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HOME > 遊戯王SS一覧 > 6話 廃材の竜/炎の戦士たち

6話 廃材の竜/炎の戦士たち 作:コングの施し

ここまでのデュエル
元デュエル部メンバー、阿原はデュエル部復活をするために頼まれた遊大の気持ちを確かめるため、遊大との決闘を開始する。
自らのモンスターを破壊することで展開するスクラップデッキに遊大は圧倒される。
2体のスクラップデスデーモンの攻撃で大きくライフを削られるが、罠カード、ダメージコンデンサーの効果で、自身のエースモンスター、フェニックスギアフリードを呼び出すのだった。



「オレの攻撃をトリガーにして、エースモンスター呼ぶたあ、なかなかこすい手を使うじゃねえか。オレはカードを1枚伏せて、ターンエンドだ。」


樋本 遊大
LP:1100
手札:2
伏せ:1

「俺のターン、ドロー!
(俺のフィールドはフェニックスギアフリードのみ、そして2体のスクラップデスデーモンの攻撃力はスクラップファクトリーの効果で上がっている…。このターンに2体を突破するには、今ドローしたカードで引き当てるしかない…!)
俺はカードを1枚セットし、魔法発動!《命削りの宝札》!」

遊大のデュエルディスクに、小さな断頭台が投影され、刃が落ちると同時にデッキから3枚のカードが弾けた。

「命削りの宝札だと!?」

「そう。このカードは、俺の手札が3枚になるようにドローするカード。ただし代償として、このターンの俺の特殊召喚、そしてあんたへのダメージを一切封じてしまう。そしてターン終了時に、俺の手札は全て墓地に捨てられる。」

「この局面で3枚のドローとは…運に恵まれた野郎だ。」

「(ドローしたカードは《アームズ・コール》、《エヴォルテクター・エヴェック》、《ライバル・アライバル》の3枚…。そしてセットしたカードは《アサルト・アーマー》
ライバルアライバルで追撃をするのが得策かと思うが、スクラップデスデーモンが2体いる以上、それはできない。召喚権はフェニックスギアフリードの再度召喚に使い、仕方ないが、エヴェックは捨てざるを得な…
ん?待てよ…?)」

加わった3枚のカードに、遊大は目を向ける。
頭の中で様々なルートを巡らせ、ひとつの結論を導き出した。

「俺は、フェニックスギアフリードを再度召喚!」

『ウォォォォッ!』

炎がいっそう強く燃え盛り、大剣を阿原の方へと構えた。

「よし!行こう!フェニックスギアフリード!俺は、たった今セットした装備魔法、《アサルト・アーマー》をフェニックスギアフリードに装備!」

「アサルトアーマー?なら効果はオレだって知ってるぜ。遊城十代が使用した有名な装備魔法だからな。だがその効果じゃ2体のデスデーモンは越えられないよなあ!?」

「超えなくていい!このターンは!
バトルだ!フェニックスギアフリードで、スクラップデスデーモンに攻撃!ゴッドブレイズクローズ!」

フェニックスギアフリードが大剣を構えてスクラップデスデーモンに斬り掛かる。
デスデーモンも拳で応戦するが、火花を散らしながらその拳に無数の切れ込みが入った。
腕がボロボロになり、仰け反ったところをフェニックスギアフリードが真っ二つに斬り裂いた。

爆発が起こり、フィールドに衝撃が走る。

「ぐっ!
だが命削りの宝札の効果で、オレへの戦闘ダメージは0!
そしてお前は、アサルトアーマーを解除することで、もう一度攻撃が…」

「アサルトアーマーは解除しねえ!
そもそも解除したところで、攻撃力はこちらの方が下…だがそれでいい!」

フェニックスギアフリードも遊大の方を見つめて小さく頷いた。

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド。
そしてターン終了時に、残った手札を墓地に送る。」


阿原克也
LP:4000
手札:4
伏せ:1

「オレのターン!
アサルトアーマーを解除しては、スクラップの盤面を取ることができないとふんだみてえだが、フィールドにモンスターを残すことは自滅行為だぜ?
オレは手札から《スクラップ・オルトロス》を特殊召喚!」

機械作りの猟犬、いや双頭の獣族が溶鉱炉から飛び出してきた。

「スクラップオルトロスが特殊召喚に成功した時、オレのフィールドのカードを破壊する!スクラップオルトロス自身を破壊!」

「また自ら破壊…!」

「スクラップオルトロスと、スクラップファクトリーの効果を発動!
オルトロスは効果破壊された時、墓地のスクラップモンスター1体を手札に加える!オレは《スクラップ・キマイラ》を手札に!
さらにスクラップファクトリーの効果で、現れろ!《スクラップ・ハンター》!」

