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26:闇の甲冑 VS 呪痕の牙 作:ほーがん
第26話「闇の甲冑 VS 呪痕の牙」
カケル達は、カラクリまみれの豪邸を後にし、レイ達の住むアジトへと向かっていた。
「ペンデュラム軍の尖兵たるAS。それがお前達ってわけか。」
キジマの言葉にレイは頷く。
「ああ。今は私達を戦争に利用し、兵器にしたマサカー共を追っている。奴らをこれ以上、この世界にのさばらせてはならないからな。」
「なるほどね。記憶も消され、感情の無い兵器に・・・そうじゃないと、耐えられそうにないわ。あの戦争と殺戮は。」
ナナは自らの肩を抱き、震える。見かねたカケルは話題を変えた。
「んで、今から行くのはそのAS達のアジトなんだろ?どんな所なんだ?」
「私達は村って呼んでるわ。みんなで造った、私達の住処よ。」
前を歩くクリスが少し振り向く。それを聞いたリンカが呟いた。
「村、か。ユーガの話を思い出すな。」
「ユーガとは一体?」
ハルが疑問を呈す。
「俺とリンカ、そしてユーガ。最初、俺達は三人だった。けど、ユーガはマサカーに捕まって・・・。」
「だから、そのユーガさんを見つける為に旅を?」
「ああ。だがマサカーの一人、ジェイミーは言った。ユーガが逃げたと。とにかく今の私達には情報が足りない。」
リンカの顔は曇っていた。ハルは明るい顔で言った。
「でも、僕たちの村に行けば何か知っている人が居るかもしれません。僕らはこうして度々遠征に行っているので、誰かしら何か情報を得ている可能性があります。」
「そうだ。今はともかく我らのアジトへ来るべきだ。私にできる事なら協力させてもらう。」
レイの言葉に、カケルは微笑んだ。
「すまないな。でも、とっても助かるよ。闇雲に探すよりずっといい。」
その笑顔を横目で見つめるリンカの顔が、赤く染まる。視線に気付いたカケルは声を掛けた。
「ん?なんだ、リンカ?」
「なっ!なんでもない!気にするな・・・。」
慌てふためくリンカを尻目に、マーナはニヤニヤと笑った。
同じ頃、ユーガは。
現れたのは、黒き闇の甲冑に身を包んだ騎士。その姿は、次元を世界を越え、約束の袂に蘇った。
「《コープスナイト・デッドジャック》・・・・!?」
その影を見たルナは息を飲んだ。そして、その名に只ならぬ”何か”を感じ取る。
「デッドジャック・・・どうして・・・」
ユーガは言い放った。
「死してもなお、戦い続ける”屍の騎士”。それこそが『コープスナイト』。散って行った仲間の思いを、無念を背負い、俺は貴様を叩き潰す!!手札の《コープスナイトアームズ・アビスソード(☆3/闇/アンデット/1350・0)》の効果発動!このカードを手札から、自分フィールドの「コープスナイト」1体に装備する!!」
闇の騎士は、魂の宿る漆黒の剣を手にすると、大きく振りかざした。
「このカードを装備したモンスターは、守備表示モンスターへの貫通効果を得る!さらに、装備モンスターの攻撃によって破壊したペンデュラムモンスターは、エクストラデッキに行かず墓地へ送られる!!」
「へ、へぇ。ちゃーんと再利用への対策済みなんだ。さっすが、ユーガだね。」
動揺しながらも気楽な表情を崩さないルナ。ユーガは相手のフィールドを指差し、叫んだ。
「バトルだ!!俺は《コープスナイト・デッドジャック》で《フレグランス・スナイパー》を攻撃!!」
漆黒の剣を構え、闇の騎士は飛び出す。しかし、その直前でルナは口を開いた。
「私はペンデュラムゾーンの《フレグランス・M・ガトリンガー》のペンデュラム効果を発動!自分の場のペンデュラムモンスターが攻撃対象になった時、そのモンスターを破壊して、このカードを守備表示で特殊召喚する!そして、攻撃対象をこのカードに変更するよ!!」
ルナの場から狙撃手の姿が消える。代わりに現れたのは種子の弾丸を飛ばす回転機銃の持ち主だった。それでも、闇の騎士は変わらず加速してゆく。
「そのまま切り裂け!!『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
全くの静寂の中、一瞬の閃光だけが煌めく。次の瞬間、悪しき妖精の身体は音も無く切り刻まれていた。
「ふっ!ダメージは最小限に抑えたもんね!(LP2000→1900)」
不敵に笑うルナ。しかし、ユーガは透かさず怒号を飛ばし、彼女に余裕は与えなかった。
「俺は《コープスナイト・デッドジャック》の効果発動!!このカードがレベル5以上のモンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った場合、自分の墓地の「コープスナイト」1体につき、500のダメージを相手に与える!!」
「何っ!?」
たじろぐルナの元へ、騎士の亡霊が飛び立つ。
「俺の墓地の「コープスナイト」は3体!!よって1500のダメージを加える!!行け!!『リグレット・ソウル・レイド』!!!」
その亡霊達は怒りと憎しみを持って、ルナに襲いかかった。
