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第27話:ふたりの出会い 作:湯
遊次のネックレスを奪ったひったくり犯とのライディングデュエル。
クリスの攻撃による大ダメージでクラッシュ寸前まで追い込まれるも、灯はなんとか持ち直す。
遊次は常に身に着けているネックレスを奪われ、現在も精神崩壊の状態に陥っている。
一刻も早く取り戻さなければ、遊次の命に係わる。
遊次を救うには、このライディングデュエルで勝利するしかない。
これは命の危険すらもある戦いだ。
それでも灯は決して諦めるわけにはいかなかった。
「(遊次を悲しませたくない。苦しませたくない。
だから私はあの時…君を守るって誓ったんだ)」
灯は目を瞑ると、セピア色の記憶が蘇る。
灯の心の奥底に根付くその思いの原点は、12年前に遡る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
12年前
「花咲灯です。メインシティから来ました。
仲良くしてくれるとうれしいです」
小学3年生の秋。灯はドミノタウンの小学校に転校してきた。
灯は緊張で硬い表情をしている。
クラスメイトは拍手をする。その中でもより一層、
大きく手を上げて笑顔で拍手をしている窓際の一番後ろの席の男の子が目に入った。
オレンジの髪をした、大きなネックレスを胸から提げている少年だった。
都会出身という物珍しさから、話しかけてくれるクラスメイトも多かった。
クラスからは受け入れられ、ひとまずほっと胸を撫で下ろした。
しかし灯には一つ気がかりなことがあった。
それは、人一倍拍手を送ってくれた彼が、ずっと一人で窓の外を見つめていたこと。
第一印象からムードメーカーなのだと思っていたが、彼は一度も輪に入らなかった。
そしてその日の放課後。
様々な手続きや学校の案内なども一通り終わり、下校しようとした時、
下の階段の踊り場で3人の男の子の集団を見かけた。
その中にはオレンジの髪の男の子もいた。
ただ遊んでいるだけかと思ったが、どうやら様子がおかしい。
オレンジの髪の子が大柄の男子に羽交い締めにされ、小柄な男子が蹴りを入れていた。
「…ちょっと…!何してるの!?」
灯は思わず声を上げる。
いじめていた2人の男子は顔を見合わせ、その場から立ち去る。
踊り場にはオレンジの髪の男の子だけが膝をついて残されていた。
「大丈夫…?」
灯は階段を降り、男の子に声をかける。
「はは…平気平気!いつもの事だから!
ありがとな!じゃあな!」
彼は無理して笑顔を作りながら急いで走り去っていった。
まるで関わるなと言っているようなその背中を、灯はただ見送ることしかできなかった。
その翌日。
放課後に学校の階段を一人で掃除をしているところ、男子に声をかけられた。
昨日、オレンジの髪の子をいじめていた2人の男子達だった。
「お前、チクったりしてねーだろうな?」
大柄な男子が圧のある声で問いかける。
「…し、してないけど…。で、でも…だめだと思う、あんなこと…」
灯は怯えながらも抵抗の意思を見せる。
「は?お前にカンケーねーだろ!転校生のくせに生意気なんだよ!」
「きゃあっ!」
男子は灯を思い切り突き飛ばし、灯は倒れ込んでしまう。
「あんな奴の味方してたら、お前もおんなじ目に遭うってわからせてやるよ」
大柄な男子はそのまま倒れている灯ににじり寄る。
「い、いや…」
灯は男子を見上げながら恐怖に打ち震える。
すると、後ろから廊下をダッシュする足音が聞こえてくる。
そして、次の瞬間には、目の前でオレンジの髪の男の子が、大柄な男子を殴り飛ばしていた。
もう一人の男子はただただその姿を見つめ慌てていた。
「何してんだよ!!灯は関係ねーだろ!」
オレンジの髪の子が、倒れている大柄な男子に掴みかかり、必死の形相で叫ぶ。
「テメエッ!!」
大柄な男子もすかさずオレンジの髪の子を殴り、一触即発の事態に発展する。
灯はその様子をしばらく呆然と見ていたが、数秒後に止めなければならないことに気付き、辺りを見渡す。
たまたま通りがかった教師と目が合い、すぐにその教師が駆けつける。
「何してんだお前ら!」
教師は2人の喧嘩に割って入り、殴り合いはそこで終わった。
その後、その場にいた4人が教員室へ呼び出され小一時間説教を受けた。
しかし教師はそれほど大事とは捉えておらず、ただのよくある喧嘩の1つとして処理された。
灯も、彼らの事情を知らないため、
ただの喧嘩である可能性もあり、特にその場では何も言わなかった。
それでも、当分は教師が目を黒くしているため、あのようなことは起きないだろうと思った。
いじめっ子の2人は灯とオレンジ髪の少年にガンを飛ばして帰っていった。
少しの静寂が流れた後、灯がオレンジ髪の少年に話しかけた。
「助けてくれてありがとう。
そのせいで君が殴られることになっちゃって…ごめんなさい」
「いや、俺の方こそ、昨日は助けてくれてありがとな。
でもそのせいでお前を…灯を巻き込んじまった。
ほんとにごめん。だから…もう俺に近づかない方がいい」
少年は真面目な顔で灯に忠告する。
「え…でもそれじゃ、またいじめられちゃうよ」
「いじめって…そんな大したもんじゃねえって!
あいつら、俺のダチだから!平気平気!
じゃあ、また明日な!」
彼は昨日と同じように足早に立ち去ろうとする。
しかし灯は、思わず彼の腕を掴んだ。
少年は驚いて振り返る。
灯自身も自分の行動に驚き、とっさに手を離す。
それでも彼を行かせたくないという気持ちには変わりはなかった。
「…は、話そうよ!
そうだ!私、転校してきたばっかりでお友達もいないし…」
決して嘘ではないが、それは彼を引き止める口実だった。
「…そっか。俺も話したかったんだ。転校生なんて珍しいし!
じゃあ校庭行こうぜ」
灯が咄嗟に口に出した言葉を彼は素直に受け取った。
「俺、神楽遊次。
お前はともり、だろ?ちょっと変わってるから覚えてる」
「うん、花咲灯。遊次君っていうんだ。
教室で自己紹介したとき、すごく大きく拍手してくれたから、おぼえてるよ」
「あぁー、転校生なんて初めてだったしテンション上がったからさ。
遊次でいいぜ」
灯と遊次は校庭の古めかしいブランコに乗ってお互い自己紹介をする。
校舎は1年前のコラプスで相当な被害を受け、未だ半壊状態だ。
1年前から修繕工事は行われているものの、災害の爪痕は生々しく残っている。
その中でも校庭の隅にあるブランコは形を残していた。
すでに放課後であり、人の目につかないことから、ここを話し場所に選んだのだ。
「親の仕事かなんかで引っ越してきたのか?」
「お父さんが、この町のふっこー?を手伝いたいって。だからひっこしてきたの」
「まじか!…すげえうれしいな。
メインシティ…だっけ?すげー都会なんだろ?
そんなとこにもこの町を心配してくれる人がいるんだな」
遊次は心から嬉しそうに笑う。
メインシティという名前すらうろ覚えな様子が少し気になったが、
田舎町ならおかしくもないと、灯は自分の中で納得をした。
「…うん。お父さんとお母さんは、すごいと思う。たまに怖い時もあるけど…」
「?」
口ごもる灯に遊次は軽く疑問を抱く。
「わ、私のことはいいの!
それよりも遊次くん…遊次は、いつもあんなことされてるの?
殴られたり蹴られたり」
灯は本題を切り出す。
「…うぅーん…まあ、そうだな」
遊次は歯切れが悪そうに答える。
「あの人たち、友達だって言ってたよね?
なのに、なんであんなことされるの?」
「…俺にもよくわかんねえ」
「…え?」
要領を得ない返答に灯の頭上の疑問符は数を増やし、胸の内の靄が広がる。
「なーーんにもわかんねえ!だって俺、キオクソーシツだし!」
「…え?」
遊次は発した言葉の深刻さとは裏腹にあっけらかんと笑ってみせる。
そんな彼の笑顔は灯にはむしろ悲痛に見えた。
「俺、1年前のコラプスより前の記憶が、ぜーんぶないんだ。きれいサッパリ」
「うそ…そんなこと…。
じゃあ、1年間の記憶しかないってこと?」
まだ小学3年生の灯には到底想像もつかないことだった。
「そ!まあ、アイツらから嫌われてちまってんのもそれが理由っぽい。
元々は友達…だったらしい。
でも、ある日急に別人になっちまって、気持ちわりいってさ。…ハハハ」
遊次は明るく振る舞うが、それが心からのものではないことは誰でもわかることだった。
「そんな…だからって殴ったりしていいわけない!
なんでやられっ放しなの!?」
完全なる被害者の立場でありながら抵抗しようとせず、
ましてやへらへらと笑っている遊次に灯は苛立ちすらおぼえた。
「…だって、友達なんだぜ。
そんな、力でどうにかするのはさ…なんかちげーんだよ」
「……!」
一方的な暴力を受け、彼らと友人であった記憶すらない彼は、
彼らのことをまだ友達と呼んだ。
灯は彼の心をなんとか理解したいと思った。
記憶を失って、ただでさえ何もない荒野に立たされた彼にとって、
元々友人であったという存在は、記憶を失う前の自分と今の自分を繋ぐ、
唯一の糸口だ。だからこそ、簡単には手放したくないのだろうと思った。
「友達だったから戦いたくないって気持ちもわかるよ。
でも、戦わなきゃ!
遊次が傷つくとこは見たくないの!私が!」
しかし灯はそれでも食い下がった。遊次は自分が傷つくことには鈍感なのだろう。
だからこそ、彼自身が傷つくことを他の誰かが望まないということを教える必要があった。
遊次は灯の言葉にこれまで感じたこととのない何かを感じた。
これほどまでに自分に対して純粋な言葉をぶつけてくれる人は、家族以外にはいなかったからだ。
「だから、私のことは私が守る。遊次も、自分のこと守らなきゃ」
「…戦わなきゃ、か」
遊次は灯の言葉を聞き、何かを思い出した様子だ。
「わかった!俺ももうやられっ放しにはならねえ。一緒に戦おうぜ!
…で、お前、デュエルできんのか?」
戦うというのは当然デュエルでの話だ。
遊次の質問に灯は痛い所を突かれたようにぎくりとする。
灯は戦うことを決心するも、その手法については何も考えていなかったのだ。
(ちょっと、さすがに弱すぎ!
もっと強くならないと、モンスター達がかわいそうじゃん!)
その時、灯の頭の中にとある金髪の少女の言葉が浮かんだ。
(また逃げるの?)
次に浮かんだのは、かつての母親の一言だった。
様々な思いが灯の中を駆け巡る。
「で、できるよ!デュエル!」
気付いた時にはその言葉が口をついて出ていた。
「お、そうか!じゃあさっそくやろうぜ!」
遊次は折り畳まれたデュエルディスクを取り出し、笑顔で提案する。
「えっ…?う、うん…」
一度言ってしまった以上やるしかない。
意を決して灯もデュエルディスクを構えた。
「きゃあー!」 灯 LP0
勝負は一瞬にしてついた。
遊次の実力には遠く及ばなかった。
「へっへー!勝利は俺がいただいたぜ!
まだまだだな、灯!」
遊次は本来の目的など関係なく純粋に勝利に喜んでいる。
「…やっぱり私なんかじゃ勝てないのかな…」
灯は思わず弱気になる。
「んなことねーよ!モンスターもお前のこと信頼してんのがよくわかるしさ」
「モンスターが信頼…?」
灯には遊次のいうことがわからなかった。
モンスターはあくまでソリッドヴィジョンの存在であるはずだからだ。
「あぁ、なんか俺モンスターの感情とかがたまにわかるみたいでさ。
…まあ、誰も信じてくんないけど」
遊次は少し寂しそうな表情になる。
「信じるよ私。そんな変な嘘ついても意味ないもん。
でも、モンスターが私のこと信じてるってどうしてわかるの?」
「うーん、うまくは言えないけど…
灯がモンスターを活躍させようとしてるのが伝わってくるっつーか、
その思いをモンスターがちゃんと受け取ってるってのがわかるんだ」
その言葉を聞いて灯は再び金髪の少女の言葉を思い出す。
(だって、こーんなかわいいアタシの子達が、一生懸命頑張ってるんだよ!
勝たせてあげるのがデュエリストの役目でしょ!)
「…うん。もっと活躍させてあげたい。
私…強くなりたい」
灯はまっすぐ前を向き決意を示す。
「なら特訓だな!今日からみっちり!」
灯の決意を聞き、遊次は笑顔で返す。
この日から遊次と灯の特訓は始まった。
「私のターン、ど、ドロー!」
「ちげえ!
ドローってのはデュエリストの思いをデッキに込めるんだ!
もっと力強く!俺のターン、ドロー!」
「お、俺のターン…」
「声が小さい!」
「俺のターン…ドローー!!」
放課後や休みの日も、2人は毎日のように特訓を重ねた。
ドローの仕方からプレイングのコツなど、あらゆることを遊次から学んだ。
そして、特訓を始めてからひと月が経過した頃の放課後。
遊次と灯がいつも通り特訓へ向かおうとすると、遊次をいじめていた男子2人が声をかけてきた。
「おいどうした?最近女とばっか遊んで。寂しいじゃんか」
「俺らとも遊ぼうぜ!モテ男くんよぉー!」
教師の目もあってこれまでは大人しくしていたが、
ほとぼりが冷める頃を見計らっていたようだ。
「あなた達…また懲りずにいじめに来たの?」
灯は彼らを睨みつける。
「いじめなんてひでー言い方だな。ちょっと遊んでただけじゃんか」
「花咲さんもそんな変な奴と関わらないほうがいいぜ?