スクラップ・ハンター
☆3
1600(→1800)/400(→600)
地属性/機械族

「(召喚権を使わずにデッキを回してる…だが、フェニックスギアフリードの打点は3100!それを超えるモンスターさえ来なければ勝機はゼンゼン…!)」

「なあに油断してんだ!?
オレはスクラップキマイラを通常召喚!さらにその効果で、たった今破壊したスクラップオルトロスを特殊召喚!」

スクラップ・オルトロス
☆4
1700(→1900)/1100(→1300)
地属性/特殊召喚/チューナー/獣族

「レベル4のチューナーモンスター…まさか!」

「オレは、☆4のスクラップキマイラに、☆4のチューナーモンスター、スクラップオルトロスをチューニング!」

「合計レベルは8…!
スクラップデスデーモンじゃないッ!」

「くず鉄どもの執念をその牙に変え、目に映る全てをぶち壊せ!
シンクロ召喚!レベル8!
《スクラップ・ドラゴン》!!」

溶鉱炉がグツグツと泡立ち、くず鉄がきしむような音がフィールドに轟く。
その音に遊大は思わず耳を塞いだ。

「な、なんだこの音…うるせェッ…!」

吹き出す蒸気に紫色の閃光を滲ませながら、そのモンスターは姿を表した。
巨大な鋼の龍は、遊大の方へ頭を向けて咆哮した。
その咆哮が、遊大が耳を塞がざるを得ないほどの金属音の正体であった。

スクラップ・ドラゴン
☆8
2800(→3000)/2000(→2200)
地属性/シンクロ/ドラゴン族

「攻撃力3000!
これが、アンタの本当のエースモンスター…!」

「オレは魔法カード《ポンコツの意地》を発動!オレの墓地のスクラップモンスターを3体選び、お前が選んだその中の1枚を特殊召喚し、残りのカードを除外する!オレが選ぶのはこの3体だ!」

《スクラップ・デスデーモン》
《スクラップ・キマイラ》
《スクラップ・ゴブリン》
の3枚がフィールドに投影された。

「だがこの瞬間!フェニックスギアフリードの効果発動!相手が魔法カードを発動した時、墓地のデュアルモンスター1体を特殊召喚する!
不死鳥の翼の加護を得て甦れ!竜影魚レイブロント!」

「だがポンコツの意地の効果は継続する!選べ!」

「(俺に特殊召喚を選択させるカード、攻撃力が低くて、かつチューナー以外のモンスターが望ましい)
俺が選択するのは、スクラップキマイラだ!」

投影されたカードのうち、スクラップキマイラのカードが溶鉱炉に投げ込まれ、内よりキマイラが姿を表した。

「まァ、どのモンスターを破壊しようが、結果は同じだがなァ!
スクラップドラゴンの効果を発動!
お互いのフィールドのカードを1枚ずつ破壊する!」

スクラップドラゴンはキマイラを噛み砕き、飲み込むと、その口から紫色の光弾をフェニックスギアフリードに放った。

大剣で弾こうとするフェニックスギアフリードだが、剣が砕け、自身も破壊された。

「(お互いのフィールドのカードを1枚ずつ破壊する効果、そのデッキなら活かしきれるってワケか!)」

「さらに魔法カード《ビッグ・リターン》を発動!
このカードは、モンスター1体の『1ターンに1度だけ発動する効果』をもう一度使うことができる!
お前さっき、大事そうにカードを伏せたよなあ?オレはスクラップドラゴンの効果を使い、そのセットカードとスクラップファクトリーを破壊する!」

「モンスターは戦闘で破壊できると踏んだか!破壊される前に、リバースカードオープン!
《アームズ・コール》!デッキから装備魔法《スーペルヴィス》を手札に加えるッ!」

