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第26話:虹色のサーキット 作:湯
引ったくりにネックレスを盗まれた瞬間、遊次の頭には何百もの謎の記憶が流れ込む。
遊次は叫び、悶え苦しむと、やがては意識を失った。
いつも身に着けていたネックレスがなければ、遊次は精神崩壊を起こす。
このままでは精神が完全に壊れ、二度と目を覚ますことはないかもしれない。
探偵「伊達アキト」の協力もあり引ったくり犯「クリス」を見つけた灯は、
遊次のネックレスを賭けてライディングデュエルで戦う。
サーキットの両端の透明な壁に真っ直ぐ引かれたラインがライトの役割を果たし、
夜の闇を照らしている。
レベルと攻撃力を自在に譲渡する「フーパー」デッキを使うクリスは、
2体のシンクロモンスターをフィールドに呼び出した。
早く勝負をつけなければならない灯の心には不安が募る一方だった。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP8000 手札:2(サーペント・フーパー)
①オレオール・フーパー ATK4000 ☆2
②エクリプス・フーパー ATK3300 ☆10
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP8000 手札:4
①ペイントメージ・フランボワーズ ☆4 ATK1800
②ペイントメージ・リラ ATK1800 ☆4
③ペイントメージ・パレット DEF500 ☆2
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
クリスはエクリプス・フーパーを灯のターン中にS召喚した。
そして引き続きクリスは自身のカード効果を存分に披露する。
「エクリプス・フーパーS召喚時の効果発動!
さらに永続魔法『円環の絆(フーパーズ・ギフト)』の効果をチェーンして発動!
S召喚に成功した時、1枚ドローする」
「そしてエクリプス・フーパーの効果!
S召喚成功時、デッキから『フーパー』モンスターを呼び出す!来い『トーラス・フーパー』!」
■トーラス・フーパー
効果モンスター
レベル5/光/天使/攻撃力2000 守備力1800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~4までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●ターン終了時まで、このカードの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:自分フィールドの「フーパー」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
攻撃対象の相手モンスターの表示形式を変更する。
現れたのは、四角く青いボディにいくつもの白の縦線が入った幾何学的なデザインのモンスター。
「トーラス・フーパーの効果発動。
お嬢ちゃんのチューナーモンスターにレベルを4つ付与する」
トーラス・フーパーは左腕に装着された四角いデザインのリングを4つ、
灯のペイントメージ・パレットに装着させる。
ペイントメージ・パレット ☆6
「(またレベルを変えられた…。このままじゃいつまで経ってもシンクロできない…!)」
幾度となく続くクリスの妨害に、灯は苦虫を嚙み潰したような表情になる。
「俺もシンクロ使いだからよく知ってる。レベルが揃わなきゃ何も始まらねえってな。
俺の手数を使い切らせようとしてるかもしれないが、そうはいかねえぜ。
永続罠『アーティフィシャル・フーパー』の効果発動!
1ターンに1度、墓地のフーパーを特殊召喚できる。現れろ、『リングレット・フーパー』!」
■リングレット・フーパー
効果モンスター
レベル3/光/天使/攻撃力1300 守備力1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~2までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●このカードの攻撃力を0にし、
ターン終了時まで、下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「フーパー」モンスター1体を手札に加える。
前のターンでS素材となり墓地へ送られたモンスターが再び姿を現す。
全体は硬い質感を持ち、アンバー色の無機質な瞳をしている。
「リングレット・フーパーの特殊召喚時、デッキからフーパーモンスター1体を手札に加える。
俺は『チューブ・フーパー』を手札に加えるぜ。
さらにレベル3『チューブ・フーパー』の効果を手札から発動し、
その攻撃力1200をエクリプス・フーパーに譲渡するぜ」
エクリプス・フーパー ATK 4500
「これでエクリプス・フーパーもオレオール・フーパーの効果で1ターンに1度、
対象を取る効果から守られるってわけだ。
おまけにリングレット・フーパーもいるから、まだアンタのモンスターのレベルを変えられるぜ」
オレオール・フーパーはレベル・攻撃力が変動したモンスターを対象にする効果を、
1ターンに1度無効にして破壊できる効果を持つ。
シンクロデッキに痛手となるレベル譲渡効果も残しており、灯は誰の目から見ても厳しい状況だ。
「(…とにかく、ここはデッキを信じるしかない…!)」
しかし灯の目に宿る闘志は今もなお燃え続けている。決して諦めるわけにはいかない。
「自分フィールドに地属性モンスターがいない時、
手札から『ペイントメージ・ショコラ』を特殊召喚できる」
■ペイントメージ・ショコラ
効果モンスター
レベル2/地/魔法使い/攻撃力900 守備力1000
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに地属性モンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから地属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを地属性に変更する。
フィールドには赤褐色に近い茶色の髪をしたポニーテールの小さな女の子のモンスターが現れる。
もこもことした質感のボンボンのついた服に身を纏い、茶色の絵の具のついた筆を持っている。
「魔法カード『ペイントメージ・ポリクローム』を発動!
フィールドの属性2種類につき1枚ドローできる。
フィールドには光、闇、炎、地の4属性がいるため、2枚ドローする!」
■ペイントメージ・ポリクローム
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドの表側モンスターの属性の種類が2種類以上の場合に発動できる。
フィールドの表側モンスターの属性2種類につき1枚、自分はデッキからドローする。
属性の種類が4種類以上の場合、
さらにデッキから「ペイントメージ」カード1枚を墓地に送ることができる。
②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「ペイントメージ」モンスター1体を特殊召喚する。
灯のデッキトップから、白・黒・赤・茶色の4種類の光の線が浮かび上がる。
灯がカードを2枚ドローするとともに、その光は弾ける。
「(…来た!)」
引いたカードを見つめる目に力が入る。
「フィールドの属性が4種類以上の時、
さらにデッキから『ペイントメージ』カード1枚を墓地に送ることができる。
『ペイントメージ・シャンパーニュ』を墓地に送る」
墓地に送られたのは光属性レベル4モンスターの「ペイントメージ・シャンパーニュ」だ。
「…バトル!ペイントメージ・リラで、リングレット・フーパーを攻撃!」
灯は展開を続けることなくバトルフェイズに突入する。
「バトルだと?結局シンクロ召喚は諦めたのか?ならお望み通り玉砕させてやるよ。
オレオール・フーパーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスターから攻撃力を奪う!
ペイントメージ・リラの攻撃力を0にして、オレオール・フーパーの攻撃力に加える!」
オレオール・フーパーがペイントメージ・リラにその巨大な右腕をかざすと、
エネルギーが吸い取られてゆく。
オレオール・フーパー ATK5800
しかし攻撃宣言は止められない。
リラはふらふら浮かびながらリングレット・フーパーに向かってゆく。
「返り討ちにしろ、リングレット・フーパー!」
リングレット・フーパーがその長い腕でパンチを繰り出すと、リラは一瞬で破壊される。
「きゃああっ!」
灯 LP8000→6700
戦闘ダメージは灯の車へ衝撃を与える。
灯はハンドルを握り、左右にふらつく車をなんとか直進へ戻す。
「(これがライディングデュエルのダメージ…普通のデュエルとは違う)」
平地で行うスタンディングデュエルと、
サーキットを疾走するライディングデュエルとでは、
受ける衝撃は同じでも、そのダメージが与える影響が異なる。
「ペイントメージ・フランボワーズで、リングレット・フーパーに攻撃!」
しかし灯は怖気づくことなくバトルを続行する。
「(今リングレット・フーパーでレベルを与えることはできるが、
与えられるレベルは1か2…相手のデッキにはレベル2モンスターもいる以上、
召喚できるSモンスターのレベルは6だけじゃねえ。ヘタにレベルを上げるのは藪蛇だ。
攻撃力を譲渡すれば俺へのダメージは上がっちまうし…ここはあえて何もしねえ)」
クリスは一瞬で考えを張り巡らせ、結論を出す。そのままバトルは続行される。
フランボワーズが赤い筆を振るうと火の玉が出現し、リングレット・フーパーに向かう。
勢いよくぶつかると炎は弾け、同時にリングレット・フーパーは破壊される。
クリス LP8000→7500
「だがアンタのフィールドにはもう貧弱なモンスターしかいねえ。バトルじゃ何もできねえだろ?」
クリスの指摘通り、フランボワーズ以外は守備表示の下級モンスター2体がいるだけだ。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP7500 手札:3(サーペント・フーパー、チューブ・フーパー)
①オレオール・フーパー ATK5800 ☆2
②エクリプス・フーパー ATK4500 ☆10
③トーラス・フーパー ATK2000 ☆1
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP6700 手札:4
①ペイントメージ・フランボワーズ ☆4 ATK1800
②ペイントメージ・ショコラ DEF1000 ☆2
③ペイントメージ・パレット DEF500 ☆6
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
「俺はこれでバトルを終了する」
盤面は一切有利に傾いていないように見えるが、灯は落ち着きはらってフェイズの移行を宣言する。
「苦しいよなぁ?お嬢ちゃん。シンクロできないってのは」
クリスは後ろを走る灯に薄ら笑いを浮かべながら問いかける。
「でも、もうお得意のレベルを変える効果は使えないだろ?」
「…何?」
灯はまるで狙い通りかのように笑いで返して見せる。
バトルフェイズが始まる前、レベル・攻撃力を変動させる効果を残していたのは、
リングレット・フーパーと、オレオール・フーパーだけだ。
しかしバトルフェイズでリングレット・フーパーは破壊され、
オレオール・フーパーは攻撃力を奪う方の効果を使用した。
レベル変動効果が残っているとしても、クリスがこのターンドローした1枚の手札だけだが、
リングレット・フーパーに攻撃力を譲渡しなかった所を見ると、
引いたのはレベル譲渡効果が可能なモンスターではないことが推測できる。
「(…中途半端な盤面なのにバトルを仕掛けたのは、
俺が残してたレベル変動効果を先に潰すためか…?
もしそれを意図してやってんなら、あのお嬢ちゃんはナメてかかっていい相手じゃねえ)」
意外にも冷静なタクティクスを見せ続ける灯に、クリスは今までの余裕な態度を改める。
「速攻魔法『ペイントメージ・トロンプルイユ』発動!
手札・フィールドからペイントメージ1体を墓地に送って、
フィールド・墓地からそれぞれモンスターを除外してS召喚を行う!
