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第15話:爆焔鉄甲(スチームアーミー) 作:湯
遊次がUnchained Hound Dogsのリーダー「怜央」に決闘を申し込み、決戦は明日行われることが決まった。
Unchained Hound Dogsの怜央・ドモン・ダニエラは踵を返し、自分達の居場所へと戻っていった。
その背中からは、突如として現れ自分達の存在を揺るがすNextに対する怒りが滲み出ていた。
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神楽 遊次(かぐら ゆうじ):ttps://imgur.com/a/5NdVaZI
花咲 灯(はなさき ともり):ttps://imgur.com/a/uyRG5dJ
イーサン・レイノルズ:ttps://imgur.com/a/XUIjiTv
鉄城 怜央(てつしろ れお):ttps://imgur.com/a/TGqdxmy
ドモン・ハルク:ttps://imgur.com/a/v3jEily
ダニエラ・シルヴァ:ttps://imgur.com/a/2cz4tPl
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を見れます。
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日も暮れ始め、空の橙色は少しずつ黒色へと変貌していく。
残されたNextの面々である遊次・灯・イーサンと、依頼者である女性教師「秋山」は、
これから行うべきことについて話を進める。
秋山の後ろでは、Unchained Hound Dogsの一員であった少年「トーマス」が、
事態を飲み込みきれず不安げな表情を浮かべている。
彼が他人の家の壁に落書きをしていたところを目撃した秋山が、彼の悪事を止めさせるべくNextに依頼したのが発端だった。
その結果、イーサンがUnchained Hound Dogsのドモンをデュエルで打ち破り、トーマスをチームから半ば無理やり引き剝がした形だ。
遊次「…暗くなってきちまったな」
誰から口を開くかと様子を伺うような沈黙の後、遊次が空を見上げながら切り出す。
遊次「どうするトーマス?
今からお父さん・お母さんと話はできるか?事情は俺らから説明するからさ」
遊次はトーマスの目線に合わせて膝を曲げ、優しく語りかける。
トーマスは俯きながら沈黙している。
トーマス「……うん。わかった」
数秒した後、トーマスはか細い声で心のこもらない返事をした。当然の事ながら、全く気は乗らない様子だ。
突如複数人の大人が家にやってきて、自らの犯した罪が両親に筒抜けになるのだ。
自業自得の側面はあるものの、トーマスの鬱屈とした心情は想像に難くない。
自らにも大きな責任を感じ、秋山は教え子を複雑な気持ちで見下ろしている。
秋山「…トーマス君、本当にごめんなさい。
何度謝っても許されることじゃないけれど、私が目を見張らせていればこんな事にはならなかったのに…」
トーマスは何も答えない。
秋山にとってそれはおおよそ想定通りであったが、謝罪の言葉を繰り返せば許してくれるかもしれないと、心のどこかで僅かにでも思ったのだ。
そしてそんな自分の浅ましさに、秋山の中でまた自己嫌悪の感情が沸き上がる。
イーサン「あまり自分を責めないでください。
秋山さんがうちに来てくれなければ、トーマス君は今もまだ悪事に手を染めていたでしょう」
灯「そうですよ!
秋山さんみたいに子どものために立ち上がれる先生って、意外と多くないと思います。」
秋山「…すみません、ありがとうございます」
イーサンと灯の言葉は本心であったが、それでも秋山は居所の悪さを感じたままだった。
遊次「じゃあ、行くか。
トーマス、お家に案内してくれるか?…てか、お父さんとお母さんは家にいんのか?」
トーマス「…うん、いるよ。今日は休日だし」
遊次「そっか。じゃあ案内を頼む」
トーマス「…うん」
とぼとぼと自宅に向かって歩き出すトーマスに、4人の大人がついて行く。
トーマス宅までの道すがら、多少の会話はあったものの、冗談を言う雰囲気でもなく、
暗い空気が続いた。
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~トーマス宅~
古めかしいアパートの3階の角部屋にある一室。そこがトーマスの家だった。
何もおかしいことはないが、なんとなく一戸建てを想像していたNextの面々は少しだけ面食らった。
家庭訪問でそのことを知っていた秋山だけは、いよいよ両親に会うという緊張感だけを表情に滲ませていた。
部屋の鍵を持っているトーマスがいるものの、いきなり知らない大人が部屋に入るわけにもいかず、まずはチャイムを鳴らし、
「はーい」と陽気な声と共にドアを開けた母親が、目の前の様子に眉を顰めたのだった。
母親はやや痩せこけた見た目で、茶色の髪を後ろで無造作に束ねており、白い肌にそばかすが目立っている。
使い古されたヨレヨレのエプロンを着け、どう見ても来客を想定していない格好だった。
玄関口で秋山が1,2分ほど軽い事情説明をした後、家に上がり込む。
見知らぬ大人が家に入り込んできたことで、リビングでタバコを吸っていた父親が目を丸くする。
その中には息子の担任教師もいたためか、よからぬ予感を抱き、急いで灰皿にタバコを押し付け立ち上がる。
やや小太りの父親は息子に似た短い金髪に蒼眼で、無地の白いシャツと灰色のハーフパンツを着ている。
狭いアパートと両親の様相から、
トーマスにとって家庭も居心地の良い場所ではなかったのだろうとイーサンは察しがついていた。
だからこそ別の居場所を求めたのだ。
Nextの面々は秋山に紹介された後、各々自己紹介を済ませると、
座る席がないことに気付いた母親が、慌ただしく小走りで別室に向かい、そこから2つ椅子を運んでくる。
それでも椅子が足りないため、トーマス、秋山、イーサンが席につき、遊次と灯はイーサンの横で立ったままとなる。
トーマスの隣に座った秋山から、向かいに座る両親に事情を話した。
息子のトーマスが友人とトラブルに遭い不登校になっていること、不良グループに誘われその影響で壁に落書きをするに至ったこと。
秋山がそのチームの一員の男に立ち向かうも、オースデュエルにて不干渉の契約を叩きつけられ、
結果的にドミノタウンのなんでも屋であるNextに解決を依頼したことなど、これまでの経緯を話した。
時折、父親がトーマスに対して怒りの眼差しを向けていたが、トーマスは目を合わせぬよう俯き続けていた。
そこからはイーサンが説明を引き継いだ。
イーサン「秋山さんからの依頼があってから、我々はその"Unchained Hound Dogs"という不良チームの一員と接触し、
トーマス君と関わらないことを条件にオースデュエルを行いました。
そのデュエルに勝利したことでトーマス君を不良チームと引き離したので、その点については心配ありません」
イーサンは両親に余計な心配をさせまいと、結論をすぐに述べた。
トーマス母「…そうですか。そんなことが…。
そのチームのこと、最近すごく耳にします。
デュエルで人を脅して、店の物とかお金とかを奪う事件が多発してるって…」
Unchained Hound Dogsの勢いは日に日に増していた。
ドミノタウンの住人であれば誰もが耳にしたことがあるほどその悪名は轟いていた。
遊次達はやはり彼らを止めなければならないことを再認識する。
トーマス父「学校に行ってないのは薄々わかってたけどよ…。
チッ、まさかそんなヤベェ奴らとつるんで家に落書きたぁ、ふざけたことしやがって…」
トーマス父「うちの息子がご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」
トーマスの父が礼儀正しく謝罪をするも、
息子に対して舌打ちをしたのを誰も見逃さなかった。
彼の怒りの感情も至極当然ではあるが、彼自身の粗暴な一面が垣間見えたのもまた事実だった。
それもトーマスが非行に走ったことに繋がっているのだろうと肌で感じたものの、
結局はただの直感に過ぎず、その情報だけで彼を悪と断ずるにはあまりにも彼らを知らない。
胸のつっかえを飲み込みながら、遊次は問題の本質について話し始める。
遊次「問題は、トーマス君が学校に行けなくなったことと、その原因です。
さっき秋山先生も話した、友達とのトラブルってやつです。
トーマス、こっからは自分で話せるか?」
遊次はいまだ俯いたままのトーマスに語りかける。
トーマスは意を決して前を向くが、その焦点は両親の間の虚空に向いている。
トーマスは1か月前、友人のマイクにデュエルで勝ってしまったことからいじめが始まったことと、
学校にも行かなくなったことを正直に語った。
不登校が始まった初日は学校から自宅に電話をしたため、トーマスが学校に行かなかったことは両親も知っていたが、
1日ぐらいサボる時もあるだろうと、父親が大して気にも留めなかった。
母親からはトーマスに注意したものの、強い言い方をしなかったため、トーマスは不登校をやめることはなかったのだ。
途中から秋山が説明を補足する。
秋山「2日目も学校に来なかったのですが、私はあえて自宅には連絡せず、何か問題があると考え、先に事情を探りました。
そして不良グループに辿り着き、結果は先ほど述べたとおりです」
不登校2日目に家に連絡しなかった理由は、もしかしたら家庭に問題があるかもしれないと考えたためだが、それはこの場では口にしなかった。
遊次「結局、友達と仲直りしないと問題は解決しないと思います。あ、仲直りじゃなくても、とにかくいじめを止めさせないと」
トーマス父「しゃらくせえ、何がいじめだ。1発殴り返してやりゃあいいだろ、なあトーマス」
トーマス「できないよ、そんなこと…」
弱気な息子の発言を聞きまた舌打ちをする父。
秋山「その点については私から責任を持ってマイク君たちにお話します。場合によっては彼らの親御さんにもお話します」
イーサン「もしまた何かあれば我々も協力します」
トーマス母「…ありがとうございます。でも不良グループから引き離してくれただけでも十分です。
ここからはこちらの問題ですので…。ご迷惑をおかけしました。すみません」
事情を深く知らない他者であるNextがここから介入できることはあまりないだろう。
オースデュエルの強制力でいじめを止めさせるといった解決方法には助力できても、そのやり方が友人間の関係性の修復に適当とは思えない。
自分達がいられると言いにくいことも多々あるだろうと遊次達も理解していた。
遊次「そうですか。…わかりました。じゃあこっからは秋山先生とお父さんお母さんにお任せします」
秋山「はい。ここまで本当にありがとうございました。依頼料の方はお支払いし、また連絡しますので…」
灯「あ、全然気にしないでください!いつでも大丈夫です」
灯は両手を前で軽く振って場違いな話を静止する。
遊次「トーマス、急に俺たちみたいな知らない奴にあれこれ言われんのはイヤかもしれないけど、俺らはお前の居場所を奪いたいわけじゃない。
あのなんとかドッグってチームにも友達はいただろうし、居心地の良さもあったんだろ」
トーマス「…居心地はよかったと思う。チームに入ったばっかりだけど、たぶん」
遊次「そうだよな」
遊次はトーマスの言葉を聞くと、両親の方へ向き直る。
遊次「お父さんお母さんには話してなかったけど、明日俺はあのチームの奴らとデュエルで決着をつけます」
トーマス父「決着…?」
遊次「はい、絶対に俺が勝ってあいつらに悪事を止めさせます。
だから…もしトーマスがそのチームの奴らとまた会いたいと言うなら、どうか止めないでほしいんです」
トーマス父「そりゃあ無理だ。息子に悪影響を及ぼす奴らに関わらせるわけにはいかねえ」
遊次「もう悪いことはさせねえ!俺があいつら自身を変えてみせます!」
遊次の強い決心の言葉に押され父親は言葉をつぐむ。
イーサン「もし遊次が不良チームに勝ち、悪事を止めることができたら、秋山先生の方に連絡します。
トーマス君がまた学校の友達と仲直りできるか、そもそも仲直りしたいかもわからないですし、居場所は多い方がいいと思います」
トーマス父「…まあ、本当にそのチームが改心するなら考えんこともねぇけどよ」
トーマスの父はしぶしぶ了承する。
遊次「ありがとうございます。
では、俺たちはここで。頑張れよ、トーマス」
トーマス「…うん」
トーマス「…あの!」
遊次たちが玄関に向かおうとした時、トーマスが声を掛ける。
遊次「ん?」
トーマス「その…ありがとう。
皆が言ってたこと、正しいと思う。
あのままチームにいたら、僕はもっと悪いことをしてたかもしれない。
でもそんなこと、本当に僕がしたいことじゃない。僕はただ…」
トーマスが頭の中で言葉を探し、遊次はただそれを待つ。
トーマス「僕はただ、居場所がほしかっただけなんだ」
息子の率直な気持ちを聞き、トーマスの母ははっとする。
その言葉は、トーマスにとって家庭が自分の居場所でないことを指していたからだ。
遊次「あぁ。俺があのチームを、お前の帰れる場所にしてみせる」
トーマスは遊次を見て小さくうなづく。
少し心残りはあるものの、依頼人と両親の要望であるためNextにはここからの出番はない。
灯「ひとまずは前に進んだかな?」
遊次「そうだな。秋山先生ならうまくやってくれると思うぜ」
Nextの3人は階段を降りてアパートを出て安ど安堵の息を漏らす。
遊次「とりあえず灯とイーサンもお疲れ!