スクラップドラゴンが放った弾丸は、アームズコールのカードを砕いたが、紙一重のところで遊大は効果を発動した。

「チッ!
バトルだ!
スクラップドラゴンで、レイブロントに攻撃!
厄災の激昂!」

スクラップドラゴンがレイブロントに飛びかかり、その鋼の牙でレイブロントを噛み砕いた。

「何度もすまねえ!レイブロントっ!」

「これで壁は消えた!
終わりだ!スクラップデスデーモンでダイレクトアタック!」

巨大な拳が迫る中、遊大はセットしたカードに手を掛け、笑みを浮かべた。

「阿原さん、あんたミスしたぜ。
攻撃の順番をなあ!罠発動!《トゥルース・リインフォース》!」

「トゥルースリインフォース?」

「そうだ!
その効果は、俺のデッキからレベル2以下の戦士族1体を特殊召喚する効果。俺の元に来いッ!《デュアル・ソルジャー》!」

デュアル・ソルジャー (守備表示)
☆2
500/300
風属性/デュアル/戦士族

『ビィッ!』

「ああ?
何かと思ったら、ただの弱小壁モンスターじゃねえか。
ぶっ潰せ!スクラップデスデーモン!」

スクラップデスデーモンの巨腕がデュアルソルジャーを押しつぶす。

「この瞬間!速攻魔法発動!《ライバル・アライバル》
俺はバトルフェイズ中1度だけ、通常召喚できる!」

阿原はそれを聞くと腹を抱えて笑いだした。

「血迷ったか!お前さっきからプレイングがぐちゃぐちゃだぜ!
で、お前の手札のどこに通常召喚するモンスターがいるってんだ?」

「確かに俺の手札はアームズコールの効果で手札に加えたスーペルヴィスのみ…だが、俺のフィールドには存在する!
デュアルソルジャー!再度召喚!」

デスデーモンの巨腕を受け止めていたデュアルソルジャーがその高い声で雄叫びをあげる。

『ビィィッ!!』

小さな身体で、デスデーモンの腕を押し返した。

「なっ!
フィールドのモンスターをオレのターンに再度召喚しただと!?」

「デュアルソルジャーの効果!
再度召喚したデュアルソルジャーは戦闘では破壊されず、戦闘を行った時、デッキからレベル4以下のデュアルモンスターを呼び出すことができる!
来てくれ!《エヴォルテクター・シュバリエ》!」

炎が舞い上がり、赤い鎧に身をつつんだ戦士が現れる。

エヴォルテクター・シュバリエ
☆4
1900/900
炎属性/デュアル/戦士族

「チィッ!
攻撃力がスクラップハンターよりも上!攻撃の順番ミスってのはこういうことか…
オレはこれで、ターンエンド!
(だが、オレのフィールドはスクラップドラゴン、デスデーモン、ハンターの3体。
対して遊大のフィールドには下級モンスターが2体に手札もスーペルヴィスとドローするカードのみ…仮に突破されたとしてもこの罠カードさえあれば…)」


樋本遊大
LP:1100
手札:2
伏せ:0

「(さっきのターンはしのいだが、割とマジでこのドローに全てかかってる…)
俺のターン!ドロぉー!!」

ドローしたカードを見つめ、遊大の目がキラキラと輝き出した。

「ふぅー…。
これだからデュエルはおもしれえ!
行くぞお前ら!」

「(いいカードを引いたか…。
目ん玉キラキラさせやがって…!)
来いッ!お前のデュエルへの思いを見せてみろ!」

「俺は装備魔法《スーペルヴィス》をエヴォルテクターシュバリエに装備!
その効果で、装備モンスターは再度召喚した扱いになる!
さらにシュバリエの効果!装備カードを墓地に送ることで、フィールドのカードを破壊する!
《スクラップ・ドラゴン》を…
ぶッッッ飛ばせェ!」

シュバリエは左手から炎を放ち、それを片手の剣で斬り裂いた。
斬撃は斬った炎を纏ってスクラップドラゴンに一直線に飛んでゆく。
炎の斬撃がスクラップドラゴンの首にかかり、爆発音と共にその竜の巨体を爆散させた。

「ぐっ…!
だがスクラップドラゴンの効果!
相手によって破壊された時、シンクロモンスター以外のスクラップモンスターを墓地から復活させる!
守備表示で来いッ!スクラップコング!」

「ドラゴンは破った!
次はお前の番だ!墓地に送られたスーペルヴィスの効果!墓地から通常モンスター1体を特殊召喚する!
《エヴォルテクター・エヴェック》を特殊召喚!」

シュバリエと同じ赤い鎧に身を包んだ覆面の戦士が炎の中からフィールドに降り立った。
左手には炎、右手にはモーニングスターを持っている。

エヴォルテクター・エヴェック
☆4
1500/1000
炎属性/デュアル/戦士族

「そしてエヴェックを再度召喚し、効果発動!
墓地に存在するデュアルモンスターまたは炎属性戦士族モンスター1体を特殊召喚する!」

「炎属性戦士族…まさか!」

「不死鳥の戦士は、不屈の闘志で何度だって蘇る!
来てくれ!《フェニックス・ギア・フリード》!!」

フェニックス・ギア・フリード
☆8
2800/2200
炎属性/デュアル/戦士族

ごおおっ!と炎が遊大の背後で巻き上がり、その戦士は遊大の肩にポンと手を置いた。

『何度も呼び出すのはいいが、これで最後にするぞ。』

そう声が聞こえた気がした。
遊大もゆっくりとうなづく。

「俺は装備魔法、《フェニックス・ギア・ブレード》をフェニックスギアフリードに装備!
装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする!」