そいつ、モンスターと交信できるやべー奴だからさ!アハハハ!」
1ヶ月間溜まっていたものを発散するように、彼らは悪辣な言葉を吐き出す。
「…確かに、久々にお前らと遊ぶのもいいかもな」
「あぁ?」
いじめっ子は遊次がいつもと違う調子で彼らに応じたことに、違和感や苛立ちをおぼえる。
「遊ぼうぜ、こいつで」
遊次はデュエルディスクを掲げる。
「ハッ、そんなの俺らがやりたい遊びじゃねーよ」
「もっと直接スカッとする方法があんだろ〜?」
しかしいじめっ子達はデュエルに応じようとしない。
「ふーん、負けるのが怖いんだね」
すかさず灯が嘲笑う。
「は…?んなわけねーだろ!
なに生意気ヌカしてんだ転校生がよぉ…」
大柄ないじめっ子は怒りを露わにして、灯ににじり寄ろうとする。
「それ以上灯に近づくんじゃねえ。
灯に触れたら今度こそ絶対に許さねえぞ」
「…!」
いじめっ子は思わず1歩後ずさる。
その遊次の鋭い眼光はもはや殺意に近かった。
不覚にも本能的に近づいてはいけないことを悟ったのだ。
「やるならデュエルでだ。
俺はもうお前らにやられたまんまじゃない。
ちゃんとお前らと戦って、デュエルで語り合うんだ!
ビビってねえならデュエルディスクを構えろよ!」
遊次の気迫に押されながらも、いじめっ子も黙っているわけにはいかない。
「やってやるよ…!お前なんかぶっ倒してやる!」
いじめっ子はデュエルに応じる。
「タッグデュエルだ。灯、いけるよな?」
「…うん。いっぱい特訓したから」
灯は力強く頷く。
デュエルは校庭で行われることとなった。
特訓の成果もあり、灯のプレイもこれまでとは違い格段に研ぎ澄まされていた。
また、特訓で散々デュエルしてきたこともあり、お互いがデッキを完全に把握していたことも功を奏した。
勝負はかなり一方的だった。
いじめっ子達は遊次と灯のデッキに翻弄され続け、まともにフィールドを維持できないまま最終ターンを迎えた。
いじめっ子達のフィールドはガラ空きとなっており、
遊次達のフィールドにはそれぞれの切り札であるゴエモンとアールヌーヴォーがいる。
「クソォッ!だから嫌だったんだ!お前とデュエルするの!」
小柄ないじめっ子は涙目で叫ぶ。
「そういうとこだけは変わんねえな…ほんと」
大柄ないじめっ子は観念しているようだ。デュエル中も彼は遊次を罵ったりはしなかった。
だが最後のターンになって、彼の中で溜まっていたものが一気に溢れ出した。
「なんなんだよお前…!じゃあ俺らが悪者ってか!?おい!!」
「悪者に決まってるでしょ!何もしてない遊次をいじめて!」
いじめっ子の叫びに間髪入れずに灯は反撃する。
しかしいじめっ子も黙ってはいなかった。
「何もしてない…?ちげーだろ!
そいつは、俺らから友達を奪ったんだ!遊次を乗っ取ったんだよ!!」
「……!」
いじめっ子の放った言葉に遊次は目を見開く。
「乗っ取った…?意味わかんない!」
灯は彼の言葉を理解できなかった。
「前までの遊次はなぁ!もっとずる賢くて、捻くれた奴だった!
綺麗事ばっかいう先生を馬鹿にしたりしてよぉ…!
でも、そこが良かったんだよ!一緒にいて心地良かったんだ!」
「でも記憶をなくしてからのお前は、何に影響されたか知らねーけど、
俺らが嫌いなその綺麗事ヤローになっちまったんだよ!
遊次を返せよ!この偽物!!」
いじめっ子は全てを吐き出した。
その言葉はある意味で暴力よりも残酷な本音だった。
デュエルという心と心をぶつける儀式によってそれが引き出されたのだ。
「…」
彼らの言葉を聞き、遊次は奥歯を噛み締める。
彼らが自分を気持ち悪いという理由は腑に落ちるところもあった。
それでも、どうしても納得できなかった。
自分も記憶を失ってから、何が何かわからずこれまで必死に生きてきた。
それでもかつて友だった者達に悪として責め立てられている現状を、飲み込むことはできなかった。
「…確かに、お前らからすれば乗っ取ったのと同じかもな。
でも…俺だって望んでねえよ!
今すぐにでも記憶を取り戻したい!!」
遊次は涙を滲ませるが、それを無理矢理押し殺しながら思いの丈を叫ぶ。
いじめっ子達も今までこれほどまでに真っ直ぐ遊次の気持ちを受け取ったことはなかった。
彼らもその言葉を聞いて良心の呵責がないといえば嘘になる。
「なんで俺が悪者なんだよ…!俺だって、普通の生活に戻るだけでも死ぬほど辛かったんだぞ!!
友達だったら、なんで助けてくれねえんだよ!
ただ気持ち悪いって避けて、殴って…お前らはそれで満足なのかよ!」
ありったけの本心。
遊次自身が今まで笑い飛ばすことで隠してきた心の奥底。
それが一気に溢れ出た。
「遊次…」
いじめっ子達の目からも自然に涙が零れ落ちた。心が揺さぶられた。
もしあの時、手を取っていたら違った未来になっていたかもしれないと、
遊次を拒絶した彼ら自身が思い直すほどに、その言葉は直接心に刺さった。
しかし、遊次の怒りと悲しみは抑えきれなかった。
「お前らなんか、友達じゃねえ!!」
彼らの心の変化の片鱗にも触れることなく、遊次は彼らを拒絶した。
「これで終わりだ!ゴエモンで、ダイレクトアタック!」
遊次の切り札は彼の怒りを刀に乗せ、相手を斬り裂いた。
吹き飛ぶいじめっ子達。歯を食いしばりながら立ち尽くしている遊次。
灯は何も言えず、ただそれを見つめることしかできなかった。
決闘は終結した。
遊次は何も言わずに振り向いてその場を後にし、灯も焦ってついていく形となった。
遊次と灯はほとんど言葉を交わすことなく帰路についた。
灯自身、どう言葉をかけてよいかわからなかった。
しかしこのままではいけないと思い、
いつも特訓をしていた公園を通りがかった時に灯は遊次に声をかけた。
「ね、ねえ!ここで少し話そうよ」
「…あぁ。そうだな」
夕日が照らす公園には誰もいなかった。
二人はベンチに座る。
少しの間、沈黙が流れる。
自分から誘ったこともあり、何か話さなければと、灯は言葉を紡ごうとするが、
その時、遊次の方から明るい声で話しかけられた。
「…勝ててよかったな!強くなったじゃねーか、灯」
「…。そ、そうだね!遊次の猛特訓のおかげだよ」
今までの様子とは打って変わって明るくなった遊次に少し戸惑いながらも、
暗いままよりは良いと思い、そのまま答えることにした。
「さすがにもう、あの人達も突っかかってこないんじゃないかな?
…ごめんね。遊次、ひどいこと言われてたのに…私、何も言えなかった」
しかし今度は灯の方が暗いトーンになる。
遊次にこれ以上傷ついてほしくないと戦うことを決意したにも関わらず、
遊次は傷つき続けた。その不甲斐なさに情けない気持ちになってしまったのだ。
「何言ってんだ、灯は俺のために立ち上がって、戦ってくれたじゃねえか。
ただヘラヘラ笑ってやり過ごしてた俺に、
戦って…デュエルで語るってことを思い出させてくれたのは灯だぜ」
「遊次…」
遊次の言葉は本心だった。それも灯には伝わっているが、どこか胸のもやは晴れない。
「俺、灯に"戦わなきゃ"って言われた時に思い出したことがあるんだ。
『デュエルは魂の会話なんだ』って。父さんが教えてくれた言葉」
「お父さんって…今一緒に住んでるっていう?」
灯も遊次が1年前から仮の父親と2人暮らしであることは聞いていたため、
その人を指していると考えた。
「いや、実の父さんだよ。今は…いない」
「…そっか」
デリケートな話題であり、あまり深堀しない方がいいと考えたため、
灯は最低限の情報が聞ければそれ以上は追及しなかった。
「ケンカをしてもデュエルで心をぶつければきっと分かり合えるって、
記憶を失くした俺に、父さんがよく言ってくれた。
だから…逃げずにアイツらともデュエルで語り合って、分かり合わなきゃなんないって思ったんだ」
「でも…俺はデュエルで語るってことを途中で投げ捨てちまった。
アイツらが俺に対して思ってること、あそこまでちゃんと聞いたことなくて…
悲しい気持ちとかムカつく気持ちとかがなんかこう…ぶわぁーーってなって…。
気付いたらゴエモンでトドメを刺してた」
「そんな…遊次は悪くないよ!
遊次だって、なんで記憶を失くしたのかもわからなくて、毎日苦しい思いをしてるのに…。
私は絶対に許せない。遊次がトドメを刺してなくても、私が我慢できなかったと思う」
「…ありがとな。でも、もっと最初からアイツらの気持ちも理解しようとして、
俺の気持ちもぶつけて…そしたら、別の道があったかもしれない。
もし父さんだったら、なんて思うかな。父さんだったらどうするかな。
ずっとそれが頭をぐるぐる回ってる」
灯はただ遊次を見つめ、彼の声に耳を傾ける。
「でも…もう父さんにそれを聞くこともできないんだ」
「…え?」
「父さん…死んじまったって。どっか別の国で」
「そんな…」
記憶も失い辛い毎日を過ごしている彼に、なぜ更なる苦難が与えられねばならないのか。
灯は理解に苦しんだ。
なぜ正しい道を歩み続ける彼がここまで報われないのか。彼が何をしたというのか。
「俺…これでぜーんぶ失くしちまった!記憶も、家族も…友達も!
ハハハ…なんでいつもこうなるんだろうな、俺って」
「…!」
遊次は無理やり笑って見せた。
しかし、顔は全く笑っていない。ただ口角が上がっているだけだ。
瞳孔は開き、ハイライトは黒く沈んでいる。
その表情を見ただけで灯の胸は締め付けられた。
それと同時に、灯は遊次を強く抱きしめた。
「…!灯…」
「…泣いていいんだよ。無理して笑ったりしないで。
私が全部受け止めるから」
これまで灯の中でつっかえていた言葉が自然と溢れ出る。
たった一言だった。しかしその言葉が、遊次の感情をせき止めていたものを瓦解させた。
「うっ……ううぁぁああああああ!!!!」
遊次の涙は止まらなかった。
彼自身は自覚していないが、暗い顔をすればまた人が離れていくような気がしたのだ。
だから彼は、誰にも心配をかけないように無理して笑顔を作っていた。
しかし、マイナスの感情も全て受け止めてくれる人が目の前にいる。
行き場のなかったあらゆる感情がとめどなく溢れ出た。
彼は30分以上泣き続けた。
家族や友を失ってしまったかもしれないが、こうして彼にとって大切な存在が1つできたのだった。
そして、数か月後。
公園のジャングルジムのてっぺんに上った遊次が、空を見上げ、灯に唐突に話しかける。
「俺、夢ができたんだ」
「夢?」
遊次に追いつこうと一生懸命ジャングルジムに上りながら、灯が聞き返す。
「うん。俺…この町の人達を笑顔にしたい。
コラプスが起きてから、みんな頑張って立ち上がろうとしててさ。
いっぱい悲しいことがあって、どうにもならないこともいっぱいあって」
灯はジャングルジムのてっぺんに追いつくと、真剣に遊次の言葉に耳を澄まし、相槌を打つ。
「それでも…なんとか無理して笑って、前に進もうとしてるんだよ。
俺、すげえ心が痛くなった。
顔は笑ってるけど、ほんとは心で泣いてるんだよ。
だから…とにかくそんな人達を、ほんとの笑顔にしたい!