ただしフィールドにSモンスターがいない場合、
2体とも墓地からモンスターを除外してシンクロ召喚できる!」
■ペイントメージ・トロンプルイユ
速攻魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の手札・フィールドから「ペイントメージ」モンスター1体を墓地に送って発動できる。
自分のフィールド・墓地からチューナーとチューナー以外の「ペイントメージ」モンスターを
それぞれ1体ずつ除外し、その2体のレベルの合計と同じレベルを持つ
「ペイントメージ」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。
自分フィールドにSモンスターが存在しない場合、
除外するモンスターは2体とも墓地から選ぶことができる。
「フィールドの『ペイントメージ・パレット』を墓地に送って、
墓地の『ペイントメージ・シャンパーニュ』と『ペイントメージ・パレット』でS召喚を行う!」
「レベルが変わったパレットを墓地に送ればレベルはリセットされる…。
その上で墓地からシンクロってわけか…」
ついに回り始めた灯のデッキに、クリスは少し気圧される。
彼も無意識下で、絶対に負けられないという灯の覚悟を肌で感じているようだ。
半透明のシャンパーニュとパレットが灯の前に浮かび上がる。
パレットが2つの光の輪となり、その中をシャンパーニュくぐる。
「闇夜を照らす眩き光が、絶望を希望に塗り替える」
「シンクロ召喚!来い!レベル6、『ペイントメージ・モネ』!」
現れたのは、レモン色の縦巻きロールの髪を持つ女性のモンスター。
ローブは純白で、裾は足元まで長く、光を反射するかのように淡く輝き、清らかな印象を与える。
胸元と袖口には銀色の刺繍が施され、神秘的な雰囲気を醸し出しており、
手には杖を模した筆を持っている。
「ペイントメージ・パレットをS素材としたモネは相手の効果の対象にならない」
「ついにシンクロまで辿り着いちまったか…。
だがオレオールの効果で対象に取る効果を無効にできる。そいつ1体で何になる?」
「何になるかはすぐにわかる!ペイントメージ・モネがフィールドにいる時、1ターンに1度、
モネと同じ属性の相手モンスターをシンクロ素材にすることができる!」
モネは光属性であり、同じくフーパーモンスターも光属性で統一されている。
「な、なんだと…!だが、フィールドにチューナーはいねえ。シンクロはできねえはずだ!」
クリスは召喚されたモンスターの効果を読むこともなく、灯の言葉に脊髄反射する。
「モネの効果で相手モンスターをS素材にする時、そのモンスターをチューナーとしても扱える!
お前のフィールドのレベル2となったオレオール・フーパーをチューナーとして、S召喚を行う!」
「なんだと…!」
■ペイントメージ・モネ
シンクロモンスター
レベル6/光/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900
チューナー + 光属性モンスター1体以上
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:1ターンに1度、自分がS召喚を行う場合、
このカードと同じ属性を持つ相手フィールドのモンスターも1体までS素材にできる。
この効果でS召喚する場合、相手モンスターをチューナーとして扱う事ができる。
レベル6のペイントメージSモンスターは、
チューナー+特定の属性のモンスターという召喚条件を持つ。
チューナーに属性の制限はないため、クリスのモンスターをチューナーとして扱えば、
どの属性のSモンスターにもアクセスできるということだ。
「レベル4『ペイントメージ・フランボワーズ』に、
レベル2となっている『オレオール・フーパー』をチューニング!」
オレオール・フーパーは2つの光の輪へと変わる。
クリスは目を見開き唖然としながらそれを見つめている。
「燃え盛る灼熱の業火が、恐れを勇気に塗り替える」
「シンクロ召喚!レベル6、『ペイントメージ・ゴッホ』!」
■ペイントメージ・ゴッホ
シンクロモンスター
レベル6/炎/魔法使い/攻撃力2100 守備力1500
チューナー + 炎属性モンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、そのモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:相手フィールドのこのカードと同じ属性を持つモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。
現れたのは筆の形をした剣を持ちローブを身に纏った、赤髪の若い青年のモンスター。
パレット型の盾を携えている。
これにて灯のフィールドには2体のシンクロモンスターが並んだ。
「ペイントメージ・ゴッホの効果発動。
1ターンに1度、デッキからモンスターを除外することで、
フィールドのモンスターの属性をそのモンスターの属性に塗り替える。
デッキから光属性の『ペイントメージ・クレーム』を除外して、ゴッホ自身を光属性に変更する」
ゴッホが持つ筆の剣の先に黄色の絵の具が塗られ、自身の周りにくるくると螺旋状に線を描くと、
ゴッホの髪は金髪へ、衣装は黄色く変わる。
「そして、除外された『ペイントメージ・クレーム』の効果発動。
このカードが除外された場合、デッキから『ペイントメージ』チューナー1体を特殊召喚する。
来い、『ペイントメージ・フゼイン』!」
■ペイントメージ・フゼイン
効果モンスター/チューナー
レベル2/炎/魔法使い/攻撃力700 守備力800
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのモンスターの属性が3種類以上の場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
②:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が1000アップし、
守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
現れたのは小さな黒い木炭に手足と顔がついたモンスター。
「ペイントメージ・ゴッホの効果発動。
このカードと同じ属性のモンスター1体を破壊して、元々の攻撃力分ダメージを与える!
お前のエクリプス・フーパーを破壊し3300のダメージだ!」
ゴッホは剣に眩い光を纏わせ、それをエクリプス・フーパーへ放つ。
その光は光線となり勢いよくエクリプス・フーパーを貫き、
破壊された時の爆風はクリスをも巻き込む。
「ぐああぁーーっ!!」
クリス LP7500 → 4200
大きなダメージを受けたクリスのオートバイはその衝撃で車体を揺らす。
その瞬間、灯の車はクリスのバイクを追い抜き、先頭を走る。
クリスのバイクは左右に大きく揺られながらも、持ち前のテクニックでなんとか持ち直す。
「まだ終わらない!俺はレベル2『ペイントメージ・ショコラ』に、
レベル2『ペイントメージ・フゼイン』をチューニング!」
「レベル4シンクロ…!いつ止まるんだよ…!」
大ダメージを与えてもなお止まらぬペイントメージの展開力にクリスは驚きを隠せない。
「無邪気な彩が、鮮やかな勝利への道を描く。美しき終わりを飾る作品となれ」
「シンクロ召喚!レベル4、シンクロチューナー!『ペイントメージ・カードル』!」
■ペイントメージ・カードル
シンクロモンスター/チューナー
レベル4/光/魔法使い/攻撃力1700 守備力2000
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
②:自分・相手ターンにフィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
自分の除外状態の「ペイントメージ」モンスターを任意の数だけデッキに戻し、
その枚数分、ターン終了時までそのモンスターのレベルを上げるか下げる(最小1まで)。
③:このカードをS素材としたモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、このカードと同じ属性を持つ相手フィールドのモンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
現れたのは1.5メートルほどの大きさを持つ額縁のモンスター。
中央には彫りの深い凛々しい目を瞑った女性の顔がついている。
枠は深いマホガニー色をしており、木目の細かい彫刻が丁寧に施されている。
縁には金色の装飾が施され、高級感を漂わせており、角の部分には銀色の飾りがついている。
「この瞬間、手札の『ペイントメージ・カラメル』の効果発動!
ペイントメージがS召喚された時、手札からこのモンスターを特殊召喚する!」
「おい…まだ動けんのかよ…!」
効果を連鎖させアドバンテージを取り続ける灯にクリスの焦りは募る一方だ。
■ペイントメージ・カラメル
効果モンスター
レベル4/地/魔法使い/攻撃力1600 守備力1900
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ペイントメージ」Sモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
手札のこのカードを特殊召喚し、自分の墓地から「ペイントメージ」モンスター1体を手札に加える。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから地属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを地属性に変更する。
現れたのはキャラメル色の髪をした垂れ目の少年のモンスター。
パティシエのような服装をしており、
首元までしっかりとボタンで留められた服に、キャラメル色のスカーフがついている。
「そして特殊召喚した後、墓地のペイントメージ1体を手札に加える。
ペイントメージ・リラを手札に加える」
「(カードルは自身のレベルを変える効果がある。
カードルとモネでレベル8『ペイントメージ・アールヌーヴォー』を呼び出せば、
相手の光属性の効果を永続的に無効にできる。けど…)」
「(相手の墓地の『ドーナツ・フーパー』は、
メインフェイズ2に私のモンスターの効果を無効にする効果を持ってる。
切り札を切るのは私のターンが回ってきてからじゃなきゃ)」
「俺はこれでターンエンド」
灯は後方のクリスを横目に見ながら思考を張り巡らせターンを終了する判断を下した。
「ターン終了時、手札のフーパーの変動してたレベルは元に戻る」
クリスのレベル・攻撃力を変動させる戦術と耐性によって苦しい戦いを強いられてきたが、
結果的にはクリスに大ダメージを与え、フィールドには3体のSモンスターが並ぶに至った。
灯のモンスターは全て守備表示だ。
疾走するスポーツカーとともに、色とりどりのモンスター達が優雅に風に舞っている。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP4200 手札:3(サーペント・フーパー、チューブ・フーパー)
①トーラス・フーパー ATK2000
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP6700 手札:3(ペイントメージ・リラ)
①ペイントメージ・モネ DEF1900
②ペイントメージ・ゴッホ DEF1500 光属性に変更
③ペイントメージ・カードル DEF2000
④ペイントメージ・カラメル DEF1900
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
「俺のターン…ドロー!」
ドローしたのは「アンクル・フーパー」というレベル3モンスター。
このモンスターもレベル・攻撃力を付与する効果を持つ。
クリスの表情にもう余裕はなくなった。
自分の実力に自信を持ちデュエルを楽しむ気持ちさえもあったが、
今のクリスには、自分の人生を左右する戦いの重みが大きく伸し掛かっている。
「(相手フィールドには俺のターンにシンクロ召喚できるSチューナーがいる。
おそらくこのターン中にシンクロしてくるはずだが、
フーパーのレベル譲渡効果で相手にレベルを与えて妨害したところで、
あのモンスターはレベルを変動させる効果を持ってる。
だったら攻撃力を譲渡する効果を放棄してまで、レベルを譲渡する意味はねえ)」
フーパーは1ターン中に攻撃力かレベルのどちらかしか譲渡できない。
レベル付与での妨害を行っても、それにチェーンして灯もカードルの効果でレベルを戻すだろう。
であれば攻撃力譲渡に使用するのが正しいという判断だ。
「永続罠『アーティフィシャル・フーパー』の効果発動!
