(通常罠)
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。①:自分フィールドの「機皇」モンスターが戦闘で破壊された場合に発動できる。そのモンスターと戦闘を行なった相手モンスター1体を破壊する。その後、デッキから「機皇帝」モンスター1体を選び、召喚条件を無視して攻撃表示で特殊召喚する。②:墓地のこのカードを除外して発動できる。相手はEXデッキからSモンスター1体を選んで墓地へ送る。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。



「ボクは覚醒の魔導剣士を破壊し、デッキから『機皇帝ワイゼル∞』を特殊召喚デス!」
「関係ないわ!アークペンデュラム・ドラゴンでワイゼルを攻撃!シュプリーム・ストライクバースト!!」
「うぅっ…!」
ELLEN→LP:6500



 手札から発動できる罠カードは昔から存在するが、エレンまでもがその力を使ってくるとは完全に彩も予想外だった。ずっと仲間のように使ってきたワイゼルを単なる壁として使い捨てたこともそうだが、今のエレンは無機質な機械のようにカードへの思いやりというものがまるでなかった。
 それでも彼女は、このデュエルでの勝利を揺るぎないものへと確信していた。


(あの余裕……エレンちゃん、まだ何か隠しているとでもいうの?ここは念を入れて)
「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
AYA→LP:6400 手札:2 デッキ:26 Mゾーン:3 M&Tゾーン:3 Fゾーン:0 Pゾーン:2



*TURN04
「ボクの……ターン!!」


 鬼気迫る勢いでドローしたエレンは、引き当てたカードを見て口角を上げた。よほど良いカードだったのだろうが、効果による破壊をトリガーとするカードがなければ彼女が機皇帝を呼び出すことはまずない。そのキーカードであるおとぼけオポッサムもリトスアジムDによって破壊されたため二度と蘇らないが、エレンは予想を遙かに超える行動に出た。


「ボクは手札の『機皇神マシニクル∞』1体で、アナザー・ディメンションゲートを解放!」
「手札からビヨンド召喚だなんて……そんなこと出来るの?!」
「このモンスターは、手札のマシニクルを除外することでもビヨンド召喚が可能デス。これが今のボクの切り札!」





──────遍く絶望の屍を踏み越え、顕現せよ!最凶の機皇神!─────




──────『究極機皇神ヘブンズ・マシニクル∞∞∞(デルタ・インフィニティ)』!!──────



〇究極機皇神ヘブンズ・マシニクル∞∞∞(デルタ・インフィニティ)(グレード12 光)
機械族/ビヨンド/効果
攻4000/守4000
「機皇神マシニクル∞」×1
手札の上記素材を除外した場合でもこのカードはEXデッキからB召喚できる。このカード名の①③④の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:? ②:? ③:? ④:?




 機皇神マシニクル∞は従来の機皇帝とは異なり、胸部と左右の肩部に1つずつ、合計3箇所に「∞」があしらわれている。ボディカラーはワイゼルと同様に白を基調としているが、進化形のヘブンズ・マシニクルはワイゼル・スキエル・グランエルの意匠が施されており、右腕の刃はワイゼル、左腕のレーザー砲はグランエル、背中に展開された翼はスキエルのものとよく似ていた。この究極機皇神は、これまでの「機皇」における全ての力を収束させた最強且つ最凶のモンスターなのだ。



