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12:新たなる出発 作:ほーがん
第12話「新たなる出発」
朝。カケルとリンカは唐突に聞こえた喧騒に目を覚ました。
「なんだ・・・?」
目を擦りながら、リンカが身体を起こす。同じように起き上がったカケルは周りを見渡すと、家主の姿が見えない事に気付いた。
「キジマの奴、外か?やたらデカい声が聞こえたけど・・・」
その時、二人の下にマーナが駆け寄った。
「みんな、ナオト兄ちゃんが大変なの!」
必死な顔でマーナは訴えてくる。その時、外からまたしても大声が響いた。
「てめぇ、俺達に楯突くってのか!?あぁん!?」
「いいから、そこをどけってんだよ!!」
カケルはマーナに言う。
「俺が行く。マーナはここに居るんだ。」
直ぐさま立ち上がり、扉へと走ろうとしたカケルにリンカが声を掛ける。
「待て、私も行こう。」
リンカも後を追い掛け、二人は扉の外に出た。
「おい、キジマ!大丈夫か!?」
飛び出して来たカケル達を見たキジマは、笑って答える。
「おう、二人ともおはよう。なーに、アポ無しでご訪問頂いた盗賊のお二方に、ちょっと俺のモットーを伝えてただけだ。」
キジマの前には、背の高い男と対照的に背の低い男の二人組が、苛ついた表情で立っていた。
「モットーだとォ!?んな事より、ここの家にある物を寄越しな!!食料も、水もだ!!」
「なぁ、兄貴!見ろよ!女も居るぜ!!」
背の低い方の男は出て来たリンカを指差し、卑しい笑みを浮かべる。
「おおう、いいもん持ってんじゃねーか!!こいつぁ、楽しみが増えそうだな!!」
男達の視線に、リンカは蔑みの目を向けた。
「私は慰み者になどなるつもりは無い!!」
思わずディスクを構えそうになったリンカに、キジマは手を翳しストップを掛けた。
「まぁ、待ってくれ。ったく、俺みたいに家を持ってる奴はこういう事があるから面倒だよなぁ・・・。」
キジマは一歩前に出る。そして、自身の左腕に填めているディスクを展開した。
「いい機会だ。嬢さんに俺の実力を見て貰おうじゃねぇか。」
「・・・私は嬢さんでは無く、リンカだ。」
その訂正に、キジマは笑う。
「そうか、そうだったな。よし、リンカ。新しい仲間が役に立つのかどうか、その目で確かめてくれ。」
盗賊の男達はゲラゲラと嘲笑する。
「おいおい!兄貴に勝てるとでも思ってんのか?今まで何人の家持ちを潰して来たと思ってる!!?」
「ふん!馬鹿な男だぜ!!この俺様に潰されるだけだってのによ!!」
キジマは鋭く言い放つ。
「いいから構えろ。負けたら、家でも何でもくれてやるから。」
「ふはは!!野郎、その言葉・・・後悔すんなよ!!」
背の高い方の男はディスクを構え、キジマと対峙した。リンカはカケルに訊ねる。
「カケル、キジマは強いのか?」
それを聞き、カケルは少し考えてから答えた。
「そうだな・・・キレたら、すごい、かな。」
カケルの言葉に疑問を浮かべながらも、リンカはキジマの背中を見つめた。そして、両者は叫ぶ。
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
先に動いたのは盗賊の男だった。
「先攻は俺のもんだ!!魔法カード《古のルール》を発動!!手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚するぜ!!」
男の場に魔法カードが表示される。
「来い!!《牛鬼(☆6/闇/悪魔/2150・1950)》!!」
突然、男の場に壷が出現する。その中より、牛の頭を持った悪魔が煙のように浮かび上がった。
「へぇ、わざわざステータスの低い通常モンスターを特殊召喚ってことは、何かあるな?」