墓地のフーパーを蘇らせる!復活せよ『オレオール・フーパー』!』」
■オレオール・フーパー
シンクロモンスター
レベル8/光/天使/攻撃力2500 守備力2200
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、このカードの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値と異なるモンスターが
効果の対象となった時に発動できる。その効果を無効にして破壊する。
③:このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベルまたは攻撃力が
元々の数値と異なるモンスター2体をリリースして発動できる。
墓地のこのカードを特殊召喚する。
再び白き巨体が姿を現しバイクと共に疾走する。
「手札のチューブ・フーパーの効果発動。オレオール・フーパーに攻撃力を譲渡する。
これでオレオールは自身を対象にする効果を1ターンに1度の無効にできる」
オレオール・フーパー ATK 3700
「そして手札からチューブ・フーパーを召喚!」
■チューブ・フーパー
効果モンスター
レベル3/光/天使/攻撃力1200 守備力1300
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~2までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●ターン終了時まで、このカードの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分フィールドに「フーパートークン」(天使族・光・星4・攻/守0)1体を特殊召喚する。
赤・青・緑のチューブで構成された体を持つモンスターが現れる。
体は複数のチューブが絡まり合ってできており、その間には隙間が空いている。
腕にはチューブでできた3色の腕輪をつけている。
オレオール・フーパーに攻撃力を譲渡したことによって、現在の攻撃力は0となっている。
「チューブ・フーパーの召喚時、フーパートークンが場に特殊召喚される」
半透明の天使のような姿をしたトークンがフィールドに現れる。
「墓地のバングル・フーパーの効果を発動。
このカードを墓地から除外して、フィールドのフーパーにレベルを1か2譲渡できる。
フーパートークンにレベルを1付与する。さあ、これで条件は整ったぜ」
クリスはにやりと笑う。
「墓地のエクリプス・フーパーの効果発動。
自分フィールドのレベル・攻撃力が変動しているモンスター2体をリリースし、復活する!
チューブ・フーパーとフーパートークンを生贄に捧げ…蘇れ『エクリプス・フーパー』!」
■エクリプス・フーパー
シンクロモンスター
レベル10/光/天使/攻撃力3300 守備力2000
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「フーパー」モンスター1体を特殊召喚する。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
レベルまたは攻撃力が元々の数値と異なる相手モンスターが効果を発動した時、
そのモンスターは破壊される。
③:このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベルまたは攻撃力が
元々の数値と異なるモンスター2体をリリースして発動できる。
墓地のこのカードを特殊召喚する。
「またシンクロモンスターが2体…」
前のターンでなんとか突破した2体のシンクロモンスターはいとも簡単に復活を果たした。
「俺のフーパーは円環…終わりがねえのさ。力を廻し、何度でも蘇る。
だがデュエルには必ず終わりがある。それはこのターンやってくるのさ」
クリスは手札の魔法カードを表に向け、更にその笑みは邪悪なものとなる。
「装備魔法『円環の圧光(フーパーズ・オーバーウェルミング・ライト)』を
『オレオール・フーパー』に装備!」
■円環の圧光(フーパーズ・オーバーウェルミング・ライト)
装備魔法
「フーパー」モンスターにのみ装備可能。
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:装備モンスターの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、
装備モンスターが攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
装備モンスターの攻撃力は元々の数値に戻り、続けて攻撃できる。
②:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、
自分フィールドの「フーパー」モンスター1体を対象として発動できる。
このカードをそのモンスターに装備する。
装備魔法が発動された瞬間、オレオール・フーパーに眩い後光が差す。
「この装備魔法は攻撃力が変動しているフーパーモンスターが相手を攻撃した場合、
その攻撃力を元に戻すことで、続けて攻撃できる。1ターンに何度でもな。
攻撃力を戻した後に他のフーパーで攻撃力を付与すれば、
それをもう1回元に戻して攻撃できるってわけだ」
「すでにチューブ・フーパーで攻撃力は付与済。
さらにまだトーラスと手札のサーペント、アンクルは攻撃力付与を残してる。
場にはエクリプス、オレオール、トーラスの3体。つまり…俺は合計7回の攻撃が可能ってことだ」
「7回攻撃…!?」
灯はあまりにも凶悪なコンボに驚嘆する。
①トーラス・フーパーで攻撃
②エクリプス・フーパーで攻撃
③オレオール・フーパーで攻撃
(すでにチューブ・フーパーの効果で攻撃力が上がっている)
④上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
(ダメージステップにアンクル・フーパーで攻撃力を上げる)
⑤アンクルで上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
(ダメージステップにサーペント・フーパーで攻撃力を上げる)
⑥サーペントで上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
(ダメージステップにトーラス・フーパーで攻撃力を上げる)
⑦トーラスで上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
この流れでクリスは7回の攻撃が可能。これがクリスの必殺のコンボだった。
この攻撃が全て通れば、灯のライフは0となる。
トーラス・フーパーは1ターンに1度、
フーパーの攻撃宣言時に相手モンスターの表示形式を変更できる。
それによって攻撃表示モンスターとの戦闘でダメージを与え、
それ以降1度でもダイレクトアタックをすれば、灯のライフは削り切れるというわけだ。
これこそがまさに終わりなき円環を意味するフーパーデッキの真価であった。
「フハハハ!これでネックレスは俺の物だ!ようやく…クソみてえな人生に終止符を打てる!」
クリスは両手を離して全身で風を浴び、歓喜している。
スピードの中のデュエルという緊迫感がさらに勝利のカタルシスを上げている。
「バトルフェイズ!オレオール・フーパーでペイントメージ・モネに攻撃!
この瞬間、トーラス・フーパーの効果発動!
フーパーの攻撃宣言時、1ターンに1度、相手モンスターの表示形式を変更する。
モネを攻撃表示に変更!」
クリスが勝利を確信し、ウィニングランさながらの攻撃宣言をした時、灯が動き出す。
「シンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』の効果発動!
相手ターンにこのカードを含むモンスターでシンクロ召喚ができる!」
「さらに、『ペイントメージ・カードル』のもう1つの効果発動!
除外されているペイントメージを好きな数デッキに戻して、
その数分、ペイントメージのレベルを上げるか下げることができる」
「まだチェーンは終わらない!ペイントメージ・ゴッホの効果発動!
フィールドのモンスターの属性を塗り替える!
デッキから風属性『ペイントメージ・リム』を除外し、
ペイントメージ・カラメルの属性を風属性に塗り替える!」
「(一気に動いてきやがった!まるで俺の行動も全て計算済みてえに…)」
一気に3つのチェーンを重ねる灯に、クリスは動揺する。
すでにバトルフェイズ開始時の優先権を渡した以上、クリスは灯の行動を止めることができない。
まずはチェーン3のゴッホの効果によって、筆はライムグリーン色に染まり、
その筆を大きく振るうと、ペイントメージ・カラメルはその色へと染まってゆく。
「チェーン2のペイントメージ・カードルの効果。
除外されてる『ペイントメージ・シャンパーニュ』と
『ペイントメージ・クレーム』をデッキに戻して、このカード自身のレベルを2つ下げる」
ペイントメージ・カードル ☆4→2
「そして、風属性となったレベル4『ペイントメージ・カラメル』に、
レベル2となった『ペイントメージ・カードル』をチューニング!」
「舞い踊る一陣の風が、混沌を平穏に塗り替える」
「シンクロ召喚!レベル6、『ペイントメージ・コンスタブル』!」
■ペイントメージ・コンスタブル
シンクロモンスター
レベル6/風/魔法使い/攻撃力2000 守備力2400
チューナー + 地属性モンスター1体以上
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「ペイントメージ」モンスターは
同じ属性の相手モンスターとの戦闘で破壊されず、
同じ属性の相手モンスターの効果で破壊されない。
③:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスターが同じ属性の相手モンスターの効果を受けた場合に発動できる。
その相手モンスターを破壊する。
姿を現したのは、黄緑色の長髪を後ろで一本に編んでいる、丸眼鏡をかけた青年のモンスター。
大きな弓を持っており、矢のかわりに一本の筆が装填されている。
長い緑色のマントに狩人のような軽装をしている。
コンスタブルは守備表示でS召喚されている。
「コンスタブルがいる限り、『ペイントメージ』モンスターは、
同じ属性のモンスターとの戦闘・または同じ属性のモンスター効果で破壊されない。
他のSモンスターと同じように、コンスタブルも好きな属性に変える効果がある。
コンスタブル自身を光属性に変えれば、お前は俺の守備表示モンスターを突破できない!」
「なんだと…!モンスターを戦闘で破壊できなきゃ、
何回連続で攻撃しようが、ライフは削り切れない…!クソッ…!」
自分の決死の攻撃を初手から潰されたことで、クリスは奥歯を噛みしめる。
現在、ペイントメージ・ゴッホは光属性。そして守備表示だ。
コンスタブルが光属性となれば、2体の破壊されない守備表示モンスターがいることとなり、
クリスの連続攻撃も意味を成さない。これこそが灯の防御策だった。
「モンスターが増えたことでまたバトルは巻き戻って攻撃対象を選択し直す。
オレオール・フーパーでペイントメージ・モネに攻撃!」
オレオール・フーパーはその巨大な掌を広げ、ペイントメージ・モネに迫る。
「ペイントメージ・モネの効果を発動!
1ターンに1度、デッキからモンスターを除外して、
フィールドのモンスターを、そのモンスターの属性に塗り替えることができる!
モネ自身を闇属性に塗り替える!」
クリスのバトルフェイズながら、デュエルのペースは今、灯にある。
その勢いに乗るかのように、灯は更に効果を重ねる。
「さらにチェーンして、ペイントメージ・コンスタブルの効果発動。自身を光属性に塗り替える」
チェーン2のコンスタブルの効果から解決される。
「デッキから『ペイントメージ・クレーム』を除外して、コンスタブルは光属性に変わる!」
コンスタブルは弓に装填されていた筆を取り出し、その筆に黄土色に近い黄色が乗る。
コンスタブルの髪や服・弓は全て黄色へと塗り替わってゆく。
「そしてチェーン1のモネの効果で、
デッキから『ペイントメージ・ミュール』を除外してモネは闇属性に変わる」
モネが持っている筆に黒に近い深い紫色が色づく。除外されたミュール自身が持つ色だ。
その筆を大きく振るうと、元々光属性だったモネの服と髪は、紫色に変貌してゆく。
緑・黄・紫…モンスターは1ターンに何度も筆を振るい、鮮やかな色がサーキットを彩る。
まるでこのサーキット全体が1枚のキャンバスとなり、デュエルというアートを描いているようだ。
「そして除外された『ペイントメージ・ミュール』と
『ペイントメージ・クレーム』の効果を発動!」
チェーン1:ペイントメージ・ミュール
チェーン2:ペイントメージ・クレーム
「チッ…どんだけ効果を使えば気が済むんだ」
いつまでも戦闘が始まらないことにクリスは苛立ちを募らせる。
「チェーン1のペイントメージ・ミュールは相手モンスター1体を対象にして、
そのモンスターはこのターン中、効果を発動できなくなる効果。
対象にオレオール・フーパーを選択!」
「効果の発動を封じるだと…!」
除外された瞬間に発動する効果。これはクリスの想定の範囲外だった。
オレオール・フーパーの「対象にとる効果を無効にする」効果は誘発効果であり、
すでにミュールの次にクレームがチェーンを組んでいる以上、
オレオールはミュールに直接チェーンできず、タイミングを逃すことになる。
よって、オレオール・フーパーの力は確実に封じられる。
仮に無効にできたとしても効果を使わされることになるため、結果は変わらない。
「チェーン2の『ペイントメージ・クレーム』の効果。
除外された場合、デッキから『ペイントメージ』チューナーを特殊召喚できる」
「だがそれにチェーンしてオレオール・フーパーの効果発動!