特にイーサンは秋山さんの依頼にきっちり応えてくれたしな」
イーサン「おう。後は明日だな。怜央って奴との決闘」
遊次「あぁ。
トーマスのためにも、他のチームの子供たちのためにも、あのチームはあのままじゃダメだ」
遊次は自らのデュエルディスクに無意識に触れる。
灯「デュエルで語り合う、ってやつだね?」
それを見て灯は遊次がやろうとしていることを汲み取る。
遊次「へへ、それだ。デュエルは魂の会話…父さんが教えてくれた、俺が一番好きな言葉だ」
遊次がどこか遠くの空を見つめながら呟く。
遊次「ただぶっ倒して悪事を止めさせるだけじゃ意味がねえ。あいつと…怜央と魂の会話をしなきゃな」
灯とイーサンは静かに頷く。
---------------------------------------------
翌日 17:55
間もなく日が暮れる頃。
怜央との決闘の時間まではまだしばらくある。
遊次・灯・イーサンは、怜央と約束をしていた廃工場前に到着したところだった。
廃工場前は錆びた鉄材やドラム缶が放置された広いスペースがあり、ここが決闘の場となる。
工場が使われなくなって何年も経過しており、今は溜まり場のような使われ方をしている。
自分達が入ってきた入り口から見て左端の少し離れたところに、2人の子供が話しているのがちらりと見える。
イーサン「まだ来てないみたいだな」
閑散とした周辺を見回しながら呟く。
怜央やドモン・ダニエラの姿が見えないことから、自分達の到着が早かったことがわかる。
遊次「ま、5分前集合するようなタイプじゃねえとは思ってたけどよ」
灯「というか、ほんとに来るのかな?」
3人は工場前の広場の真ん中まで歩みを進める。
遊次「まさか俺に恐れをなして逃げたんじゃ…痛っってぇ!!」
遊次は唐突に内くるぶしの辺りに痛みを覚える。
後ろを振り返ると、頬に絆創膏を貼った黒人の小学生くらいの男の子がこちらを睨みつけていた。
その後ろには黒髪で片目を髪で隠したクマのぬいぐるみを持った女の子がおとなしく立っている。
廃工場に入った時に廃工場の端で話していた2人の子供だ。
遊次「何すんだお前!」
こちらを睨む男の子が痛みの原因であるとわかり、遊次は声を上げる。
男の子「トーマスを返せ!」
男の子はそういうと遊次の足に蹴りを入れようとするが、咄嗟に遊次がかわす。
遊次「おいやめろ…このっ…」
遊次はまだなおも迫りくる男の子の肩を掴み必死に静止する。
灯「トーマスってあの?」
灯はイーサンの顔を見上げる。
イーサン「君たち、もしかしてUnchained Hound Dogsの?」
トーマスという名前と遊次に向けられている敵意から、目の前の子供たちの素性に察しがつく。
女の子「…うん、そうだよ」
遊次と男の子の小競り合いには我関せずと言った様子で、女の子は淡々と答える。
遊次「いったん落ち着け!俺らはトーマスのいたずらを止めさせたかっただけだ!」
男の子「そんなのお前らには関係ねーよ!」
遊次「あるっての!担任の先生から頼まれたんだから!」
女の子はまだなお続く2人の争いを尻目にため息をつくと、面倒くさそうに声をかける。
女の子「そろそろやめときなよ、リアム」
男の子「なんだよミオ!こいつらの味方すんのか!」
リアムと呼ばれた男の子は未だ収まらぬ怒りをミオという女の子にぶつける。
ミオ「その人は怜央がやっつけてくれるんだから、リアムは何もしなくていいの」
リアム「…ケッ」
リアムはようやく矛を収める。
遊次「やっぱあいつらのチームの奴らか。
急にトーマスを引き剥がしたのは悪かったけど、これ以上いたずらを続けさせるわけにはいかねえんだ」
灯「君たちもそういうことしてるの?壁に落書きとか」
リアム「ヘッ、そうだよ。文句あっか」
イーサン「町の人に迷惑だろ」
イーサンは淡々と返す。
リアム「知らねーよそんなの。町が俺たちに何をしてくれたんだよ」
遊次「言っとくけど、落書きも犯罪だからな。
お前らは子供だから見逃されてるだけだ。大人だったら逮捕だぞ。
で、お前らがこのまま大人になったらいずれそうなっちまうから、俺らが止めようと…」
ミオ「そんなのわかってる。でも、じゃあ落書きとか盗みをやめたら、私たちのことは誰が見てくれるの」
遊次「えっ…」
横からミオが口をはさみ、それが思いのほか芯を食う内容だったことから遊次は少し驚く。
ミオ「私たちは見捨てられた。でも、町のみんなは知らんぷり。
それでも、私たちはただ大人しくしてろっていうの?」
遊次「…」
遊次は簡単には返答は答できなかった。彼女の言っていることも理解できるからだ。
そして、それはすぐには解決できない問題であり、綺麗ごとだけで片付くものでもなかった。
ミオ「怜央は、私たちの気持ちをわかってくれる。一緒に背負ってくれるの。
私たちがこの町の大人に思ってるムカつく気持ちとか、悲しい気持ちとか、全部。
まるで、自分のことみたいに」
灯「一緒に…背負う?」
リアム「そうだ!
怜央の兄貴もドモンの兄貴も、ダニエラの姉貴も…俺らと一緒に怒ってくれるんだ!
俺たちを見捨てた大人たちに!だから俺たちはあの人たちについて行くって決めたんだ!」
リアムがチームを引っ張る3人への想いを熱く語る。
遊次達は、怜央らが報われない子供達に厚く信頼されている理由が理解できた。
遊次「お前たちの気持ちもわかるぜ。
でも関係ない人を脅して物を奪ったりして…その先に何があるんだよ」
??「そうしなきゃ生きていけないからだ」
廃工場の入口の方から聞き覚えのある声がする。
声のした方を見ると、怜央・ドモン・ダニエラがこちらを見つめていた。
遊次「…来たか、怜央」
リアム「兄貴!姉貴!」
怜央は廃工場前の広場の中央へと歩みを進める。
その眼差しは遊次に対する敵意をむき出しにしていた。
ドモンとダニエラは中央から数歩下がった所に立つ。
怜央「嫌がらせのためじゃねえ。俺らは俺らだけで生きていかなきゃならねえんだ。
だから俺たちを見て見ぬふりして私腹を肥やしてる大人どもから、力で奪いとるしかない」
怜央は自らの意志を曲げることなく遊次に食らいつく。
遊次「それを続けてたって未来はねえよ。お前だってわかってるんじゃないのか?」
怜央「なら飢えてのたれ死んだらいいってか?」
遊次「そんなわけねえだろ!貧しい子供を放っておいていいわけじゃねえ。
でも今のやり方じゃ子供達まで不幸にするって言ってんだ」
遊次と怜央はお互いに一歩も譲らず言葉をぶつけ合う。
イーサン「自分達の飢えを凌ぐだけに留まらないだろ。
お前達の脅迫とデュエルによる略奪は日に日に激しくなってる。
力を誇示してチームの勢力を拡大しようとしてるようにしか見えないが?」
怜央「フン、何もわかってねえなオッサン。
"奪う側"にまわらなきゃいつまでも"奪われる側"から抜け出せねえ。
圧倒的な力を示すことこそが、俺達が生き残る道だ」
ドモン「おいおい、討論会をしにきたわけじゃねえだろ、怜央。
こいつらに何を言っても無駄だ」
このままだと口論が激化するだけだと感じたドモンが痺れを切らして口を挟む。
ダニエラ「デュエルで捻じ伏せちまえばそれで終わりさ」
怜央「…そうだな。お喋りが過ぎたみたいだ。こいつでケリをつけようぜ」
怜央はドモンとダニエラの言葉を受けた後、一瞬の間目を瞑る。
その後、デュエルディスクをかざし、決闘の意志を告げる。
遊次「…あぁ!」
遊次も怜央に応えデュエルディスクをかざす。
灯・イーサン、ドモン・ダニエラは、自分達にとっても分岐点となるデュエルの始まりに固唾を飲む。
遊次「俺から提示する条件は1つ。
お前らのチームが2度と悪事を働かないことだ」
遊次「チームを解散しろとは言わねえ。子供達の居場所を作ったことはすげえと思ってる。
ただ、子供達も、お前ら自身もちゃんと歩き出してほしいだけだ」
遊次が真っ直ぐ怜央を見据え、力強く己の意志を伝える。
怜央「いらねえお節介だぜ。それは大人共に屈するってことだ。
それじゃガキ共も報われねえ」
怜央は横目にリアムとミオを見る。
リアムとミオはそれに応えるように頷いてみせる。
怜央「俺の要求は2つだ。
二度と俺らUnchained Hound Dogsに関わらないこと。
それと…この町、ドミノタウンから消えること」
「…!」
怜央の提示する条件を聞き、遊次・灯・イーサンに緊張が走る。
灯「そんな…こっちは1つしか提示してないでしょ!?」
怜央「何言ってやがる。
オースデュエルで俺らの行動を制限したいのはお前らの方だろうが。
俺らは目障りな小蠅を払い落としたいだけだ。どうしてもお前らを追い出さなきゃいけない理由はねえ。
ならそっちが飲む条件が重くても文句は言えねえよな?」
オースデュエルは両者合意のもと成立するため、相手の提示した契約に異議を呈することはできる。
しかしオースデュエルによってより強く相手に強制力を働かせたい側がリスクのある条件を飲むというのは当然の理だ。
怜央にとって、今提示した条件以上に大きなリスクを冒してまで、Nextを追い出さなければならない理由はないからだ。
怜央「もしかして負けんのが怖ぇのか?
威勢よく突っかかってきた癖に、もうすでに負けを想定してるとは、笑いもんだぜ!」
怜央が煽るように口角を上げる。
遊次「負けなんか想定してねえ!
もちろん、お前の提示する条件でいいぜ。俺が勝つからな!」
遊次は負けじと強気の姿勢を見せる。
灯「で、でも…」
灯も遊次が敗北すると思っているわけではない。
しかし実質的にドミノタウンに出入りすることを禁じられるとなれば、遊次は唯一の帰る場所を失うことになる。
純粋にその重さを痛感しているのだ。
イーサン「遊次を信じよう、灯。
あいつはこれまでも高い壁を乗り越えて勝ってきた。心配ないさ」
灯「…うん、そうだよね。
遊次が負けるわけないってわかってる」
遊次「安心してくれ、灯、イーサン。絶対に勝ってみせる。
ドミノタウンの皆を笑顔にしたくて、俺はNextを立ち上げたんだ。
この町に悪意を振りまく奴らを放っておくわけにはいかねえ!」
遊次は拳を強く握りしめ決意を言葉にする。
遊次の声にこもった闘志を受け取り、灯は心から遊次を信じ、託す。
怜央「決まりだな。
始めようぜ、決戦のオースデュエルを!」
遊次「あぁ!」
2人は同時に片手サイズに四角く折りたたまれたデュエルディスクを懐から取り出し、腕に装着する。
デュエルディスクは自動で変形し、カードを配置するデュエルフィールドが形成される。
2人の声をオースデュエルへの同意とみなし、デュエルディスクに内蔵されたAI「DDAS」がオースデュエルの承認を始める。
DDAS「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」
プレイヤー1:神楽遊次
条件①Unchained Hound Dogsに対し、法・倫理・規律に違反する行為の一切を禁ずる。
プレイヤー2:鉄城怜央
条件①Nextに対し、Unchained Hound Dogsと一切の関与を禁ずる。
条件②Nextはドミノタウンから退去し、今後の立ち入りを禁ずる。
デュエルディスクAI「両者が提示した条件は共に組織全体に対するものであり、
これは組織の責任者の承認を得たことによって組織全体に適用されます。
組織名が変更された場合、構成員が増員した場合も契約は適用され、
解散後の再組織・または集団活動と認められた場合も適用されます」
デュエルディスクに内蔵されたAI…DDASが契約内容を詳細に伝達する。
DDASは人の記憶を参照することができ、両者間の認識が一致していることはすでに確認済だ。
更なる事細かな擦り合わせを1から10まで行うことはなく、あくまで抜け道がないように注釈を加える。
組織に対する契約の場合、解散して再度別の組織として立ち上げなおすことなどはできない。オースデュエルでは常識だ。
敗北した場合、組織を解散するだけで契約が無効となるのであれば、リスクとして成立しないためである。
西暦2065年の技術力により人間の記憶へのアクセスや世界中の電子機器へのアクセスを可能とし、
情報や認識の齟齬は一切発生せず、かつ柔軟・迅速にオースデュエルが行えるように研磨された最高峰のAI…それがDDASである。
契約を反故にする意志を読み取った時点で、DDASが電子機器にアクセスし物理的に違反者を捕縛することも可能であるため、
DDASで決した契約は何人たりとも違反することはできない。
それほどにDDASは世界に対する圧倒的な強権を有しており、それほどにデュエルという概念が世界の中心となっているのだ。
遊次と怜央の前にはソリッドヴィジョンの契約書が表示され、細やかな契約内容は全てそこに記されている。
2人はそれを確認すると前を向く。
オースデュエルによる契約がどのように行われるかは今までの経験から大体は把握しており、
2人ともその前提のもとオースデュエルを行っているため、契約内容に目を通す時間はさほど長くなかった。
DDAS「契約内容を承認します。
デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」
灯・イーサン、ドモン・ダニエラ、リアムとミオが見守る中、
暗さを増しつつある空の下、いよいよ決戦が始まる。
不気味に佇む廃工場がより体感温度を下げ、この場にいる者の緊張感を増大させている。
遊次・怜央「デュエル!」
2人がデュエル開始を宣言すると、怜央のデュエルディスク中央のランプが点灯する。
デュエルが開始されるとDDASが先行・後攻をランダムに決定する。
怜央が先行だ。
怜央「俺のターン!」
怜央は少しの間手札を眺め思考した後、手札のカードを1枚手にしてそれを表にする。
怜央「俺はフィールド魔法『爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)』を発動!」
■爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)
フィールド魔法
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードの発動時の処理として、「スチームアーミー」モンスター1体をデッキから手札に加えることができる。
②:お互いのプレイヤーは、自分のモンスターが1体以上存在する場合、
自分のモンスターと同じ縦列または隣のモンスターゾーンにしかモンスターを召喚・特殊召喚・セットできない。
③:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その位置を他の相手のメインモンスターゾーンに移動する。
怜央がフィールド魔法を発動した瞬間、周囲の景色は一変する。
巨大な鉄の柵と鋭利な棘が四方にそびえ立ち、閉鎖された密集地帯が広がる。
狭い通路が入り組み、荒れ果てた地面には戦闘の痕跡が無数に刻まれている。
空は不穏な赤黒い暗雲に覆われ、フィールドは不穏な戦場となった。
怜央「発動時、デッキから『スチームアーミー』モンスターを1体手札に加えることができる。
俺はデッキから『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』を手札に加える」
怜央「このフィールド魔法がある限り、お互いに自分のモンスターの隣にしかモンスターは召喚できねえ。
EXモンスターゾーンにモンスターがいる時はそいつの真下にも召喚できるがな」
遊次「ふーん…」
遊次「(しかもモンスターの位置を変える効果まである。カードの位置がそんなに大事なのか?)」
遊次はデュエルディスクでそのフィールド魔法の効果を確認するが、未だその真意を掴みきれない。
カードの位置情報に制限をかけることで怜央にどんなメリットがあるか今はわからないのだ。
怜央「更に手札から『爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』を召喚!」
■爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1700 守備力1300
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:手札から「スチームアーミー」カード1枚を捨てて発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚し、
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を墓地へ送る。
現れたのは鋼鉄のロボットのようなモンスター。
鋼のボディには全体的に錆び色が目立ち、両肩の部分には煤けた金色の歯車が付いている。
胸部は少し膨れ上がっており球体に近い丸みを帯びている。
その中央についているガラスの小窓の中は、暖炉のように炎が燃えている。
レンズをはめただけの無機質な両眼をしており、右手には工具であるドライバーを持っている。
怜央のデッキはどうやら「爆焔鉄甲(スチームアーミー)」と名のついたデッキらしい。
怜央「錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)の効果を発動。
手札の『スチームアーミー』カードを1枚捨てることで、
デッキから『スチームアーミー』を特殊召喚し、更に『スチームアーミー』モンスターを墓地に送る」
怜央「俺はさっき手札に加えた『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』を手札から捨て、
爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)を特殊召喚!」
■爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1300 守備力1800
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このターン墓地に送られた「爆焔鉄甲 炉衛生兵」以外の
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
③:手札の「スチームアーミー」モンスター1体を捨てて発動できる。
自分はデッキから2枚ドローし、その後1枚選んでデッキの一番下に戻す。
中心に赤い十字が描かれた鉄の帽子を被った細身の機兵が現れる。
全身は銅色で、左腕のスライド式の蓋のようなパーツの中にはオイルの入った注射器がある。
怜央「更に、デッキから『爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』を墓地に送る」
遊次「ヘッ、1枚で特殊召喚と墓地送り…2つアドバンテージを取れるってわけか」
怜央「そうだ。俺のモンスターは有能揃いだからな。だがここからが本番だぜ」
遊次が笑みを浮かべるが怜央は淡々とプレイを続ける。
怜央「手札の『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』を捨て、
『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』の効果を発動。2枚ドローし、1枚をデッキの一番下に戻す」
怜央「更に、『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』の効果を発動!