「ううっ!!(LP1900→400)私は《フレグランス・スナイパー》の効果発動!このカードが破壊された場合、デッキからレベル4以下の「フレグランス」モンスター1体を特殊召喚する!私はデッキより、《フレグランス・ボマー(☆4/風/植物/ペンデュラム/1600・200)》を特殊召喚!!」
ユーガの表情は変わらない。憎悪と怒気に満ちたその瞳は、ダメージによろける女を貫く。
「嘲るような態度はどうした。自らが絶対だと信じ、力に溺れ、傲り高ぶる。貴様らの薄っぺらい戦術など、もはや今の俺には通用しないと知れ。」
ふらつきながらもルナは笑った。
「ふふっ・・・私の本気が、この程度だと思ってんの?いやぁ良い肩慣らしになったよ、ほんと。さぁて、そろそろ本気出しちゃおうかなぁ・・・?」
「見せてみろ。正面からへし折ってやる。カードを2枚セットし、ターンエンドだ。」
ルナは取り繕ったような笑顔で言う。
「じゃあ、私のターンだね・・・ドロー!!」
引いたカードを確認した後、ルナは自分の場を指差して言った。
「ユーガにも見せてあげるよ・・・!!破壊の王が残した”断片”、いや、遺産を!!私はレベル4の《フレグランス・ガードナー》と《フレグランス・ボマー》でオーバーレイ!!」
黒き閃光の渦。二体の妖精はその混沌へ飛び込み、新たな力を得る。
「漆黒の闇より、卑賤なる愚民に鉄槌を下す呪痕の牙!!今、降臨せよ!!エクシーズ召喚!!これこそが我らが王の遺産!!ランク4、《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン(★4/闇/ドラゴン/エクシーズ/ペンデュラム/2500・2000)》!!!」
混沌を切り裂き、呪痕の竜はその翼を広げた。咆哮が轟き、空間全体を揺さぶる。ユーガはそれを、ただ黙って見つめていた。
「どう!?これが、私が長い旅の中で得た力!!この世界に散りばめられた4つの遺産の1つ!!その牙がユーガ、君を貫きたがってるんだよ!!?んふふっ・・・あははっ!!!」
「・・・お喋りは終わったか。早く掛かって来い。俺はお前を殺した後、早急に他のマサカーを始末しに行かなければならない。」
ユーガの言葉に、ルナは嘲笑を浴びせる。
「あははっ!!へぇ、おっかしいんだ!!ほんとに、この私に勝てると思ってるの!?私は《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン》の効果発動!!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、相手フィールドの攻撃表示モンスターの攻撃力を全て0にする!!『カースディック・ディスチャージ』!!!」
呪痕の竜は翼を展開し、黒き電撃を放った。
「これでユーガのモンスター、《コープスナイト・デッドジャック》の攻撃力は0!!(ATK2500→0)へへっ、今度は私の番なんだから・・・バトル!!」
竜はその顎の逆鱗を輝かせ、一気に加速する。
「『殺戮のライトニング・アグレッション』!!!」
逆鱗に貫かれた闇の騎士の甲冑が砕け散る。その衝撃で医療室の壁は吹き飛び、ユーガの身体は外へと投げ出された。
「くっ・・・!!(LP4000→1500)」
よろけながらもユーガは立ち上がる。その後を追って外に出て来たルナが言う。
「どう私の一撃は?なかなか良かったでしょ?」
しかし、ルナの余裕はすぐさま動揺に変わった。
「なっ・・・なんで!?倒したのに!?」
闇の騎士は甲冑が砕けながらも、未だユーガの場に立っていた。
「・・・俺は装備されていた《コープスナイトアームズ・アビスソード》の効果を使った。装備モンスターが戦闘で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地に送る事ができる。」
「なぁんだ、そういう事か。でも、攻撃力は0のまま。そんなモンスターで何ができるのか、教えて欲しいなぁ?ふふっ。」
平静を取り戻したルナは、ユーガを挑発する。しかし、そんなかりそめの余裕など、今のユーガには通用しなかった。
「何ができるか、だと。ならば良く見ておけ。罠カード《輪廻逆転》発動!!1000のライフと引き換えに、自分フィールドの「コープスナイト」シンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻す!!(LP1500→500)」
ユーガの場から闇の騎士が消える。ルナは困惑した。
「何っ!?何をする気!?」
突如としてユーガのデッキが再び煌めきを発する。その光は次元の狭間をこじ開け、生と死の力を交差させると共に、魂を逆転させる。
「そして、戻したモンスターと同じレベルを持つ「アライブナイト」シンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!!次元の壁を突き破り、輪廻の輪から悠久の約束を解き放て!!」
眼前の空間が裂ける。別次元から交差した魂は光を持ち、邪悪なる全てに死の輝きを与える。
「来い!!絢爛なるその輝きで、勝利への渇望を満たせ!!《アライブナイト・ジャックス・レイ(☆7/光/戦士/シンクロ/2500・2000)》!!」
その輝きを目にし、ルナは苦い表情で歯を食いしばる。