相手モンスターから攻撃力を奪う!
ペイントメージ・モネ…はS素材によって効果の対象にできねえんだったな。
ならペイントメージ・ゴッホの攻撃力を奪う!」
オレオール・フーパーが掌をゴッホにかざすと、その掌の中心の虹色の光が駆動し、
ゴッホの力を吸収してゆく。
オレオール・フーパー ATK5800
「チェーン2のペイントメージ・クレームの効果でチューナーを特殊召喚する。
『ペイントメージ・パステル』を守備表示で特殊召喚!」
■ペイントメージ・パステル
効果モンスター/チューナー
レベル2/光/魔法使い/攻撃力400 守備力1100
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードをリリースし、自分の墓地のレベル4以下の「ペイントメージ」モンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
②:このカードをS素材としたモンスターは以下の効果を得る。
●このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
現れたのは細長く四角いパステルに小さな手足と目がついたモンスター。
白に近い黄色をしている。
「そしてチェーン1のミュールの効果でオレオール・フーパーの効果はこのターン発動できなくなった」
「だが必要な効果はもう使った!戦闘は続行だ!オレオールの攻撃力は5800!
大ダメージは避けられねえ…クラッシュしても知らねえぞ!」
オレオールの巨大な掌がモネを圧し潰すと、一瞬にして破壊され、その衝撃は灯の車へと伝わる。
「きゃぁああああっ…!!」 灯 LP6700 → 2900
3800の大ダメージ。
突然受けたダメージの衝撃で、車は不安定にふらついた。
車は右に左に大きく振れる。灯は必死にハンドルを握り耐えるが、制御しきれない。
そして突然、車はサーキットの透明な壁へと向かう。
「このぉおおおお!!」
灯は激突する寸前でなんとかハンドルを切り、クラッシュを回避した。
振れた車体をなんとか持ち直し、やがて何とか直進状態に戻った。
「ハァ…ハァ…」
灯の心臓は高速で脈打っている。
デュエルでのダメージが直接自分の身を危険に晒す。
これがライディングデュエルの恐ろしさだと改めて知った。
しかし数々のデュエリストは、デュエルと自らの命が直結するこの緊迫感をこそ望み、
スピードの中のデュエルに身を置くのだ。
「装備魔法『円環の圧光』の効果でもう1度攻撃ができるが、
破壊できない守備表示モンスターに攻撃しても意味がねえ。効果は発動しない」
灯のモンスターは全て守備表示の光属性だ。
コンスタブルの効果でフーパーと同じ光属性モンスターは破壊できない。
「ペイントメージ・コンスタブルの効果を発動!
シンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』をS素材としたモンスターは、
自分と同じ属性の相手モンスター1体を除外する効果を得る。
オレオール・フーパーを除外だ!」
灯の真の狙いはこの効果の発動にあった。
コンスタブルは光属性に変化しており、同じ属性のオレオール・フーパーを除外可能。
クリスも灯のカードの効果を把握しているため、こうなることは予測していたが、
オレオールの対象無効があれば防げると踏んでいたのだ。
しかし除外された瞬間に相手の効果を封じるミュールによってその算段は崩された。
「オレオール・フーパーはミュールによって効果が封じられてる。
そのデカブツには消えてもらうよ」
コンスタブルは自身の弓の弦を限界まで引き、オレオール・フーパーに狙いを定める。
弓からは光のエネルギーを纏った筆の形の矢が放たれ、勢いよくオレオールへ向かう。
矢はフィールドを包み込むほどの光を放ち、クリスはその眩しさに目を瞑る。
再び目を開けると、そこにはオレオール・フーパーの姿はなかった。
「クソッタレがぁ!どこまでも俺を邪魔しやがって!
装備魔法『円環の圧光』が墓地に送られた場合、
1ターンに1度、別のフーパーに装備できる。エクリプス・フーパーに装備。
これでバトルは終わりだ」
灯はひとまずライフを守ることができた。
しかし、これで終わりではないことを灯は知っていた。
「墓地の『ドーナツ・フーパー』の効果発動。フーパーSモンスターが場にいる時、
メインフェイズ2にこのカードを墓地から除外して、相手モンスター1体の効果を無効にする。
ペイントメージ・コンスタブルの効果を無効だ」
半透明のドーナツ・フーパーが浮かび上がり、
右手に装備されたドーナツを模したリングを投げると、それはみるみる内に大きくなり、
コンスタブルの身体を包み込んで捕縛する。
「手札のアンクル・フーパーの効果発動。ペイントメージ・ゴッホにレベルを1譲渡する。
そして手札のサーペント・フーパーの効果発動。
このカードを手札から捨て、相手フィールドのレベルか攻撃力が変動したモンスター1体を破壊する。
ゴッホを破壊だ」
クリスの背後から現れた両手が蛇の頭のモンスターは、高速でゴッホへ噛みつく。
コンスタブルの効果が無効化されているため、ゴッホは抵抗する間もなく破壊されてしまう。
「墓地のサーペント・フーパーの効果発動。このカードを除外し、
墓地から復活したフーパーSモンスターに効果を与えることができる。
これによってエクリプス・フーパーは、フーパーモンスターがバトルする時、
1ターンに1度、バトルを行う相手モンスターを手札に戻す効果を得る」
■サーペント・フーパー
効果モンスター
レベル5/光/天使/攻撃力1500 守備力2000
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~4までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●ターン終了時まで、このカードの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:手札のこのカードを捨て、
レベルまたは攻撃力が元々の数値と異なる相手モンスター1体を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
③:墓地のこのカードを除外し、墓地から特殊召喚された「フーパー」Sモンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分の「フーパー」モンスターが戦闘を行う場合に発動できる。
戦闘を行う相手モンスターを手札に戻す。
「そんな…まだ強くなるっていうの…」
灯は目の前のエクリプス・フーパーを絶望的な眼差しで見上げる。
「俺はこれでターンエンドだ。
エンドフェイズ、永続罠『アーティフィシャル・フーパー』の効果が強制的に発動。
発動後2ターン目のエンドフェイズにこのカードを破壊し、
デッキから永続罠『オブジェクト・フーパー』をセットする」
「ターン終了時、変動していたレベルと攻撃力は元に戻る」
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP4200 手札:1(アンクル・フーパー)
①トーラス・フーパー ATK2000
②エクリプス・フーパー ATK3300
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP2900 手札:3(ペイントメージ・リラ)
①ペイントメージ・コンスタブル DEF2400 光属性に変更 効果無効
②ペイントメージ・パステル DEF1100
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
「永続罠『オブジェクト・フーパー』は
アーティフィシャル・フーパーの効果でしかセットできない代わりに、
とんでもなく強力な効果を持ってる。
それは自分のフーパーSモンスター1体のレベルを、常に相手モンスターに付与し続ける効果だ。
その意味…わかるよな?」
「…俺のフィールドのモンスターのレベルは常に10プラスされる。
まともにシンクロ召喚はできない上に、
効果を発動すればエクリプス・フーパーの効果で破壊される…」
灯は深刻な表情で呟く。
ライフを守り切り反撃に出るつもりだった灯は、
更に力を強めるフーパーデッキの圧倒的な制圧力を思い知り、冷や汗を垂らす。
「ご名答だお嬢ちゃん!
さらに俺は手札のアンクルと場のトーラス…2度のレベルと攻撃力変動を残してる上に、
エクリプス・フーパーでバトル中に相手モンスターを手札に戻すことさえできる。
もう諦めた方が身のためなんじゃねえのか?
じゃなきゃ…今度こそ死んじまうかもしんねえぜ?」
灯の脳裏に、先ほどのクラッシュ寸前の光景がフラッシュバックする。
今まで運転をしていてもあのような命の危険に陥ったことなどなかった。
未だに早い鼓動は収まらない。
そしてその鼓動のスピードは、自分の命の危険によるものだけではなかった。
灯の脳裏には、もう1つ強烈に焼き付いている記憶がある。
それは、クリスを追いかける前に最後に見た遊次の悲痛な表情だ。
今もまだ、遊次は苦しみ続けているだろう。
遊次の精神がいつまで持つかは計り知れない。もしかすれば、もうすでに…。
悪い想像ばかりが頭をよぎる。しかし灯は頭を振って無理やりそれを振り払う。
「絶対に…諦めない。
ここで諦めるくらいなら…死んだ方がマシだから」
遊次を救うには、このライディングデュエルで勝利するしかない。
例え命の危険があろうとも、絶対に彼を守らなければならない。
仮に自分が死んだとしても。灯にはそれほどの覚悟があった。
灯の心の奥底に根付くその思いの原点は、12年前に遡る。
第26話 「虹色のサーキット」完
クリスの圧倒的な制圧盤面と、ライディングデュエルの恐怖が重く灯に伸し掛かる。
脳裏に浮かぶのは、最後に見た苦しみ叫ぶ遊次の悲痛な顔。
その時、灯は心の奥底に根付く大切な思いに再び触れる。
記憶・家族・友人…全て失い、苛烈な境遇に置かれた彼の無理やり作った笑顔。
彼女は思わず彼を抱きしめ、心に誓った。君は私が必ず守ると。
次回 第27話「ふたりの出会い」
遊次は叫び、悶え苦しむと、やがては意識を失った。
いつも身に着けていたネックレスがなければ、遊次は精神崩壊を起こす。
このままでは精神が完全に壊れ、二度と目を覚ますことはないかもしれない。
探偵「伊達アキト」の協力もあり引ったくり犯「クリス」を見つけた灯は、
遊次のネックレスを賭けてライディングデュエルで戦う。
サーキットの両端の透明な壁に真っ直ぐ引かれたラインがライトの役割を果たし、
夜の闇を照らしている。
レベルと攻撃力を自在に譲渡する「フーパー」デッキを使うクリスは、
2体のシンクロモンスターをフィールドに呼び出した。
早く勝負をつけなければならない灯の心には不安が募る一方だった。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP8000 手札:2(サーペント・フーパー)
①オレオール・フーパー ATK4000 ☆2
②エクリプス・フーパー ATK3300 ☆10
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP8000 手札:4
①ペイントメージ・フランボワーズ ☆4 ATK1800
②ペイントメージ・リラ ATK1800 ☆4
③ペイントメージ・パレット DEF500 ☆2
魔法罠:0
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クリスはエクリプス・フーパーを灯のターン中にS召喚した。
そして引き続きクリスは自身のカード効果を存分に披露する。
「エクリプス・フーパーS召喚時の効果発動!