このターン墓地に送られた『スチームアーミー』1体を特殊召喚する!
来い、『爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』!」
■爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1200 守備力1800
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードをX素材とするXモンスターは相手の効果の対象にならない。
③:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、戦闘で破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
フィールドには現れたモンスターは、全体的に古びた金属で覆われており、煤けた銀色が特徴的だ。
頭部は円筒形で、前面にはシンプルなバイザーが取り付けられている。
胴体は四角く、腰部には工具を収納するケースが装備されている。
左腕には巨大な真四角の鉄の盾が取り付けられている。
遊次「一気にモンスターが勢ぞろいってわけか」
ここからが怜央のデッキの本領であろうことはすぐに察しがついた。
イーサン「怜央のフィールドにいるのは全てレベル4のモンスター…何か来る」
遊次の後ろで腕を組みデュエルを見守るイーサンも何かの予兆をおぼえる。
怜央の背後のドモンとダニエラからは緊張が消え、すでに余裕の表情となっている。
怜央「行くぜ。
俺はフィールドの『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』と、
『爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
2体のモンスターは地面に現れた黒い渦の中へと飲み込まれる。
怜央「猛進する重厚なる鉄塊、その汽笛は激戦の始まりを告げる」
怜央「エクシーズ召喚!ランク4!
『爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)』!」
■爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)
エクシーズモンスター
ランク4/炎/機械/攻撃力2000 守備力2500
レベル4モンスター×2
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがX召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「スチームアーミー」罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、このカード以外の自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。
フィールド・墓地から2体までモンスターを選択し、そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
EXモンスターゾーンに守備表示でエクシーズ召喚されたそのモンスターは、
大量の白煙を巻き上げる漆黒の機関車。
その巨大なボディは鋼鉄で覆われ、無数の歯車が絶え間なく回転している。
鋼鉄のボディは錆びついており、その表面に刻まれた無数のリベットがその力強さを物語っている。
頭部には巨大な煙突がそびえ立ち、そこからは白煙が勢いよく放出されている。
遊次「お出ましってわけか、エクシーズモンスター!くぅ~!クッソかっけえじゃねえかよ!」
遊次が目を輝かせながら目の前の鉄塊を見つめる。
怜央「あ、あぁ…?ま、まあな。これをカッコいいと思わねえ男はいねえよ」
突如自分のモンスターを褒められ困惑するも、怜央も悪い気はしていないらしい。
ダニエラ「な~にいい気になってんだい!気を抜くんじゃないよ!」
そんな怜央に後ろからダニエラがすぐに釘を刺す。
怜央「ぬ、抜いてねえよ!
『煙機関車(レイル・エクスプレス)』の効果を発動!
エクシーズ召喚に成功した時、デッキから「スチームアーミー」罠カードを手札に加える。
俺は『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』を手札に加える」
ダニエラの一言で怜央は再びデュエルに注力する。
遊次はその間にも、怜央が手札に加えた罠カードやレイル・エクスプレスの効果に目を通し、相手の動きをはかる。
遊次「(あのエクシーズモンスター…更なる展開に繋げる効果ばっかりで、決定打になる効果はない。
あいつの切り札は…別にいる)」
遊次は怜央のフィールドに残っている『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』にも目を向ける。
怜央「まだ終わらねえぜ。俺は墓地の『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』の効果を発動!
フィールドにスチームアーミーがいる時、デュエル中に1度こいつは墓地から特殊召喚できる!」
■爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1400 守備力1500
このカード名の、②の効果はデュエル中に1度しか使用できず、
①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れた場合、
またはX素材となったこのカードが墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。
③:自分・相手ターンに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として「スチームアーミー」Xモンスター1体をX召喚する。
そのモンスターは、古くてくたびれた金属で構成されたロボット。
胴体は厚みのある鉄板でしっかりと守られ、四角い肩には大きな鋲が散りばめられている。
全身を覆うその金属は、所々にカスリ傷や錆が見える。
片腕には大きなレンチが固定され、もう片方の腕には実用的なバーナーが取り付けられている。
脚部には重厚な鉄のブーツが装備されている。
頭部はシンプルで丸みを帯びたデザイン、一つのゴーグルが片目に取り付けられている。
怜央「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
遊次「な…ここで終わるのか。ちょっと意外だな」
灯「下級モンスターはフィールドに残したままなんだね」
イーサン「てっきりもう1度エクシーズ召喚が来ると思ったがな。まだ様子を見ているのか?」
Nextサイドの面々は怜央のプレイに少し警戒の色を見せるも、何が狙いかは未だはっきりしていない。
ダニエラ「怜央の奴…うまいこと手を隠したね」
ドモン「流石だな、デュエルってのは情報戦だと弁えてやがる。伊達に力でのし上がってきちゃいねえ」
怜央を知るダニエラとドモンは彼の意図を理解し唸る。
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【怜央】
LP8000 手札:3
①爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス) DEF2500 X素材:2
②爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー) ATK1700
③爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア) ATK1400
カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
①
□□②③□
フィールド魔法:1
伏せカード:1
【遊次】
LP8000 手札:5
魔法罠:0
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遊次「(まだ怜央のデッキの動きがピンと来ねえ。
自分のモンスターを装備させる効果があるのと、
フィールド魔法の効果からして、カードの位置が大事なのはわかるけど…)」
遊次「(…いや、ビビってたって何も始まらねえ。俺は俺のデュエルをするんだ)」
遊次はやりづらさを感じるものの、ペースを崩すまいと首を振る。
怜央「教えといてやるが、レイル・エクスプレスは、
バリケイド・ビルダーを素材にしていることで、相手の効果の対象にならない。
簡単には崩せねえぞ、俺の布陣は」
遊次「ヘヘ、望むところだぜ怜央。そう来なきゃ面白くねえよ」
怜央「面白い?何言ってやがる。
お前らがこの町から追い出されるかもしれないってのに、呑気なもんだな」
遊次「どんな状況でもデュエルはデュエル。楽しむ気持ちはなくならねえよ」
怜央「フン、デュエルが楽しいなんて思ったことはねえ。
俺にとってデュエルは這い上がるための"力"だ」
遊次「…」
怜央の言葉を聞き、遊次は眉を下げる。
遊次「もったいないな、デュエルの楽しさがわからないってのは。
お前の過去とか境遇がそうさせるんだろんだろ。
なあ…何があったんだよ、お前の過去に」
怜央「…お前なんかに教えてやる義理はねえ。もうすぐこの町から消えるしな」
遊次は真っ直ぐに怜央に問いかけるも怜央は拒絶する。
遊次の慣れ合うような空気が癪に障り、更に拒否反応を強めているのだ。
遊次「…そりゃそうか。デュエルで語り合わねえと意味がねえ。
デュエルは魂の会話だ。俺もお前に、魂こめてぶつからねえと」
遊次はかつて父が残した言葉を胸に更なる決意を固める。
遊次の目的はただ勝負に勝つことではない。
大切なのは子供達の正しい居場所となるようにUnchained Hound Dogsというチームを変えることだ。
そのためには心の内を曝け出してお互いにぶつかり合わなければならない。
遊次「いくぜ、俺のターン!」
遊次は指先に力を込め、デッキトップからカードをドローする。
遊次「自分フィールドにモンスターがいない時、『妖義賊-脱出のシェパード』を手札から特殊召喚できる!」
遊次は手札からモンスターを守備表示でフィールドに特殊召喚する。
■妖義賊-脱出のシェパード
効果モンスター
レベル3/地/獣/攻撃力900 守備力1100
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する。
②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●相手の墓地のモンスター2体を選び、自分フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
●相手はデッキからモンスター2体を選択する。自分は選択されたモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
そのモンスターは、シェパード犬の顔を持ちながら、整った二足歩行の姿勢で立っている。
彼の瞳は知性が感じられる深い茶色で、耳はピンと立ち、澄ました顔をしている。
首元にはシルクのスカーフが巻かれ、風になびいて優雅に舞う。
上半身にはカーキ色のジャケットが羽織られ、下からは白いシャツの襟が見える。
全体的にスリムかつ筋肉質な体つきで、動きには鋭さと俊敏さを兼ね備えている。
怜央「二足歩行の、犬…」
怜央が無意識にぽつりと呟きながらそのモンスターの効果を確認する。
遊次「さらに手札から『妖義賊-早撃ちのキッド』を召喚する!」
怜央「だが俺のフィールド魔法の効果で、他のモンスターの隣にしか召喚できないぜ」
遊次「わかってらぁ!来い、早撃ちのキッド!」
■妖義賊-早撃ちのキッド
効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1700 守備力1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
手札から「ミスティックラン」モンスターを1体特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カードを捨て、相手フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。
そのモンスターを破壊する。
シェパードの隣に現れたのは、茶色いカウボーイハットにピストルを持った金髪の少年のモンスター。
遊次「『早撃ちのキッド』の効果を発動!手札の妖義賊モンスターを特殊召喚する!」
遊次の言葉を聞いた瞬間、怜央は自らのフィールドに伏せられたカードを一瞬見つめるが、すぐに視線を戻す。
怜央「(…今じゃない。あの犬のモンスターの効果を使わせた後じゃなきゃ意味がねえ)」
遊次「来い、『妖義賊-駿足のジロキチ』!」
■妖義賊-駿足のジロキチ
効果モンスター
レベル4/地/獣/攻撃力1600 守備力800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ミスティックラン」モンスターを1枚手札に加える。
②:このカードがリリースされた場合、
相手フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。
ほっかむりを被った鼠のモンスターがキッドの隣に召喚される。
-----------------------------------------------------------
【遊次のフィールド】
①妖義賊-脱出のシェパード
②妖義賊-早撃ちのキッド
③妖義賊-駿足のジロキチ
カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
□
□①②③□
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遊次「ジロキチの効果発動!デッキから妖義賊モンスターを手札に加える!
俺が加えるのは『妖義賊-雲龍のリヘイ』だ」
遊次はデッキからPモンスターである妖義賊モンスターを手札に加える。
怜央はジロキチの効果を見つめている。
怜央「…なるほどな。こいつは少し厄介だ」
怜央「お前の『脱出のシェパード』は自分のモンスターをリリースすることで、
相手の墓地やデッキからモンスターを2体奪う能力…」
怜央「それに、『駿足のジロキチ』はリリースされた時に相手のフィールドからモンスターを奪う能力。
2体のモンスターのシナジーで合計3体ものモンスターを奪おうってわけだ」
遊次「どうやら気づいたらしいな」
遊次はニヤリと口角を上げる。
怜央「相手のカードを盗むのがお前のデッキの特徴か。
散々俺らに物を盗むなと言っておいて、俺らよりよっぽど手癖が悪ぃらしい」
怜央は両手を上げ手のひらを上に広げながら、冗談っぽく後ろのドモンとダニエラの方を振り返る。
ドモン「ハハ!こいつぁとんだ皮肉だぜ」
ダニエラ「デッキはデュエリストの本質を表すからねぇ。
アンタ、本当は人に説教垂れるような人間じゃあないんじゃないのかい?」
ドモンとダニエラも遊次を嘲笑う。
デュエルディスクは、所有者の性質からその人物に合うカードを創造し、それがデッキとなる仕組みだ。
デッキはデュエリストの本質を表すというダニエラの言葉は、あながち否定できないのである。
デュエルディスクを開発したニーズヘッグ・エンタープライズは、
自分だけのカードを使うことによってよりモンスターに対する愛着が生じるのだと説明しているが、その仕組み自体は詳しく公表されていない。
遊次「うるせー!!泥棒じゃなくて義賊なんだよ!」
遊次は負けじと反論し、小競り合いをしている。
イーサン「毎回言われてるな、あいつのデッキの特徴のこと…」
遊次達の小競り合いをしり目にイーサンが呟く。
怜央「俺のレイル・エクスプレスはオーバーレイユニットの効果で効果の対象にはならない。
となると『錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』か『火線工兵(ヒート・エンジニア)』のどちらかしか奪えねえわけだが…」
怜央「面倒な効果には変わりねえ。だから先に手ェ打たせてもらうぜ。
俺は『爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)』の効果を発動!
オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから『スチームアーミー』を特殊召喚する!」
レイル・エクスプレスの周りを漂う光球が一つ弾け、それと共にレイル・エクスプレスが白煙を勢いよく噴出する。
それを見つめる遊次は警戒を強める。
怜央「俺はデッキから『爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を特殊召喚する」
■爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1500 守備力1000
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法・罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードの装備モンスターはリリースできず、素材を必要とする特殊召喚のための素材にできない。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
現れたモンスターは、表面には方位を示す針がついており、羅針盤のように見えるが、
全体は丸みを帯びており凹凸のある見た目をしている。
羅針盤の頭にはピンが付いている。それはまさに手榴弾の形だ。
中央の火のエンブレムがその存在感を際立たせている。
怜央「まだ終わりじゃないぜ。
更に『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』の効果を発動!
自分・相手ターンに1度、フィールドから『スチームアーミー』モンスターを1体選択し、
フィールドのモンスターに装備できる!」
怜央「俺は『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』をお前のジロキチに装備する!」
怜央の命令により、『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』が
『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』をジロキチに向かって投げると、錆びた鎖がジロキチの身体に巻き付く。
遊次「くっ…なんだこいつ…!」
自分のモンスターに巻き付く異形のモンスターに遊次は驚く。
怜央「『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を装備したモンスターは、
リリースできず、特殊召喚の素材にもできねえ」
遊次「なるほどな。これがお前のデッキの動き…相手にモンスターを装備させて俺の行動を縛るってわけか」
怜央「そうだ。ジロキチに『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』が装備されたことで、
ジロキチをリリースして俺のモンスターを奪う動きは封じた」
遊次「それだけじゃねえ…とんでもねえ効果もついてんじゃねえか」
遊次はデュエルディスクにより『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』の効果を確認する。
怜央「その通りだ。
『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を装備したモンスターが破壊されると、
爆弾が爆発して、近くにいるカードを全部巻き込んじまう。モンスターも、魔法・罠カードもな」
遊次「ってことは、ジロキチが破壊されたら、その隣にいるキッドも破壊されるってわけか」
怜央「そうだ。ジロキチは今いるモンスターの中じゃあ一番端にいる。
もし真ん中にいれば全員巻き込めたんだがな」
遊次「(確かにジロキチが破壊されれば他のモンスターも巻き添えを食らう…
だが、あいつのフィールドにはモンスターを破壊する効果はねえ。でも…)」
遊次が怜央のフィールドの『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』を見つめる。
遊次「(わかってんだよ、お前の考えてることは…!
でもこのまま何もしなけりゃラチが明かねえ…)」
遊次「飛び込むしかねえか、火の中に…!」
遊次は意を決してプレイを続ける。
遊次「確かにジロキチをリリースしてお前のカードを奪うことはできねえ。
でもシェパードがリリースするのはジロキチじゃなくてもいいんだ。
俺の動きを止めたことにはならねえぜ」
怜央「…」
遊次「『妖義賊-脱出のシェパード』の効果を発動!シェパード自身をリリースして効果を使用する!」
シェパードの体が下からゆっくりと光の粒へ変わり、フィールドから消えてゆく。
遊次「シェパードの効果は、相手のデッキか墓地からモンスターを2体、
効果を無効化・攻守を0にして俺のフィールドに特殊召喚できる効果だ。
俺はお前の墓地から、
『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』と、
『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』をいただくぜ」
『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』は怜央が手札から捨てたカードであり、
『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』は
レイル・エクスプレスの効果を使用する時に取り除かれたエクシーズ素材だ。
怜央「永続罠、『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』を発動!」
しかし、遊次の発動した効果に対して怜央がチェーンする。
■爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)
永続罠
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがフィールドに存在する限り、
装備カードを装備している相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
②:相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
その特殊召喚されたモンスター1体を選び、
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、そのモンスターに装備カード扱いとして装備する。
③:相手メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、
自分の除外状態の「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
遊次「やっぱしそう来るか…」
怜央のターンにレイル・エクスプレスの効果で手札に加えた罠カードだ。
手札に加えた時に遊次も効果を確認しているため、この発動は想定内だった。
怜央「このトラップがある限り、相手がモンスターを特殊召喚した時、
1ターンに1度、その内1体にデッキからスチームアーミーを装備できる。
さあ、後は好きに俺の墓地から持ってけよ、モンスターを」
怜央は遊次のプレイに全く臆することなく、余裕の表情を見せる。
遊次「チェーン1で発動した『脱出のシェパード』の効果。
来い、『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』、
『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』!」
遊次のフィールドに怜央のモンスターが2体並ぶ。
ただし効果は無効化され、攻守は0となる。
フィールドの一番右端にいるジロキチに爆弾が装備されているため、
巻き添えにならぬよう、ジロキチからは離れて特殊召喚される。
怜央「その瞬間、『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の効果を発動!
お前のフィールドに特殊召喚された『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』に、
デッキから「スチームアーミー』を装備する。
『爆焔鉄甲 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』を装備!」
■爆焔鉄甲 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1400 守備力1200
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法・罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:このカードが召喚に成功した場合に発動できる。
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体とこのカードのみを素材として、
「スチームアーミー」Xモンスター1体をX召喚する。
②:このカードの装備モンスターと同じ縦列・隣のカードが破壊された場合に発動できる。
装備モンスターを破壊する。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
-----------------------------------------------------------
【遊次のフィールド】
①妖義賊-早撃ちのキッド
②妖義賊-駿足のジロキチ→羅針榴弾(コンパス・グレネード)が装備されている
③爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)→時計炸弾(クロック・ダイナマイト)が装備されている
④爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)
カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
□
④【③】①【②】□
※【】は「スチームアーミー」が装備されているモンスター
-----------------------------------------------------------
遊次が怜央から奪った「『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』に、
置時計型のモンスターが鎖を巻き付ける。
錆びた銅色のふちに赤い時計盤と金色のギリシャ数字と長針・短針がついている。
その背中にはX字上に2本のダイナマイトが背負われている。
怜央「『 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』も『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』と同じように、
装備モンスターが破壊された時に周りのモンスターを巻き込む効果がある。
更に、装備モンスターの隣のモンスターが破壊された時に、
自分の装備モンスターを破壊する効果がある。この意味はわかるよな?」
怜央は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
遊次「…ジロキチが破壊されれば『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』の効果で、
その隣の『早撃ちのキッド』も破壊される。
キッドが破壊されたら、『 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の爆弾が作動し、
それを装備している『狙撃兵(バーン・スナイパー)』も破壊され、
更には『 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の効果で、
隣にいる『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』も破壊される…」
遊次「つまり、俺のフィールドは全滅ってわけだ」
灯・イーサン「…!」
淡々と告げられる恐ろしい事実に灯とイーサンは戦慄する。
遊次「…でも、肝心の破壊効果がお前のフィールドに見当たらねえな」
怜央「…心配すんな。今から見せてやるよ」
怜央は不敵な笑みを浮かべ右手を前に突き出す。
怜央「『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』の効果を発動!
こいつの効果により、相手ターン中にエクシーズ召喚を行うことができる!」
灯「そんな…!」
イーサン「ついに来るか、怜央の切り札が」
怜央「俺は『火線工兵(ヒート・エンジニア)』と『錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
2体のモンスターが黒い渦の中に飲み込まれてゆく。
怜央「燃え盛る鋼鉄の機兵よ、爆煙と共に現れ、敵陣を焦土と化せ」
口上を唱えると、黒い渦の中から光が爆発を起こす。
怜央「エクシーズ召喚!来い、我が切り札!
『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』!」
怜央がそのモンスターを呼ぶと、辺りは炎と蒸気に包まれる。
段々と白い蒸気の中から、赤い2つの光と燃え盛る炎の色が浮かび上がる。
■爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)
エクシーズモンスター
ランク4/炎/機械/攻撃力2400 守備力2400
レベル4モンスター×2
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードの攻撃力はこのカードのX素材の数×200ポイントアップする。
②:このカードのX素材を一つ取り除き、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
このカードが炎属性モンスターをX素材としている場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードのX素材を任意の数取り除き、その数だけフィールドのモンスターを対象として発動できる。
対象のモンスター以外の自分のフィールド・墓地の「スチームアーミー」モンスターを選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
鋭く光る赤い目を持つその機械のモンスターは、赤と黒の金属板で覆われた洗練されたボディを持つ。
歯車や配管がその機体から露出し、常に高温の蒸気を噴き上げている。
背中には大きな燃料タンクとブースターが装備され、熱を放ちながら常に動き続けている。
左腕にはバーナーが装備されている。
遊次「…これがお前の切り札か」
その無機質だが闘志を宿した姿に遊次は圧倒される。
怜央「『炎機公子(エクスプロード)』の攻撃力はオーバーレイユニット1つにつき200ポイントアップする。
よって攻撃力は2800となる」
怜央「『炎機公子(エクスプロード)』の効果を発動。
炎属性モンスターをX素材としている場合、オーバーレイユニットを1つ使い、モンスターを1体破壊する。
お前のフィールドの『駿足のジロキチ』を破壊する!」
エクシーズ素材として取り除かれた『火線工兵(ヒート・エンジニア)』は自身の効果で除外される。
効果の宣言と共に、『炎機公子(エクスプロード)』が周囲に揺蕩う光球を握り潰し、
左腕のバーナーを遊次のフィールドの『駿足のジロキチ』に向ける。
X素材を1つ取り除いたことで炎機公子(エクスプロード)』の攻撃力は2600となる。
次の瞬間、高温の火炎放射によって『駿足のジロキチ』が一瞬で炎の中へと消える。
遊次「ぐっ…!」
ソリッドヴィジョンであるため温度は感じないはずだが、遊次は燃えるような熱さを覚える。
怜央「ジロキチが破壊されたことによって、
装備されていた『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』の効果を発動!
装備モンスターが破壊された時、隣のモンスターを破壊する!」
火炎放射が止まると、ジロキチの姿はなく、
ジロキチの立っていた場所に『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』が転がっている。
そしてその直後、轟音と共に爆発する。
遊次「ぐあぁあッ…!」
フィールドに爆炎が巻き上がり、思わず腕で顔を隠し、爆風から身を守る。
怜央やその後ろのドモン・ダニエラは真っ赤に燃え上がるそのフィールドを余裕の表情で見つめていた。
灯「きゃあっ!!」
遊次だけでなく後ろにいた灯までもその爆風の衝撃を感じる。
爆風が収まるとジロキチの隣にいた「妖義賊-早撃ちのキッド」が焦げ付いた姿で倒れており、
やがて割れるような音と共にその姿は散り散りになる。
怜央「まだ終わらねえぜ。お前が言った通りの光景が現実になるんだ。
お前のフィールドの『灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』に装備された
『時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の効果を発動!
隣のモンスターが破壊された時、装備モンスターを破壊する!
『『灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』を破壊だ!」
突如、再びフィールドを爆風が襲う。
遊次達はなおも無意識的に腕で爆風を防ぐ。
フィールドは爆炎に包まれながら、怜央はなおも高らかに声を上げる。
怜央「更に、『時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の効果を発動!
装備モンスターが破壊された時、隣のモンスターをその爆風に巻き込む!
お前の最後のモンスター、『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』を破壊!
これでお前のフィールドは全滅だ!」
先ほどの爆風が収まらぬ内に爆発が更に連鎖し、フィールドは黒煙に包まれる。
そして黒煙が薄れてゆくと、空っぽになった自分のフィールドが目の前に現れる。
遊次「クソッ…まんまとやられたぜ」
完全に相手の思惑通りに事が運んだこと、そして抗うことができなかったことに悔しさを滲ませる。
イーサン「破壊が連鎖して、4体ものモンスターが全て破壊された…。
これが怜央のデッキの力ってわけか」
全てのモンスターを木端微塵にする圧倒的な破壊力。
しかしそれは成立させるためには相手のモンスターの位置のコントロールと、
的確に相手のモンスターに爆弾を巻き付けるプレイングがあってこそ成せる業だった。
ドモン「フン…あの野郎もようやく俺らに噛みついたことを後悔するだろうな」
ダニエラ「通常召喚も使ったし、散々色んな効果を使った挙句にフィールドはガラ空きさ。もう打つ手はないだろう」
ドモンとダニエラはすでに勝利を確信しているようだった。
第15話「爆焔鉄甲(スチームアーミー)」 完
Unchained Hound Dogsの怜央・ドモン・ダニエラは踵を返し、自分達の居場所へと戻っていった。
その背中からは、突如として現れ自分達の存在を揺るがすNextに対する怒りが滲み出ていた。
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神楽 遊次(かぐら ゆうじ):ttps://imgur.com/a/5NdVaZI
花咲 灯(はなさき ともり):ttps://imgur.com/a/uyRG5dJ
イーサン・レイノルズ:ttps://imgur.com/a/XUIjiTv
鉄城 怜央(てつしろ れお):ttps://imgur.com/a/TGqdxmy
ドモン・ハルク:ttps://imgur.com/a/v3jEily
ダニエラ・シルヴァ:ttps://imgur.com/a/2cz4tPl
※URLの最初に「h」を付けてURLを開くと画像を見れます。
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日も暮れ始め、空の橙色は少しずつ黒色へと変貌していく。
残されたNextの面々である遊次・灯・イーサンと、依頼者である女性教師「秋山」は、
これから行うべきことについて話を進める。
秋山の後ろでは、Unchained Hound Dogsの一員であった少年「トーマス」が、
事態を飲み込みきれず不安げな表情を浮かべている。
彼が他人の家の壁に落書きをしていたところを目撃した秋山が、彼の悪事を止めさせるべくNextに依頼したのが発端だった。
その結果、イーサンがUnchained Hound Dogsのドモンをデュエルで打ち破り、トーマスをチームから半ば無理やり引き剝がした形だ。
遊次「…暗くなってきちまったな」
誰から口を開くかと様子を伺うような沈黙の後、遊次が空を見上げながら切り出す。
遊次「どうするトーマス?