「新しいシンクロモンスター・・・私はカードを1枚セットして、ターンエンド!!」
ユーガの背中を見つめるケンジは呟く。
「これほどまでに、あの暴走する力を服従させるなんて・・・君はますます不思議な存在だよ、ユーガ。」
デッキに手を伸ばし、ユーガは怒りの形相で叫んだ。
「俺のターン、ドロー!!我が怒りの剣よ!!その力で、邪悪の使徒を突き貫け!!《アライブナイト・ジャックス・レイ》の効果発動!!自分のライフポイントが1000以下の場合、このカードの攻撃力は4000から今のライフポイントを引いた数値分アップする!!『リグレット・アヴェンジャー』!!(ATK2500→6000)」
その光は闇を払い、悪を切り裂く刃。その、あまりの神々しさにルナは言葉を失う。
「攻撃力・・・6000!!」
そして、その輝きは真の脅威となって、ルナの元へ降り注いだ。
「バトルだ!!《アライブナイト・ジャックス・レイ》で《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン》を攻撃!!『閃爍のシャイニングスライサー』!!!」
わなわなと震えるルナ。次の瞬間、その小さな身体から狂った怒号が飛び出した。
「・・・・なぁめるなぁあああ!!!リバースカードオープン!!罠カード《虐殺の快楽》!!!自分フィールドの「マサカー」モンスターが戦闘を行う場合に発動できる!!相手モンスターの攻撃力を0にし、変化した数値分、自分フィールドの全ての「マサカー」モンスターの攻撃力をアップする!!!どうだぁ!!これで、これでお前のモンスターは破滅!!ひゃはははっ!!!悔しいだろォ!!?泣きわめけぇ!!命乞いをしろォ!!!私こそが、ペンデュラムこそが!!最強なんだぁあああ!!!」
しかし。喚き散らすルナとは対照的に、ユーガは落ち着き払った声で言った。
「カウンター罠発動。《アンチエフェクト・アライブ》。自分フィールドに「アライブナイト」が存在する場合、相手の発動した魔法・罠カードを無効にする・・・!」
砕け散るルナの罠カード。膝を折ったルナは、ぽかんと口を開けたまま、迫り来る光を見つめた。
「う・・・う・・・うそ・・だ・・・くっ!!」
そして。切り裂かれ、粉々に砕け散る呪痕の竜。その衝撃が到達する寸前、憎しみに満ちた表情でルナは叫んだ。
「・・まだ・・・まだだぁぁ!!私はペンデュラムゾーンの《フレグランス・M・パンデミックウェポナー》のペンデュラム効果発動!!自分フィールドのペンデュラムモンスターが戦闘で破壊される場合、このカードを破壊し、その戦闘ダメージを0にできる!!」
ルナの場から光の柱が消える。攻撃による余波はルナの傍を通り過ぎ、後方の家屋に激突した。
「はぁ・・・はぁ・・・こんな所で、こんな奴に、私は負けるわけにはいかない・・・主君を復活させ、再びこの世界を今度こそ破壊し尽くす時まで、私は・・・!!」
肩で呼吸をしながら、荒い息を吐く。ルナはうつろな目でユーガを睨みつけた。
「へへっ、お前に・・・これ以上何ができる・・・次こそ、次こそ私のターンで・・・」
だが、ルナの言葉が現実になることは無かった。
「俺は墓地の罠カード《輪廻逆転》の効果発動。墓地からこのカードを除外しライフを半分払うことで、自分フィールドの「アライブナイト」とエクストラデッキの「コープスナイト」を入れ替える。(LP500→250)」
閃爍の騎士は闇に包まれ、再び屍の力を得る。
「もう一度、我が元へ降り立て!《コープスナイト・デッドジャック》!!」
「・・・そ・・・そ・・そん・・・な・・・」
絶望に染まるルナの表情。闇の騎士を従え、ユーガは言った。
「俺達の絶望はこんなものじゃなかった。貴様らに世界を破壊され、血を流し、大地は屍体で埋もれた。それでも貴様らは飽き足らず、村を、俺の仲間達を・・・その絶望が、お前のような暖かい血の流れていない殺戮兵器にわかるまい。」
「い・・・いや・・・」
涙を流し首を振るルナ。認め難い現実がルナを襲った。だが、それは疑い様の無い真実。
「せめて、この怒りを受け止め、思い知るが良い。極限に生まれ、憎しみと怒りに生きて来た魂の一撃を!!!《コープスナイト・デッドジャック》でダイレクトアタック!!!」
天高く飛び上がり、上空で剣を構える闇の騎士。動かないルナを見据え、騎士は音も無く加速する。
「『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
青空の下。不気味なほどの静寂の中。ルナは、倒れた。
「・・・(LP400→0)」
『勝者:ユーガ』
ケンジは驚嘆の声を漏らす。
「勝った・・・あの、マサカーに・・・勝った・・・。」
ユーガはディスクを展開したまま、うつ伏せに倒れたルナに近づいた。
「破壊の王の復活、それがマサカーの目的か。・・・もうお前から聞く情報も無い。最後に言い残すことはあるか。」
闇の騎士は小さなルナの背中に剣を突き立てた。数センチほど顔を上げ、ルナは呟く。
「・・・くたばれ。」
そして。剣を振り上げ、騎士は最後の一振りを。
だが、その時。
「やれ、《BF Mー暴虐のペイン》。」