さらに永続魔法『円環の絆(フーパーズ・ギフト)』の効果をチェーンして発動!
S召喚に成功した時、1枚ドローする」
「そしてエクリプス・フーパーの効果!
S召喚成功時、デッキから『フーパー』モンスターを呼び出す!来い『トーラス・フーパー』!」
■トーラス・フーパー
効果モンスター
レベル5/光/天使/攻撃力2000 守備力1800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~4までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●ターン終了時まで、このカードの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:自分フィールドの「フーパー」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
攻撃対象の相手モンスターの表示形式を変更する。
現れたのは、四角く青いボディにいくつもの白の縦線が入った幾何学的なデザインのモンスター。
「トーラス・フーパーの効果発動。
お嬢ちゃんのチューナーモンスターにレベルを4つ付与する」
トーラス・フーパーは左腕に装着された四角いデザインのリングを4つ、
灯のペイントメージ・パレットに装着させる。
ペイントメージ・パレット ☆6
「(またレベルを変えられた…。このままじゃいつまで経ってもシンクロできない…!)」
幾度となく続くクリスの妨害に、灯は苦虫を嚙み潰したような表情になる。
「俺もシンクロ使いだからよく知ってる。レベルが揃わなきゃ何も始まらねえってな。
俺の手数を使い切らせようとしてるかもしれないが、そうはいかねえぜ。
永続罠『アーティフィシャル・フーパー』の効果発動!
1ターンに1度、墓地のフーパーを特殊召喚できる。現れろ、『リングレット・フーパー』!」
■リングレット・フーパー
効果モンスター
レベル3/光/天使/攻撃力1300 守備力1000
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~2までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●このカードの攻撃力を0にし、
ターン終了時まで、下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「フーパー」モンスター1体を手札に加える。
前のターンでS素材となり墓地へ送られたモンスターが再び姿を現す。
全体は硬い質感を持ち、アンバー色の無機質な瞳をしている。
「リングレット・フーパーの特殊召喚時、デッキからフーパーモンスター1体を手札に加える。
俺は『チューブ・フーパー』を手札に加えるぜ。
さらにレベル3『チューブ・フーパー』の効果を手札から発動し、
その攻撃力1200をエクリプス・フーパーに譲渡するぜ」
エクリプス・フーパー ATK 4500
「これでエクリプス・フーパーもオレオール・フーパーの効果で1ターンに1度、
対象を取る効果から守られるってわけだ。
おまけにリングレット・フーパーもいるから、まだアンタのモンスターのレベルを変えられるぜ」
オレオール・フーパーはレベル・攻撃力が変動したモンスターを対象にする効果を、
1ターンに1度無効にして破壊できる効果を持つ。
シンクロデッキに痛手となるレベル譲渡効果も残しており、灯は誰の目から見ても厳しい状況だ。
「(…とにかく、ここはデッキを信じるしかない…!)」
しかし灯の目に宿る闘志は今もなお燃え続けている。決して諦めるわけにはいかない。
「自分フィールドに地属性モンスターがいない時、
手札から『ペイントメージ・ショコラ』を特殊召喚できる」
■ペイントメージ・ショコラ
効果モンスター
レベル2/地/魔法使い/攻撃力900 守備力1000
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに地属性モンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから地属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを地属性に変更する。
フィールドには赤褐色に近い茶色の髪をしたポニーテールの小さな女の子のモンスターが現れる。
もこもことした質感のボンボンのついた服に身を纏い、茶色の絵の具のついた筆を持っている。
「魔法カード『ペイントメージ・ポリクローム』を発動!
フィールドの属性2種類につき1枚ドローできる。
フィールドには光、闇、炎、地の4属性がいるため、2枚ドローする!」
■ペイントメージ・ポリクローム
通常魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドの表側モンスターの属性の種類が2種類以上の場合に発動できる。
フィールドの表側モンスターの属性2種類につき1枚、自分はデッキからドローする。
属性の種類が4種類以上の場合、
さらにデッキから「ペイントメージ」カード1枚を墓地に送ることができる。
②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「ペイントメージ」モンスター1体を特殊召喚する。
灯のデッキトップから、白・黒・赤・茶色の4種類の光の線が浮かび上がる。
灯がカードを2枚ドローするとともに、その光は弾ける。
「(…来た!)」
引いたカードを見つめる目に力が入る。
「フィールドの属性が4種類以上の時、
さらにデッキから『ペイントメージ』カード1枚を墓地に送ることができる。
『ペイントメージ・シャンパーニュ』を墓地に送る」
墓地に送られたのは光属性レベル4モンスターの「ペイントメージ・シャンパーニュ」だ。
「…バトル!ペイントメージ・リラで、リングレット・フーパーを攻撃!」
灯は展開を続けることなくバトルフェイズに突入する。
「バトルだと?結局シンクロ召喚は諦めたのか?ならお望み通り玉砕させてやるよ。
オレオール・フーパーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスターから攻撃力を奪う!
ペイントメージ・リラの攻撃力を0にして、オレオール・フーパーの攻撃力に加える!」
オレオール・フーパーがペイントメージ・リラにその巨大な右腕をかざすと、
エネルギーが吸い取られてゆく。
オレオール・フーパー ATK5800
しかし攻撃宣言は止められない。
リラはふらふら浮かびながらリングレット・フーパーに向かってゆく。
「返り討ちにしろ、リングレット・フーパー!」
リングレット・フーパーがその長い腕でパンチを繰り出すと、リラは一瞬で破壊される。
「きゃああっ!」
灯 LP8000→6700
戦闘ダメージは灯の車へ衝撃を与える。
灯はハンドルを握り、左右にふらつく車をなんとか直進へ戻す。
「(これがライディングデュエルのダメージ…普通のデュエルとは違う)」
平地で行うスタンディングデュエルと、
サーキットを疾走するライディングデュエルとでは、
受ける衝撃は同じでも、そのダメージが与える影響が異なる。
「ペイントメージ・フランボワーズで、リングレット・フーパーに攻撃!」
しかし灯は怖気づくことなくバトルを続行する。
「(今リングレット・フーパーでレベルを与えることはできるが、
与えられるレベルは1か2…相手のデッキにはレベル2モンスターもいる以上、
召喚できるSモンスターのレベルは6だけじゃねえ。ヘタにレベルを上げるのは藪蛇だ。
攻撃力を譲渡すれば俺へのダメージは上がっちまうし…ここはあえて何もしねえ)」
クリスは一瞬で考えを張り巡らせ、結論を出す。そのままバトルは続行される。
フランボワーズが赤い筆を振るうと火の玉が出現し、リングレット・フーパーに向かう。
勢いよくぶつかると炎は弾け、同時にリングレット・フーパーは破壊される。
クリス LP8000→7500
「だがアンタのフィールドにはもう貧弱なモンスターしかいねえ。バトルじゃ何もできねえだろ?」
クリスの指摘通り、フランボワーズ以外は守備表示の下級モンスター2体がいるだけだ。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP7500 手札:3(サーペント・フーパー、チューブ・フーパー)
①オレオール・フーパー ATK5800 ☆2
②エクリプス・フーパー ATK4500 ☆10
③トーラス・フーパー ATK2000 ☆1
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP6700 手札:4
①ペイントメージ・フランボワーズ ☆4 ATK1800
②ペイントメージ・ショコラ DEF1000 ☆2
③ペイントメージ・パレット DEF500 ☆6
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
「俺はこれでバトルを終了する」
盤面は一切有利に傾いていないように見えるが、灯は落ち着きはらってフェイズの移行を宣言する。
「苦しいよなぁ?お嬢ちゃん。シンクロできないってのは」
クリスは後ろを走る灯に薄ら笑いを浮かべながら問いかける。
「でも、もうお得意のレベルを変える効果は使えないだろ?」
「…何?」
灯はまるで狙い通りかのように笑いで返して見せる。
バトルフェイズが始まる前、レベル・攻撃力を変動させる効果を残していたのは、
リングレット・フーパーと、オレオール・フーパーだけだ。
しかしバトルフェイズでリングレット・フーパーは破壊され、
オレオール・フーパーは攻撃力を奪う方の効果を使用した。
レベル変動効果が残っているとしても、クリスがこのターンドローした1枚の手札だけだが、
リングレット・フーパーに攻撃力を譲渡しなかった所を見ると、
引いたのはレベル譲渡効果が可能なモンスターではないことが推測できる。
「(…中途半端な盤面なのにバトルを仕掛けたのは、
俺が残してたレベル変動効果を先に潰すためか…?
もしそれを意図してやってんなら、あのお嬢ちゃんはナメてかかっていい相手じゃねえ)」
意外にも冷静なタクティクスを見せ続ける灯に、クリスは今までの余裕な態度を改める。
「速攻魔法『ペイントメージ・トロンプルイユ』発動!
手札・フィールドからペイントメージ1体を墓地に送って、
フィールド・墓地からそれぞれモンスターを除外してS召喚を行う!