どうやるかはわかんないけど…とにかく、もう誰にも泣かないでほしいんだ!」
「誰にも…泣かないでほしい…」
遊次の言葉を聞いて思い出したのは、数か月前の遊次の泣き顔だ。
灯の頭の中で色々な思いが駆け巡り、何も言葉を発していなかった。
「…あ、やっぱ変だよな!?なんかこっ恥ずかしいっつーか…」
灯の返事がなかったことで我に返った遊次は、頭をかきながら誤魔化すように笑った。
「ううん!そんなことない!すっっごく素敵な夢だと思う!」
「そ、そっか…へへ…」
真っ直ぐな灯の賛同に遊次は思わず頬がほころぶ。
「無理して笑ってる顔を見ると、心が痛くなる。わかるよ、私も」
「だ、だよな!この町の復興を手伝いに来たわけだし、やっぱ灯はわかってくれるか!」
遊次の顔はさらにぱっと明るくなる。これほど純粋な賛同をもらったことなどなかったのだ。
「(…やっぱり、遊次は気づいてないんだ。
自分が悲しみを押し殺して、無理やり笑ってたこと)」
灯は複雑な気持ちになる。
かつての友との決別と家族の死。
最も感情がかき回されたその時に遊次が取った行動は、無理して笑うということだった。
記憶を失って以来、彼の中でそれが無意識に癖づいてしまっているのだ。
「(君がこの町の人達を泣かせたくない、笑顔にしたいって言うなら…。
君のことは、誰が笑顔にするの?)」
人の悲しみを癒すことはできても、彼自身はずっと1人で悲しみを抱え続け、
それでも無理やり笑って取り繕う。彼にそんな未来が来ることを、灯は直感してしまった。
灯は胸が痛む感覚をおぼえた。
灯は少しの間目を瞑ると、遊次を真っ直ぐ見つめ、一つの答えを出す。
「私も、その夢、手伝いたい」
「…!」
遊次は目を丸くする。
「私、遊次に出会ってから、ほんとに毎日が楽しくて…。すっごくきらきらしてた。
遊次には、人を笑顔にする力があるんだよ。
遊次なら絶っ対、この町の人達を元気にできる!」
「灯…」
真っ直ぐな灯の言葉が遊次の心に深く刺さる。
「だから、私も君の傍で、君を守って、君を支え続けられたらいいなって」
「…おう!灯がいてくれたら俺もすげえ嬉しい!絶対に夢叶えような!」
「…うん!」
君がみんなを泣かせたくないのなら…私は君を泣かせたくない。笑顔にしたい。
それが私にとっての、"願い"。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「(あれから、私の人生は君と一つだった。
君といればいつだって笑顔でいられた。どんなことだって乗り越えられた。
私の夢も、あの時から始まったんだ。君の傍で、君を守って…支え続けるって夢が)」
「(この"願い"だけは絶対に手放したくない。だって…夢は始まったばっかりなんだから。
君が夢を叶えて、君が笑ってくれるなら…そのためなら、命なんて惜しくない!)」
灯は一瞬目を瞑ったその刹那に蘇った記憶から、自分によって最も大切なことを思い出す。
前を見据えると、ひったくり犯のオートバイと共に疾走する2体のモンスター。
灯は頭を今一度整理する。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP4200 手札:1(アンクル・フーパー)
①トーラス・フーパー ATK2000
②エクリプス・フーパー ATK3300
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP3900 手札:2(ペイントメージ・リラ)
①ペイントメージ・コンスタブル DEF2400 光属性に変更 効果無効
②ペイントメージ・パステル ATK400
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
最も厄介なのは、クリスのフィールドに伏せられた永続罠「オブジェクト・フーパー」。
このカードはフーパーSモンスターのレベルを、相手フィールドのモンスターに付与し続ける効果。
つまりエクリプス・フーパーのレベル10が常に灯のモンスターに上乗せされてしまうのだ。
そしてエクリプス・フーパーはレベルが変動しているモンスターが効果を発動した時、
そのモンスターは破壊されるという永続効果を持っている。
このコンボによって、灯がモンスター効果を発動すると、必然的にそのモンスターは破壊される。
更にはレベルが10も上がることでシンクロ召喚も困難を極める。
そしてエクリプス・フーパーは、
フーパーが戦闘を行う相手モンスターを手札に戻す効果を得ている。
まさに圧倒的な制圧盤面。
しかしこれを突破しなければ、遊次を救うことはできない。
これは灯に課せられた使命であり、必ず越えなければならないものだ。
灯はデッキトップに指をかけ、思いを込める。
心に誓ったんだ。遊次を守るって。
遊次の夢が、こんなところで終わっていいはずがない。
私の想いが…こんなところで負けるはずない!
「俺のターン…ドロー!!」
灯のドローは居合に等しき洗練された一閃だった。
引いたカードを確認すると、1体のチューナーモンスターだった。
「ドローフェイズ、永続罠『オブジェクト・フーパー』発動!
フィールドのフーパーSモンスター1体を選択し、
このターン、相手モンスターはこのモンスターの元々のレベル分、レベルがアップする。
エクリプス・フーパーを選択し、アンタのフィールドのモンスターのレベルは常に10上がる!」
■オブジェクト・フーパー
永続罠
このカードは「アーティフィシャル・フーパー」の効果でのみセットできる。
このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードは、自分フィールドに
レベルまたは攻撃力が元々の数値と異なるモンスターが存在する限り、相手の効果で破壊されない。
②:自分フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値と異なるモンスターは、
相手の効果で破壊されない。
③:自分フィールドの「フーパー」Sモンスター1体を対象として発動できる。
このターン、相手フィールドのモンスターのレベルは、
このモンスターの元々のレベル分アップする。
クリスの背後には巨大な6メートルほどの天使の見た目をした石像が出現する。
石像の頭の上の大きな輪から光が放たれ、灯のフィールドに降り注ぐ。
ペイントメージ・コンスタブル ☆16
ペイントメージ・パステル ☆12
灯のモンスターのレベルが異常値を叩きだす。
このままでは到底シンクロ召喚などできるはずもない。
「さらにレベルか攻撃力が変動したモンスターが俺の場にいれば、このカードは破壊されず、
このカードがあればレベルか攻撃力が変動したモンスターは効果で破壊されねえ。
悪いことは言わねえ、サレンダーしろ!これは俺の唯一の情けだぜ」
しかし灯の目には一点の曇りもなく、諦めるつもりなど微塵もなかった。
「(あの罠カードを破壊して対処することはできなさそう。なら…正面突破しかない!)」
灯の目には更に覚悟が宿る。
「墓地の『ペイントメージ・シャッフル』を除外して効果発動。
墓地からペイントメージ3体をデッキに戻して1枚ドローできる。
ゴッホ・モネ・ショコラをデッキに戻し、ドロー!」
灯は引いたカードを見ると目を見開く。装備魔法カードだ。
その瞬間、頭の中にデッキの中のカードが広がり、
その中から特定のカードだけが道を繋いでゆき、最後にはドローした装備魔法カードが光り輝く。
「ペイントメージ・パステルの効果発動!
このカードをリリースして、ペイントメージチューナーを特殊召喚する。
来い、シンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』!」
■ペイントメージ・カードル
シンクロモンスター/チューナー
レベル4/光/魔法使い/攻撃力1700 守備力2000
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
②:自分・相手ターンにフィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
自分の除外状態の「ペイントメージ」モンスターを任意の数だけデッキに戻し、
その枚数分、ターン終了時までそのモンスターのレベルを上げるか下げる(最小1まで)。
③:このカードをS素材としたモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、このカードと同じ属性を持つ相手フィールドのモンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
現れたのは1.5メートルほどの大きさを持つ額縁のモンスター。
中央には彫りの深い凛々しい目を瞑った女性の顔がついている。
カードルはオブジェクト・フーパーの効果で10レベルアップし、☆14となる。
「いくら足掻いたところで、そんなレベルじゃシンクロはできねえぜ?」
勝利を確信しているクリスにもはや緊張感などない。
周りの景色やバイクと共に疾走するモンスター達を楽しむ余裕さえもある。
「手札からペイントメージ・リラを召喚。
召喚時、デッキからペイントメージを手札に加えることができるが、その効果は使わない」
「当然だよなぁ?レベルが変動したモンスターが効果を使えば、
その瞬間エクリプスの効果で破壊されちまう。
フッフッフ…俺のデッキはこの瞬間が一番楽しいんだ。せいぜい足掻けよ!」
自分の命運がかかったデュエルであることを忘れたかのように、クリスは笑い飛ばす。
「リラの効果発動!
デッキから闇属性モンスターを除外して、フィールドのモンスターを闇属性に塗り替える。
ペイントメージ・カードルを闇属性に変更」
「なんだと…?だがその効果を使った時点でリラは破壊だ!」
エクリプス・フーパーの背中の白と黒の輪から波動が放たれ、その衝撃でリラは破壊される。
しかし破壊されても効果が無効になったわけではなく、リラの効果は適用される。
「リラの効果で除外するのは『ペイントメージ・ミュール』!
そして除外された時に効果発動。相手モンスター1体を対象に、
そのモンスターはこのターン効果を発動できなくなる。
お前のフィールドのトーラス・フーパーを選択!」
「ならその効果にチェーンしてトーラス・フーパーの効果発動!
フィールドのモンスターにレベルを譲渡する!エクリプス・フーパーにレベルを1付与する!」
エクリプス・フーパー ☆11
トーラス・フーパー ☆4
エクリプス・フーパーのレベルは上がったが、
オブジェクト・フーパーが付与できるのはSモンスターの元々のレベルであるため、
灯のモンスターに付与されるレベルは10のままだ。
「永続魔法『オブジェクト・フーパー』の効果で、
レベルが変動したエクリプス・フーパーは破壊されねえ。
さらにレベルが変動したモンスターがいることでオブジェクト・フーパー自身も守られる」
レベルが変動したことで、フィールドのモンスターと永続罠にそれぞれ耐性が付与される。
そのためにはクリスはいずれレベル変動効果をエクリプスに適用していたであろうが、
ミュールの対象とすることで、灯はそれをこの時点で発動するように強制したように見える。
「魔法カード『ペイントメージ・エクラブシュール』発動!
墓地のペイントメージモンスターを除外して、除外した属性の数に応じて効果を適用する。
俺は墓地からペイントメージ・フランボワーズ、リラ、パステル、カラメルを除外」
「除外した属性は炎・闇・光・地の4種類!
4種類の属性を除外した場合、相手のモンスターを全て破壊する!」
■ペイントメージ・エクラブシュール
通常魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地の「ペイントメージ」モンスターを2体以上除外し
(属性1種類につき1枚しか除外できない)、
除外した属性の種類の数によって以下を適用する。
●2種類:デッキから「ペイントメージ」モンスター1体を特殊召喚する。
●3種類:相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。
●4種類:相手モンスターを全て破壊する。
●5種類:EXデッキからレベル6以下の「ペイントメージ」モンスター1体を
召喚条件を無視して特殊召喚する。
●6種類:相手フィールドのカードを全てデッキに戻す。
「全て破壊だと…!?だが…」
クリスは灯の発動した魔法カードに驚くも、対処可能と判断し、手札の1枚のカードを表にする。
「手札のアンクル・フーパーの効果発動!攻撃力1300をトーラス・フーパーに譲渡する!
これで俺の2体のモンスターのレベルと攻撃力が変動した!
永続罠『オブジェクト・フーパー』の効果で、2体とも破壊されねえ!」
トーラス・フーパー ATK3300
灯のフィールドに赤・紫・黄・茶の4種類の絵の具で線が描かれる。
その線はやがて交わり一つの渦となって、クリスのフィールドへ放出される。
しかしクリスの背後の石像「オブジェクト・フーパー」が光のベールをフィールドに出現させ、
クリスの2体のモンスターを守った。
「クハハハ!一世一代の攻撃だったようだが、不発に終わっちまったぞ!大丈夫かぁ?」
クリスは心の底からデュエルを楽しんでいる。
「でも、もうお前に発動できる効果は残ってないだろ?ここからは好きにやらせてもらう」
「…なんだと?そんな高レベルモンスターしかいねえのに、どうやって好きにやるんだ?」
追い詰められているにも関わらず冷静で余裕な態度を取る灯に、クリスは不可解そうな目をする。
「あなたにぐちゃぐちゃにされたキャンバスも、"私"が美しいアートに仕上げてみせる!」
「ペイントメージ・カードルの効果発動!
1ターンに1度、除外されているペイントメージモンスターを任意の数デッキに戻して、
その数だけ、ペイントメージのレベルを上げるか、下げることができる。
ペイントメージ・コンスタブルのレベル下げる!」
「だがこの瞬間、エクリプス・フーパーの効果で、レベルが変動したカードルは破壊される!」
エクリプス・フーパーの背中の2つの輪から放たれた波動によって、カードルは破壊される。
「だがカードルの効果は続いている!
俺は除外されている9枚のモンスターをデッキに戻し、
コンスタブルのレベルを9下げる!」
灯は除外されている9枚のモンスターを手に取り扇形に広げ、
それを一瞬にして重ねた後、素早くデッキへと戻す。
デッキに戻したモンスターは以下の9枚だ。
ペイントメージ・パレット(ペイントメージ・トロンプルイユの効果で除外)
ペイントメージ・クレーム(ペイントメージ・コンスタブルの効果で除外)
ペイントメージ・リム(ペイントメージ・ゴッホの効果で除外)
ペイントメージ・ミュール①(ペイントメージ・モネの効果で除外)
ペイントメージ・ミュール②(ペイントメージ・リラの効果で除外)
ペイントメージ・フランボワーズ(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・リラ(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・パステル(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・カラメル(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・コンスタブル ☆16→7
「レベルを9下げるだと…!
さっき発動した魔法カードで一気に除外数を稼いだってわけか…!
だがアンタがチューナーを召喚したところで、そのモンスターのレベルは+10になる。
シンクロ召喚はできねえぞ!」
灯が不可解なプレイによって、少しずつ募っていったクリスの不安がここにきて大きくなる。
相手モンスターを使ったシンクロ召喚をするなど、想像を超えるプレイを魅せてきた彼女だ。
また何かをしでかすのではないかと、クリスは無意識下でどうしても思い浮かべてしまっていた。
「俺は手札のチューナーモンスター『ペイントメージ・フキサチーフ』の効果発動!
フィールドのペイントメージと手札のこのカードでシンクロ召喚を行う!」
■ペイントメージ・フキサチーフ
効果モンスター/チューナー
レベル1/水/魔法使い/攻撃力100 守備力800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
対象のモンスターと手札のこのカードを素材として
「ペイントメージ」SモンスターをS召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:自分の「ペイントメージ」モンスターの効果を無効にする効果が発動した時、
墓地のこのカードを除外して発動できる。その効果を無効にする。
「手札のチューナーとシンクロ召喚だとッ…!?