刹那。騎士の剣が弾かれる。邪悪なる鳥人はその爪を翳し、闇の騎士を切り裂いた。
「お前は・・・!!」
上空にて、飛行するモンスターの上に乗る男の影。その男はディスクを仕舞い込むと、地上へ飛び降りた。
「また会えたな、ユーガ。」
その男の姿を見たユーガは、静かに問う。
「ジェイミー・・・何をしに来た。」
「愚問だな、ユーガ。俺達はお前を探していたんだぞ。まぁ、後はこのお嬢さんからカードを回収するためにな。」
ジェイミーは、倒れたまま動かないルナに視線を落とす。ユーガはディスクを構え叫んだ。
「・・・叩き潰す!!」
「おいおい、クールになれって言ったろ?ユーガくん。」
ジェイミーの後方から響いた声。その声は、ユーガの脳で一人の人物と直結した。
「・・・リチャードか。」
「そう!マサカー勢揃いってな。ルナのおかげでAS共のアジトがやっと分かったわけだが、一番大事なのはユーガ、お前の記憶だ。」
ユーガは歯を食いしばる。その時、新たな声がユーガの耳に届く。
「・・・そうだ。もっとも重要なのは記憶。すなわち主君への鍵。」
その声の主に、ユーガは問う。
「お前は、誰だ。」
「我が名はヘラルド。破壊の王に仕える振り子の使徒。私がマサカーのリーダーだ。」
見かねたケンジはディスクを構えながら、ユーガの隣に並ぶ。
「ついに、ここへマサカーがっ!!ユーガ、僕も戦う!!」
しかし、その行動をリチャードは嘲る。
「へっ、今更ASなんざ敵じゃねぇな。俺達には”遺産”の力があるんだからよ。」
「しかし、ここにへばっている一名は、遺産の力を持っているにも関わらず、この体たらくとはな。」
ジェイミーの言葉に、ヘラルドが応える。
「所詮は物探しが専門の小娘。主君の遺産を扱いきれる器ではなかったと言う事だ。」
おもむろにしゃがみ込んだヘラルドは、ルナのディスクから1枚のカードを抜き取る。
「《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン》、確かに回収した。主君の遺産は、我々に思わぬアドバンテージを下さった。4つの遺産が揃った今、あのカードを再構成する事ができる。」
「ああ、俺達は今その為に来たんだからな。」
何やら話し込むマサカーに、しびれを切らしたユーガが言う。
「どうした!!俺と戦え!!」
「そうだ、僕らは貴様達マサカーを排除する為に戦って来た!!全員が揃った今、この機を逃す手は無い!!」
殺気立つ二人を余所に、ヘラルドは自らのディスクにルナから回収したカードを挿入した。その瞬間、ディスクは眩い光を放ち、1枚のカードを吐き出す。
「はぁ。やっと出来たか、あのカードが。」
「・・・元々はリチャード、お前が無駄に使ったのが原因だぞ。」
咎めるジェイミーに、リチャードはバツ悪そうにそっぽを向く。
「素晴らしいエネルギーだ。流石は主君の遺産。・・・さて、始めようか、我々の悲願を。」
「ああ、この方法ならヨシトのロックもすり抜けられるだろうしな。」
ヘラルドは一歩前に出ると、ディスクを構え、その手に持つカードを掲げた。
「ゆくぞ、我が主君への道を示すのだ!!魔法カード発動!!《記憶の扉》!!!」
怪しく揺らめき光るカード。その光に吸い込まれるように、ユーガは目を奪われる。
「ユーガ!?どうしたんだ!?ユーガ!!」
ケンジの声が遠のいて行く。ユーガの頭の中で何かが開く音がした。
「さぁ・・・さぁ!!!見せるのだ!!!鍵よ!!!その堅く閉ざされた扉を開けぇぇええ!!!」
「長かった・・・長かったな、ここまで・・・」
目を閉じ、肩で笑うリチャード。しかし、ジェイミーは違った。
「(ついに復活の時が来るのか、主君が・・・破壊の王が・・・あいつが・・・俺から、エファを・・・・)」
拳を握りしめるジェイミー。光を失った瞳で、ユーガはその場に膝を折った。
「・・・ヨシト・・・俺は・・・」
駆け抜けるビジョン。失われた扉(ロストゲート)が、今開かれる。
次回 第27話「戦いの涙」
カケル達は、カラクリまみれの豪邸を後にし、レイ達の住むアジトへと向かっていた。
「ペンデュラム軍の尖兵たるAS。それがお前達ってわけか。」
キジマの言葉にレイは頷く。
「ああ。今は私達を戦争に利用し、兵器にしたマサカー共を追っている。奴らをこれ以上、この世界にのさばらせてはならないからな。」
「なるほどね。記憶も消され、感情の無い兵器に・・・そうじゃないと、耐えられそうにないわ。あの戦争と殺戮は。」
ナナは自らの肩を抱き、震える。見かねたカケルは話題を変えた。
「んで、今から行くのはそのAS達のアジトなんだろ?どんな所なんだ?」
「私達は村って呼んでるわ。みんなで造った、私達の住処よ。」
前を歩くクリスが少し振り向く。それを聞いたリンカが呟いた。
「村、か。ユーガの話を思い出すな。」
「ユーガとは一体?」
ハルが疑問を呈す。
「俺とリンカ、そしてユーガ。最初、俺達は三人だった。けど、ユーガはマサカーに捕まって・・・。」
「だから、そのユーガさんを見つける為に旅を?」
「ああ。だがマサカーの一人、ジェイミーは言った。ユーガが逃げたと。とにかく今の私達には情報が足りない。」
リンカの顔は曇っていた。ハルは明るい顔で言った。