今からお父さん・お母さんと話はできるか?事情は俺らから説明するからさ」
遊次はトーマスの目線に合わせて膝を曲げ、優しく語りかける。
トーマスは俯きながら沈黙している。
トーマス「……うん。わかった」
数秒した後、トーマスはか細い声で心のこもらない返事をした。当然の事ながら、全く気は乗らない様子だ。
突如複数人の大人が家にやってきて、自らの犯した罪が両親に筒抜けになるのだ。
自業自得の側面はあるものの、トーマスの鬱屈とした心情は想像に難くない。
自らにも大きな責任を感じ、秋山は教え子を複雑な気持ちで見下ろしている。
秋山「…トーマス君、本当にごめんなさい。
何度謝っても許されることじゃないけれど、私が目を見張らせていればこんな事にはならなかったのに…」
トーマスは何も答えない。
秋山にとってそれはおおよそ想定通りであったが、謝罪の言葉を繰り返せば許してくれるかもしれないと、心のどこかで僅かにでも思ったのだ。
そしてそんな自分の浅ましさに、秋山の中でまた自己嫌悪の感情が沸き上がる。
イーサン「あまり自分を責めないでください。
秋山さんがうちに来てくれなければ、トーマス君は今もまだ悪事に手を染めていたでしょう」
灯「そうですよ!
秋山さんみたいに子どものために立ち上がれる先生って、意外と多くないと思います。」
秋山「…すみません、ありがとうございます」
イーサンと灯の言葉は本心であったが、それでも秋山は居所の悪さを感じたままだった。
遊次「じゃあ、行くか。
トーマス、お家に案内してくれるか?…てか、お父さんとお母さんは家にいんのか?」
トーマス「…うん、いるよ。今日は休日だし」
遊次「そっか。じゃあ案内を頼む」
トーマス「…うん」
とぼとぼと自宅に向かって歩き出すトーマスに、4人の大人がついて行く。
トーマス宅までの道すがら、多少の会話はあったものの、冗談を言う雰囲気でもなく、
暗い空気が続いた。
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~トーマス宅~
古めかしいアパートの3階の角部屋にある一室。そこがトーマスの家だった。
何もおかしいことはないが、なんとなく一戸建てを想像していたNextの面々は少しだけ面食らった。
家庭訪問でそのことを知っていた秋山だけは、いよいよ両親に会うという緊張感だけを表情に滲ませていた。
部屋の鍵を持っているトーマスがいるものの、いきなり知らない大人が部屋に入るわけにもいかず、まずはチャイムを鳴らし、
「はーい」と陽気な声と共にドアを開けた母親が、目の前の様子に眉を顰めたのだった。
母親はやや痩せこけた見た目で、茶色の髪を後ろで無造作に束ねており、白い肌にそばかすが目立っている。
使い古されたヨレヨレのエプロンを着け、どう見ても来客を想定していない格好だった。
玄関口で秋山が1,2分ほど軽い事情説明をした後、家に上がり込む。
見知らぬ大人が家に入り込んできたことで、リビングでタバコを吸っていた父親が目を丸くする。
その中には息子の担任教師もいたためか、よからぬ予感を抱き、急いで灰皿にタバコを押し付け立ち上がる。
やや小太りの父親は息子に似た短い金髪に蒼眼で、無地の白いシャツと灰色のハーフパンツを着ている。
狭いアパートと両親の様相から、
トーマスにとって家庭も居心地の良い場所ではなかったのだろうとイーサンは察しがついていた。
だからこそ別の居場所を求めたのだ。
Nextの面々は秋山に紹介された後、各々自己紹介を済ませると、
座る席がないことに気付いた母親が、慌ただしく小走りで別室に向かい、そこから2つ椅子を運んでくる。
それでも椅子が足りないため、トーマス、秋山、イーサンが席につき、遊次と灯はイーサンの横で立ったままとなる。
トーマスの隣に座った秋山から、向かいに座る両親に事情を話した。
息子のトーマスが友人とトラブルに遭い不登校になっていること、不良グループに誘われその影響で壁に落書きをするに至ったこと。
秋山がそのチームの一員の男に立ち向かうも、オースデュエルにて不干渉の契約を叩きつけられ、
結果的にドミノタウンのなんでも屋であるNextに解決を依頼したことなど、これまでの経緯を話した。
時折、父親がトーマスに対して怒りの眼差しを向けていたが、トーマスは目を合わせぬよう俯き続けていた。
そこからはイーサンが説明を引き継いだ。
イーサン「秋山さんからの依頼があってから、我々はその"Unchained Hound Dogs"という不良チームの一員と接触し、
トーマス君と関わらないことを条件にオースデュエルを行いました。
そのデュエルに勝利したことでトーマス君を不良チームと引き離したので、その点については心配ありません」
イーサンは両親に余計な心配をさせまいと、結論をすぐに述べた。
トーマス母「…そうですか。そんなことが…。
そのチームのこと、最近すごく耳にします。
デュエルで人を脅して、店の物とかお金とかを奪う事件が多発してるって…」
Unchained Hound Dogsの勢いは日に日に増していた。
ドミノタウンの住人であれば誰もが耳にしたことがあるほどその悪名は轟いていた。
遊次達はやはり彼らを止めなければならないことを再認識する。
トーマス父「学校に行ってないのは薄々わかってたけどよ…。
チッ、まさかそんなヤベェ奴らとつるんで家に落書きたぁ、ふざけたことしやがって…」
トーマス父「うちの息子がご迷惑をおかけしました。申し訳ありません」
トーマスの父が礼儀正しく謝罪をするも、
息子に対して舌打ちをしたのを誰も見逃さなかった。
彼の怒りの感情も至極当然ではあるが、彼自身の粗暴な一面が垣間見えたのもまた事実だった。
それもトーマスが非行に走ったことに繋がっているのだろうと肌で感じたものの、
結局はただの直感に過ぎず、その情報だけで彼を悪と断ずるにはあまりにも彼らを知らない。
胸のつっかえを飲み込みながら、遊次は問題の本質について話し始める。
遊次「問題は、トーマス君が学校に行けなくなったことと、その原因です。
さっき秋山先生も話した、友達とのトラブルってやつです。
トーマス、こっからは自分で話せるか?」
遊次はいまだ俯いたままのトーマスに語りかける。
トーマスは意を決して前を向くが、その焦点は両親の間の虚空に向いている。
トーマスは1か月前、友人のマイクにデュエルで勝ってしまったことからいじめが始まったことと、
学校にも行かなくなったことを正直に語った。
不登校が始まった初日は学校から自宅に電話をしたため、トーマスが学校に行かなかったことは両親も知っていたが、
1日ぐらいサボる時もあるだろうと、父親が大して気にも留めなかった。
母親からはトーマスに注意したものの、強い言い方をしなかったため、トーマスは不登校をやめることはなかったのだ。
途中から秋山が説明を補足する。
秋山「2日目も学校に来なかったのですが、私はあえて自宅には連絡せず、何か問題があると考え、先に事情を探りました。
そして不良グループに辿り着き、結果は先ほど述べたとおりです」
不登校2日目に家に連絡しなかった理由は、もしかしたら家庭に問題があるかもしれないと考えたためだが、それはこの場では口にしなかった。
遊次「結局、友達と仲直りしないと問題は解決しないと思います。あ、仲直りじゃなくても、とにかくいじめを止めさせないと」
トーマス父「しゃらくせえ、何がいじめだ。1発殴り返してやりゃあいいだろ、なあトーマス」
トーマス「できないよ、そんなこと…」
弱気な息子の発言を聞きまた舌打ちをする父。
秋山「その点については私から責任を持ってマイク君たちにお話します。場合によっては彼らの親御さんにもお話します」
イーサン「もしまた何かあれば我々も協力します」
トーマス母「…ありがとうございます。でも不良グループから引き離してくれただけでも十分です。
ここからはこちらの問題ですので…。ご迷惑をおかけしました。すみません」
事情を深く知らない他者であるNextがここから介入できることはあまりないだろう。
オースデュエルの強制力でいじめを止めさせるといった解決方法には助力できても、そのやり方が友人間の関係性の修復に適当とは思えない。
自分達がいられると言いにくいことも多々あるだろうと遊次達も理解していた。
遊次「そうですか。…わかりました。じゃあこっからは秋山先生とお父さんお母さんにお任せします」
秋山「はい。ここまで本当にありがとうございました。依頼料の方はお支払いし、また連絡しますので…」
灯「あ、全然気にしないでください!いつでも大丈夫です」
灯は両手を前で軽く振って場違いな話を静止する。
遊次「トーマス、急に俺たちみたいな知らない奴にあれこれ言われんのはイヤかもしれないけど、俺らはお前の居場所を奪いたいわけじゃない。
あのなんとかドッグってチームにも友達はいただろうし、居心地の良さもあったんだろ」
トーマス「…居心地はよかったと思う。チームに入ったばっかりだけど、たぶん」
遊次「そうだよな」
遊次はトーマスの言葉を聞くと、両親の方へ向き直る。
遊次「お父さんお母さんには話してなかったけど、明日俺はあのチームの奴らとデュエルで決着をつけます」
トーマス父「決着…?」
遊次「はい、絶対に俺が勝ってあいつらに悪事を止めさせます。
だから…もしトーマスがそのチームの奴らとまた会いたいと言うなら、どうか止めないでほしいんです」
トーマス父「そりゃあ無理だ。息子に悪影響を及ぼす奴らに関わらせるわけにはいかねえ」
遊次「もう悪いことはさせねえ!俺があいつら自身を変えてみせます!」
遊次の強い決心の言葉に押され父親は言葉をつぐむ。
イーサン「もし遊次が不良チームに勝ち、悪事を止めることができたら、秋山先生の方に連絡します。
トーマス君がまた学校の友達と仲直りできるか、そもそも仲直りしたいかもわからないですし、居場所は多い方がいいと思います」
トーマス父「…まあ、本当にそのチームが改心するなら考えんこともねぇけどよ」
トーマスの父はしぶしぶ了承する。
遊次「ありがとうございます。
では、俺たちはここで。頑張れよ、トーマス」
トーマス「…うん」
トーマス「…あの!」
遊次たちが玄関に向かおうとした時、トーマスが声を掛ける。
遊次「ん?」
トーマス「その…ありがとう。
皆が言ってたこと、正しいと思う。
あのままチームにいたら、僕はもっと悪いことをしてたかもしれない。
でもそんなこと、本当に僕がしたいことじゃない。僕はただ…」
トーマスが頭の中で言葉を探し、遊次はただそれを待つ。
トーマス「僕はただ、居場所がほしかっただけなんだ」
息子の率直な気持ちを聞き、トーマスの母ははっとする。
その言葉は、トーマスにとって家庭が自分の居場所でないことを指していたからだ。
遊次「あぁ。俺があのチームを、お前の帰れる場所にしてみせる」
トーマスは遊次を見て小さくうなづく。
少し心残りはあるものの、依頼人と両親の要望であるためNextにはここからの出番はない。
灯「ひとまずは前に進んだかな?」
遊次「そうだな。秋山先生ならうまくやってくれると思うぜ」
Nextの3人は階段を降りてアパートを出て安ど安堵の息を漏らす。
遊次「とりあえず灯とイーサンもお疲れ!