手札にはオブジェクト・フーパーのレベル付与は及ばない…。
まさか初めからこれを狙って…!」
灯は今まで見せたことのなかったレベル1チューナーによってシンクロ召喚を行おうとしている。
彼女のデッキにはまだ数多の可能性が秘められており、
レベル1モンスターが存在していることにも大きな意味がある。
しかし今回は相手のレベル変動効果をカードルで対処した上での
レベル調整という役目を果たそうとしている。
「光属性に変化した、レベル7『ペイントメージ・コンスタブル』に、
手札のレベル1『ペイントメージ・フキサチーフ』をチューニング!」
灯の頭上に、小さな青いスプレー缶に手足のついたモンスターが現れる。
そして一つの光の輪になり、その中をコンスタブルが潜り抜けてゆく。
「数多の彩より生まれし華麗なる精霊よ、その手で悪しき魂を塗り潰せ」
「シンクロ召喚!降臨せよ、レベル8!
『ペイントメージ・アールヌーヴォー』!」
■ペイントメージ・アールヌーヴォー
シンクロモンスター
レベル8/光/魔法使い/攻撃力3000 守備力2400
チューナー + チューナーと異なる属性のモンスター1体以上
①:このカードがフィールドに存在する限り、
このカードのS素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。
②:このカードは、S素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスター全てに攻撃できる。
光の中から現れたのは、虹色の羽を持つ錫杖を持った精霊だった。
白い肌に、白いドレスのようなローブを身に纏い、口元は布で隠されている。
「レベル8シンクロ…!」
数々のレベル6シンクロに翻弄されてきたクリスは、
それを上回る上位のシンクロモンスターの登場にある種の畏怖をおぼえる。
そしてそれを誤魔化すかのように、自分を安心させるかのように言葉を放つ。
「だが、俺のフーパーは攻撃力を与えられてる!攻撃力3000じゃ倒せねえぞ!」
トーラス・フーパー ATK3300
エクリプス・フーパー ATK3300
「高いのは攻撃力だけだろ…ッ!
装備魔法『ペイントメージ・インパスト』をアールヌーヴォーに装備!」
■ペイントメージ・インパスト
装備魔法
「ペイントメージ」モンスターにのみ装備可能。
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:装備モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
攻撃対象となったモンスターの表示形式を変更する。
②:装備モンスターと同じ属性を持つ相手モンスターが効果を発動した場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
③:このカードが墓地に存在し、
自分が「ペイントメージ」SモンスターをS召喚した場合に発動できる。
墓地のこのカードをそのモンスターに装備する。
装備魔法が装備されると、強い光と飛沫を上げる水流がアールヌーヴォーを纏う。
これはアールヌーヴォーが素材にした光属性と水属性を表している。
「インパストを装備したモンスターが戦闘を行う時、相手モンスターの表示形式を変更できる!
さらにアールヌーヴォーは、素材としたモンスターと同じ属性を持つモンスター全てに攻撃できる。
S素材としたコンスタブルは自身の効果で光属性に変わっていた。
よって、お前のモンスター2体を守備表示にして攻撃できる!」
「なんだと…!」
クリスは自身のモンスターの守備力を確認する。
トーラス・フーパー DEF1800
エクリプス・フーパー DEF2000
「てんめェ…!
だが忘れたか!サーペント・フーパーの効果によって、
俺のエクリプス・フーパーは、バトルを行う相手モンスターを手札に戻す効果を…」
「そんな効果、もう"無い"よ」
「あァ…?どういう意味だァ!」
クリスの言葉を途中で遮った灯に、すでに冷静さを失ったクリスは怒号をまき散らす。
「アールヌーヴォーがS素材としたモンスターと
同じ属性を持つ相手モンスターの効果は全て無効となる。
エクリプス・フーパーが新たに得た効果は、もう消え去った!」
「あァ…ありえねえ…!だ、だが!
所詮モンスターを破壊できたとしても、俺のライフは削り切れねえ!
残念だったな!俺のフーパーは何度でも蘇る!この程度で終わると思うなよ!」
「いや、このターンで終わらせる!
墓地のペイントメージ・フゼインの効果発動!このカードを除外して、
ターン終了時まで、ペイントメージ1体の攻撃力を1000アップし、
そのモンスターが守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!」
フゼインの力によってアールヌーヴォーを炎が纏い、その力を底上げする。
ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK4000
「攻撃力4000…ってことは…ちょっと待てよ…」
クリスが冷静さを失った頭で必死に計算しようとするが、灯は構わずバトルフェイズに突入する。
これ以上の説明は時間の無駄だ。
「バトル!ペイントメージ・アールヌーヴォーで、トーラス・フーパーに攻撃!
装備魔法『ペイントメージ・インパスト』の効果発動!トーラスを守備表示にする!」
アールヌーヴォーは錫杖を持ち上げると、頭上に大きな光の球を浮かべ、
それを高速でトーラス・フーパーへ放つ。クリスは突如迫って来た攻撃に目を見開く。
トーラスと光球の衝突と共に大きな光の爆発が起きる。
「守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!」
「ぐうあああああああ!!」
クリス LP4200 → 2000
ダメージによって大きな衝撃を受け、クリスのオートバイは何度も回転し方向感覚を失う。
爆発した光の残滓をかき分け、真っ赤なスポーツカーが現れる。
その少し後にクリスのオートバイがフラフラとしたスピードで追いかける。
ボゴォン!
クリスのオートバイから異音がした。
「クソッ!!エンジンがイカれちまった!う…うああああああああ!!」
完全に制御が効かなくなったオートバイは左右に大きく揺れ、クリスは恐怖の叫びをあげる。
必死にハンドルを握って耐えながら前を向くと、
数メートル先でスポーツカーがドリフトしながら勢いよく停車し、灯がクリスを睨んでいた。
その目には怒りが煮え滾っていた。
冷静にデュエルをするために抑えられていたものが、最後に一気に溢れ出た。
灯は遊次の悲痛に叫ぶ顔を思い出し、歯を食い締めながら、掌を思い切り握る。
そして、最後の一撃を放とうと拳を前に突き出す。
「や、やめろ…!ネックレスは返す…!だから…やめてくれ……っ!」
バイクが半壊したこの状態で衝撃を受けることを想像し、クリスは惨めに命乞いした。
しかし、焼け石に水だった。
「遊次を苦しめる奴は絶対に私が許さない!トドメだッ!
ペイントメージ・アールヌーヴォーで、エクリプス・フーパーを攻撃!
装備魔法『ペイントメージ・インパスト』の効果で守備表示に変更し、貫通ダメージを与える!」
アールヌーヴォーが錫杖を掲げ、その上には巨大な光の球が浮かび上がる。
それを一瞬にして放つと、クリスの前は光で照らされ、視界が奪われた。
「ぐああああああああ!!!!」
クリス LP2000 → 0
オートバイはデュエルの衝撃によって転倒し、クリスは呻き声をあげながら転がり落ちた。
オートバイはそのまま慣性でサーキットの透明な壁に激突し、煙を上げている。
「勝者、花咲灯。
オースデュエルにより、クリス・ヒッターにはネックレスを返還する義務が生じます」
DDASの機械音声がオースデュエルの終わりを知らせる。
サーキットに力なく倒れ、呻き声をあげているクリスに灯が近づくと、
彼の胸ポケットから遊次のネックレスを素早く奪い返す。
「こ…こんなとこで…終わって…たまるか…」
クリスは薄れゆく意識の中で、灯に手を伸ばす。
灯はその手を冷たく払う。
灯が手にしている携帯電話には、警察へ通報する番号が入力されていた。
「私の夢は終わらせない。そのためなら…どんなことだってする」
その目には恐ろしいほど冷たい敵意と侮蔑…そして"何か"への強烈な執着が表れていた。
クリスは、灯の言葉を全て聞く前に意識を失った。
Next事務所では、イーサン・怜央・探偵の伊達アキトが戦々恐々としていた。
「ぐあぁあアアア…ァアアアアアア!!!!」
一度意識を失った遊次は、再び目を覚まし、苦しみもがいていた。
イーサンと怜央は暴れる遊次の体を抱きしめるように必死に押さえていた。
「クソッ…!灯の奴、何やってんだよ…!!」
連絡のない灯に対して、怜央の苛立ちがピークを迎えていた。
「何か事情があるはずだ!
アンティークショップで犯人が見つからなければ、もうとっくに連絡してる!
俺達は灯を信じるしかない!」
イーサンは遊次の叫び声に負けないように、声を張って主張する。
「俺が間違ってたのか…?もしかしたらとっくに町の外に…」
アキトは必死にタブレットを見つめ、自分の推理が誤っていたのかもしれないと焦りを募らせる。
しかしそんな中、裏口から車を停める音が聞こえる。
イーサンはすぐに気が付き、事務所の入り口を見つめると、灯が走って入って来た。
その手には遊次の赤いネックレスが握られていた。
「灯っ…!!」
イーサンと怜央の顔は一瞬で晴れやかになる。
「遊次っ!!」
灯は持っていたネックレスをすぐに遊次の胸元へとかける。
「ぐ…ぐあぁああアアアア!!ぐウアァアア…」
遊次の叫び声は少しずつ小さくなってゆく。
「遊次…遊次…!」
灯が遊次を抱きしめ、その名前を呼び続ける。
安心させるように、何度も、何度も。
遊次の荒かった呼吸は次第に正常なものへと戻ってゆく。
目にもだんだんと光が宿り、生気を取り戻していく。
「…灯…?」
遊次が完全に意識を取り戻す。
「遊次っ!よかった…!よかったよぉ…」
灯はさらに遊次が強く抱きしめる。その瞬間、糸が途切れたように涙が零れる。
「そっか、俺ネックレスを奪われて…」
遊次はしばらく状況を理解できなかったが、だんだんと記憶が蘇ってくる。
「取り返してくれたんだな灯。よかった…本当に」
イーサンは心からの安堵の声を漏らす。
「連絡できなくてごめん。
伊達さんの推理通り例のアンティークショップにいたから、追いかけることになって。
ネックレスを取り返すために通報しないことを条件にオースデュエルをしたから、
誰にも言えなかったの」
「よかった…。推理が間違ってたらどうしようかと…」
アキトも胸をなでおろす。
「アキト…!それに皆…。本当にありがとな。悪い、俺がもっとしっかりしてれば…」
遊次は皆の顔を見回して感謝の意を述べる。それと同時に罪悪感も湧いて来る。
「まさかお前がネックレス無しじゃ生きられない状態なんてな。
今度からは簡単に千切れねえチェーンにしとけ」
「悪いのは引ったくりだよ!今までこんなことなかったし、自分を責めないで。ね?」
遊次自身以外は誰も彼を責めることはない。
記憶消失に精神崩壊など、普通の生活を送るだけでも遊次は人の何倍も苦労してきた。
それを誰よりも知っている灯は遊次に寄り添い続ける。
「…ありがとな、本当に。俺、いっつも灯に助けられてばっかりだ」
遊次はまた自省的な言葉を口にする。
「そんなことない!私こそ、いつも遊次に救われてる。皆だってそうだよ!」
灯は事務所にいる者達の顔を見渡す。
「うん、俺なんてその代表例だよ。この町の皆、遊次に感謝してるさ」
アキトはサムズアップをしながら笑顔で返す。
彼は詐欺師から高額な賠償金を支払わせるという依頼を、遊次のおかげで完遂できた過去がある。
「近づいて来る引ったくりに気付かなかった俺らの落ち度でもある。
今後はもっと警戒しなきゃな。だからもうクヨクヨするな。所長なんだ、胸を張ってろ」
この中でもネックレスを奪われて最も肝を冷やしていたのはイーサンだろう。
しかしそのことは噯にも出さず遊次を励ます。
「アキト、イーサン…。みんな、今日はありがとう!もう夜も遅いし、帰ろう!」
遊次は立ち上がり笑顔で応える。もういつもの調子に戻ったようだ。
再び事務所のプレートをCLOSEにして皆で帰路につく。
また明日からいつもの日常に戻ってゆく。
しかし遊次の頭の中には、ネックレスを失っていた間見た記憶の数々がまだこびりついていた。
「(久しぶりに見たけど…なんなんだ、あの記憶。夢にしては、あまりにもリアルすぎる)」
遊次は自分の掌を見つめる。見ていた記憶の中の感覚がまだそこに残っているかのように。
遊次の頭に最も焼き付いていたのは、悲鳴を上げながら逃げ惑う町の人々の映像だ。
自分の視点は遥か上空にあり、こちらを見上げているオレンジの髪の男性。それが強烈に頭に残っていた。
「(あれ、ドミノタウンだよな。それに…あそこにいたのは何回見ても父さんだ。
ほんと、なんなんだよ…)」
「(あぁもう!考えてもしょうがねえ!明日からまた仕事だ!余計な事は考えないようにしなきゃ)」
1人で考えても真実はわからない。遊次は頭を振って気を取り直し、前を向く。
【隕石衝突まで…残り497日】
第27話 「ふたりの出会い」完
Nextに新たな依頼が舞い込む。
それは施設から引き取った血の繋がらない息子との仲を修復したいという内容だった。
血が繋がらないが故の親子の軋轢。
他人事とは思えぬイーサンは、12年前に遊次の育ての父となった時を回想する。
ある雨の日。突然遊次の目の前に現れた男は、ひどく冷たい目をしていた。
これは、かつて孤独に心を殺された男が、1人の親となるまでの物語。
次回 第28話「親と子」
クリスの攻撃による大ダメージでクラッシュ寸前まで追い込まれるも、灯はなんとか持ち直す。
遊次は常に身に着けているネックレスを奪われ、現在も精神崩壊の状態に陥っている。
一刻も早く取り戻さなければ、遊次の命に係わる。
遊次を救うには、このライディングデュエルで勝利するしかない。
これは命の危険すらもある戦いだ。
それでも灯は決して諦めるわけにはいかなかった。
「(遊次を悲しませたくない。苦しませたくない。
だから私はあの時…君を守るって誓ったんだ)」
灯は目を瞑ると、セピア色の記憶が蘇る。
灯の心の奥底に根付くその思いの原点は、12年前に遡る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
12年前
「花咲灯です。メインシティから来ました。
仲良くしてくれるとうれしいです」
小学3年生の秋。灯はドミノタウンの小学校に転校してきた。
灯は緊張で硬い表情をしている。
クラスメイトは拍手をする。その中でもより一層、
大きく手を上げて笑顔で拍手をしている窓際の一番後ろの席の男の子が目に入った。
オレンジの髪をした、大きなネックレスを胸から提げている少年だった。
都会出身という物珍しさから、話しかけてくれるクラスメイトも多かった。
クラスからは受け入れられ、ひとまずほっと胸を撫で下ろした。
しかし灯には一つ気がかりなことがあった。
それは、人一倍拍手を送ってくれた彼が、ずっと一人で窓の外を見つめていたこと。
第一印象からムードメーカーなのだと思っていたが、彼は一度も輪に入らなかった。
そしてその日の放課後。
様々な手続きや学校の案内なども一通り終わり、下校しようとした時、
下の階段の踊り場で3人の男の子の集団を見かけた。
その中にはオレンジの髪の男の子もいた。
ただ遊んでいるだけかと思ったが、どうやら様子がおかしい。
オレンジの髪の子が大柄の男子に羽交い締めにされ、小柄な男子が蹴りを入れていた。
「…ちょっと…!何してるの!?」
灯は思わず声を上げる。
いじめていた2人の男子は顔を見合わせ、その場から立ち去る。
踊り場にはオレンジの髪の男の子だけが膝をついて残されていた。
「大丈夫…?」
灯は階段を降り、男の子に声をかける。
「はは…平気平気!いつもの事だから!