「でも、僕たちの村に行けば何か知っている人が居るかもしれません。僕らはこうして度々遠征に行っているので、誰かしら何か情報を得ている可能性があります。」
「そうだ。今はともかく我らのアジトへ来るべきだ。私にできる事なら協力させてもらう。」
レイの言葉に、カケルは微笑んだ。
「すまないな。でも、とっても助かるよ。闇雲に探すよりずっといい。」
その笑顔を横目で見つめるリンカの顔が、赤く染まる。視線に気付いたカケルは声を掛けた。
「ん?なんだ、リンカ?」
「なっ!なんでもない!気にするな・・・。」
慌てふためくリンカを尻目に、マーナはニヤニヤと笑った。
同じ頃、ユーガは。
現れたのは、黒き闇の甲冑に身を包んだ騎士。その姿は、次元を世界を越え、約束の袂に蘇った。
「《コープスナイト・デッドジャック》・・・・!?」
その影を見たルナは息を飲んだ。そして、その名に只ならぬ”何か”を感じ取る。
「デッドジャック・・・どうして・・・」
ユーガは言い放った。
「死してもなお、戦い続ける”屍の騎士”。それこそが『コープスナイト』。散って行った仲間の思いを、無念を背負い、俺は貴様を叩き潰す!!手札の《コープスナイトアームズ・アビスソード(☆3/闇/アンデット/1350・0)》の効果発動!このカードを手札から、自分フィールドの「コープスナイト」1体に装備する!!」
闇の騎士は、魂の宿る漆黒の剣を手にすると、大きく振りかざした。
「このカードを装備したモンスターは、守備表示モンスターへの貫通効果を得る!さらに、装備モンスターの攻撃によって破壊したペンデュラムモンスターは、エクストラデッキに行かず墓地へ送られる!!」
「へ、へぇ。ちゃーんと再利用への対策済みなんだ。さっすが、ユーガだね。」
動揺しながらも気楽な表情を崩さないルナ。ユーガは相手のフィールドを指差し、叫んだ。
「バトルだ!!俺は《コープスナイト・デッドジャック》で《フレグランス・スナイパー》を攻撃!!」
漆黒の剣を構え、闇の騎士は飛び出す。しかし、その直前でルナは口を開いた。
「私はペンデュラムゾーンの《フレグランス・M・ガトリンガー》のペンデュラム効果を発動!自分の場のペンデュラムモンスターが攻撃対象になった時、そのモンスターを破壊して、このカードを守備表示で特殊召喚する!そして、攻撃対象をこのカードに変更するよ!!」
ルナの場から狙撃手の姿が消える。代わりに現れたのは種子の弾丸を飛ばす回転機銃の持ち主だった。それでも、闇の騎士は変わらず加速してゆく。
「そのまま切り裂け!!『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
全くの静寂の中、一瞬の閃光だけが煌めく。次の瞬間、悪しき妖精の身体は音も無く切り刻まれていた。
「ふっ!ダメージは最小限に抑えたもんね!(LP2000→1900)」
不敵に笑うルナ。しかし、ユーガは透かさず怒号を飛ばし、彼女に余裕は与えなかった。
「俺は《コープスナイト・デッドジャック》の効果発動!!このカードがレベル5以上のモンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った場合、自分の墓地の「コープスナイト」1体につき、500のダメージを相手に与える!!」
「何っ!?」
たじろぐルナの元へ、騎士の亡霊が飛び立つ。
「俺の墓地の「コープスナイト」は3体!!よって1500のダメージを加える!!行け!!『リグレット・ソウル・レイド』!!!」
その亡霊達は怒りと憎しみを持って、ルナに襲いかかった。
「ううっ!!(LP1900→400)私は《フレグランス・スナイパー》の効果発動!このカードが破壊された場合、デッキからレベル4以下の「フレグランス」モンスター1体を特殊召喚する!私はデッキより、《フレグランス・ボマー(☆4/風/植物/ペンデュラム/1600・200)》を特殊召喚!!」
ユーガの表情は変わらない。憎悪と怒気に満ちたその瞳は、ダメージによろける女を貫く。
「嘲るような態度はどうした。自らが絶対だと信じ、力に溺れ、傲り高ぶる。貴様らの薄っぺらい戦術など、もはや今の俺には通用しないと知れ。」
ふらつきながらもルナは笑った。
「ふふっ・・・私の本気が、この程度だと思ってんの?いやぁ良い肩慣らしになったよ、ほんと。さぁて、そろそろ本気出しちゃおうかなぁ・・・?」
「見せてみろ。正面からへし折ってやる。カードを2枚セットし、ターンエンドだ。」
ルナは取り繕ったような笑顔で言う。
「じゃあ、私のターンだね・・・ドロー!!」
引いたカードを確認した後、ルナは自分の場を指差して言った。
「ユーガにも見せてあげるよ・・・!!破壊の王が残した”断片”、いや、遺産を!!私はレベル4の《フレグランス・ガードナー》と《フレグランス・ボマー》でオーバーレイ!!」
黒き閃光の渦。二体の妖精はその混沌へ飛び込み、新たな力を得る。
「漆黒の闇より、卑賤なる愚民に鉄槌を下す呪痕の牙!!今、降臨せよ!!エクシーズ召喚!!これこそが我らが王の遺産!!ランク4、《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン(★4/闇/ドラゴン/エクシーズ/ペンデュラム/2500・2000)》!!!」