キジマの言葉に男は笑う。
「ふん、さっそく見せてやろう!この俺の切り札をな!俺は、たった今召喚した《牛鬼》をリリースし、このモンスターを召喚する!!」
牛の悪魔は壷の中へと戻り、怪しく輝き始める。
「さぁ来い!!手札より、《大牛鬼(☆8/闇/悪魔/2600・2100)》を特殊召喚だぁ!!!」
光と共に壷が砕けると、牛の悪魔は蜘蛛の下半身を持った新たな姿で男の前に現れた。
「出たぜ!!兄貴のエースモンスターだ!!」
そのモンスターを見たキジマは、興味深そうに口を開く。
「なるほど、そいつを呼ぶ為の《牛鬼》だった訳か。」
「そう!!《大牛鬼》は自分フィールドの《牛鬼》をリリースして手札から特殊召喚できる!!てめぇにこいつが倒せるかぁ!!?」
牛の悪魔は鼻を鳴らし、キジマを見下ろす。男はさらに手札のカードを取り出した。
「まだだぜ!!永続魔法、《魔族結界ーデモンズ・バリアー》を発動!!このカードが存在する限り、自分フィールドの特殊召喚された悪魔族モンスターは相手の効果、及び戦闘では破壊されない!!」
男の場を邪悪な結界が包み込む。
「そして、カードを1枚セットしてターンエンドだ!!」
残る最後の手札を伏せた男は、ほくそ笑んだ。
「(ふっふっふ・・・今俺が伏せたカードは《聖なるバリア ーミラー・フォースー》!!例え、《大牛鬼》を超える攻撃力を持ったモンスターでダメージを狙おうとも、こいつでおじゃんだぜ!!こっちの守りは完璧なんだよ!!)」
男の視線を見たキジマは、その思惑を察して思う。
「(よほど自分の布陣に自信があるっぽいな。果たして、どう切り崩して行くか。)俺のターン!ドロー!」
引いたカードを確認し、キジマは笑う。
「・・・なるほど。じゃあ、このターンで決めますかね!!」
それを聞いた男は嘲る。
「てめぇ、馬鹿か!?この俺様の場を見て、良くそんな事が言えたもんだな!!」
なだめるようにキジマは言う。
「まぁまぁ、盗賊さんよ。いいから見てなって!俺は手札からチューナーモンスター《D=M(ディプライブ=マンティス)ー追葬のウルミ(☆2/地/昆虫/チューナー/800・800)》を召喚!!」
キジマの場に、鋭い鎌を備えた女型のカマキリモンスターが出現する。
「さらに!自分フィールドに昆虫族・地属性モンスターが存在する場合、《D=Mー連斬のスレイヴ(☆4/地/昆虫/1700・1700)》は手札から特殊召喚できる!」
新たなカマキリ型モンスターが素早く両腕を振りながら、仲間の隣に並んだ。
「行くぜ!!俺はレベル4の《D=Mー連斬のスレイヴ》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!」
羽を広げ飛び上がったカマキリ型モンスターを、光の輪となった仲間が包む。
「勇猛なる捕食者よ!孤高の剣を手に、地上の覇者となれ!!シンクロ召喚!!切り裂け、レベル6《D=Mーリポスト・ダガー(☆6/地/昆虫/シンクロ/2300・2300)》!!」
溢れ出した光を突き抜け、孤高の捕食者はその剣を輝かせた。
「シンクロ召喚・・・まるで、ユーガだな。」
リンカがぽつりと呟く。
「へっ、勢いよくシンクロ召喚して来ても、その攻撃力じゃ俺の《大牛鬼》は超えられねぇ!!」
男の言葉に、キジマは、チッチッと指を振る。
「まだまだ、こんなんじゃ終わらねぇぜ。こっからが本番だ!」
そして、キジマは新たなカードを取り出した。
「攻撃力の一番高いモンスターが相手フィールドに存在する場合、《D=Mー放胆のパタ(☆1/地/昆虫/300・300)》は手札から特殊召喚できる!」
人間と昆虫の中間といった容姿の少女が、元気よくフィールドに飛び出す。