ありがとな!じゃあな!」
彼は無理して笑顔を作りながら急いで走り去っていった。
まるで関わるなと言っているようなその背中を、灯はただ見送ることしかできなかった。
その翌日。
放課後に学校の階段を一人で掃除をしているところ、男子に声をかけられた。
昨日、オレンジの髪の子をいじめていた2人の男子達だった。
「お前、チクったりしてねーだろうな?」
大柄な男子が圧のある声で問いかける。
「…し、してないけど…。で、でも…だめだと思う、あんなこと…」
灯は怯えながらも抵抗の意思を見せる。
「は?お前にカンケーねーだろ!転校生のくせに生意気なんだよ!」
「きゃあっ!」
男子は灯を思い切り突き飛ばし、灯は倒れ込んでしまう。
「あんな奴の味方してたら、お前もおんなじ目に遭うってわからせてやるよ」
大柄な男子はそのまま倒れている灯ににじり寄る。
「い、いや…」
灯は男子を見上げながら恐怖に打ち震える。
すると、後ろから廊下をダッシュする足音が聞こえてくる。
そして、次の瞬間には、目の前でオレンジの髪の男の子が、大柄な男子を殴り飛ばしていた。
もう一人の男子はただただその姿を見つめ慌てていた。
「何してんだよ!!灯は関係ねーだろ!」
オレンジの髪の子が、倒れている大柄な男子に掴みかかり、必死の形相で叫ぶ。
「テメエッ!!」
大柄な男子もすかさずオレンジの髪の子を殴り、一触即発の事態に発展する。
灯はその様子をしばらく呆然と見ていたが、数秒後に止めなければならないことに気付き、辺りを見渡す。
たまたま通りがかった教師と目が合い、すぐにその教師が駆けつける。
「何してんだお前ら!」
教師は2人の喧嘩に割って入り、殴り合いはそこで終わった。
その後、その場にいた4人が教員室へ呼び出され小一時間説教を受けた。
しかし教師はそれほど大事とは捉えておらず、ただのよくある喧嘩の1つとして処理された。
灯も、彼らの事情を知らないため、
ただの喧嘩である可能性もあり、特にその場では何も言わなかった。
それでも、当分は教師が目を黒くしているため、あのようなことは起きないだろうと思った。
いじめっ子の2人は灯とオレンジ髪の少年にガンを飛ばして帰っていった。
少しの静寂が流れた後、灯がオレンジ髪の少年に話しかけた。
「助けてくれてありがとう。
そのせいで君が殴られることになっちゃって…ごめんなさい」
「いや、俺の方こそ、昨日は助けてくれてありがとな。
でもそのせいでお前を…灯を巻き込んじまった。
ほんとにごめん。だから…もう俺に近づかない方がいい」
少年は真面目な顔で灯に忠告する。
「え…でもそれじゃ、またいじめられちゃうよ」
「いじめって…そんな大したもんじゃねえって!
あいつら、俺のダチだから!平気平気!
じゃあ、また明日な!」
彼は昨日と同じように足早に立ち去ろうとする。
しかし灯は、思わず彼の腕を掴んだ。
少年は驚いて振り返る。
灯自身も自分の行動に驚き、とっさに手を離す。
それでも彼を行かせたくないという気持ちには変わりはなかった。
「…は、話そうよ!
そうだ!私、転校してきたばっかりでお友達もいないし…」
決して嘘ではないが、それは彼を引き止める口実だった。
「…そっか。俺も話したかったんだ。転校生なんて珍しいし!
じゃあ校庭行こうぜ」
灯が咄嗟に口に出した言葉を彼は素直に受け取った。
「俺、神楽遊次。
お前はともり、だろ?ちょっと変わってるから覚えてる」
「うん、花咲灯。遊次君っていうんだ。
教室で自己紹介したとき、すごく大きく拍手してくれたから、おぼえてるよ」
「あぁー、転校生なんて初めてだったしテンション上がったからさ。
遊次でいいぜ」
灯と遊次は校庭の古めかしいブランコに乗ってお互い自己紹介をする。
校舎は1年前のコラプスで相当な被害を受け、未だ半壊状態だ。
1年前から修繕工事は行われているものの、災害の爪痕は生々しく残っている。
その中でも校庭の隅にあるブランコは形を残していた。
すでに放課後であり、人の目につかないことから、ここを話し場所に選んだのだ。
「親の仕事かなんかで引っ越してきたのか?」
「お父さんが、この町のふっこー?を手伝いたいって。だからひっこしてきたの」
「まじか!…すげえうれしいな。
メインシティ…だっけ?すげー都会なんだろ?
そんなとこにもこの町を心配してくれる人がいるんだな」
遊次は心から嬉しそうに笑う。
メインシティという名前すらうろ覚えな様子が少し気になったが、
田舎町ならおかしくもないと、灯は自分の中で納得をした。
「…うん。お父さんとお母さんは、すごいと思う。たまに怖い時もあるけど…」
「?」
口ごもる灯に遊次は軽く疑問を抱く。
「わ、私のことはいいの!
それよりも遊次くん…遊次は、いつもあんなことされてるの?
殴られたり蹴られたり」
灯は本題を切り出す。
「…うぅーん…まあ、そうだな」
遊次は歯切れが悪そうに答える。
「あの人たち、友達だって言ってたよね?
なのに、なんであんなことされるの?」
「…俺にもよくわかんねえ」
「…え?」
要領を得ない返答に灯の頭上の疑問符は数を増やし、胸の内の靄が広がる。
「なーーんにもわかんねえ!だって俺、キオクソーシツだし!」
「…え?」
遊次は発した言葉の深刻さとは裏腹にあっけらかんと笑ってみせる。
そんな彼の笑顔は灯にはむしろ悲痛に見えた。
「俺、1年前のコラプスより前の記憶が、ぜーんぶないんだ。きれいサッパリ」
「うそ…そんなこと…。
じゃあ、1年間の記憶しかないってこと?」
まだ小学3年生の灯には到底想像もつかないことだった。
「そ!まあ、アイツらから嫌われてちまってんのもそれが理由っぽい。
元々は友達…だったらしい。
でも、ある日急に別人になっちまって、気持ちわりいってさ。…ハハハ」
遊次は明るく振る舞うが、それが心からのものではないことは誰でもわかることだった。
「そんな…だからって殴ったりしていいわけない!
なんでやられっ放しなの!?」
完全なる被害者の立場でありながら抵抗しようとせず、
ましてやへらへらと笑っている遊次に灯は苛立ちすらおぼえた。
「…だって、友達なんだぜ。
そんな、力でどうにかするのはさ…なんかちげーんだよ」
「……!」
一方的な暴力を受け、彼らと友人であった記憶すらない彼は、
彼らのことをまだ友達と呼んだ。
灯は彼の心をなんとか理解したいと思った。
記憶を失って、ただでさえ何もない荒野に立たされた彼にとって、
元々友人であったという存在は、記憶を失う前の自分と今の自分を繋ぐ、
唯一の糸口だ。だからこそ、簡単には手放したくないのだろうと思った。
「友達だったから戦いたくないって気持ちもわかるよ。
でも、戦わなきゃ!
遊次が傷つくとこは見たくないの!私が!」
しかし灯はそれでも食い下がった。遊次は自分が傷つくことには鈍感なのだろう。
だからこそ、彼自身が傷つくことを他の誰かが望まないということを教える必要があった。
遊次は灯の言葉にこれまで感じたこととのない何かを感じた。
これほどまでに自分に対して純粋な言葉をぶつけてくれる人は、家族以外にはいなかったからだ。
「だから、私のことは私が守る。遊次も、自分のこと守らなきゃ」
「…戦わなきゃ、か」
遊次は灯の言葉を聞き、何かを思い出した様子だ。
「わかった!俺ももうやられっ放しにはならねえ。一緒に戦おうぜ!
…で、お前、デュエルできんのか?」
戦うというのは当然デュエルでの話だ。
遊次の質問に灯は痛い所を突かれたようにぎくりとする。
灯は戦うことを決心するも、その手法については何も考えていなかったのだ。
(ちょっと、さすがに弱すぎ!
もっと強くならないと、モンスター達がかわいそうじゃん!)
その時、灯の頭の中にとある金髪の少女の言葉が浮かんだ。
(また逃げるの?)
次に浮かんだのは、かつての母親の一言だった。
様々な思いが灯の中を駆け巡る。
「で、できるよ!デュエル!」
気付いた時にはその言葉が口をついて出ていた。
「お、そうか!じゃあさっそくやろうぜ!」
遊次は折り畳まれたデュエルディスクを取り出し、笑顔で提案する。
「えっ…?う、うん…」
一度言ってしまった以上やるしかない。
意を決して灯もデュエルディスクを構えた。
「きゃあー!」 灯 LP0
勝負は一瞬にしてついた。
遊次の実力には遠く及ばなかった。
「へっへー!勝利は俺がいただいたぜ!
まだまだだな、灯!」
遊次は本来の目的など関係なく純粋に勝利に喜んでいる。
「…やっぱり私なんかじゃ勝てないのかな…」
灯は思わず弱気になる。
「んなことねーよ!モンスターもお前のこと信頼してんのがよくわかるしさ」
「モンスターが信頼…?」
灯には遊次のいうことがわからなかった。
モンスターはあくまでソリッドヴィジョンの存在であるはずだからだ。
「あぁ、なんか俺モンスターの感情とかがたまにわかるみたいでさ。
…まあ、誰も信じてくんないけど」
遊次は少し寂しそうな表情になる。
「信じるよ私。そんな変な嘘ついても意味ないもん。
でも、モンスターが私のこと信じてるってどうしてわかるの?」
「うーん、うまくは言えないけど…
灯がモンスターを活躍させようとしてるのが伝わってくるっつーか、
その思いをモンスターがちゃんと受け取ってるってのがわかるんだ」
その言葉を聞いて灯は再び金髪の少女の言葉を思い出す。
(だって、こーんなかわいいアタシの子達が、一生懸命頑張ってるんだよ!
勝たせてあげるのがデュエリストの役目でしょ!)
「…うん。もっと活躍させてあげたい。
私…強くなりたい」
灯はまっすぐ前を向き決意を示す。
「なら特訓だな!今日からみっちり!」
灯の決意を聞き、遊次は笑顔で返す。
この日から遊次と灯の特訓は始まった。
「私のターン、ど、ドロー!」
「ちげえ!
ドローってのはデュエリストの思いをデッキに込めるんだ!
もっと力強く!俺のターン、ドロー!」
「お、俺のターン…」
「声が小さい!」
「俺のターン…ドローー!!」
放課後や休みの日も、2人は毎日のように特訓を重ねた。
ドローの仕方からプレイングのコツなど、あらゆることを遊次から学んだ。
そして、特訓を始めてからひと月が経過した頃の放課後。
遊次と灯がいつも通り特訓へ向かおうとすると、遊次をいじめていた男子2人が声をかけてきた。
「おいどうした?最近女とばっか遊んで。寂しいじゃんか」
「俺らとも遊ぼうぜ!モテ男くんよぉー!」
教師の目もあってこれまでは大人しくしていたが、
ほとぼりが冷める頃を見計らっていたようだ。
「あなた達…また懲りずにいじめに来たの?」
灯は彼らを睨みつける。
「いじめなんてひでー言い方だな。ちょっと遊んでただけじゃんか」
「花咲さんもそんな変な奴と関わらないほうがいいぜ?