混沌を切り裂き、呪痕の竜はその翼を広げた。咆哮が轟き、空間全体を揺さぶる。ユーガはそれを、ただ黙って見つめていた。
「どう!?これが、私が長い旅の中で得た力!!この世界に散りばめられた4つの遺産の1つ!!その牙がユーガ、君を貫きたがってるんだよ!!?んふふっ・・・あははっ!!!」
「・・・お喋りは終わったか。早く掛かって来い。俺はお前を殺した後、早急に他のマサカーを始末しに行かなければならない。」
ユーガの言葉に、ルナは嘲笑を浴びせる。
「あははっ!!へぇ、おっかしいんだ!!ほんとに、この私に勝てると思ってるの!?私は《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン》の効果発動!!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、相手フィールドの攻撃表示モンスターの攻撃力を全て0にする!!『カースディック・ディスチャージ』!!!」
呪痕の竜は翼を展開し、黒き電撃を放った。
「これでユーガのモンスター、《コープスナイト・デッドジャック》の攻撃力は0!!(ATK2500→0)へへっ、今度は私の番なんだから・・・バトル!!」
竜はその顎の逆鱗を輝かせ、一気に加速する。
「『殺戮のライトニング・アグレッション』!!!」
逆鱗に貫かれた闇の騎士の甲冑が砕け散る。その衝撃で医療室の壁は吹き飛び、ユーガの身体は外へと投げ出された。
「くっ・・・!!(LP4000→1500)」
よろけながらもユーガは立ち上がる。その後を追って外に出て来たルナが言う。
「どう私の一撃は?なかなか良かったでしょ?」
しかし、ルナの余裕はすぐさま動揺に変わった。
「なっ・・・なんで!?倒したのに!?」
闇の騎士は甲冑が砕けながらも、未だユーガの場に立っていた。
「・・・俺は装備されていた《コープスナイトアームズ・アビスソード》の効果を使った。装備モンスターが戦闘で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地に送る事ができる。」
「なぁんだ、そういう事か。でも、攻撃力は0のまま。そんなモンスターで何ができるのか、教えて欲しいなぁ?ふふっ。」
平静を取り戻したルナは、ユーガを挑発する。しかし、そんなかりそめの余裕など、今のユーガには通用しなかった。
「何ができるか、だと。ならば良く見ておけ。罠カード《輪廻逆転》発動!!1000のライフと引き換えに、自分フィールドの「コープスナイト」シンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻す!!(LP1500→500)」
ユーガの場から闇の騎士が消える。ルナは困惑した。
「何っ!?何をする気!?」
突如としてユーガのデッキが再び煌めきを発する。その光は次元の狭間をこじ開け、生と死の力を交差させると共に、魂を逆転させる。
「そして、戻したモンスターと同じレベルを持つ「アライブナイト」シンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!!次元の壁を突き破り、輪廻の輪から悠久の約束を解き放て!!」
眼前の空間が裂ける。別次元から交差した魂は光を持ち、邪悪なる全てに死の輝きを与える。
「来い!!絢爛なるその輝きで、勝利への渇望を満たせ!!《アライブナイト・ジャックス・レイ(☆7/光/戦士/シンクロ/2500・2000)》!!」
その輝きを目にし、ルナは苦い表情で歯を食いしばる。
「新しいシンクロモンスター・・・私はカードを1枚セットして、ターンエンド!!」
ユーガの背中を見つめるケンジは呟く。
「これほどまでに、あの暴走する力を服従させるなんて・・・君はますます不思議な存在だよ、ユーガ。」
デッキに手を伸ばし、ユーガは怒りの形相で叫んだ。
「俺のターン、ドロー!!我が怒りの剣よ!!その力で、邪悪の使徒を突き貫け!!《アライブナイト・ジャックス・レイ》の効果発動!!自分のライフポイントが1000以下の場合、このカードの攻撃力は4000から今のライフポイントを引いた数値分アップする!!『リグレット・アヴェンジャー』!!(ATK2500→6000)」
その光は闇を払い、悪を切り裂く刃。その、あまりの神々しさにルナは言葉を失う。
「攻撃力・・・6000!!」
そして、その輝きは真の脅威となって、ルナの元へ降り注いだ。
「バトルだ!!《アライブナイト・ジャックス・レイ》で《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン》を攻撃!!『閃爍のシャイニングスライサー』!!!」
わなわなと震えるルナ。次の瞬間、その小さな身体から狂った怒号が飛び出した。