ただしフィールドにSモンスターがいない場合、
2体とも墓地からモンスターを除外してシンクロ召喚できる!」
■ペイントメージ・トロンプルイユ
速攻魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の手札・フィールドから「ペイントメージ」モンスター1体を墓地に送って発動できる。
自分のフィールド・墓地からチューナーとチューナー以外の「ペイントメージ」モンスターを
それぞれ1体ずつ除外し、その2体のレベルの合計と同じレベルを持つ
「ペイントメージ」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。
自分フィールドにSモンスターが存在しない場合、
除外するモンスターは2体とも墓地から選ぶことができる。
「フィールドの『ペイントメージ・パレット』を墓地に送って、
墓地の『ペイントメージ・シャンパーニュ』と『ペイントメージ・パレット』でS召喚を行う!」
「レベルが変わったパレットを墓地に送ればレベルはリセットされる…。
その上で墓地からシンクロってわけか…」
ついに回り始めた灯のデッキに、クリスは少し気圧される。
彼も無意識下で、絶対に負けられないという灯の覚悟を肌で感じているようだ。
半透明のシャンパーニュとパレットが灯の前に浮かび上がる。
パレットが2つの光の輪となり、その中をシャンパーニュくぐる。
「闇夜を照らす眩き光が、絶望を希望に塗り替える」
「シンクロ召喚!来い!レベル6、『ペイントメージ・モネ』!」
現れたのは、レモン色の縦巻きロールの髪を持つ女性のモンスター。
ローブは純白で、裾は足元まで長く、光を反射するかのように淡く輝き、清らかな印象を与える。
胸元と袖口には銀色の刺繍が施され、神秘的な雰囲気を醸し出しており、
手には杖を模した筆を持っている。
「ペイントメージ・パレットをS素材としたモネは相手の効果の対象にならない」
「ついにシンクロまで辿り着いちまったか…。
だがオレオールの効果で対象に取る効果を無効にできる。そいつ1体で何になる?」
「何になるかはすぐにわかる!ペイントメージ・モネがフィールドにいる時、1ターンに1度、
モネと同じ属性の相手モンスターをシンクロ素材にすることができる!」
モネは光属性であり、同じくフーパーモンスターも光属性で統一されている。
「な、なんだと…!だが、フィールドにチューナーはいねえ。シンクロはできねえはずだ!」
クリスは召喚されたモンスターの効果を読むこともなく、灯の言葉に脊髄反射する。
「モネの効果で相手モンスターをS素材にする時、そのモンスターをチューナーとしても扱える!
お前のフィールドのレベル2となったオレオール・フーパーをチューナーとして、S召喚を行う!」
「なんだと…!」
■ペイントメージ・モネ
シンクロモンスター
レベル6/光/魔法使い/攻撃力2000 守備力1900
チューナー + 光属性モンスター1体以上
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:1ターンに1度、自分がS召喚を行う場合、
このカードと同じ属性を持つ相手フィールドのモンスターも1体までS素材にできる。
この効果でS召喚する場合、相手モンスターをチューナーとして扱う事ができる。
レベル6のペイントメージSモンスターは、
チューナー+特定の属性のモンスターという召喚条件を持つ。
チューナーに属性の制限はないため、クリスのモンスターをチューナーとして扱えば、
どの属性のSモンスターにもアクセスできるということだ。
「レベル4『ペイントメージ・フランボワーズ』に、
レベル2となっている『オレオール・フーパー』をチューニング!」
オレオール・フーパーは2つの光の輪へと変わる。
クリスは目を見開き唖然としながらそれを見つめている。
「燃え盛る灼熱の業火が、恐れを勇気に塗り替える」
「シンクロ召喚!レベル6、『ペイントメージ・ゴッホ』!」
■ペイントメージ・ゴッホ
シンクロモンスター
レベル6/炎/魔法使い/攻撃力2100 守備力1500
チューナー + 炎属性モンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、そのモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:相手フィールドのこのカードと同じ属性を持つモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。
現れたのは筆の形をした剣を持ちローブを身に纏った、赤髪の若い青年のモンスター。
パレット型の盾を携えている。
これにて灯のフィールドには2体のシンクロモンスターが並んだ。
「ペイントメージ・ゴッホの効果発動。
1ターンに1度、デッキからモンスターを除外することで、
フィールドのモンスターの属性をそのモンスターの属性に塗り替える。
デッキから光属性の『ペイントメージ・クレーム』を除外して、ゴッホ自身を光属性に変更する」
ゴッホが持つ筆の剣の先に黄色の絵の具が塗られ、自身の周りにくるくると螺旋状に線を描くと、
ゴッホの髪は金髪へ、衣装は黄色く変わる。
「そして、除外された『ペイントメージ・クレーム』の効果発動。
このカードが除外された場合、デッキから『ペイントメージ』チューナー1体を特殊召喚する。
来い、『ペイントメージ・フゼイン』!」
■ペイントメージ・フゼイン
効果モンスター/チューナー
レベル2/炎/魔法使い/攻撃力700 守備力800
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、
②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドのモンスターの属性が3種類以上の場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
②:墓地のこのカードを除外し、
自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が1000アップし、
守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
現れたのは小さな黒い木炭に手足と顔がついたモンスター。
「ペイントメージ・ゴッホの効果発動。
このカードと同じ属性のモンスター1体を破壊して、元々の攻撃力分ダメージを与える!
お前のエクリプス・フーパーを破壊し3300のダメージだ!」
ゴッホは剣に眩い光を纏わせ、それをエクリプス・フーパーへ放つ。
その光は光線となり勢いよくエクリプス・フーパーを貫き、
破壊された時の爆風はクリスをも巻き込む。
「ぐああぁーーっ!!」
クリス LP7500 → 4200
大きなダメージを受けたクリスのオートバイはその衝撃で車体を揺らす。
その瞬間、灯の車はクリスのバイクを追い抜き、先頭を走る。
クリスのバイクは左右に大きく揺られながらも、持ち前のテクニックでなんとか持ち直す。
「まだ終わらない!俺はレベル2『ペイントメージ・ショコラ』に、
レベル2『ペイントメージ・フゼイン』をチューニング!」
「レベル4シンクロ…!いつ止まるんだよ…!」
大ダメージを与えてもなお止まらぬペイントメージの展開力にクリスは驚きを隠せない。
「無邪気な彩が、鮮やかな勝利への道を描く。美しき終わりを飾る作品となれ」
「シンクロ召喚!レベル4、シンクロチューナー!『ペイントメージ・カードル』!」
■ペイントメージ・カードル
シンクロモンスター/チューナー
レベル4/光/魔法使い/攻撃力1700 守備力2000
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
②:自分・相手ターンにフィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
自分の除外状態の「ペイントメージ」モンスターを任意の数だけデッキに戻し、
その枚数分、ターン終了時までそのモンスターのレベルを上げるか下げる(最小1まで)。
③:このカードをS素材としたモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、このカードと同じ属性を持つ相手フィールドのモンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
現れたのは1.5メートルほどの大きさを持つ額縁のモンスター。
中央には彫りの深い凛々しい目を瞑った女性の顔がついている。
枠は深いマホガニー色をしており、木目の細かい彫刻が丁寧に施されている。
縁には金色の装飾が施され、高級感を漂わせており、角の部分には銀色の飾りがついている。
「この瞬間、手札の『ペイントメージ・カラメル』の効果発動!
ペイントメージがS召喚された時、手札からこのモンスターを特殊召喚する!」
「おい…まだ動けんのかよ…!」
効果を連鎖させアドバンテージを取り続ける灯にクリスの焦りは募る一方だ。
■ペイントメージ・カラメル
効果モンスター
レベル4/地/魔法使い/攻撃力1600 守備力1900
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「ペイントメージ」Sモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。
手札のこのカードを特殊召喚し、自分の墓地から「ペイントメージ」モンスター1体を手札に加える。
②:フィールド上のモンスター1体を対象として発動できる。
デッキから地属性モンスター1体を除外し、そのモンスターを地属性に変更する。
現れたのはキャラメル色の髪をした垂れ目の少年のモンスター。
パティシエのような服装をしており、
首元までしっかりとボタンで留められた服に、キャラメル色のスカーフがついている。
「そして特殊召喚した後、墓地のペイントメージ1体を手札に加える。
ペイントメージ・リラを手札に加える」
「(カードルは自身のレベルを変える効果がある。
カードルとモネでレベル8『ペイントメージ・アールヌーヴォー』を呼び出せば、
相手の光属性の効果を永続的に無効にできる。けど…)」
「(相手の墓地の『ドーナツ・フーパー』は、
メインフェイズ2に私のモンスターの効果を無効にする効果を持ってる。
切り札を切るのは私のターンが回ってきてからじゃなきゃ)」
「俺はこれでターンエンド」
灯は後方のクリスを横目に見ながら思考を張り巡らせターンを終了する判断を下した。
「ターン終了時、手札のフーパーの変動してたレベルは元に戻る」
クリスのレベル・攻撃力を変動させる戦術と耐性によって苦しい戦いを強いられてきたが、
結果的にはクリスに大ダメージを与え、フィールドには3体のSモンスターが並ぶに至った。
灯のモンスターは全て守備表示だ。
疾走するスポーツカーとともに、色とりどりのモンスター達が優雅に風に舞っている。
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【クリス】
LP4200 手札:3(サーペント・フーパー、チューブ・フーパー)
①トーラス・フーパー ATK2000
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP6700 手札:3(ペイントメージ・リラ)
①ペイントメージ・モネ DEF1900
②ペイントメージ・ゴッホ DEF1500 光属性に変更
③ペイントメージ・カードル DEF2000
④ペイントメージ・カラメル DEF1900
魔法罠:0
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「俺のターン…ドロー!」
ドローしたのは「アンクル・フーパー」というレベル3モンスター。
このモンスターもレベル・攻撃力を付与する効果を持つ。
クリスの表情にもう余裕はなくなった。
自分の実力に自信を持ちデュエルを楽しむ気持ちさえもあったが、
今のクリスには、自分の人生を左右する戦いの重みが大きく伸し掛かっている。
「(相手フィールドには俺のターンにシンクロ召喚できるSチューナーがいる。
おそらくこのターン中にシンクロしてくるはずだが、
フーパーのレベル譲渡効果で相手にレベルを与えて妨害したところで、
あのモンスターはレベルを変動させる効果を持ってる。
だったら攻撃力を譲渡する効果を放棄してまで、レベルを譲渡する意味はねえ)」
フーパーは1ターン中に攻撃力かレベルのどちらかしか譲渡できない。
レベル付与での妨害を行っても、それにチェーンして灯もカードルの効果でレベルを戻すだろう。
であれば攻撃力譲渡に使用するのが正しいという判断だ。
「永続罠『アーティフィシャル・フーパー』の効果発動!
墓地のフーパーを蘇らせる!復活せよ『オレオール・フーパー』!』」
■オレオール・フーパー
シンクロモンスター
レベル8/光/天使/攻撃力2500 守備力2200
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、このカードの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値と異なるモンスターが
効果の対象となった時に発動できる。その効果を無効にして破壊する。
③:このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベルまたは攻撃力が
元々の数値と異なるモンスター2体をリリースして発動できる。
墓地のこのカードを特殊召喚する。
再び白き巨体が姿を現しバイクと共に疾走する。
「手札のチューブ・フーパーの効果発動。オレオール・フーパーに攻撃力を譲渡する。
これでオレオールは自身を対象にする効果を1ターンに1度の無効にできる」
オレオール・フーパー ATK 3700
「そして手札からチューブ・フーパーを召喚!」
■チューブ・フーパー
効果モンスター
レベル3/光/天使/攻撃力1200 守備力1300
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~2までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●ターン終了時まで、このカードの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:このカードが召喚・特殊召喚した場合、
自分フィールドに「フーパートークン」(天使族・光・星4・攻/守0)1体を特殊召喚する。
赤・青・緑のチューブで構成された体を持つモンスターが現れる。
体は複数のチューブが絡まり合ってできており、その間には隙間が空いている。
腕にはチューブでできた3色の腕輪をつけている。
オレオール・フーパーに攻撃力を譲渡したことによって、現在の攻撃力は0となっている。
「チューブ・フーパーの召喚時、フーパートークンが場に特殊召喚される」
半透明の天使のような姿をしたトークンがフィールドに現れる。
「墓地のバングル・フーパーの効果を発動。
このカードを墓地から除外して、フィールドのフーパーにレベルを1か2譲渡できる。
フーパートークンにレベルを1付与する。さあ、これで条件は整ったぜ」
クリスはにやりと笑う。
「墓地のエクリプス・フーパーの効果発動。
自分フィールドのレベル・攻撃力が変動しているモンスター2体をリリースし、復活する!