フェニックスギアフリード
2800→3300/2200

「攻撃力3300…!
いいぜ、もっと燃やして来いッ!」

圧倒的不利な状況にも関わらず、阿原は笑みを浮かべていた。

「さらに俺は、このカードで決めるッ!」

そう叫ぶと、遊大のEXデッキケースがガチャっと開いた。

「俺はもうEXデッキを使えないワケじゃない!
レベル4の、エヴェックとシュバリエを『オーバーレイ』!」

2人の戦士が炎を纏って、光の渦に吸い込まれていく。

「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!
戦士の魂たちよ、道理を覆し、新たなる炎を生み出せ!エクシーズ召喚ッ!
《No.59 背反の料理人》!」

光の中から、火炎放射器を背負った料理人が現れた。

No.59 背反の料理人
★4
2300/200
炎属性/エクシーズ/戦士族

「り、料理人ッ!?
お、お前そんなカード使うのか…
いや別に構わねえんだが、なんかこれまでの雰囲気と合わねぇというか…!」

「っるせェ!
俺の初めてのモンスターエクシーズなんだあ!
俺はデュアルソルジャーを攻撃表示に変更し、バトル!バックザコックで、スクラップコングに攻撃!調理してやらあ!」

火炎放射器から炎を吐き出し、真っ赤に熱したフライパンでスクラップコングを叩きのめした。

「さらに、フェニックスギアフリードで、スクラップデスデーモンに攻撃!ゴッドブレイズクローズ!」

2対の体験が、デスデーモンの両腕を切断し、爆散させる。

「ぐぁッ…!」
阿原 LP:4000→3500

「そしてフェニックスギアブレードの効果!装備解除することで、俺のフィールドの炎属性戦士族モンスターは、このターン追加攻撃できる!」

「追加攻撃…!
そうか!バックザコックも炎属性の戦士族!」

「フェニックスギアフリードで、スクラップハンターに攻撃ぃ!」

「ぐぉぁああッ!!」
阿原 LP:3500→2300

「これでトドメだ!
No.59 背反の料理人で直接攻撃!」

バックザコックのフライパンが阿原へ飛び掛る。

「…いいデュエルだった。
お前の逆転も全て!だが!」

瞬間、阿原のセットカードが眩い光と共にあらわになった。

「相手の直接攻撃宣言時、このカードは発動できる…。
《波紋のバリア-ウェーブ・フォース-》!!」

阿原に向かう攻撃は、透明な幕で守られ、その攻撃は波紋となって遊大のフィールドのモンスターたちへと弾かててゆく。

「攻撃表示モンスターを、全てデッキに戻す!」

「なっ!?
攻撃表示モンスターを全て!!」

フィールドのモンスターを衝撃波が飲み込もうとする中、バックザコックが、遊大の方を振り向き、頷いた。

「!!
そうだ!俺はこの攻撃を止めるわけにはいかないんだ!
オーバーレイユニットをひとつ取り除いて、バックザコックの効果を発動!
バックザコック以外の俺のフィールドのカードを全て破壊する!」

「自分のカードを破壊だと!?
だがそれでも、ウェーブフォースの効果は止まらねえ!」

「いいや止めてみせる!
バックザコックの攻撃力はこの効果で破壊したカード×300ポイントアップし、且つ俺のフィールドのカードがバックザコックのみの場合、こいつは他のカード効果を受けないッ!!」

「カード効果を受けないだとォ!!?」

「とどめだァァッ!!!」

No.59 背反の料理人
2300→3200/200

フェニックスギアフリード、デュアルソルジャー、金剛真力の3枚が、火炎放射器に吸い込まれて、いっそう激しい炎がフライパンを包む。

透明な幕はフライパンに触れた部分から燃え上がり、バックザコックの一撃が阿原のもとへ届いた。

阿原は炎のフライパンの打撃を受け、背後へとふっとんだ。

阿原克也
LP:2300→0

Winner
樋本遊大


「俺の勝ちだァァァーッ!」

仰向けにぶっ倒れた阿原は、ムクリの起き上がり、笑っていた。

「はァ、たぶん伝わったぜ、お前のデュエルにかける魂ってやつが!」

協力者を得て、遊大のデュエル部への物語は加速していく…。


続く

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