「そして、墓地の《D=Mー追葬のウルミ》の効果発動!自分フィールドにチューナー以外の「D=M」が存在する場合、1000ライフ払う事でこのモンスターは手札・墓地から特殊召喚できる!!(LP4000→3000)」
墓地より復活した女型のカマキリは再び、キジマの元に足を付けた。
「この効果で特殊召喚した《D=Mー追葬のウルミ》は場を離れる時、除外される。俺は《D=Mー放胆のパタ》の効果を発動!1ターンに1度、自分フィールドの他の「D=M」1体を選択し、そのモンスターのレベル分、自身のレベルを上げる事ができる!俺はレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》を選択!これにより、《D=Mー放胆のパタ》のレベルは2つ上がる!(☆1→☆3)」
そして、キジマは得意げに叫んだ。
「もう一回だ!レベル3となった《D=Mー放胆のパタ》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!」
再び、光の輪がキジマの眼前に輝く。
「迅速なる捕食者よ!刹那の刃を振るい、怒濤の連撃を繰り出せ!!シンクロ召喚!!裁ち斬れ、レベル5《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ(☆5/地/昆虫/シンクロ/チューナー/2100・2100)》!!」
右腕の刃と左腕の鉤爪を振るい、新たな捕食者が姿を現した。
「れ、連続シンクロだと!!調子に乗りやがって!!」
男はキジマの連続展開を見て、苛立ちを覚える。キジマはお構いなしに言葉を続けた。
「この瞬間、シンクロ素材となった《D=Mー放胆のパタ》の効果発動!このカードを素材にシンクロ召喚したモンスターの攻撃力は、500アップする!!(ATK2100→2600)」
背の低い方の男は焦るように言う。
「こ、これで兄貴のモンスターと攻撃力が並んじまった!!相打ちされちまうぜ!?」
男は、後ろを振り向き声を荒げる。
「おい、よく見ろ弟よ!俺の場には戦闘破壊を防ぐ《魔族結界ーデモンズ・バリアー》が発動している!!相打ちなら不可能って話だ!!次のターンこっちから攻撃して、消し去ってやるまでよ!!」
「あっ、そ、そっか!!さすが兄貴だぜ!!」
そのやりとりを見ていたキジマは呆れたように呟く。
「・・・だから、このターンで終わらせるっての。俺は速攻魔法《ハンターズ・リミテッドリバイブ》を発動!!」
不敵に笑い、キジマは言い放った。
「いいか、よく聞け盗賊ども!!先に言っておくぞ!!この魔法カードはライフを半分払って発動するカードだ!そして、このカードを発動したターンのエンドフェイズ、自分フィールドの最も攻撃力の高いモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを自分は受ける事になる!!」
その言葉に男達は声を上げる。
「はいぃい!!?な、なんだそれ!!・・・兄貴、どういうこと!?」
「馬鹿か、弟よ!!奴のライフは3000!半分になったら、1500!!そして、奴のフィールドで最も攻撃力の高いモンスターは2600!!つまり、2600のダメージを受けてジ・エンドって訳だ!!血迷ったなぁ、家持ち野郎!!」
笑う男達。キジマは思わず溜め息を付く。
「はぁ、よくそんなんで生き残ったな・・・。終わらせるって聞こえなかったのか?《ハンターズ・リミテッドリバイブ》の効果発動だ!(LP3000→1500)」
魔法が表示されると同時に、キジマの墓地が光る。
「このカードは自分の墓地、及び除外されているカードの中から、チューナーとそれ以外の「D=M」を1体ずつ特殊召喚する!!戻って来い、《D=Mー連斬のスレイヴ》《D=Mー追葬のウルミ》!!」