特にイーサンは秋山さんの依頼にきっちり応えてくれたしな」
イーサン「おう。後は明日だな。怜央って奴との決闘」
遊次「あぁ。
トーマスのためにも、他のチームの子供たちのためにも、あのチームはあのままじゃダメだ」
遊次は自らのデュエルディスクに無意識に触れる。
灯「デュエルで語り合う、ってやつだね?」
それを見て灯は遊次がやろうとしていることを汲み取る。
遊次「へへ、それだ。デュエルは魂の会話…父さんが教えてくれた、俺が一番好きな言葉だ」
遊次がどこか遠くの空を見つめながら呟く。
遊次「ただぶっ倒して悪事を止めさせるだけじゃ意味がねえ。あいつと…怜央と魂の会話をしなきゃな」
灯とイーサンは静かに頷く。
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翌日 17:55
間もなく日が暮れる頃。
怜央との決闘の時間まではまだしばらくある。
遊次・灯・イーサンは、怜央と約束をしていた廃工場前に到着したところだった。
廃工場前は錆びた鉄材やドラム缶が放置された広いスペースがあり、ここが決闘の場となる。
工場が使われなくなって何年も経過しており、今は溜まり場のような使われ方をしている。
自分達が入ってきた入り口から見て左端の少し離れたところに、2人の子供が話しているのがちらりと見える。
イーサン「まだ来てないみたいだな」
閑散とした周辺を見回しながら呟く。
怜央やドモン・ダニエラの姿が見えないことから、自分達の到着が早かったことがわかる。
遊次「ま、5分前集合するようなタイプじゃねえとは思ってたけどよ」
灯「というか、ほんとに来るのかな?」
3人は工場前の広場の真ん中まで歩みを進める。
遊次「まさか俺に恐れをなして逃げたんじゃ…痛っってぇ!!」
遊次は唐突に内くるぶしの辺りに痛みを覚える。
後ろを振り返ると、頬に絆創膏を貼った黒人の小学生くらいの男の子がこちらを睨みつけていた。
その後ろには黒髪で片目を髪で隠したクマのぬいぐるみを持った女の子がおとなしく立っている。
廃工場に入った時に廃工場の端で話していた2人の子供だ。
遊次「何すんだお前!」
こちらを睨む男の子が痛みの原因であるとわかり、遊次は声を上げる。
男の子「トーマスを返せ!」
男の子はそういうと遊次の足に蹴りを入れようとするが、咄嗟に遊次がかわす。
遊次「おいやめろ…このっ…」
遊次はまだなおも迫りくる男の子の肩を掴み必死に静止する。
灯「トーマスってあの?」
灯はイーサンの顔を見上げる。
イーサン「君たち、もしかしてUnchained Hound Dogsの?」
トーマスという名前と遊次に向けられている敵意から、目の前の子供たちの素性に察しがつく。
女の子「…うん、そうだよ」
遊次と男の子の小競り合いには我関せずと言った様子で、女の子は淡々と答える。
遊次「いったん落ち着け!俺らはトーマスのいたずらを止めさせたかっただけだ!」
男の子「そんなのお前らには関係ねーよ!」
遊次「あるっての!担任の先生から頼まれたんだから!」
女の子はまだなお続く2人の争いを尻目にため息をつくと、面倒くさそうに声をかける。
女の子「そろそろやめときなよ、リアム」
男の子「なんだよミオ!こいつらの味方すんのか!」
リアムと呼ばれた男の子は未だ収まらぬ怒りをミオという女の子にぶつける。
ミオ「その人は怜央がやっつけてくれるんだから、リアムは何もしなくていいの」
リアム「…ケッ」
リアムはようやく矛を収める。
遊次「やっぱあいつらのチームの奴らか。
急にトーマスを引き剥がしたのは悪かったけど、これ以上いたずらを続けさせるわけにはいかねえんだ」
灯「君たちもそういうことしてるの?壁に落書きとか」
リアム「ヘッ、そうだよ。文句あっか」
イーサン「町の人に迷惑だろ」
イーサンは淡々と返す。
リアム「知らねーよそんなの。町が俺たちに何をしてくれたんだよ」
遊次「言っとくけど、落書きも犯罪だからな。
お前らは子供だから見逃されてるだけだ。大人だったら逮捕だぞ。
で、お前らがこのまま大人になったらいずれそうなっちまうから、俺らが止めようと…」
ミオ「そんなのわかってる。でも、じゃあ落書きとか盗みをやめたら、私たちのことは誰が見てくれるの」
遊次「えっ…」
横からミオが口をはさみ、それが思いのほか芯を食う内容だったことから遊次は少し驚く。
ミオ「私たちは見捨てられた。でも、町のみんなは知らんぷり。
それでも、私たちはただ大人しくしてろっていうの?」
遊次「…」
遊次は簡単には返答は答できなかった。彼女の言っていることも理解できるからだ。
そして、それはすぐには解決できない問題であり、綺麗ごとだけで片付くものでもなかった。
ミオ「怜央は、私たちの気持ちをわかってくれる。一緒に背負ってくれるの。
私たちがこの町の大人に思ってるムカつく気持ちとか、悲しい気持ちとか、全部。
まるで、自分のことみたいに」
灯「一緒に…背負う?」
リアム「そうだ!
怜央の兄貴もドモンの兄貴も、ダニエラの姉貴も…俺らと一緒に怒ってくれるんだ!
俺たちを見捨てた大人たちに!だから俺たちはあの人たちについて行くって決めたんだ!」
リアムがチームを引っ張る3人への想いを熱く語る。
遊次達は、怜央らが報われない子供達に厚く信頼されている理由が理解できた。
遊次「お前たちの気持ちもわかるぜ。
でも関係ない人を脅して物を奪ったりして…その先に何があるんだよ」
??「そうしなきゃ生きていけないからだ」
廃工場の入口の方から聞き覚えのある声がする。
声のした方を見ると、怜央・ドモン・ダニエラがこちらを見つめていた。
遊次「…来たか、怜央」
リアム「兄貴!姉貴!」
怜央は廃工場前の広場の中央へと歩みを進める。
その眼差しは遊次に対する敵意をむき出しにしていた。
ドモンとダニエラは中央から数歩下がった所に立つ。
怜央「嫌がらせのためじゃねえ。俺らは俺らだけで生きていかなきゃならねえんだ。
だから俺たちを見て見ぬふりして私腹を肥やしてる大人どもから、力で奪いとるしかない」
怜央は自らの意志を曲げることなく遊次に食らいつく。
遊次「それを続けてたって未来はねえよ。お前だってわかってるんじゃないのか?」
怜央「なら飢えてのたれ死んだらいいってか?」
遊次「そんなわけねえだろ!貧しい子供を放っておいていいわけじゃねえ。
でも今のやり方じゃ子供達まで不幸にするって言ってんだ」
遊次と怜央はお互いに一歩も譲らず言葉をぶつけ合う。
イーサン「自分達の飢えを凌ぐだけに留まらないだろ。
お前達の脅迫とデュエルによる略奪は日に日に激しくなってる。
力を誇示してチームの勢力を拡大しようとしてるようにしか見えないが?」
怜央「フン、何もわかってねえなオッサン。
"奪う側"にまわらなきゃいつまでも"奪われる側"から抜け出せねえ。
圧倒的な力を示すことこそが、俺達が生き残る道だ」
ドモン「おいおい、討論会をしにきたわけじゃねえだろ、怜央。
こいつらに何を言っても無駄だ」
このままだと口論が激化するだけだと感じたドモンが痺れを切らして口を挟む。
ダニエラ「デュエルで捻じ伏せちまえばそれで終わりさ」
怜央「…そうだな。お喋りが過ぎたみたいだ。こいつでケリをつけようぜ」
怜央はドモンとダニエラの言葉を受けた後、一瞬の間目を瞑る。
その後、デュエルディスクをかざし、決闘の意志を告げる。
遊次「…あぁ!」
遊次も怜央に応えデュエルディスクをかざす。
灯・イーサン、ドモン・ダニエラは、自分達にとっても分岐点となるデュエルの始まりに固唾を飲む。
遊次「俺から提示する条件は1つ。
お前らのチームが2度と悪事を働かないことだ」
遊次「チームを解散しろとは言わねえ。子供達の居場所を作ったことはすげえと思ってる。
ただ、子供達も、お前ら自身もちゃんと歩き出してほしいだけだ」
遊次が真っ直ぐ怜央を見据え、力強く己の意志を伝える。
怜央「いらねえお節介だぜ。それは大人共に屈するってことだ。
それじゃガキ共も報われねえ」
怜央は横目にリアムとミオを見る。
リアムとミオはそれに応えるように頷いてみせる。
怜央「俺の要求は2つだ。
二度と俺らUnchained Hound Dogsに関わらないこと。
それと…この町、ドミノタウンから消えること」
「…!」
怜央の提示する条件を聞き、遊次・灯・イーサンに緊張が走る。
灯「そんな…こっちは1つしか提示してないでしょ!?」
怜央「何言ってやがる。
オースデュエルで俺らの行動を制限したいのはお前らの方だろうが。
俺らは目障りな小蠅を払い落としたいだけだ。どうしてもお前らを追い出さなきゃいけない理由はねえ。
ならそっちが飲む条件が重くても文句は言えねえよな?」
オースデュエルは両者合意のもと成立するため、相手の提示した契約に異議を呈することはできる。
しかしオースデュエルによってより強く相手に強制力を働かせたい側がリスクのある条件を飲むというのは当然の理だ。
怜央にとって、今提示した条件以上に大きなリスクを冒してまで、Nextを追い出さなければならない理由はないからだ。
怜央「もしかして負けんのが怖ぇのか?
威勢よく突っかかってきた癖に、もうすでに負けを想定してるとは、笑いもんだぜ!」
怜央が煽るように口角を上げる。
遊次「負けなんか想定してねえ!
もちろん、お前の提示する条件でいいぜ。俺が勝つからな!」
遊次は負けじと強気の姿勢を見せる。
灯「で、でも…」
灯も遊次が敗北すると思っているわけではない。
しかし実質的にドミノタウンに出入りすることを禁じられるとなれば、遊次は唯一の帰る場所を失うことになる。
純粋にその重さを痛感しているのだ。
イーサン「遊次を信じよう、灯。
あいつはこれまでも高い壁を乗り越えて勝ってきた。心配ないさ」
灯「…うん、そうだよね。
遊次が負けるわけないってわかってる」
遊次「安心してくれ、灯、イーサン。絶対に勝ってみせる。
ドミノタウンの皆を笑顔にしたくて、俺はNextを立ち上げたんだ。
この町に悪意を振りまく奴らを放っておくわけにはいかねえ!」
遊次は拳を強く握りしめ決意を言葉にする。
遊次の声にこもった闘志を受け取り、灯は心から遊次を信じ、託す。
怜央「決まりだな。
始めようぜ、決戦のオースデュエルを!」
遊次「あぁ!」
2人は同時に片手サイズに四角く折りたたまれたデュエルディスクを懐から取り出し、腕に装着する。
デュエルディスクは自動で変形し、カードを配置するデュエルフィールドが形成される。
2人の声をオースデュエルへの同意とみなし、デュエルディスクに内蔵されたAI「DDAS」がオースデュエルの承認を始める。
DDAS「オースデュエルの開始が宣言されました。内容確認中…」
プレイヤー1:神楽遊次
条件①Unchained Hound Dogsに対し、法・倫理・規律に違反する行為の一切を禁ずる。
プレイヤー2:鉄城怜央
条件①Nextに対し、Unchained Hound Dogsと一切の関与を禁ずる。
条件②Nextはドミノタウンから退去し、今後の立ち入りを禁ずる。
デュエルディスクAI「両者が提示した条件は共に組織全体に対するものであり、
これは組織の責任者の承認を得たことによって組織全体に適用されます。
組織名が変更された場合、構成員が増員した場合も契約は適用され、
解散後の再組織・または集団活動と認められた場合も適用されます」
デュエルディスクに内蔵されたAI…DDASが契約内容を詳細に伝達する。
DDASは人の記憶を参照することができ、両者間の認識が一致していることはすでに確認済だ。
更なる事細かな擦り合わせを1から10まで行うことはなく、あくまで抜け道がないように注釈を加える。
組織に対する契約の場合、解散して再度別の組織として立ち上げなおすことなどはできない。オースデュエルでは常識だ。
敗北した場合、組織を解散するだけで契約が無効となるのであれば、リスクとして成立しないためである。
西暦2065年の技術力により人間の記憶へのアクセスや世界中の電子機器へのアクセスを可能とし、
情報や認識の齟齬は一切発生せず、かつ柔軟・迅速にオースデュエルが行えるように研磨された最高峰のAI…それがDDASである。
契約を反故にする意志を読み取った時点で、DDASが電子機器にアクセスし物理的に違反者を捕縛することも可能であるため、
DDASで決した契約は何人たりとも違反することはできない。
それほどにDDASは世界に対する圧倒的な強権を有しており、それほどにデュエルという概念が世界の中心となっているのだ。
遊次と怜央の前にはソリッドヴィジョンの契約書が表示され、細やかな契約内容は全てそこに記されている。
2人はそれを確認すると前を向く。
オースデュエルによる契約がどのように行われるかは今までの経験から大体は把握しており、
2人ともその前提のもとオースデュエルを行っているため、契約内容に目を通す時間はさほど長くなかった。
DDAS「契約内容を承認します。
デュエルの敗者は、勝者が提示した契約を履行する事が義務付けられます」
灯・イーサン、ドモン・ダニエラ、リアムとミオが見守る中、
暗さを増しつつある空の下、いよいよ決戦が始まる。
不気味に佇む廃工場がより体感温度を下げ、この場にいる者の緊張感を増大させている。
遊次・怜央「デュエル!」
2人がデュエル開始を宣言すると、怜央のデュエルディスク中央のランプが点灯する。
デュエルが開始されるとDDASが先行・後攻をランダムに決定する。
怜央が先行だ。
怜央「俺のターン!」
怜央は少しの間手札を眺め思考した後、手札のカードを1枚手にしてそれを表にする。
怜央「俺はフィールド魔法『爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)』を発動!」
■爆焔鉄甲閉鎖密集地帯(スチームアーミー・デッドゾーン)
フィールド魔法
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードの発動時の処理として、「スチームアーミー」モンスター1体をデッキから手札に加えることができる。
②:お互いのプレイヤーは、自分のモンスターが1体以上存在する場合、
自分のモンスターと同じ縦列または隣のモンスターゾーンにしかモンスターを召喚・特殊召喚・セットできない。
③:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その位置を他の相手のメインモンスターゾーンに移動する。
怜央がフィールド魔法を発動した瞬間、周囲の景色は一変する。
巨大な鉄の柵と鋭利な棘が四方にそびえ立ち、閉鎖された密集地帯が広がる。
狭い通路が入り組み、荒れ果てた地面には戦闘の痕跡が無数に刻まれている。
空は不穏な赤黒い暗雲に覆われ、フィールドは不穏な戦場となった。
怜央「発動時、デッキから『スチームアーミー』モンスターを1体手札に加えることができる。
俺はデッキから『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』を手札に加える」
怜央「このフィールド魔法がある限り、お互いに自分のモンスターの隣にしかモンスターは召喚できねえ。
EXモンスターゾーンにモンスターがいる時はそいつの真下にも召喚できるがな」
遊次「ふーん…」
遊次「(しかもモンスターの位置を変える効果まである。カードの位置がそんなに大事なのか?)」
遊次はデュエルディスクでそのフィールド魔法の効果を確認するが、未だその真意を掴みきれない。
カードの位置情報に制限をかけることで怜央にどんなメリットがあるか今はわからないのだ。
怜央「更に手札から『爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』を召喚!」
■爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1700 守備力1300
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:手札から「スチームアーミー」カード1枚を捨てて発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚し、
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を墓地へ送る。
現れたのは鋼鉄のロボットのようなモンスター。
鋼のボディには全体的に錆び色が目立ち、両肩の部分には煤けた金色の歯車が付いている。
胸部は少し膨れ上がっており球体に近い丸みを帯びている。
その中央についているガラスの小窓の中は、暖炉のように炎が燃えている。
レンズをはめただけの無機質な両眼をしており、右手には工具であるドライバーを持っている。
怜央のデッキはどうやら「爆焔鉄甲(スチームアーミー)」と名のついたデッキらしい。
怜央「錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)の効果を発動。
手札の『スチームアーミー』カードを1枚捨てることで、
デッキから『スチームアーミー』を特殊召喚し、更に『スチームアーミー』モンスターを墓地に送る」
怜央「俺はさっき手札に加えた『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』を手札から捨て、
爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)を特殊召喚!」
■爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1300 守備力1800
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このターン墓地に送られた「爆焔鉄甲 炉衛生兵」以外の
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
③:手札の「スチームアーミー」モンスター1体を捨てて発動できる。
自分はデッキから2枚ドローし、その後1枚選んでデッキの一番下に戻す。
中心に赤い十字が描かれた鉄の帽子を被った細身の機兵が現れる。
全身は銅色で、左腕のスライド式の蓋のようなパーツの中にはオイルの入った注射器がある。
怜央「更に、デッキから『爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』を墓地に送る」
遊次「ヘッ、1枚で特殊召喚と墓地送り…2つアドバンテージを取れるってわけか」
怜央「そうだ。俺のモンスターは有能揃いだからな。だがここからが本番だぜ」
遊次が笑みを浮かべるが怜央は淡々とプレイを続ける。
怜央「手札の『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』を捨て、
『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』の効果を発動。2枚ドローし、1枚をデッキの一番下に戻す」
怜央「更に、『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』の効果を発動!