チューブ・フーパーとフーパートークンを生贄に捧げ…蘇れ『エクリプス・フーパー』!」
■エクリプス・フーパー
シンクロモンスター
レベル10/光/天使/攻撃力3300 守備力2000
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「フーパー」モンスター1体を特殊召喚する。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
レベルまたは攻撃力が元々の数値と異なる相手モンスターが効果を発動した時、
そのモンスターは破壊される。
③:このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベルまたは攻撃力が
元々の数値と異なるモンスター2体をリリースして発動できる。
墓地のこのカードを特殊召喚する。
「またシンクロモンスターが2体…」
前のターンでなんとか突破した2体のシンクロモンスターはいとも簡単に復活を果たした。
「俺のフーパーは円環…終わりがねえのさ。力を廻し、何度でも蘇る。
だがデュエルには必ず終わりがある。それはこのターンやってくるのさ」
クリスは手札の魔法カードを表に向け、更にその笑みは邪悪なものとなる。
「装備魔法『円環の圧光(フーパーズ・オーバーウェルミング・ライト)』を
『オレオール・フーパー』に装備!」
■円環の圧光(フーパーズ・オーバーウェルミング・ライト)
装備魔法
「フーパー」モンスターにのみ装備可能。
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:装備モンスターの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、
装備モンスターが攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
装備モンスターの攻撃力は元々の数値に戻り、続けて攻撃できる。
②:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、
自分フィールドの「フーパー」モンスター1体を対象として発動できる。
このカードをそのモンスターに装備する。
装備魔法が発動された瞬間、オレオール・フーパーに眩い後光が差す。
「この装備魔法は攻撃力が変動しているフーパーモンスターが相手を攻撃した場合、
その攻撃力を元に戻すことで、続けて攻撃できる。1ターンに何度でもな。
攻撃力を戻した後に他のフーパーで攻撃力を付与すれば、
それをもう1回元に戻して攻撃できるってわけだ」
「すでにチューブ・フーパーで攻撃力は付与済。
さらにまだトーラスと手札のサーペント、アンクルは攻撃力付与を残してる。
場にはエクリプス、オレオール、トーラスの3体。つまり…俺は合計7回の攻撃が可能ってことだ」
「7回攻撃…!?」
灯はあまりにも凶悪なコンボに驚嘆する。
①トーラス・フーパーで攻撃
②エクリプス・フーパーで攻撃
③オレオール・フーパーで攻撃
(すでにチューブ・フーパーの効果で攻撃力が上がっている)
④上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
(ダメージステップにアンクル・フーパーで攻撃力を上げる)
⑤アンクルで上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
(ダメージステップにサーペント・フーパーで攻撃力を上げる)
⑥サーペントで上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
(ダメージステップにトーラス・フーパーで攻撃力を上げる)
⑦トーラスで上がった攻撃力を元に戻し、再攻撃
この流れでクリスは7回の攻撃が可能。これがクリスの必殺のコンボだった。
この攻撃が全て通れば、灯のライフは0となる。
トーラス・フーパーは1ターンに1度、
フーパーの攻撃宣言時に相手モンスターの表示形式を変更できる。
それによって攻撃表示モンスターとの戦闘でダメージを与え、
それ以降1度でもダイレクトアタックをすれば、灯のライフは削り切れるというわけだ。
これこそがまさに終わりなき円環を意味するフーパーデッキの真価であった。
「フハハハ!これでネックレスは俺の物だ!ようやく…クソみてえな人生に終止符を打てる!」
クリスは両手を離して全身で風を浴び、歓喜している。
スピードの中のデュエルという緊迫感がさらに勝利のカタルシスを上げている。
「バトルフェイズ!オレオール・フーパーでペイントメージ・モネに攻撃!
この瞬間、トーラス・フーパーの効果発動!
フーパーの攻撃宣言時、1ターンに1度、相手モンスターの表示形式を変更する。
モネを攻撃表示に変更!」
クリスが勝利を確信し、ウィニングランさながらの攻撃宣言をした時、灯が動き出す。
「シンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』の効果発動!
相手ターンにこのカードを含むモンスターでシンクロ召喚ができる!」
「さらに、『ペイントメージ・カードル』のもう1つの効果発動!
除外されているペイントメージを好きな数デッキに戻して、
その数分、ペイントメージのレベルを上げるか下げることができる」
「まだチェーンは終わらない!ペイントメージ・ゴッホの効果発動!
フィールドのモンスターの属性を塗り替える!
デッキから風属性『ペイントメージ・リム』を除外し、
ペイントメージ・カラメルの属性を風属性に塗り替える!」
「(一気に動いてきやがった!まるで俺の行動も全て計算済みてえに…)」
一気に3つのチェーンを重ねる灯に、クリスは動揺する。
すでにバトルフェイズ開始時の優先権を渡した以上、クリスは灯の行動を止めることができない。
まずはチェーン3のゴッホの効果によって、筆はライムグリーン色に染まり、
その筆を大きく振るうと、ペイントメージ・カラメルはその色へと染まってゆく。
「チェーン2のペイントメージ・カードルの効果。
除外されてる『ペイントメージ・シャンパーニュ』と
『ペイントメージ・クレーム』をデッキに戻して、このカード自身のレベルを2つ下げる」
ペイントメージ・カードル ☆4→2
「そして、風属性となったレベル4『ペイントメージ・カラメル』に、
レベル2となった『ペイントメージ・カードル』をチューニング!」
「舞い踊る一陣の風が、混沌を平穏に塗り替える」
「シンクロ召喚!レベル6、『ペイントメージ・コンスタブル』!」
■ペイントメージ・コンスタブル
シンクロモンスター
レベル6/風/魔法使い/攻撃力2000 守備力2400
チューナー + 地属性モンスター1体以上
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールド上のモンスター1体を対象とし、属性を1つ宣言して発動できる。
デッキから宣言した属性のモンスター1体を除外し、選んだモンスターは宣言した属性になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「ペイントメージ」モンスターは
同じ属性の相手モンスターとの戦闘で破壊されず、
同じ属性の相手モンスターの効果で破壊されない。
③:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスターが同じ属性の相手モンスターの効果を受けた場合に発動できる。
その相手モンスターを破壊する。
姿を現したのは、黄緑色の長髪を後ろで一本に編んでいる、丸眼鏡をかけた青年のモンスター。
大きな弓を持っており、矢のかわりに一本の筆が装填されている。
長い緑色のマントに狩人のような軽装をしている。
コンスタブルは守備表示でS召喚されている。
「コンスタブルがいる限り、『ペイントメージ』モンスターは、
同じ属性のモンスターとの戦闘・または同じ属性のモンスター効果で破壊されない。
他のSモンスターと同じように、コンスタブルも好きな属性に変える効果がある。
コンスタブル自身を光属性に変えれば、お前は俺の守備表示モンスターを突破できない!」
「なんだと…!モンスターを戦闘で破壊できなきゃ、
何回連続で攻撃しようが、ライフは削り切れない…!クソッ…!」
自分の決死の攻撃を初手から潰されたことで、クリスは奥歯を噛みしめる。
現在、ペイントメージ・ゴッホは光属性。そして守備表示だ。
コンスタブルが光属性となれば、2体の破壊されない守備表示モンスターがいることとなり、
クリスの連続攻撃も意味を成さない。これこそが灯の防御策だった。
「モンスターが増えたことでまたバトルは巻き戻って攻撃対象を選択し直す。
オレオール・フーパーでペイントメージ・モネに攻撃!」
オレオール・フーパーはその巨大な掌を広げ、ペイントメージ・モネに迫る。
「ペイントメージ・モネの効果を発動!
1ターンに1度、デッキからモンスターを除外して、
フィールドのモンスターを、そのモンスターの属性に塗り替えることができる!
モネ自身を闇属性に塗り替える!」
クリスのバトルフェイズながら、デュエルのペースは今、灯にある。
その勢いに乗るかのように、灯は更に効果を重ねる。
「さらにチェーンして、ペイントメージ・コンスタブルの効果発動。自身を光属性に塗り替える」
チェーン2のコンスタブルの効果から解決される。
「デッキから『ペイントメージ・クレーム』を除外して、コンスタブルは光属性に変わる!」
コンスタブルは弓に装填されていた筆を取り出し、その筆に黄土色に近い黄色が乗る。
コンスタブルの髪や服・弓は全て黄色へと塗り替わってゆく。
「そしてチェーン1のモネの効果で、
デッキから『ペイントメージ・ミュール』を除外してモネは闇属性に変わる」
モネが持っている筆に黒に近い深い紫色が色づく。除外されたミュール自身が持つ色だ。
その筆を大きく振るうと、元々光属性だったモネの服と髪は、紫色に変貌してゆく。
緑・黄・紫…モンスターは1ターンに何度も筆を振るい、鮮やかな色がサーキットを彩る。
まるでこのサーキット全体が1枚のキャンバスとなり、デュエルというアートを描いているようだ。
「そして除外された『ペイントメージ・ミュール』と
『ペイントメージ・クレーム』の効果を発動!」
チェーン1:ペイントメージ・ミュール
チェーン2:ペイントメージ・クレーム
「チッ…どんだけ効果を使えば気が済むんだ」
いつまでも戦闘が始まらないことにクリスは苛立ちを募らせる。
「チェーン1のペイントメージ・ミュールは相手モンスター1体を対象にして、
そのモンスターはこのターン中、効果を発動できなくなる効果。
対象にオレオール・フーパーを選択!」
「効果の発動を封じるだと…!」
除外された瞬間に発動する効果。これはクリスの想定の範囲外だった。
オレオール・フーパーの「対象にとる効果を無効にする」効果は誘発効果であり、
すでにミュールの次にクレームがチェーンを組んでいる以上、
オレオールはミュールに直接チェーンできず、タイミングを逃すことになる。
よって、オレオール・フーパーの力は確実に封じられる。
仮に無効にできたとしても効果を使わされることになるため、結果は変わらない。
「チェーン2の『ペイントメージ・クレーム』の効果。
除外された場合、デッキから『ペイントメージ』チューナーを特殊召喚できる」
「だがそれにチェーンしてオレオール・フーパーの効果発動!