「・・・・なぁめるなぁあああ!!!リバースカードオープン!!罠カード《虐殺の快楽》!!!自分フィールドの「マサカー」モンスターが戦闘を行う場合に発動できる!!相手モンスターの攻撃力を0にし、変化した数値分、自分フィールドの全ての「マサカー」モンスターの攻撃力をアップする!!!どうだぁ!!これで、これでお前のモンスターは破滅!!ひゃはははっ!!!悔しいだろォ!!?泣きわめけぇ!!命乞いをしろォ!!!私こそが、ペンデュラムこそが!!最強なんだぁあああ!!!」
しかし。喚き散らすルナとは対照的に、ユーガは落ち着き払った声で言った。
「カウンター罠発動。《アンチエフェクト・アライブ》。自分フィールドに「アライブナイト」が存在する場合、相手の発動した魔法・罠カードを無効にする・・・!」
砕け散るルナの罠カード。膝を折ったルナは、ぽかんと口を開けたまま、迫り来る光を見つめた。
「う・・・う・・・うそ・・だ・・・くっ!!」
そして。切り裂かれ、粉々に砕け散る呪痕の竜。その衝撃が到達する寸前、憎しみに満ちた表情でルナは叫んだ。
「・・まだ・・・まだだぁぁ!!私はペンデュラムゾーンの《フレグランス・M・パンデミックウェポナー》のペンデュラム効果発動!!自分フィールドのペンデュラムモンスターが戦闘で破壊される場合、このカードを破壊し、その戦闘ダメージを0にできる!!」
ルナの場から光の柱が消える。攻撃による余波はルナの傍を通り過ぎ、後方の家屋に激突した。
「はぁ・・・はぁ・・・こんな所で、こんな奴に、私は負けるわけにはいかない・・・主君を復活させ、再びこの世界を今度こそ破壊し尽くす時まで、私は・・・!!」
肩で呼吸をしながら、荒い息を吐く。ルナはうつろな目でユーガを睨みつけた。
「へへっ、お前に・・・これ以上何ができる・・・次こそ、次こそ私のターンで・・・」
だが、ルナの言葉が現実になることは無かった。
「俺は墓地の罠カード《輪廻逆転》の効果発動。墓地からこのカードを除外しライフを半分払うことで、自分フィールドの「アライブナイト」とエクストラデッキの「コープスナイト」を入れ替える。(LP500→250)」
閃爍の騎士は闇に包まれ、再び屍の力を得る。
「もう一度、我が元へ降り立て!《コープスナイト・デッドジャック》!!」
「・・・そ・・・そ・・そん・・・な・・・」
絶望に染まるルナの表情。闇の騎士を従え、ユーガは言った。
「俺達の絶望はこんなものじゃなかった。貴様らに世界を破壊され、血を流し、大地は屍体で埋もれた。それでも貴様らは飽き足らず、村を、俺の仲間達を・・・その絶望が、お前のような暖かい血の流れていない殺戮兵器にわかるまい。」
「い・・・いや・・・」
涙を流し首を振るルナ。認め難い現実がルナを襲った。だが、それは疑い様の無い真実。
「せめて、この怒りを受け止め、思い知るが良い。極限に生まれ、憎しみと怒りに生きて来た魂の一撃を!!!《コープスナイト・デッドジャック》でダイレクトアタック!!!」
天高く飛び上がり、上空で剣を構える闇の騎士。動かないルナを見据え、騎士は音も無く加速する。
「『殲滅のサイレントスライサー』!!!」
青空の下。不気味なほどの静寂の中。ルナは、倒れた。
「・・・(LP400→0)」
『勝者:ユーガ』
ケンジは驚嘆の声を漏らす。
「勝った・・・あの、マサカーに・・・勝った・・・。」
ユーガはディスクを展開したまま、うつ伏せに倒れたルナに近づいた。
「破壊の王の復活、それがマサカーの目的か。・・・もうお前から聞く情報も無い。最後に言い残すことはあるか。」
闇の騎士は小さなルナの背中に剣を突き立てた。数センチほど顔を上げ、ルナは呟く。
「・・・くたばれ。」
そして。剣を振り上げ、騎士は最後の一振りを。
だが、その時。
「やれ、《BF Mー暴虐のペイン》。」
刹那。騎士の剣が弾かれる。邪悪なる鳥人はその爪を翳し、闇の騎士を切り裂いた。
「お前は・・・!!」
上空にて、飛行するモンスターの上に乗る男の影。その男はディスクを仕舞い込むと、地上へ飛び降りた。
「また会えたな、ユーガ。」
その男の姿を見たユーガは、静かに問う。
「ジェイミー・・・何をしに来た。」
「愚問だな、ユーガ。俺達はお前を探していたんだぞ。まぁ、後はこのお嬢さんからカードを回収するためにな。」
ジェイミーは、倒れたまま動かないルナに視線を落とす。ユーガはディスクを構え叫んだ。
「・・・叩き潰す!!」
「おいおい、クールになれって言ったろ?ユーガくん。」
ジェイミーの後方から響いた声。その声は、ユーガの脳で一人の人物と直結した。
「・・・リチャードか。」
「そう!マサカー勢揃いってな。ルナのおかげでAS共のアジトがやっと分かったわけだが、一番大事なのはユーガ、お前の記憶だ。」
ユーガは歯を食いしばる。その時、新たな声がユーガの耳に届く。
「・・・そうだ。もっとも重要なのは記憶。すなわち主君への鍵。」
その声の主に、ユーガは問う。
「お前は、誰だ。」
「我が名はヘラルド。破壊の王に仕える振り子の使徒。私がマサカーのリーダーだ。」
見かねたケンジはディスクを構えながら、ユーガの隣に並ぶ。
「ついに、ここへマサカーがっ!!ユーガ、僕も戦う!!」
しかし、その行動をリチャードは嘲る。
「へっ、今更ASなんざ敵じゃねぇな。俺達には”遺産”の力があるんだからよ。」