このターン墓地に送られた『スチームアーミー』1体を特殊召喚する!
来い、『爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』!」
■爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1200 守備力1800
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードをX素材とするXモンスターは相手の効果の対象にならない。
③:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはこのターン、戦闘で破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
フィールドには現れたモンスターは、全体的に古びた金属で覆われており、煤けた銀色が特徴的だ。
頭部は円筒形で、前面にはシンプルなバイザーが取り付けられている。
胴体は四角く、腰部には工具を収納するケースが装備されている。
左腕には巨大な真四角の鉄の盾が取り付けられている。
遊次「一気にモンスターが勢ぞろいってわけか」
ここからが怜央のデッキの本領であろうことはすぐに察しがついた。
イーサン「怜央のフィールドにいるのは全てレベル4のモンスター…何か来る」
遊次の後ろで腕を組みデュエルを見守るイーサンも何かの予兆をおぼえる。
怜央の背後のドモンとダニエラからは緊張が消え、すでに余裕の表情となっている。
怜央「行くぜ。
俺はフィールドの『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』と、
『爆焔鉄甲 堅鉄建兵(バリケイド・ビルダー)』でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
2体のモンスターは地面に現れた黒い渦の中へと飲み込まれる。
怜央「猛進する重厚なる鉄塊、その汽笛は激戦の始まりを告げる」
怜央「エクシーズ召喚!ランク4!
『爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)』!」
■爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)
エクシーズモンスター
ランク4/炎/機械/攻撃力2000 守備力2500
レベル4モンスター×2
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがX召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「スチームアーミー」罠カード1枚を手札に加える。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、このカード以外の自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。
フィールド・墓地から2体までモンスターを選択し、そのモンスターの下に重ねてX素材とする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
EXモンスターゾーンに守備表示でエクシーズ召喚されたそのモンスターは、
大量の白煙を巻き上げる漆黒の機関車。
その巨大なボディは鋼鉄で覆われ、無数の歯車が絶え間なく回転している。
鋼鉄のボディは錆びついており、その表面に刻まれた無数のリベットがその力強さを物語っている。
頭部には巨大な煙突がそびえ立ち、そこからは白煙が勢いよく放出されている。
遊次「お出ましってわけか、エクシーズモンスター!くぅ~!クッソかっけえじゃねえかよ!」
遊次が目を輝かせながら目の前の鉄塊を見つめる。
怜央「あ、あぁ…?ま、まあな。これをカッコいいと思わねえ男はいねえよ」
突如自分のモンスターを褒められ困惑するも、怜央も悪い気はしていないらしい。
ダニエラ「な~にいい気になってんだい!気を抜くんじゃないよ!」
そんな怜央に後ろからダニエラがすぐに釘を刺す。
怜央「ぬ、抜いてねえよ!
『煙機関車(レイル・エクスプレス)』の効果を発動!
エクシーズ召喚に成功した時、デッキから「スチームアーミー」罠カードを手札に加える。
俺は『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』を手札に加える」
ダニエラの一言で怜央は再びデュエルに注力する。
遊次はその間にも、怜央が手札に加えた罠カードやレイル・エクスプレスの効果に目を通し、相手の動きをはかる。
遊次「(あのエクシーズモンスター…更なる展開に繋げる効果ばっかりで、決定打になる効果はない。
あいつの切り札は…別にいる)」
遊次は怜央のフィールドに残っている『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』にも目を向ける。
怜央「まだ終わらねえぜ。俺は墓地の『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』の効果を発動!
フィールドにスチームアーミーがいる時、デュエル中に1度こいつは墓地から特殊召喚できる!」
■爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1400 守備力1500
このカード名の、②の効果はデュエル中に1度しか使用できず、
①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスター以外の自分フィールドの「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードがフィールドを離れた場合、
またはX素材となったこのカードが墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。
③:自分・相手ターンに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材として「スチームアーミー」Xモンスター1体をX召喚する。
そのモンスターは、古くてくたびれた金属で構成されたロボット。
胴体は厚みのある鉄板でしっかりと守られ、四角い肩には大きな鋲が散りばめられている。
全身を覆うその金属は、所々にカスリ傷や錆が見える。
片腕には大きなレンチが固定され、もう片方の腕には実用的なバーナーが取り付けられている。
脚部には重厚な鉄のブーツが装備されている。
頭部はシンプルで丸みを帯びたデザイン、一つのゴーグルが片目に取り付けられている。
怜央「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
遊次「な…ここで終わるのか。ちょっと意外だな」
灯「下級モンスターはフィールドに残したままなんだね」
イーサン「てっきりもう1度エクシーズ召喚が来ると思ったがな。まだ様子を見ているのか?」
Nextサイドの面々は怜央のプレイに少し警戒の色を見せるも、何が狙いかは未だはっきりしていない。
ダニエラ「怜央の奴…うまいこと手を隠したね」
ドモン「流石だな、デュエルってのは情報戦だと弁えてやがる。伊達に力でのし上がってきちゃいねえ」
怜央を知るダニエラとドモンは彼の意図を理解し唸る。
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【怜央】
LP8000 手札:3
①爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス) DEF2500 X素材:2
②爆焔鉄甲 錬鋼操兵(アイアン・ドライバー) ATK1700
③爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア) ATK1400
カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
①
□□②③□
フィールド魔法:1
伏せカード:1
【遊次】
LP8000 手札:5
魔法罠:0
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遊次「(まだ怜央のデッキの動きがピンと来ねえ。
自分のモンスターを装備させる効果があるのと、
フィールド魔法の効果からして、カードの位置が大事なのはわかるけど…)」
遊次「(…いや、ビビってたって何も始まらねえ。俺は俺のデュエルをするんだ)」
遊次はやりづらさを感じるものの、ペースを崩すまいと首を振る。
怜央「教えといてやるが、レイル・エクスプレスは、
バリケイド・ビルダーを素材にしていることで、相手の効果の対象にならない。
簡単には崩せねえぞ、俺の布陣は」
遊次「ヘヘ、望むところだぜ怜央。そう来なきゃ面白くねえよ」
怜央「面白い?何言ってやがる。
お前らがこの町から追い出されるかもしれないってのに、呑気なもんだな」
遊次「どんな状況でもデュエルはデュエル。楽しむ気持ちはなくならねえよ」
怜央「フン、デュエルが楽しいなんて思ったことはねえ。
俺にとってデュエルは這い上がるための"力"だ」
遊次「…」
怜央の言葉を聞き、遊次は眉を下げる。
遊次「もったいないな、デュエルの楽しさがわからないってのは。
お前の過去とか境遇がそうさせるんだろんだろ。
なあ…何があったんだよ、お前の過去に」
怜央「…お前なんかに教えてやる義理はねえ。もうすぐこの町から消えるしな」
遊次は真っ直ぐに怜央に問いかけるも怜央は拒絶する。
遊次の慣れ合うような空気が癪に障り、更に拒否反応を強めているのだ。
遊次「…そりゃそうか。デュエルで語り合わねえと意味がねえ。
デュエルは魂の会話だ。俺もお前に、魂こめてぶつからねえと」
遊次はかつて父が残した言葉を胸に更なる決意を固める。
遊次の目的はただ勝負に勝つことではない。
大切なのは子供達の正しい居場所となるようにUnchained Hound Dogsというチームを変えることだ。
そのためには心の内を曝け出してお互いにぶつかり合わなければならない。
遊次「いくぜ、俺のターン!」
遊次は指先に力を込め、デッキトップからカードをドローする。
遊次「自分フィールドにモンスターがいない時、『妖義賊-脱出のシェパード』を手札から特殊召喚できる!」
遊次は手札からモンスターを守備表示でフィールドに特殊召喚する。
■妖義賊-脱出のシェパード
効果モンスター
レベル3/地/獣/攻撃力900 守備力1100
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する。
②:自分フィールドの「ミスティックラン」モンスター1体をリリースし、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●相手の墓地のモンスター2体を選び、自分フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
●相手はデッキからモンスター2体を選択する。自分は選択されたモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。
そのモンスターは、シェパード犬の顔を持ちながら、整った二足歩行の姿勢で立っている。
彼の瞳は知性が感じられる深い茶色で、耳はピンと立ち、澄ました顔をしている。
首元にはシルクのスカーフが巻かれ、風になびいて優雅に舞う。
上半身にはカーキ色のジャケットが羽織られ、下からは白いシャツの襟が見える。
全体的にスリムかつ筋肉質な体つきで、動きには鋭さと俊敏さを兼ね備えている。
怜央「二足歩行の、犬…」
怜央が無意識にぽつりと呟きながらそのモンスターの効果を確認する。
遊次「さらに手札から『妖義賊-早撃ちのキッド』を召喚する!」
怜央「だが俺のフィールド魔法の効果で、他のモンスターの隣にしか召喚できないぜ」
遊次「わかってらぁ!来い、早撃ちのキッド!」
■妖義賊-早撃ちのキッド
効果モンスター
レベル4/地/戦士/攻撃力1700 守備力1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
手札から「ミスティックラン」モンスターを1体特殊召喚する。
②:手札から「予告状」カードを捨て、相手フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。
そのモンスターを破壊する。
シェパードの隣に現れたのは、茶色いカウボーイハットにピストルを持った金髪の少年のモンスター。
遊次「『早撃ちのキッド』の効果を発動!手札の妖義賊モンスターを特殊召喚する!」
遊次の言葉を聞いた瞬間、怜央は自らのフィールドに伏せられたカードを一瞬見つめるが、すぐに視線を戻す。
怜央「(…今じゃない。あの犬のモンスターの効果を使わせた後じゃなきゃ意味がねえ)」
遊次「来い、『妖義賊-駿足のジロキチ』!」
■妖義賊-駿足のジロキチ
効果モンスター
レベル4/地/獣/攻撃力1600 守備力800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ミスティックラン」モンスターを1枚手札に加える。
②:このカードがリリースされた場合、
相手フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。
その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。
ほっかむりを被った鼠のモンスターがキッドの隣に召喚される。
-----------------------------------------------------------
【遊次のフィールド】
①妖義賊-脱出のシェパード
②妖義賊-早撃ちのキッド
③妖義賊-駿足のジロキチ
カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
□
□①②③□
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遊次「ジロキチの効果発動!デッキから妖義賊モンスターを手札に加える!
俺が加えるのは『妖義賊-雲龍のリヘイ』だ」
遊次はデッキからPモンスターである妖義賊モンスターを手札に加える。
怜央はジロキチの効果を見つめている。
怜央「…なるほどな。こいつは少し厄介だ」
怜央「お前の『脱出のシェパード』は自分のモンスターをリリースすることで、
相手の墓地やデッキからモンスターを2体奪う能力…」
怜央「それに、『駿足のジロキチ』はリリースされた時に相手のフィールドからモンスターを奪う能力。
2体のモンスターのシナジーで合計3体ものモンスターを奪おうってわけだ」
遊次「どうやら気づいたらしいな」
遊次はニヤリと口角を上げる。
怜央「相手のカードを盗むのがお前のデッキの特徴か。
散々俺らに物を盗むなと言っておいて、俺らよりよっぽど手癖が悪ぃらしい」
怜央は両手を上げ手のひらを上に広げながら、冗談っぽく後ろのドモンとダニエラの方を振り返る。
ドモン「ハハ!こいつぁとんだ皮肉だぜ」
ダニエラ「デッキはデュエリストの本質を表すからねぇ。
アンタ、本当は人に説教垂れるような人間じゃあないんじゃないのかい?」
ドモンとダニエラも遊次を嘲笑う。
デュエルディスクは、所有者の性質からその人物に合うカードを創造し、それがデッキとなる仕組みだ。
デッキはデュエリストの本質を表すというダニエラの言葉は、あながち否定できないのである。
デュエルディスクを開発したニーズヘッグ・エンタープライズは、
自分だけのカードを使うことによってよりモンスターに対する愛着が生じるのだと説明しているが、その仕組み自体は詳しく公表されていない。
遊次「うるせー!!泥棒じゃなくて義賊なんだよ!」
遊次は負けじと反論し、小競り合いをしている。
イーサン「毎回言われてるな、あいつのデッキの特徴のこと…」
遊次達の小競り合いをしり目にイーサンが呟く。
怜央「俺のレイル・エクスプレスはオーバーレイユニットの効果で効果の対象にはならない。
となると『錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』か『火線工兵(ヒート・エンジニア)』のどちらかしか奪えねえわけだが…」
怜央「面倒な効果には変わりねえ。だから先に手ェ打たせてもらうぜ。
俺は『爆焔鉄甲 煙機関車(レイル・エクスプレス)』の効果を発動!
オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから『スチームアーミー』を特殊召喚する!」
レイル・エクスプレスの周りを漂う光球が一つ弾け、それと共にレイル・エクスプレスが白煙を勢いよく噴出する。
それを見つめる遊次は警戒を強める。
怜央「俺はデッキから『爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を特殊召喚する」
■爆焔鉄甲 羅針榴弾(コンパス・グレネード)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1500 守備力1000
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法・罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:自分フィールドに「スチームアーミー」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードの装備モンスターはリリースできず、素材を必要とする特殊召喚のための素材にできない。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
現れたモンスターは、表面には方位を示す針がついており、羅針盤のように見えるが、
全体は丸みを帯びており凹凸のある見た目をしている。
羅針盤の頭にはピンが付いている。それはまさに手榴弾の形だ。
中央の火のエンブレムがその存在感を際立たせている。
怜央「まだ終わりじゃないぜ。
更に『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』の効果を発動!
自分・相手ターンに1度、フィールドから『スチームアーミー』モンスターを1体選択し、
フィールドのモンスターに装備できる!」
怜央「俺は『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』をお前のジロキチに装備する!」
怜央の命令により、『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』が
『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』をジロキチに向かって投げると、錆びた鎖がジロキチの身体に巻き付く。
遊次「くっ…なんだこいつ…!」
自分のモンスターに巻き付く異形のモンスターに遊次は驚く。
怜央「『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を装備したモンスターは、
リリースできず、特殊召喚の素材にもできねえ」
遊次「なるほどな。これがお前のデッキの動き…相手にモンスターを装備させて俺の行動を縛るってわけか」
怜央「そうだ。ジロキチに『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』が装備されたことで、
ジロキチをリリースして俺のモンスターを奪う動きは封じた」
遊次「それだけじゃねえ…とんでもねえ効果もついてんじゃねえか」
遊次はデュエルディスクにより『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』の効果を確認する。
怜央「その通りだ。
『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』を装備したモンスターが破壊されると、
爆弾が爆発して、近くにいるカードを全部巻き込んじまう。モンスターも、魔法・罠カードもな」
遊次「ってことは、ジロキチが破壊されたら、その隣にいるキッドも破壊されるってわけか」
怜央「そうだ。ジロキチは今いるモンスターの中じゃあ一番端にいる。
もし真ん中にいれば全員巻き込めたんだがな」
遊次「(確かにジロキチが破壊されれば他のモンスターも巻き添えを食らう…
だが、あいつのフィールドにはモンスターを破壊する効果はねえ。でも…)」
遊次が怜央のフィールドの『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』を見つめる。
遊次「(わかってんだよ、お前の考えてることは…!
でもこのまま何もしなけりゃラチが明かねえ…)」
遊次「飛び込むしかねえか、火の中に…!」
遊次は意を決してプレイを続ける。
遊次「確かにジロキチをリリースしてお前のカードを奪うことはできねえ。
でもシェパードがリリースするのはジロキチじゃなくてもいいんだ。
俺の動きを止めたことにはならねえぜ」
怜央「…」
遊次「『妖義賊-脱出のシェパード』の効果を発動!シェパード自身をリリースして効果を使用する!」
シェパードの体が下からゆっくりと光の粒へ変わり、フィールドから消えてゆく。
遊次「シェパードの効果は、相手のデッキか墓地からモンスターを2体、
効果を無効化・攻守を0にして俺のフィールドに特殊召喚できる効果だ。
俺はお前の墓地から、
『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』と、
『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』をいただくぜ」
『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』は怜央が手札から捨てたカードであり、
『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』は
レイル・エクスプレスの効果を使用する時に取り除かれたエクシーズ素材だ。
怜央「永続罠、『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』を発動!」
しかし、遊次の発動した効果に対して怜央がチェーンする。
■爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)
永続罠
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがフィールドに存在する限り、
装備カードを装備している相手モンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
②:相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
その特殊召喚されたモンスター1体を選び、
デッキから「スチームアーミー」モンスター1体を選択し、そのモンスターに装備カード扱いとして装備する。
③:相手メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、
自分の除外状態の「スチームアーミー」モンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
遊次「やっぱしそう来るか…」
怜央のターンにレイル・エクスプレスの効果で手札に加えた罠カードだ。
手札に加えた時に遊次も効果を確認しているため、この発動は想定内だった。
怜央「このトラップがある限り、相手がモンスターを特殊召喚した時、
1ターンに1度、その内1体にデッキからスチームアーミーを装備できる。
さあ、後は好きに俺の墓地から持ってけよ、モンスターを」
怜央は遊次のプレイに全く臆することなく、余裕の表情を見せる。
遊次「チェーン1で発動した『脱出のシェパード』の効果。
来い、『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』、
『爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)』!」
遊次のフィールドに怜央のモンスターが2体並ぶ。
ただし効果は無効化され、攻守は0となる。
フィールドの一番右端にいるジロキチに爆弾が装備されているため、
巻き添えにならぬよう、ジロキチからは離れて特殊召喚される。
怜央「その瞬間、『爆焔鉄甲地雷原(スチームアーミー・マインフィールド)』の効果を発動!
お前のフィールドに特殊召喚された『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』に、
デッキから「スチームアーミー』を装備する。
『爆焔鉄甲 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』を装備!」
■爆焔鉄甲 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)
効果モンスター
レベル4/炎/機械/攻撃力1400 守備力1200
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードは魔法・罠ゾーンに1枚しか存在できない。
①:このカードが召喚に成功した場合に発動できる。
自分の墓地の「スチームアーミー」モンスター1体とこのカードのみを素材として、
「スチームアーミー」Xモンスター1体をX召喚する。
②:このカードの装備モンスターと同じ縦列・隣のカードが破壊された場合に発動できる。
装備モンスターを破壊する。
③:装備モンスターが破壊される事によってこのカードが墓地へ送られた場合に発動する。
破壊された装備モンスターと同じ縦列・隣のカードを全て破壊する。
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【遊次のフィールド】
①妖義賊-早撃ちのキッド
②妖義賊-駿足のジロキチ→羅針榴弾(コンパス・グレネード)が装備されている
③爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)→時計炸弾(クロック・ダイナマイト)が装備されている
④爆焔鉄甲 炉衛生兵(ファーネス・メディック)
カードの位置(□はカードが置かれていない場所):
□
④【③】①【②】□
※【】は「スチームアーミー」が装備されているモンスター
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遊次が怜央から奪った「『爆焔鉄甲 灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』に、
置時計型のモンスターが鎖を巻き付ける。
錆びた銅色のふちに赤い時計盤と金色のギリシャ数字と長針・短針がついている。
その背中にはX字上に2本のダイナマイトが背負われている。
怜央「『 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』も『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』と同じように、
装備モンスターが破壊された時に周りのモンスターを巻き込む効果がある。
更に、装備モンスターの隣のモンスターが破壊された時に、
自分の装備モンスターを破壊する効果がある。この意味はわかるよな?」
怜央は勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
遊次「…ジロキチが破壊されれば『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』の効果で、
その隣の『早撃ちのキッド』も破壊される。
キッドが破壊されたら、『 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の爆弾が作動し、
それを装備している『狙撃兵(バーン・スナイパー)』も破壊され、
更には『 時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の効果で、
隣にいる『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』も破壊される…」
遊次「つまり、俺のフィールドは全滅ってわけだ」
灯・イーサン「…!」
淡々と告げられる恐ろしい事実に灯とイーサンは戦慄する。
遊次「…でも、肝心の破壊効果がお前のフィールドに見当たらねえな」
怜央「…心配すんな。今から見せてやるよ」
怜央は不敵な笑みを浮かべ右手を前に突き出す。
怜央「『爆焔鉄甲 火線工兵(ヒート・エンジニア)』の効果を発動!
こいつの効果により、相手ターン中にエクシーズ召喚を行うことができる!」
灯「そんな…!」
イーサン「ついに来るか、怜央の切り札が」
怜央「俺は『火線工兵(ヒート・エンジニア)』と『錬鋼操兵(アイアン・ドライバー)』でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」
2体のモンスターが黒い渦の中に飲み込まれてゆく。
怜央「燃え盛る鋼鉄の機兵よ、爆煙と共に現れ、敵陣を焦土と化せ」
口上を唱えると、黒い渦の中から光が爆発を起こす。
怜央「エクシーズ召喚!来い、我が切り札!
『爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)』!」
怜央がそのモンスターを呼ぶと、辺りは炎と蒸気に包まれる。
段々と白い蒸気の中から、赤い2つの光と燃え盛る炎の色が浮かび上がる。
■爆焔鉄甲 炎機公子(エクスプロード)
エクシーズモンスター
ランク4/炎/機械/攻撃力2400 守備力2400
レベル4モンスター×2
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードの攻撃力はこのカードのX素材の数×200ポイントアップする。
②:このカードのX素材を一つ取り除き、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
このカードが炎属性モンスターをX素材としている場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
③:このカードのX素材を任意の数取り除き、その数だけフィールドのモンスターを対象として発動できる。
対象のモンスター以外の自分のフィールド・墓地の「スチームアーミー」モンスターを選択し、
対象のモンスターに装備カード扱いとして装備する。
鋭く光る赤い目を持つその機械のモンスターは、赤と黒の金属板で覆われた洗練されたボディを持つ。
歯車や配管がその機体から露出し、常に高温の蒸気を噴き上げている。
背中には大きな燃料タンクとブースターが装備され、熱を放ちながら常に動き続けている。
左腕にはバーナーが装備されている。
遊次「…これがお前の切り札か」
その無機質だが闘志を宿した姿に遊次は圧倒される。
怜央「『炎機公子(エクスプロード)』の攻撃力はオーバーレイユニット1つにつき200ポイントアップする。
よって攻撃力は2800となる」
怜央「『炎機公子(エクスプロード)』の効果を発動。
炎属性モンスターをX素材としている場合、オーバーレイユニットを1つ使い、モンスターを1体破壊する。
お前のフィールドの『駿足のジロキチ』を破壊する!」
エクシーズ素材として取り除かれた『火線工兵(ヒート・エンジニア)』は自身の効果で除外される。
効果の宣言と共に、『炎機公子(エクスプロード)』が周囲に揺蕩う光球を握り潰し、
左腕のバーナーを遊次のフィールドの『駿足のジロキチ』に向ける。
X素材を1つ取り除いたことで炎機公子(エクスプロード)』の攻撃力は2600となる。
次の瞬間、高温の火炎放射によって『駿足のジロキチ』が一瞬で炎の中へと消える。
遊次「ぐっ…!」
ソリッドヴィジョンであるため温度は感じないはずだが、遊次は燃えるような熱さを覚える。
怜央「ジロキチが破壊されたことによって、
装備されていた『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』の効果を発動!
装備モンスターが破壊された時、隣のモンスターを破壊する!」
火炎放射が止まると、ジロキチの姿はなく、
ジロキチの立っていた場所に『羅針榴弾(コンパス・グレネード)』が転がっている。
そしてその直後、轟音と共に爆発する。
遊次「ぐあぁあッ…!」
フィールドに爆炎が巻き上がり、思わず腕で顔を隠し、爆風から身を守る。
怜央やその後ろのドモン・ダニエラは真っ赤に燃え上がるそのフィールドを余裕の表情で見つめていた。
灯「きゃあっ!!」
遊次だけでなく後ろにいた灯までもその爆風の衝撃を感じる。
爆風が収まるとジロキチの隣にいた「妖義賊-早撃ちのキッド」が焦げ付いた姿で倒れており、
やがて割れるような音と共にその姿は散り散りになる。
怜央「まだ終わらねえぜ。お前が言った通りの光景が現実になるんだ。
お前のフィールドの『灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』に装備された
『時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の効果を発動!
隣のモンスターが破壊された時、装備モンスターを破壊する!
『『灼狙撃兵(バーン・スナイパー)』を破壊だ!」
突如、再びフィールドを爆風が襲う。
遊次達はなおも無意識的に腕で爆風を防ぐ。
フィールドは爆炎に包まれながら、怜央はなおも高らかに声を上げる。
怜央「更に、『時計炸弾(クロック・ダイナマイト)』の効果を発動!
装備モンスターが破壊された時、隣のモンスターをその爆風に巻き込む!
お前の最後のモンスター、『炉衛生兵(ファーネス・メディック)』を破壊!
これでお前のフィールドは全滅だ!」
先ほどの爆風が収まらぬ内に爆発が更に連鎖し、フィールドは黒煙に包まれる。
そして黒煙が薄れてゆくと、空っぽになった自分のフィールドが目の前に現れる。
遊次「クソッ…まんまとやられたぜ」
完全に相手の思惑通りに事が運んだこと、そして抗うことができなかったことに悔しさを滲ませる。
イーサン「破壊が連鎖して、4体ものモンスターが全て破壊された…。
これが怜央のデッキの力ってわけか」
全てのモンスターを木端微塵にする圧倒的な破壊力。
しかしそれは成立させるためには相手のモンスターの位置のコントロールと、
的確に相手のモンスターに爆弾を巻き付けるプレイングがあってこそ成せる業だった。
ドモン「フン…あの野郎もようやく俺らに噛みついたことを後悔するだろうな」
ダニエラ「通常召喚も使ったし、散々色んな効果を使った挙句にフィールドはガラ空きさ。もう打つ手はないだろう」
ドモンとダニエラはすでに勝利を確信しているようだった。
第15話「爆焔鉄甲(スチームアーミー)」 完
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トーマスの問題も希望を持てる形で解決した3人。トーマスの家庭環境も居心地の良くないものであるのは読んでいてすごく伝わってきました。父親も考えを改めて子供に向き合える人間になって欲しいですね。
さて、いよいよ遊次と怜央の決戦が始まりました。妖義賊の動きを相変わらず突っ込まれますが、対する怜央のデッキは全てを破壊する爆焔鉄甲。やることが派手なテーマですが、ここからデュエルがどう動いていくのか楽しみです。
次回もお待ちしております。 (2025-01-07 09:10)
ありがとうございます!
お待たせしすぎました。
今後はコンスタントに更新できるように頑張ります。 (2025-01-07 11:43)