そいつ、モンスターと交信できるやべー奴だからさ!アハハハ!」
1ヶ月間溜まっていたものを発散するように、彼らは悪辣な言葉を吐き出す。
「…確かに、久々にお前らと遊ぶのもいいかもな」
「あぁ?」
いじめっ子は遊次がいつもと違う調子で彼らに応じたことに、違和感や苛立ちをおぼえる。
「遊ぼうぜ、こいつで」
遊次はデュエルディスクを掲げる。
「ハッ、そんなの俺らがやりたい遊びじゃねーよ」
「もっと直接スカッとする方法があんだろ〜?」
しかしいじめっ子達はデュエルに応じようとしない。
「ふーん、負けるのが怖いんだね」
すかさず灯が嘲笑う。
「は…?んなわけねーだろ!
なに生意気ヌカしてんだ転校生がよぉ…」
大柄ないじめっ子は怒りを露わにして、灯ににじり寄ろうとする。
「それ以上灯に近づくんじゃねえ。
灯に触れたら今度こそ絶対に許さねえぞ」
「…!」
いじめっ子は思わず1歩後ずさる。
その遊次の鋭い眼光はもはや殺意に近かった。
不覚にも本能的に近づいてはいけないことを悟ったのだ。
「やるならデュエルでだ。
俺はもうお前らにやられたまんまじゃない。
ちゃんとお前らと戦って、デュエルで語り合うんだ!
ビビってねえならデュエルディスクを構えろよ!」
遊次の気迫に押されながらも、いじめっ子も黙っているわけにはいかない。
「やってやるよ…!お前なんかぶっ倒してやる!」
いじめっ子はデュエルに応じる。
「タッグデュエルだ。灯、いけるよな?」
「…うん。いっぱい特訓したから」
灯は力強く頷く。
デュエルは校庭で行われることとなった。
特訓の成果もあり、灯のプレイもこれまでとは違い格段に研ぎ澄まされていた。
また、特訓で散々デュエルしてきたこともあり、お互いがデッキを完全に把握していたことも功を奏した。
勝負はかなり一方的だった。
いじめっ子達は遊次と灯のデッキに翻弄され続け、まともにフィールドを維持できないまま最終ターンを迎えた。
いじめっ子達のフィールドはガラ空きとなっており、
遊次達のフィールドにはそれぞれの切り札であるゴエモンとアールヌーヴォーがいる。
「クソォッ!だから嫌だったんだ!お前とデュエルするの!」
小柄ないじめっ子は涙目で叫ぶ。
「そういうとこだけは変わんねえな…ほんと」
大柄ないじめっ子は観念しているようだ。デュエル中も彼は遊次を罵ったりはしなかった。
だが最後のターンになって、彼の中で溜まっていたものが一気に溢れ出した。
「なんなんだよお前…!じゃあ俺らが悪者ってか!?おい!!」
「悪者に決まってるでしょ!何もしてない遊次をいじめて!」
いじめっ子の叫びに間髪入れずに灯は反撃する。
しかしいじめっ子も黙ってはいなかった。
「何もしてない…?ちげーだろ!
そいつは、俺らから友達を奪ったんだ!遊次を乗っ取ったんだよ!!」
「……!」
いじめっ子の放った言葉に遊次は目を見開く。
「乗っ取った…?意味わかんない!」
灯は彼の言葉を理解できなかった。
「前までの遊次はなぁ!もっとずる賢くて、捻くれた奴だった!
綺麗事ばっかいう先生を馬鹿にしたりしてよぉ…!
でも、そこが良かったんだよ!一緒にいて心地良かったんだ!」
「でも記憶をなくしてからのお前は、何に影響されたか知らねーけど、
俺らが嫌いなその綺麗事ヤローになっちまったんだよ!
遊次を返せよ!この偽物!!」
いじめっ子は全てを吐き出した。
その言葉はある意味で暴力よりも残酷な本音だった。
デュエルという心と心をぶつける儀式によってそれが引き出されたのだ。
「…」
彼らの言葉を聞き、遊次は奥歯を噛み締める。
彼らが自分を気持ち悪いという理由は腑に落ちるところもあった。
それでも、どうしても納得できなかった。
自分も記憶を失ってから、何が何かわからずこれまで必死に生きてきた。
それでもかつて友だった者達に悪として責め立てられている現状を、飲み込むことはできなかった。
「…確かに、お前らからすれば乗っ取ったのと同じかもな。
でも…俺だって望んでねえよ!
今すぐにでも記憶を取り戻したい!!」
遊次は涙を滲ませるが、それを無理矢理押し殺しながら思いの丈を叫ぶ。
いじめっ子達も今までこれほどまでに真っ直ぐ遊次の気持ちを受け取ったことはなかった。
彼らもその言葉を聞いて良心の呵責がないといえば嘘になる。
「なんで俺が悪者なんだよ…!俺だって、普通の生活に戻るだけでも死ぬほど辛かったんだぞ!!
友達だったら、なんで助けてくれねえんだよ!
ただ気持ち悪いって避けて、殴って…お前らはそれで満足なのかよ!」
ありったけの本心。
遊次自身が今まで笑い飛ばすことで隠してきた心の奥底。
それが一気に溢れ出た。
「遊次…」
いじめっ子達の目からも自然に涙が零れ落ちた。心が揺さぶられた。
もしあの時、手を取っていたら違った未来になっていたかもしれないと、
遊次を拒絶した彼ら自身が思い直すほどに、その言葉は直接心に刺さった。
しかし、遊次の怒りと悲しみは抑えきれなかった。
「お前らなんか、友達じゃねえ!!」
彼らの心の変化の片鱗にも触れることなく、遊次は彼らを拒絶した。
「これで終わりだ!ゴエモンで、ダイレクトアタック!」
遊次の切り札は彼の怒りを刀に乗せ、相手を斬り裂いた。
吹き飛ぶいじめっ子達。歯を食いしばりながら立ち尽くしている遊次。
灯は何も言えず、ただそれを見つめることしかできなかった。
決闘は終結した。
遊次は何も言わずに振り向いてその場を後にし、灯も焦ってついていく形となった。
遊次と灯はほとんど言葉を交わすことなく帰路についた。
灯自身、どう言葉をかけてよいかわからなかった。
しかしこのままではいけないと思い、
いつも特訓をしていた公園を通りがかった時に灯は遊次に声をかけた。
「ね、ねえ!ここで少し話そうよ」
「…あぁ。そうだな」
夕日が照らす公園には誰もいなかった。
二人はベンチに座る。
少しの間、沈黙が流れる。
自分から誘ったこともあり、何か話さなければと、灯は言葉を紡ごうとするが、
その時、遊次の方から明るい声で話しかけられた。
「…勝ててよかったな!強くなったじゃねーか、灯」
「…。そ、そうだね!遊次の猛特訓のおかげだよ」
今までの様子とは打って変わって明るくなった遊次に少し戸惑いながらも、
暗いままよりは良いと思い、そのまま答えることにした。
「さすがにもう、あの人達も突っかかってこないんじゃないかな?
…ごめんね。遊次、ひどいこと言われてたのに…私、何も言えなかった」
しかし今度は灯の方が暗いトーンになる。
遊次にこれ以上傷ついてほしくないと戦うことを決意したにも関わらず、
遊次は傷つき続けた。その不甲斐なさに情けない気持ちになってしまったのだ。
「何言ってんだ、灯は俺のために立ち上がって、戦ってくれたじゃねえか。
ただヘラヘラ笑ってやり過ごしてた俺に、
戦って…デュエルで語るってことを思い出させてくれたのは灯だぜ」
「遊次…」
遊次の言葉は本心だった。それも灯には伝わっているが、どこか胸のもやは晴れない。
「俺、灯に"戦わなきゃ"って言われた時に思い出したことがあるんだ。
『デュエルは魂の会話なんだ』って。父さんが教えてくれた言葉」
「お父さんって…今一緒に住んでるっていう?」
灯も遊次が1年前から仮の父親と2人暮らしであることは聞いていたため、
その人を指していると考えた。
「いや、実の父さんだよ。今は…いない」
「…そっか」
デリケートな話題であり、あまり深堀しない方がいいと考えたため、
灯は最低限の情報が聞ければそれ以上は追及しなかった。
「ケンカをしてもデュエルで心をぶつければきっと分かり合えるって、
記憶を失くした俺に、父さんがよく言ってくれた。
だから…逃げずにアイツらともデュエルで語り合って、分かり合わなきゃなんないって思ったんだ」
「でも…俺はデュエルで語るってことを途中で投げ捨てちまった。
アイツらが俺に対して思ってること、あそこまでちゃんと聞いたことなくて…
悲しい気持ちとかムカつく気持ちとかがなんかこう…ぶわぁーーってなって…。
気付いたらゴエモンでトドメを刺してた」
「そんな…遊次は悪くないよ!
遊次だって、なんで記憶を失くしたのかもわからなくて、毎日苦しい思いをしてるのに…。
私は絶対に許せない。遊次がトドメを刺してなくても、私が我慢できなかったと思う」
「…ありがとな。でも、もっと最初からアイツらの気持ちも理解しようとして、
俺の気持ちもぶつけて…そしたら、別の道があったかもしれない。
もし父さんだったら、なんて思うかな。父さんだったらどうするかな。
ずっとそれが頭をぐるぐる回ってる」
灯はただ遊次を見つめ、彼の声に耳を傾ける。
「でも…もう父さんにそれを聞くこともできないんだ」
「…え?」
「父さん…死んじまったって。どっか別の国で」
「そんな…」
記憶も失い辛い毎日を過ごしている彼に、なぜ更なる苦難が与えられねばならないのか。
灯は理解に苦しんだ。
なぜ正しい道を歩み続ける彼がここまで報われないのか。彼が何をしたというのか。
「俺…これでぜーんぶ失くしちまった!記憶も、家族も…友達も!
ハハハ…なんでいつもこうなるんだろうな、俺って」
「…!」
遊次は無理やり笑って見せた。
しかし、顔は全く笑っていない。ただ口角が上がっているだけだ。
瞳孔は開き、ハイライトは黒く沈んでいる。
その表情を見ただけで灯の胸は締め付けられた。
それと同時に、灯は遊次を強く抱きしめた。
「…!灯…」
「…泣いていいんだよ。無理して笑ったりしないで。
私が全部受け止めるから」
これまで灯の中でつっかえていた言葉が自然と溢れ出る。
たった一言だった。しかしその言葉が、遊次の感情をせき止めていたものを瓦解させた。
「うっ……ううぁぁああああああ!!!!」
遊次の涙は止まらなかった。
彼自身は自覚していないが、暗い顔をすればまた人が離れていくような気がしたのだ。
だから彼は、誰にも心配をかけないように無理して笑顔を作っていた。
しかし、マイナスの感情も全て受け止めてくれる人が目の前にいる。
行き場のなかったあらゆる感情がとめどなく溢れ出た。
彼は30分以上泣き続けた。
家族や友を失ってしまったかもしれないが、こうして彼にとって大切な存在が1つできたのだった。
そして、数か月後。
公園のジャングルジムのてっぺんに上った遊次が、空を見上げ、灯に唐突に話しかける。
「俺、夢ができたんだ」
「夢?」
遊次に追いつこうと一生懸命ジャングルジムに上りながら、灯が聞き返す。
「うん。俺…この町の人達を笑顔にしたい。
コラプスが起きてから、みんな頑張って立ち上がろうとしててさ。
いっぱい悲しいことがあって、どうにもならないこともいっぱいあって」
灯はジャングルジムのてっぺんに追いつくと、真剣に遊次の言葉に耳を澄まし、相槌を打つ。
「それでも…なんとか無理して笑って、前に進もうとしてるんだよ。
俺、すげえ心が痛くなった。
顔は笑ってるけど、ほんとは心で泣いてるんだよ。
だから…とにかくそんな人達を、ほんとの笑顔にしたい!