「しかし、ここにへばっている一名は、遺産の力を持っているにも関わらず、この体たらくとはな。」
ジェイミーの言葉に、ヘラルドが応える。
「所詮は物探しが専門の小娘。主君の遺産を扱いきれる器ではなかったと言う事だ。」
おもむろにしゃがみ込んだヘラルドは、ルナのディスクから1枚のカードを抜き取る。
「《ダーク・リベリオン・カースド・ドラゴン》、確かに回収した。主君の遺産は、我々に思わぬアドバンテージを下さった。4つの遺産が揃った今、あのカードを再構成する事ができる。」
「ああ、俺達は今その為に来たんだからな。」
何やら話し込むマサカーに、しびれを切らしたユーガが言う。
「どうした!!俺と戦え!!」
「そうだ、僕らは貴様達マサカーを排除する為に戦って来た!!全員が揃った今、この機を逃す手は無い!!」
殺気立つ二人を余所に、ヘラルドは自らのディスクにルナから回収したカードを挿入した。その瞬間、ディスクは眩い光を放ち、1枚のカードを吐き出す。
「はぁ。やっと出来たか、あのカードが。」
「・・・元々はリチャード、お前が無駄に使ったのが原因だぞ。」
咎めるジェイミーに、リチャードはバツ悪そうにそっぽを向く。
「素晴らしいエネルギーだ。流石は主君の遺産。・・・さて、始めようか、我々の悲願を。」
「ああ、この方法ならヨシトのロックもすり抜けられるだろうしな。」
ヘラルドは一歩前に出ると、ディスクを構え、その手に持つカードを掲げた。
「ゆくぞ、我が主君への道を示すのだ!!魔法カード発動!!《記憶の扉》!!!」
怪しく揺らめき光るカード。その光に吸い込まれるように、ユーガは目を奪われる。
「ユーガ!?どうしたんだ!?ユーガ!!」
ケンジの声が遠のいて行く。ユーガの頭の中で何かが開く音がした。
「さぁ・・・さぁ!!!見せるのだ!!!鍵よ!!!その堅く閉ざされた扉を開けぇぇええ!!!」
「長かった・・・長かったな、ここまで・・・」
目を閉じ、肩で笑うリチャード。しかし、ジェイミーは違った。
「(ついに復活の時が来るのか、主君が・・・破壊の王が・・・あいつが・・・俺から、エファを・・・・)」
拳を握りしめるジェイミー。光を失った瞳で、ユーガはその場に膝を折った。
「・・・ヨシト・・・俺は・・・」
駆け抜けるビジョン。失われた扉(ロストゲート)が、今開かれる。
次回 第27話「戦いの涙」
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80 | 02:デッド・オア・アライブ | 1116 | 3 | 2016-01-27 | - | |
62 | 03:賞金稼ぎ・カケル | 1033 | 2 | 2016-01-28 | - | |
64 | 04:ゴミ溜めの地下街 | 1017 | 2 | 2016-02-02 | - | |
98 | 05:別次元の力 | 987 | 3 | 2016-02-03 | - | |
90 | 06:その時、何が起こったのか。 | 1009 | 3 | 2016-02-05 | - | |
73 | 07:レジスタンスの男 | 990 | 3 | 2016-02-08 | - | |
82 | 08:悪夢の爪 | 1148 | 4 | 2016-02-12 | - | |
93 | 09:純粋なる悪意 | 1031 | 3 | 2016-02-13 | - | |
112 | 10:過ち | 1092 | 3 | 2016-02-16 | - | |
112 | 11:分断された仲間たち | 927 | 2 | 2016-02-21 | - | |
100 | 12:新たなる出発 | 1123 | 2 | 2016-02-23 | - | |
116 | 13:邪悪な賢者 | 1005 | 2 | 2016-03-06 | - | |
126 | 14:忘却都市と生存兵 | 1171 | 4 | 2016-03-07 | - | |
96 | 15:悲しみの追憶 | 1039 | 2 | 2016-03-09 | - | |
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61 | 23:極限のドロップ・ドロー・前編 | 911 | 2 | 2016-06-07 | - | |
94 | 24:極限のドロップ・ドロー・後編 | 968 | 2 | 2016-06-07 | - | |
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Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
そして重要なユーガの記憶が、今開かれる。 (2016-06-10 08:48)
ついにユーガは暴走する自分を制御できるようになりました。イメージ的にはユートや黒咲さんのような感じでしょうかね。ユーガの方がやや過激かもしれませんが。
そしてついに、長い間隠されていた記憶が明かされます。次回からしばらく「ヨシトの記憶編」となりそうです。 (2016-06-10 17:56)