2体の昆虫はそれぞれ、墓地と次元の狭間より帰還した。
「その後、自分フィールドの「D=M」を素材にシンクロ召喚を行う!!俺はレベル6の《D=Mーリポスト・ダガー》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!!」
孤高の捕食者はその羽を羽ばたかせ、一気に飛び上がった。そして、それを追いかけるように光の輪となった仲間が囲む。
「豪壮なる捕食者よ!その鮮麗たる霜剣を振りかざし、抗う全てを喰らい尽くせ!!!シンクロ召喚!!!」
閃光を突き破り、捕食者は誕生の雄叫びを上げる。
「君臨せよ!!レベル8、《D=Mーギガテクス・バルムンク(☆8/地/昆虫/シンクロ/3000・3000)》!!!」
伝説の魔剣の名を持つ捕食者は、無数の脚で大地を踏み砕き、その体躯を誇示した。
「こ、攻撃力3000!!」
流石の男も、その姿に身震いする。
「俺は《D=Mーギガテクス・バルムンク》の効果を発動!!1ターンに1度、自分フィールドの他の「D=M」1体をリリースする事で、墓地の昆虫族モンスターを特殊召喚できる!!俺は、《D=Mー連斬のスレイヴ》をリリース!!」
強大なる捕食者は、連斬の刃を持つ仲間を掴み上げると、叫喚と共に粉々に握り潰した。
「そして、墓地より蘇れ!!《D=Mーリポスト・ダガー》!!!」
両腕の剣を振るい、孤高の捕食者は復活を遂げる。男は焦りを見せつつも叫んだ。
「へっ、そんなにモンスターを並べた所で、俺の《大牛鬼》は《魔族結界ーデモンズ・バリアー》の効果により破壊されない!!(それに、伏せた罠カードだってあるしな!!)どうやっても、このターンでの決着は不可能だ!!」
「それはどうかな!!魔法カード《シンクロ・E・ドレイン》を発動!!」
さらにカードを発動したキジマ。
「このカードは自分フィールドの同じ種族・属性のシンクロモンスター2体を対象として発動できる!!ターン終了時まで片方の効果を無効にし、その後、もう片方のモンスターに無効化した効果を与える!!俺は《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ》の効果を無効にし、代わりにその効果を《D=Mーギガテクス・バルムンク》に与える!!そして、このカードの発動後、効果を与えられたモンスター以外のモンスターは攻撃できない!!」
不敵な笑みで、キジマは言った。
「《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ》は1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。よって、その効果を得た《D=Mーギガテクス・バルムンク》はこのターン、2回の攻撃が可能となったぜ!!さらに、《D=Mーリポスト・ダガー》の効果も発動だ!!1ターンに1度、相手モンスター1体を守備表示にできる!!」
その言葉を受け、孤高の捕食者は腕の剣を飛ばした。その切先は牛の悪魔に突き刺さり、地に膝を付かせた。
「わざわざ守備表示にするだと!?一体なんだ!?何を考えている!!?」
困惑する男をキジマは指差す。
「さぁ待たせたな!!フィニッシュの時間だ!!俺の家と、食い物と、仲間を奪おうとした罪!!思う存分悔いてもらうぞ!!!」
その姿を見たカケルが言葉を漏らした。
「あー・・・ありゃキレてんな、キジマ。」
「そ、そうなのか?」
リンカの疑問にカケルは無言で頷いた。