どうやるかはわかんないけど…とにかく、もう誰にも泣かないでほしいんだ!」
「誰にも…泣かないでほしい…」
遊次の言葉を聞いて思い出したのは、数か月前の遊次の泣き顔だ。
灯の頭の中で色々な思いが駆け巡り、何も言葉を発していなかった。
「…あ、やっぱ変だよな!?なんかこっ恥ずかしいっつーか…」
灯の返事がなかったことで我に返った遊次は、頭をかきながら誤魔化すように笑った。
「ううん!そんなことない!すっっごく素敵な夢だと思う!」
「そ、そっか…へへ…」
真っ直ぐな灯の賛同に遊次は思わず頬がほころぶ。
「無理して笑ってる顔を見ると、心が痛くなる。わかるよ、私も」
「だ、だよな!この町の復興を手伝いに来たわけだし、やっぱ灯はわかってくれるか!」
遊次の顔はさらにぱっと明るくなる。これほど純粋な賛同をもらったことなどなかったのだ。
「(…やっぱり、遊次は気づいてないんだ。
自分が悲しみを押し殺して、無理やり笑ってたこと)」
灯は複雑な気持ちになる。
かつての友との決別と家族の死。
最も感情がかき回されたその時に遊次が取った行動は、無理して笑うということだった。
記憶を失って以来、彼の中でそれが無意識に癖づいてしまっているのだ。
「(君がこの町の人達を泣かせたくない、笑顔にしたいって言うなら…。
君のことは、誰が笑顔にするの?)」
人の悲しみを癒すことはできても、彼自身はずっと1人で悲しみを抱え続け、
それでも無理やり笑って取り繕う。彼にそんな未来が来ることを、灯は直感してしまった。
灯は胸が痛む感覚をおぼえた。
灯は少しの間目を瞑ると、遊次を真っ直ぐ見つめ、一つの答えを出す。
「私も、その夢、手伝いたい」
「…!」
遊次は目を丸くする。
「私、遊次に出会ってから、ほんとに毎日が楽しくて…。すっごくきらきらしてた。
遊次には、人を笑顔にする力があるんだよ。
遊次なら絶っ対、この町の人達を元気にできる!」
「灯…」
真っ直ぐな灯の言葉が遊次の心に深く刺さる。
「だから、私も君の傍で、君を守って、君を支え続けられたらいいなって」
「…おう!灯がいてくれたら俺もすげえ嬉しい!絶対に夢叶えような!」
「…うん!」
君がみんなを泣かせたくないのなら…私は君を泣かせたくない。笑顔にしたい。
それが私にとっての、"願い"。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「(あれから、私の人生は君と一つだった。
君といればいつだって笑顔でいられた。どんなことだって乗り越えられた。
私の夢も、あの時から始まったんだ。君の傍で、君を守って…支え続けるって夢が)」
「(この"願い"だけは絶対に手放したくない。だって…夢は始まったばっかりなんだから。
君が夢を叶えて、君が笑ってくれるなら…そのためなら、命なんて惜しくない!)」
灯は一瞬目を瞑ったその刹那に蘇った記憶から、自分によって最も大切なことを思い出す。
前を見据えると、ひったくり犯のオートバイと共に疾走する2体のモンスター。
灯は頭を今一度整理する。
-----------------------------------------------------------------------------
【クリス】
LP4200 手札:1(アンクル・フーパー)
①トーラス・フーパー ATK2000
②エクリプス・フーパー ATK3300
永続魔法:1
永続罠:1
【灯】
LP3900 手札:2(ペイントメージ・リラ)
①ペイントメージ・コンスタブル DEF2400 光属性に変更 効果無効
②ペイントメージ・パステル ATK400
魔法罠:0
-----------------------------------------------------------------------------
最も厄介なのは、クリスのフィールドに伏せられた永続罠「オブジェクト・フーパー」。
このカードはフーパーSモンスターのレベルを、相手フィールドのモンスターに付与し続ける効果。
つまりエクリプス・フーパーのレベル10が常に灯のモンスターに上乗せされてしまうのだ。
そしてエクリプス・フーパーはレベルが変動しているモンスターが効果を発動した時、
そのモンスターは破壊されるという永続効果を持っている。
このコンボによって、灯がモンスター効果を発動すると、必然的にそのモンスターは破壊される。
更にはレベルが10も上がることでシンクロ召喚も困難を極める。
そしてエクリプス・フーパーは、
フーパーが戦闘を行う相手モンスターを手札に戻す効果を得ている。
まさに圧倒的な制圧盤面。
しかしこれを突破しなければ、遊次を救うことはできない。
これは灯に課せられた使命であり、必ず越えなければならないものだ。
灯はデッキトップに指をかけ、思いを込める。
心に誓ったんだ。遊次を守るって。
遊次の夢が、こんなところで終わっていいはずがない。
私の想いが…こんなところで負けるはずない!
「俺のターン…ドロー!!」
灯のドローは居合に等しき洗練された一閃だった。
引いたカードを確認すると、1体のチューナーモンスターだった。
「ドローフェイズ、永続罠『オブジェクト・フーパー』発動!
フィールドのフーパーSモンスター1体を選択し、
このターン、相手モンスターはこのモンスターの元々のレベル分、レベルがアップする。
エクリプス・フーパーを選択し、アンタのフィールドのモンスターのレベルは常に10上がる!」
■オブジェクト・フーパー
永続罠
このカードは「アーティフィシャル・フーパー」の効果でのみセットできる。
このカード名の③の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードは、自分フィールドに
レベルまたは攻撃力が元々の数値と異なるモンスターが存在する限り、相手の効果で破壊されない。
②:自分フィールドのレベルまたは攻撃力が元々の数値と異なるモンスターは、
相手の効果で破壊されない。
③:自分フィールドの「フーパー」Sモンスター1体を対象として発動できる。
このターン、相手フィールドのモンスターのレベルは、
このモンスターの元々のレベル分アップする。
クリスの背後には巨大な6メートルほどの天使の見た目をした石像が出現する。
石像の頭の上の大きな輪から光が放たれ、灯のフィールドに降り注ぐ。
ペイントメージ・コンスタブル ☆16
ペイントメージ・パステル ☆12
灯のモンスターのレベルが異常値を叩きだす。
このままでは到底シンクロ召喚などできるはずもない。
「さらにレベルか攻撃力が変動したモンスターが俺の場にいれば、このカードは破壊されず、
このカードがあればレベルか攻撃力が変動したモンスターは効果で破壊されねえ。
悪いことは言わねえ、サレンダーしろ!これは俺の唯一の情けだぜ」
しかし灯の目には一点の曇りもなく、諦めるつもりなど微塵もなかった。
「(あの罠カードを破壊して対処することはできなさそう。なら…正面突破しかない!)」
灯の目には更に覚悟が宿る。
「墓地の『ペイントメージ・シャッフル』を除外して効果発動。
墓地からペイントメージ3体をデッキに戻して1枚ドローできる。
ゴッホ・モネ・ショコラをデッキに戻し、ドロー!」
灯は引いたカードを見ると目を見開く。装備魔法カードだ。
その瞬間、頭の中にデッキの中のカードが広がり、
その中から特定のカードだけが道を繋いでゆき、最後にはドローした装備魔法カードが光り輝く。
「ペイントメージ・パステルの効果発動!
このカードをリリースして、ペイントメージチューナーを特殊召喚する。
来い、シンクロチューナー『ペイントメージ・カードル』!」
■ペイントメージ・カードル
シンクロモンスター/チューナー
レベル4/光/魔法使い/攻撃力1700 守備力2000
チューナー + チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。
このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。
②:自分・相手ターンにフィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
自分の除外状態の「ペイントメージ」モンスターを任意の数だけデッキに戻し、
その枚数分、ターン終了時までそのモンスターのレベルを上げるか下げる(最小1まで)。
③:このカードをS素材としたモンスターは以下の効果を得る。
●1ターンに1度、このカードと同じ属性を持つ相手フィールドのモンスター1体を
対象として発動できる。そのモンスターを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
現れたのは1.5メートルほどの大きさを持つ額縁のモンスター。
中央には彫りの深い凛々しい目を瞑った女性の顔がついている。
カードルはオブジェクト・フーパーの効果で10レベルアップし、☆14となる。
「いくら足掻いたところで、そんなレベルじゃシンクロはできねえぜ?」
勝利を確信しているクリスにもはや緊張感などない。
周りの景色やバイクと共に疾走するモンスター達を楽しむ余裕さえもある。
「手札からペイントメージ・リラを召喚。
召喚時、デッキからペイントメージを手札に加えることができるが、その効果は使わない」
「当然だよなぁ?レベルが変動したモンスターが効果を使えば、
その瞬間エクリプスの効果で破壊されちまう。
フッフッフ…俺のデッキはこの瞬間が一番楽しいんだ。せいぜい足掻けよ!」
自分の命運がかかったデュエルであることを忘れたかのように、クリスは笑い飛ばす。
「リラの効果発動!
デッキから闇属性モンスターを除外して、フィールドのモンスターを闇属性に塗り替える。
ペイントメージ・カードルを闇属性に変更」
「なんだと…?だがその効果を使った時点でリラは破壊だ!」
エクリプス・フーパーの背中の白と黒の輪から波動が放たれ、その衝撃でリラは破壊される。
しかし破壊されても効果が無効になったわけではなく、リラの効果は適用される。
「リラの効果で除外するのは『ペイントメージ・ミュール』!
そして除外された時に効果発動。相手モンスター1体を対象に、
そのモンスターはこのターン効果を発動できなくなる。
お前のフィールドのトーラス・フーパーを選択!」
「ならその効果にチェーンしてトーラス・フーパーの効果発動!
フィールドのモンスターにレベルを譲渡する!エクリプス・フーパーにレベルを1付与する!」
エクリプス・フーパー ☆11
トーラス・フーパー ☆4
エクリプス・フーパーのレベルは上がったが、
オブジェクト・フーパーが付与できるのはSモンスターの元々のレベルであるため、
灯のモンスターに付与されるレベルは10のままだ。
「永続魔法『オブジェクト・フーパー』の効果で、
レベルが変動したエクリプス・フーパーは破壊されねえ。
さらにレベルが変動したモンスターがいることでオブジェクト・フーパー自身も守られる」
レベルが変動したことで、フィールドのモンスターと永続罠にそれぞれ耐性が付与される。
そのためにはクリスはいずれレベル変動効果をエクリプスに適用していたであろうが、
ミュールの対象とすることで、灯はそれをこの時点で発動するように強制したように見える。
「魔法カード『ペイントメージ・エクラブシュール』発動!
墓地のペイントメージモンスターを除外して、除外した属性の数に応じて効果を適用する。
俺は墓地からペイントメージ・フランボワーズ、リラ、パステル、カラメルを除外」
「除外した属性は炎・闇・光・地の4種類!
4種類の属性を除外した場合、相手のモンスターを全て破壊する!」
■ペイントメージ・エクラブシュール
通常魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の墓地の「ペイントメージ」モンスターを2体以上除外し
(属性1種類につき1枚しか除外できない)、
除外した属性の種類の数によって以下を適用する。
●2種類:デッキから「ペイントメージ」モンスター1体を特殊召喚する。
●3種類:相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。
●4種類:相手モンスターを全て破壊する。
●5種類:EXデッキからレベル6以下の「ペイントメージ」モンスター1体を
召喚条件を無視して特殊召喚する。
●6種類:相手フィールドのカードを全てデッキに戻す。
「全て破壊だと…!?だが…」
クリスは灯の発動した魔法カードに驚くも、対処可能と判断し、手札の1枚のカードを表にする。
「手札のアンクル・フーパーの効果発動!攻撃力1300をトーラス・フーパーに譲渡する!
これで俺の2体のモンスターのレベルと攻撃力が変動した!
永続罠『オブジェクト・フーパー』の効果で、2体とも破壊されねえ!」
トーラス・フーパー ATK3300
灯のフィールドに赤・紫・黄・茶の4種類の絵の具で線が描かれる。
その線はやがて交わり一つの渦となって、クリスのフィールドへ放出される。
しかしクリスの背後の石像「オブジェクト・フーパー」が光のベールをフィールドに出現させ、
クリスの2体のモンスターを守った。
「クハハハ!一世一代の攻撃だったようだが、不発に終わっちまったぞ!大丈夫かぁ?」
クリスは心の底からデュエルを楽しんでいる。
「でも、もうお前に発動できる効果は残ってないだろ?ここからは好きにやらせてもらう」
「…なんだと?そんな高レベルモンスターしかいねえのに、どうやって好きにやるんだ?」
追い詰められているにも関わらず冷静で余裕な態度を取る灯に、クリスは不可解そうな目をする。
「あなたにぐちゃぐちゃにされたキャンバスも、"私"が美しいアートに仕上げてみせる!」
「ペイントメージ・カードルの効果発動!
1ターンに1度、除外されているペイントメージモンスターを任意の数デッキに戻して、
その数だけ、ペイントメージのレベルを上げるか、下げることができる。
ペイントメージ・コンスタブルのレベル下げる!」
「だがこの瞬間、エクリプス・フーパーの効果で、レベルが変動したカードルは破壊される!」
エクリプス・フーパーの背中の2つの輪から放たれた波動によって、カードルは破壊される。
「だがカードルの効果は続いている!
俺は除外されている9枚のモンスターをデッキに戻し、
コンスタブルのレベルを9下げる!」
灯は除外されている9枚のモンスターを手に取り扇形に広げ、
それを一瞬にして重ねた後、素早くデッキへと戻す。
デッキに戻したモンスターは以下の9枚だ。
ペイントメージ・パレット(ペイントメージ・トロンプルイユの効果で除外)
ペイントメージ・クレーム(ペイントメージ・コンスタブルの効果で除外)
ペイントメージ・リム(ペイントメージ・ゴッホの効果で除外)
ペイントメージ・ミュール①(ペイントメージ・モネの効果で除外)
ペイントメージ・ミュール②(ペイントメージ・リラの効果で除外)
ペイントメージ・フランボワーズ(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・リラ(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・パステル(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・カラメル(ペイントメージ・エクラブシュールの効果で除外)
ペイントメージ・コンスタブル ☆16→7
「レベルを9下げるだと…!
さっき発動した魔法カードで一気に除外数を稼いだってわけか…!
だがアンタがチューナーを召喚したところで、そのモンスターのレベルは+10になる。
シンクロ召喚はできねえぞ!」
灯が不可解なプレイによって、少しずつ募っていったクリスの不安がここにきて大きくなる。
相手モンスターを使ったシンクロ召喚をするなど、想像を超えるプレイを魅せてきた彼女だ。
また何かをしでかすのではないかと、クリスは無意識下でどうしても思い浮かべてしまっていた。
「俺は手札のチューナーモンスター『ペイントメージ・フキサチーフ』の効果発動!
フィールドのペイントメージと手札のこのカードでシンクロ召喚を行う!」
■ペイントメージ・フキサチーフ
効果モンスター/チューナー
レベル1/水/魔法使い/攻撃力100 守備力800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「ペイントメージ」モンスター1体を対象として発動できる。
対象のモンスターと手札のこのカードを素材として
「ペイントメージ」SモンスターをS召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
②:自分の「ペイントメージ」モンスターの効果を無効にする効果が発動した時、
墓地のこのカードを除外して発動できる。その効果を無効にする。
「手札のチューナーとシンクロ召喚だとッ…!?