相手モンスターから攻撃力を奪う!
ペイントメージ・モネ…はS素材によって効果の対象にできねえんだったな。
ならペイントメージ・ゴッホの攻撃力を奪う!」
オレオール・フーパーが掌をゴッホにかざすと、その掌の中心の虹色の光が駆動し、
ゴッホの力を吸収してゆく。
オレオール・フーパー ATK5800
「チェーン2のペイントメージ・クレームの効果でチューナーを特殊召喚する。
『ペイントメージ・パステル』を守備表示で特殊召喚!」
■ペイントメージ・パステル
効果モンスター/チューナー
レベル2/光/魔法使い/攻撃力400 守備力1100
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードをリリースし、自分の墓地のレベル4以下の「ペイントメージ」モンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
②:このカードをS素材としたモンスターは以下の効果を得る。
●このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
現れたのは細長く四角いパステルに小さな手足と目がついたモンスター。
白に近い黄色をしている。
「そしてチェーン1のミュールの効果でオレオール・フーパーの効果はこのターン発動できなくなった」
「だが必要な効果はもう使った!戦闘は続行だ!オレオールの攻撃力は5800!
大ダメージは避けられねえ…クラッシュしても知らねえぞ!」
オレオールの巨大な掌がモネを圧し潰すと、一瞬にして破壊され、その衝撃は灯の車へと伝わる。
「きゃぁああああっ…!!」 灯 LP6700 → 2900
3800の大ダメージ。
突然受けたダメージの衝撃で、車は不安定にふらついた。
車は右に左に大きく振れる。灯は必死にハンドルを握り耐えるが、制御しきれない。
そして突然、車はサーキットの透明な壁へと向かう。
「このぉおおおお!!」
灯は激突する寸前でなんとかハンドルを切り、クラッシュを回避した。
振れた車体をなんとか持ち直し、やがて何とか直進状態に戻った。
「ハァ…ハァ…」
灯の心臓は高速で脈打っている。
デュエルでのダメージが直接自分の身を危険に晒す。
これがライディングデュエルの恐ろしさだと改めて知った。
しかし数々のデュエリストは、デュエルと自らの命が直結するこの緊迫感をこそ望み、
スピードの中のデュエルに身を置くのだ。
「装備魔法『円環の圧光』の効果でもう1度攻撃ができるが、
破壊できない守備表示モンスターに攻撃しても意味がねえ。効果は発動しない」
灯のモンスターは全て守備表示の光属性だ。
コンスタブルの効果でフーパーと同じ光属性モンスターは破壊できない。
「ペイントメージ・コンスタブルの効果を発動!
シンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』をS素材としたモンスターは、
自分と同じ属性の相手モンスター1体を除外する効果を得る。
オレオール・フーパーを除外だ!」
灯の真の狙いはこの効果の発動にあった。
コンスタブルは光属性に変化しており、同じ属性のオレオール・フーパーを除外可能。
クリスも灯のカードの効果を把握しているため、こうなることは予測していたが、
オレオールの対象無効があれば防げると踏んでいたのだ。
しかし除外された瞬間に相手の効果を封じるミュールによってその算段は崩された。
「オレオール・フーパーはミュールによって効果が封じられてる。
そのデカブツには消えてもらうよ」
コンスタブルは自身の弓の弦を限界まで引き、オレオール・フーパーに狙いを定める。
弓からは光のエネルギーを纏った筆の形の矢が放たれ、勢いよくオレオールへ向かう。
矢はフィールドを包み込むほどの光を放ち、クリスはその眩しさに目を瞑る。
再び目を開けると、そこにはオレオール・フーパーの姿はなかった。
「クソッタレがぁ!どこまでも俺を邪魔しやがって!
装備魔法『円環の圧光』が墓地に送られた場合、
1ターンに1度、別のフーパーに装備できる。エクリプス・フーパーに装備。
これでバトルは終わりだ」
灯はひとまずライフを守ることができた。
しかし、これで終わりではないことを灯は知っていた。
「墓地の『ドーナツ・フーパー』の効果発動。フーパーSモンスターが場にいる時、
メインフェイズ2にこのカードを墓地から除外して、相手モンスター1体の効果を無効にする。
ペイントメージ・コンスタブルの効果を無効だ」
半透明のドーナツ・フーパーが浮かび上がり、
右手に装備されたドーナツを模したリングを投げると、それはみるみる内に大きくなり、
コンスタブルの身体を包み込んで捕縛する。
「手札のアンクル・フーパーの効果発動。ペイントメージ・ゴッホにレベルを1譲渡する。
そして手札のサーペント・フーパーの効果発動。
このカードを手札から捨て、相手フィールドのレベルか攻撃力が変動したモンスター1体を破壊する。
ゴッホを破壊だ」
クリスの背後から現れた両手が蛇の頭のモンスターは、高速でゴッホへ噛みつく。
コンスタブルの効果が無効化されているため、ゴッホは抵抗する間もなく破壊されてしまう。
「墓地のサーペント・フーパーの効果発動。このカードを除外し、
墓地から復活したフーパーSモンスターに効果を与えることができる。
これによってエクリプス・フーパーは、フーパーモンスターがバトルする時、
1ターンに1度、バトルを行う相手モンスターを手札に戻す効果を得る」
■サーペント・フーパー
効果モンスター
レベル5/光/天使/攻撃力1500 守備力2000
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:同一チェーン上で「フーパー」モンスターの効果の対象となっていない
フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値であるモンスター1体を対象として、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●1~4までの任意のレベルを宣言する。
ターン終了時まで、そのモンスターのレベルは宣言したレベル分アップし、
このカードのレベルは宣言したレベル分下がる。
●ターン終了時まで、このカードの攻撃力を0にし、
下がった攻撃力分、対象のモンスターの攻撃力を上げる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
この効果を使用したターン、自分は「フーパー」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。
②:手札のこのカードを捨て、
レベルまたは攻撃力が元々の数値と異なる相手モンスター1体を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
③:墓地のこのカードを除外し、墓地から特殊召喚された「フーパー」Sモンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分の「フーパー」モンスターが戦闘を行う場合に発動できる。
戦闘を行う相手モンスターを手札に戻す。
「そんな…まだ強くなるっていうの…」
灯は目の前のエクリプス・フーパーを絶望的な眼差しで見上げる。
「俺はこれでターンエンドだ。
エンドフェイズ、永続罠『アーティフィシャル・フーパー』の効果が強制的に発動。
発動後2ターン目のエンドフェイズにこのカードを破壊し、
デッキから永続罠『オブジェクト・フーパー』をセットする」
「ターン終了時、変動していたレベルと攻撃力は元に戻る」
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP4200 手札:1(アンクル・フーパー)
①トーラス・フーパー ATK2000
②エクリプス・フーパー ATK3300
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP2900 手札:3(ペイントメージ・リラ)
①ペイントメージ・コンスタブル DEF2400 光属性に変更 効果無効
②ペイントメージ・パステル DEF1100
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
「永続罠『オブジェクト・フーパー』は
アーティフィシャル・フーパーの効果でしかセットできない代わりに、
とんでもなく強力な効果を持ってる。
それは自分のフーパーSモンスター1体のレベルを、常に相手モンスターに付与し続ける効果だ。
その意味…わかるよな?」
「…俺のフィールドのモンスターのレベルは常に10プラスされる。
まともにシンクロ召喚はできない上に、
効果を発動すればエクリプス・フーパーの効果で破壊される…」
灯は深刻な表情で呟く。
ライフを守り切り反撃に出るつもりだった灯は、
更に力を強めるフーパーデッキの圧倒的な制圧力を思い知り、冷や汗を垂らす。
「ご名答だお嬢ちゃん!
さらに俺は手札のアンクルと場のトーラス…2度のレベルと攻撃力変動を残してる上に、
エクリプス・フーパーでバトル中に相手モンスターを手札に戻すことさえできる。
もう諦めた方が身のためなんじゃねえのか?
じゃなきゃ…今度こそ死んじまうかもしんねえぜ?」
灯の脳裏に、先ほどのクラッシュ寸前の光景がフラッシュバックする。
今まで運転をしていてもあのような命の危険に陥ったことなどなかった。
未だに早い鼓動は収まらない。
そしてその鼓動のスピードは、自分の命の危険によるものだけではなかった。
灯の脳裏には、もう1つ強烈に焼き付いている記憶がある。
それは、クリスを追いかける前に最後に見た遊次の悲痛な表情だ。
今もまだ、遊次は苦しみ続けているだろう。
遊次の精神がいつまで持つかは計り知れない。もしかすれば、もうすでに…。
悪い想像ばかりが頭をよぎる。しかし灯は頭を振って無理やりそれを振り払う。
「絶対に…諦めない。
ここで諦めるくらいなら…死んだ方がマシだから」
遊次を救うには、このライディングデュエルで勝利するしかない。
例え命の危険があろうとも、絶対に彼を守らなければならない。
仮に自分が死んだとしても。灯にはそれほどの覚悟があった。
灯の心の奥底に根付くその思いの原点は、12年前に遡る。
第26話 「虹色のサーキット」完
クリスの圧倒的な制圧盤面と、ライディングデュエルの恐怖が重く灯に伸し掛かる。
脳裏に浮かぶのは、最後に見た苦しみ叫ぶ遊次の悲痛な顔。
その時、灯は心の奥底に根付く大切な思いに再び触れる。
記憶・家族・友人…全て失い、苛烈な境遇に置かれた彼の無理やり作った笑顔。
彼女は思わず彼を抱きしめ、心に誓った。君は私が必ず守ると。
次回 第27話「ふたりの出会い」
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Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。




コメントありごとうございます。
正直、あまり漫画は読んでいない(完結してから一気見したい人なので話題作とかも見れていない)ので「これに影響を受けた」というのはあまり答えられないのですが、
力押しよりも、頭を使って勝つ展開が好きというのはあります。
この作品への影響とは関係ないと思いますが、バトル系でいえばFateは好きです。
中2心擽られるセンスとか。
作品に関係たるところでいえば5D'sですかね。
漫画じゃなくて申し訳ないですが…。
シリアスギャグで好きなのは、これも多く知ってるわけではありませんが、進撃の巨人のギャグセンスは好きです。
(2025-03-27 19:41)