「バトルだ!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》で《大牛鬼》を攻撃!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》は守備表示モンスターを攻撃した場合、攻撃力が超えた分だけ貫通ダメージを与える!!」
捕食者は怒号と共に走り出した。男はキジマの狙いをようやく理解し、声を荒げる。
「ちっ、そう言う事か!!だが、甘ぇぜ!!俺はリバースカード・・・」
しかし。キジマはそれを遮り叫ぶ。
「無駄だ!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》が相手モンスターと戦闘を行う時、そのバトルが終わるまで、相手はカードの効果を発動できない!!」
「なんだと!!?」
そして、捕食者はその腕の巨大な刃を振りかざした。
「『マキシマム・オーバーロード』!!!」
叩き潰すような捕食者の一撃が、牛の悪魔を襲う。結界の力により破壊は免れるも、衝撃の余波が男に降り注いだ。
「ぐぅううう!!!(LP4000→1000)」
なんとか耐えきり、男は安堵する。しかし、直後に自身のライフポイントを見て怪訝な顔をした。
「な、何故だ!?何故、こんなにライフポイントが減っている!?《大牛鬼》の守備力は2100、だったら900のダメージじゃねぇのか!?」
男は自分フィールドのモンスターのステータスを見て、困惑した。
「守備力、0だとぉ!!?何故だ!!てめぇ、一体何をした!?」
キジマは笑って答える。
「攻撃の瞬間、《D=Mーリポスト・ダガー》の効果が発動していたのさ。《D=Mーリポスト・ダガー》は、自分フィールドの「D=M」が相手の守備表示モンスターと戦闘を行う場合、相手の守備力を0にする・・・!!」
「な、なんだそれは!!」
ニヤリ顔でキジマは言葉を付け足した。
「おっと、忘れんなよ?《D=Mーギガテクス・バルムンク》はこのターン、もう1回攻撃できるんだぜ?」
「あ!!」
捕食者はもう一方の腕を振りかざした。牛の悪魔は冷や汗を垂らし、それを見上げる。
「チェックメイトだ。もう二度と来んなよ、盗賊共が。」
耳を劈く咆哮を上げ、捕食者は刃を振り下ろした。
「ば、馬鹿なぁぁぁあああぁぁ!!!(LP1000→0)」
衝撃と爆風に男達は吹き飛ばされた。
『勝者:キジマ・ナオト』
「あ、兄貴!!大丈夫か!!」
背の低い男は、倒れ込んだ男に駆け寄る。
「くっ、弟よ!こいつは相当ヤバい奴だ!!逃げるぞ!!」
直ぐさま立ち上がった男は、相方を連れ一目散に逃げ出した。
その後ろ姿を見ながらキジマは溜め息を付く。
「ったく、こんな世の中で盗賊なんかやりやがって。もっと、助け合って生きろっての。」
リンカは一歩前に出るとキジマに声を掛けた。
「キジマ、お前の実力見せて貰った。どうやら、心強い仲間ができたようだな。」
「そうかい?いやぁ、こう可愛い娘に褒められると中々嬉しいもんだな。」
その時、家の扉が開き、マーナが頬を膨らませて出て来た。
「ナオト兄ちゃん!!」
キジマは笑って言う。
「はっはっは!冗談だよ、冗談!そう怒んなって!」
笑い声の中、カケルが思いついたように口を開く。
「あっ!そうだ、さっきの奴らになんか聞とけばよかった!もしかしたら、マサカー関連の情報を持ってたかも・・・!」
それを聞いたキジマはハッとして、ジェットバイクの方へと走った。
「カケル、ナイス!ちょっくら追いかけて来るわ!!」
エンジンを入れ、ジェットバイクは急発進した。吐き出された黒い煙が辺りの空中を汚す。
「けほっ、けほっ。ひどいな・・・。」
リンカのぼやきに、マーナが呆れたように言う。
「全く、ナオト兄ちゃん、あのポンコツ捨ててって言っても、全然聞かないんだよ!『まだまだ乗れる!!』って!」