手札にはオブジェクト・フーパーのレベル付与は及ばない…。
まさか初めからこれを狙って…!」
灯は今まで見せたことのなかったレベル1チューナーによってシンクロ召喚を行おうとしている。
彼女のデッキにはまだ数多の可能性が秘められており、
レベル1モンスターが存在していることにも大きな意味がある。
しかし今回は相手のレベル変動効果をカードルで対処した上での
レベル調整という役目を果たそうとしている。
「光属性に変化した、レベル7『ペイントメージ・コンスタブル』に、
手札のレベル1『ペイントメージ・フキサチーフ』をチューニング!」
灯の頭上に、小さな青いスプレー缶に手足のついたモンスターが現れる。
そして一つの光の輪になり、その中をコンスタブルが潜り抜けてゆく。
「数多の彩より生まれし華麗なる精霊よ、その手で悪しき魂を塗り潰せ」
「シンクロ召喚!降臨せよ、レベル8!
『ペイントメージ・アールヌーヴォー』!」
■ペイントメージ・アールヌーヴォー
シンクロモンスター
レベル8/光/魔法使い/攻撃力3000 守備力2400
チューナー + チューナーと異なる属性のモンスター1体以上
①:このカードがフィールドに存在する限り、
このカードのS素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスターの効果は無効化される。
②:このカードは、S素材となったモンスターと同じ属性を持つ
相手フィールドのモンスター全てに攻撃できる。
光の中から現れたのは、虹色の羽を持つ錫杖を持った精霊だった。
白い肌に、白いドレスのようなローブを身に纏い、口元は布で隠されている。
「レベル8シンクロ…!」
数々のレベル6シンクロに翻弄されてきたクリスは、
それを上回る上位のシンクロモンスターの登場にある種の畏怖をおぼえる。
そしてそれを誤魔化すかのように、自分を安心させるかのように言葉を放つ。
「だが、俺のフーパーは攻撃力を与えられてる!攻撃力3000じゃ倒せねえぞ!」
トーラス・フーパー ATK3300
エクリプス・フーパー ATK3300
「高いのは攻撃力だけだろ…ッ!
装備魔法『ペイントメージ・インパスト』をアールヌーヴォーに装備!」
■ペイントメージ・インパスト
装備魔法
「ペイントメージ」モンスターにのみ装備可能。
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:装備モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
攻撃対象となったモンスターの表示形式を変更する。
②:装備モンスターと同じ属性を持つ相手モンスターが効果を発動した場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
③:このカードが墓地に存在し、
自分が「ペイントメージ」SモンスターをS召喚した場合に発動できる。
墓地のこのカードをそのモンスターに装備する。
装備魔法が装備されると、強い光と飛沫を上げる水流がアールヌーヴォーを纏う。
これはアールヌーヴォーが素材にした光属性と水属性を表している。
「インパストを装備したモンスターが戦闘を行う時、相手モンスターの表示形式を変更できる!
さらにアールヌーヴォーは、素材としたモンスターと同じ属性を持つモンスター全てに攻撃できる。
S素材としたコンスタブルは自身の効果で光属性に変わっていた。
よって、お前のモンスター2体を守備表示にして攻撃できる!」
「なんだと…!」
クリスは自身のモンスターの守備力を確認する。
トーラス・フーパー DEF1800
エクリプス・フーパー DEF2000
「てんめェ…!
だが忘れたか!サーペント・フーパーの効果によって、
俺のエクリプス・フーパーは、バトルを行う相手モンスターを手札に戻す効果を…」
「そんな効果、もう"無い"よ」
「あァ…?どういう意味だァ!」
クリスの言葉を途中で遮った灯に、すでに冷静さを失ったクリスは怒号をまき散らす。
「アールヌーヴォーがS素材としたモンスターと
同じ属性を持つ相手モンスターの効果は全て無効となる。
エクリプス・フーパーが新たに得た効果は、もう消え去った!」
「あァ…ありえねえ…!だ、だが!
所詮モンスターを破壊できたとしても、俺のライフは削り切れねえ!
残念だったな!俺のフーパーは何度でも蘇る!この程度で終わると思うなよ!」
「いや、このターンで終わらせる!
墓地のペイントメージ・フゼインの効果発動!このカードを除外して、
ターン終了時まで、ペイントメージ1体の攻撃力を1000アップし、
そのモンスターが守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!」
フゼインの力によってアールヌーヴォーを炎が纏い、その力を底上げする。
ペイントメージ・アールヌーヴォー ATK4000
「攻撃力4000…ってことは…ちょっと待てよ…」
クリスが冷静さを失った頭で必死に計算しようとするが、灯は構わずバトルフェイズに突入する。
これ以上の説明は時間の無駄だ。
「バトル!ペイントメージ・アールヌーヴォーで、トーラス・フーパーに攻撃!
装備魔法『ペイントメージ・インパスト』の効果発動!トーラスを守備表示にする!」
アールヌーヴォーは錫杖を持ち上げると、頭上に大きな光の球を浮かべ、
それを高速でトーラス・フーパーへ放つ。クリスは突如迫って来た攻撃に目を見開く。
トーラスと光球の衝突と共に大きな光の爆発が起きる。
「守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!」
「ぐうあああああああ!!」
クリス LP4200 → 2000
ダメージによって大きな衝撃を受け、クリスのオートバイは何度も回転し方向感覚を失う。
爆発した光の残滓をかき分け、真っ赤なスポーツカーが現れる。
その少し後にクリスのオートバイがフラフラとしたスピードで追いかける。
ボゴォン!
クリスのオートバイから異音がした。
「クソッ!!エンジンがイカれちまった!う…うああああああああ!!」
完全に制御が効かなくなったオートバイは左右に大きく揺れ、クリスは恐怖の叫びをあげる。
必死にハンドルを握って耐えながら前を向くと、
数メートル先でスポーツカーがドリフトしながら勢いよく停車し、灯がクリスを睨んでいた。
その目には怒りが煮え滾っていた。
冷静にデュエルをするために抑えられていたものが、最後に一気に溢れ出た。
灯は遊次の悲痛に叫ぶ顔を思い出し、歯を食い締めながら、掌を思い切り握る。
そして、最後の一撃を放とうと拳を前に突き出す。
「や、やめろ…!ネックレスは返す…!だから…やめてくれ……っ!」
バイクが半壊したこの状態で衝撃を受けることを想像し、クリスは惨めに命乞いした。
しかし、焼け石に水だった。
「遊次を苦しめる奴は絶対に私が許さない!トドメだッ!
ペイントメージ・アールヌーヴォーで、エクリプス・フーパーを攻撃!
装備魔法『ペイントメージ・インパスト』の効果で守備表示に変更し、貫通ダメージを与える!」
アールヌーヴォーが錫杖を掲げ、その上には巨大な光の球が浮かび上がる。
それを一瞬にして放つと、クリスの前は光で照らされ、視界が奪われた。
「ぐああああああああ!!!!」
クリス LP2000 → 0
オートバイはデュエルの衝撃によって転倒し、クリスは呻き声をあげながら転がり落ちた。
オートバイはそのまま慣性でサーキットの透明な壁に激突し、煙を上げている。
「勝者、花咲灯。
オースデュエルにより、クリス・ヒッターにはネックレスを返還する義務が生じます」
DDASの機械音声がオースデュエルの終わりを知らせる。
サーキットに力なく倒れ、呻き声をあげているクリスに灯が近づくと、
彼の胸ポケットから遊次のネックレスを素早く奪い返す。
「こ…こんなとこで…終わって…たまるか…」
クリスは薄れゆく意識の中で、灯に手を伸ばす。
灯はその手を冷たく払う。
灯が手にしている携帯電話には、警察へ通報する番号が入力されていた。
「私の夢は終わらせない。そのためなら…どんなことだってする」
その目には恐ろしいほど冷たい敵意と侮蔑…そして"何か"への強烈な執着が表れていた。
クリスは、灯の言葉を全て聞く前に意識を失った。
Next事務所では、イーサン・怜央・探偵の伊達アキトが戦々恐々としていた。
「ぐあぁあアアア…ァアアアアアア!!!!」
一度意識を失った遊次は、再び目を覚まし、苦しみもがいていた。
イーサンと怜央は暴れる遊次の体を抱きしめるように必死に押さえていた。
「クソッ…!灯の奴、何やってんだよ…!!」
連絡のない灯に対して、怜央の苛立ちがピークを迎えていた。
「何か事情があるはずだ!
アンティークショップで犯人が見つからなければ、もうとっくに連絡してる!
俺達は灯を信じるしかない!」
イーサンは遊次の叫び声に負けないように、声を張って主張する。
「俺が間違ってたのか…?もしかしたらとっくに町の外に…」
アキトは必死にタブレットを見つめ、自分の推理が誤っていたのかもしれないと焦りを募らせる。
しかしそんな中、裏口から車を停める音が聞こえる。
イーサンはすぐに気が付き、事務所の入り口を見つめると、灯が走って入って来た。
その手には遊次の赤いネックレスが握られていた。
「灯っ…!!」
イーサンと怜央の顔は一瞬で晴れやかになる。
「遊次っ!!」
灯は持っていたネックレスをすぐに遊次の胸元へとかける。
「ぐ…ぐあぁああアアアア!!ぐウアァアア…」
遊次の叫び声は少しずつ小さくなってゆく。
「遊次…遊次…!」
灯が遊次を抱きしめ、その名前を呼び続ける。
安心させるように、何度も、何度も。
遊次の荒かった呼吸は次第に正常なものへと戻ってゆく。
目にもだんだんと光が宿り、生気を取り戻していく。
「…灯…?」
遊次が完全に意識を取り戻す。
「遊次っ!よかった…!よかったよぉ…」
灯はさらに遊次が強く抱きしめる。その瞬間、糸が途切れたように涙が零れる。
「そっか、俺ネックレスを奪われて…」
遊次はしばらく状況を理解できなかったが、だんだんと記憶が蘇ってくる。
「取り返してくれたんだな灯。よかった…本当に」
イーサンは心からの安堵の声を漏らす。
「連絡できなくてごめん。
伊達さんの推理通り例のアンティークショップにいたから、追いかけることになって。
ネックレスを取り返すために通報しないことを条件にオースデュエルをしたから、
誰にも言えなかったの」
「よかった…。推理が間違ってたらどうしようかと…」
アキトも胸をなでおろす。
「アキト…!それに皆…。本当にありがとな。悪い、俺がもっとしっかりしてれば…」
遊次は皆の顔を見回して感謝の意を述べる。それと同時に罪悪感も湧いて来る。
「まさかお前がネックレス無しじゃ生きられない状態なんてな。
今度からは簡単に千切れねえチェーンにしとけ」
「悪いのは引ったくりだよ!今までこんなことなかったし、自分を責めないで。ね?」
遊次自身以外は誰も彼を責めることはない。
記憶消失に精神崩壊など、普通の生活を送るだけでも遊次は人の何倍も苦労してきた。
それを誰よりも知っている灯は遊次に寄り添い続ける。
「…ありがとな、本当に。俺、いっつも灯に助けられてばっかりだ」
遊次はまた自省的な言葉を口にする。
「そんなことない!私こそ、いつも遊次に救われてる。皆だってそうだよ!」
灯は事務所にいる者達の顔を見渡す。
「うん、俺なんてその代表例だよ。この町の皆、遊次に感謝してるさ」
アキトはサムズアップをしながら笑顔で返す。
彼は詐欺師から高額な賠償金を支払わせるという依頼を、遊次のおかげで完遂できた過去がある。
「近づいて来る引ったくりに気付かなかった俺らの落ち度でもある。
今後はもっと警戒しなきゃな。だからもうクヨクヨするな。所長なんだ、胸を張ってろ」
この中でもネックレスを奪われて最も肝を冷やしていたのはイーサンだろう。
しかしそのことは噯にも出さず遊次を励ます。
「アキト、イーサン…。みんな、今日はありがとう!もう夜も遅いし、帰ろう!」
遊次は立ち上がり笑顔で応える。もういつもの調子に戻ったようだ。
再び事務所のプレートをCLOSEにして皆で帰路につく。
また明日からいつもの日常に戻ってゆく。
しかし遊次の頭の中には、ネックレスを失っていた間見た記憶の数々がまだこびりついていた。
「(久しぶりに見たけど…なんなんだ、あの記憶。夢にしては、あまりにもリアルすぎる)」
遊次は自分の掌を見つめる。見ていた記憶の中の感覚がまだそこに残っているかのように。
遊次の頭に最も焼き付いていたのは、悲鳴を上げながら逃げ惑う町の人々の映像だ。
自分の視点は遥か上空にあり、こちらを見上げているオレンジの髪の男性。それが強烈に頭に残っていた。
「(あれ、ドミノタウンだよな。それに…あそこにいたのは何回見ても父さんだ。
ほんと、なんなんだよ…)」
「(あぁもう!考えてもしょうがねえ!明日からまた仕事だ!余計な事は考えないようにしなきゃ)」
1人で考えても真実はわからない。遊次は頭を振って気を取り直し、前を向く。
【隕石衝突まで…残り497日】
第27話 「ふたりの出会い」完
Nextに新たな依頼が舞い込む。
それは施設から引き取った血の繋がらない息子との仲を修復したいという内容だった。
血が繋がらないが故の親子の軋轢。
他人事とは思えぬイーサンは、12年前に遊次の育ての父となった時を回想する。
ある雨の日。突然遊次の目の前に現れた男は、ひどく冷たい目をしていた。
これは、かつて孤独に心を殺された男が、1人の親となるまでの物語。
次回 第28話「親と子」
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