「さあ彩先輩……ここからは、命の削り合いデスヨ?」
「くっ…!」



~現在の状況~
AYA→LP:6400 手札:3 デッキ:26 Mゾーン:3 M&Tゾーン:3 Fゾーン:0 Pゾーン:1


 V S


ELLEN→LP:6500 手札:1 デッキ:32 Mゾーン:1 M&Tゾーン:0 Fゾーン:0 Pゾーン:0
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51 Episode46:絶望の凱旋 1018 0 2016-08-24 -
77 Episode47:刻まれた記憶の欠片 1098 1 2016-09-06 -
108 Episode48:希望の行方 1329 0 2016-09-13 -
76 Episode49:悪夢の決戦前夜 1040 0 2016-10-03 -
62 Episode50:創世の星屑竜 1006 0 2016-10-25 -
109 Episode51:託された未来 1120 0 2016-10-30 -
110 番外編03:遊弥と花奈の... 1178 2 2016-11-02 -
95 未投稿オリカ紹介①(使用者:藤堂遊弥) 1190 0 2016-11-09 -
96 未投稿オリカ紹介②(使用者:赤城紅葉) 1124 0 2016-11-26 -
84 未投稿オリカ紹介③(使用者:茨木花奈) 1136 0 2016-12-08 -
48 未投稿オリカ紹介④(使用者:霧野命慈) 982 0 2016-12-20 -
50 未投稿オリカ紹介⑤(使用者:霧野精一) 1055 0 2016-12-30 -
79 Episode52:極寒の夏 1107 2 2017-01-01 -
141 Episode53:闇の邂逅 1218 2 2017-01-07 -
69 Episode54:呪縛竜復活 1030 0 2017-01-11 -
113 Episode55:届かぬ声で... 993 2 2017-01-15 -
127 Episode56:禁忌の目覚め 1075 5 2017-01-19 -
110 Episode57:共鳴する四龍 1077 4 2017-01-25 -
60 Episode58:本当の気持ち 1197 3 2017-01-30 -
62 Episode59:真実への鍵 1002 2 2017-02-08 -
66 IF01:バレンタインデー 1195 6 2017-02-11 -
56 Episode60:エレンとアレックス 1072 3 2017-02-16 -
158 ルール改訂と今後の進行について 1308 2 2017-02-18 -
55 Episode61:想いの証 1000 5 2017-02-21 -
73 Episode62:茨の道標 1119 5 2017-02-27 -
120 Episode63:光と闇の花 1009 3 2017-03-20 -
76 Episode64:渇望と葛藤 1052 2 2017-03-23 -
71 Episode65:麗しき孤月 1010 2 2017-03-29 -
135 Episode66:月夜のイリュージョン 1342 2 2017-04-21 -
147 Episode67:常闇に消える月華 1328 1 2017-05-05 -
87 Episode68:模索者たち 1018 4 2017-07-22 -
103 Episode69:純黒の反逆者 1139 0 2017-07-27 -
106 Episode70:紅と黒の禁呪 1031 2 2017-08-07 -
84 Episode71:希望は往く 1159 3 2017-08-17 -
137 Episode72:リリーの過去 1161 2 2017-08-24 -
70 Episode73:異次元の亡霊 1104 2 2017-09-13 -
109 Episode74:覚醒の鼓動 1293 3 2017-09-22 -
119 Episode75:挑戦者の儀 1062 0 2017-10-05 -
124 Episode76:神速の決闘 1150 2 2017-11-14 -
52 Episode77:動き出す陰謀 839 2 2018-01-23 -
67 Episode78:最期の兄弟喧嘩 847 2 2018-03-03 -
138 Episode79:黄龍の手向け 923 2 2018-03-28 -
106 Episode80:堕天使の罠 897 0 2018-04-14 -
97 Episode81:断罪する魔神 883 0 2018-04-19 -
109 Episode82:姫君のバイブル 979 1 2018-05-07 -
116 Episode83:開かれたページ 1014 0 2018-05-11 -
153 Episode84:望まぬ決戦 1016 2 2018-05-29 -
68 未投稿オリカ紹介⑥(使用者:古城奏多) 876 0 2018-05-31 -
122 未投稿オリカ紹介⑦(使用者:清水ルーナ) 1112 0 2018-06-02 -
133 未投稿オリカ紹介⑧(使用者:アレックス) 997 0 2018-06-04 -
52 未投稿オリカ紹介⑨(使用者:リリー) 819 0 2018-06-06 -
185 未投稿オリカ紹介⑩(使用者:ソフィア) 1202 0 2018-06-06 -
110 呪縛竜のおさらい 830 0 2018-06-06 -
103 IF02:星 遊未 805 0 2018-06-09 -
70 Episode85:新たなる激闘へ 984 0 2018-07-10 -
103 Episode86:愛するもの 866 0 2018-07-27 -
69 Episode87:涅槃を超えた先 866 0 2018-08-10 -
114 Episode88:終焉の弧光 1246 0 2018-09-12 -
60 【重要】投稿再開のお知らせ 689 3 2022-06-04 -
41 Episode89:四竜が紡いだ奇跡 437 3 2022-06-25 -
44 Episode90:光臨者、天導レイン 436 2 2022-07-07 -
46 Episode91:舞い堕ちた天使 391 2 2022-09-03 -
47 Episode92:紅の決意 456 0 2022-09-19 -
36 Episode93:凛々しい黒羽 432 0 2022-10-04 -
51 Episode94:最強の双子 439 0 2022-10-24 -
32 Episode95:最凶の龍 451 0 2022-12-29 -
39 Episode96:神の恵 434 0 2023-01-18 -
51 Episode97:先導者vs時空竜 495 0 2023-01-22 -
30 Episode98:トワノチカイ 419 0 2023-02-14 -
37 Episode99:遊弥、復活 393 0 2023-03-12 -
33 Episode100:目覚めし星の光 397 0 2023-03-26 -
37 Episode101:決戦・冀望郷 351 0 2023-05-03 -
22 Episode102:最弱の意地 303 0 2023-06-28 -
15 Episode103:永遠の友達 195 0 2023-11-26 -

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