「ぽ、ポンコツって・・・マーナちゃん辛辣・・・。」
カケルは思わず苦笑いをした。
数分後、キジマは相変わらず黒い煙を吐くジェットバイクに乗ったまま、こちらへと戻って来た。
「で、どうだった?」
詰め寄るカケルにキジマは笑う。
「いやぁ、なんか良さそうな情報持ってたぜ、奴ら。」
「本当か!?それはなんだ!」
逸るカケルとリンカに、キジマは告げる。
「奴ら曰く、『ペンデュラム召喚らしき戦法を使うデュエリストを、「赤の教会」で見た』だってよ。」
「赤の教会?どこだ、それ。」
疑問を浮かべたカケルに、キジマは一枚の紙切れを差し出した。
「これを奴らに書いて貰った。単純な地図っつーか、まぁほとんど方角だけだな。ここから西南のずっと奥って書いてあるぜ。」
「ならば、早速!」
そのままの身で歩き出そうとしたリンカの肩を、キジマが掴んで止める。
「まぁ、待てって。これから旅に出るって事だろ。色々、準備しなくちゃな。」
「マーナも行く!」
飛び付いてきたマーナを、キジマは優しく撫でた。
「もちろんだ。マーナを一人置いて行く訳ないだろ?いざという時は、俺達が守ってやる。」
「私だって、もう戦えるもん!」
二人から太陽へと視線を移したカケルは、その輝きに目を細め、一人呟いた。
「・・・新たな出発か。待ってろよ、ユーガ。必ず、助けるから。」
次回 第13話「邪悪な賢者」
朝。カケルとリンカは唐突に聞こえた喧騒に目を覚ました。
「なんだ・・・?」
目を擦りながら、リンカが身体を起こす。同じように起き上がったカケルは周りを見渡すと、家主の姿が見えない事に気付いた。
「キジマの奴、外か?やたらデカい声が聞こえたけど・・・」
その時、二人の下にマーナが駆け寄った。
「みんな、ナオト兄ちゃんが大変なの!」
必死な顔でマーナは訴えてくる。その時、外からまたしても大声が響いた。
「てめぇ、俺達に楯突くってのか!?あぁん!?」
「いいから、そこをどけってんだよ!!」
カケルはマーナに言う。
「俺が行く。マーナはここに居るんだ。」
直ぐさま立ち上がり、扉へと走ろうとしたカケルにリンカが声を掛ける。
「待て、私も行こう。」
リンカも後を追い掛け、二人は扉の外に出た。
「おい、キジマ!大丈夫か!?」
飛び出して来たカケル達を見たキジマは、笑って答える。
「おう、二人ともおはよう。なーに、アポ無しでご訪問頂いた盗賊のお二方に、ちょっと俺のモットーを伝えてただけだ。」
キジマの前には、背の高い男と対照的に背の低い男の二人組が、苛ついた表情で立っていた。
「モットーだとォ!?んな事より、ここの家にある物を寄越しな!!食料も、水もだ!!」
「なぁ、兄貴!見ろよ!女も居るぜ!!」
背の低い方の男は出て来たリンカを指差し、卑しい笑みを浮かべる。
「おおう、いいもん持ってんじゃねーか!!こいつぁ、楽しみが増えそうだな!!」
男達の視線に、リンカは蔑みの目を向けた。
「私は慰み者になどなるつもりは無い!!」
思わずディスクを構えそうになったリンカに、キジマは手を翳しストップを掛けた。
「まぁ、待ってくれ。ったく、俺みたいに家を持ってる奴はこういう事があるから面倒だよなぁ・・・。」
キジマは一歩前に出る。そして、自身の左腕に填めているディスクを展開した。
「いい機会だ。嬢さんに俺の実力を見て貰おうじゃねぇか。」
「・・・私は嬢さんでは無く、リンカだ。」
その訂正に、キジマは笑う。
「そうか、そうだったな。よし、リンカ。新しい仲間が役に立つのかどうか、その目で確かめてくれ。」
盗賊の男達はゲラゲラと嘲笑する。
「おいおい!兄貴に勝てるとでも思ってんのか?今まで何人の家持ちを潰して来たと思ってる!!?」
「ふん!馬鹿な男だぜ!!この俺様に潰されるだけだってのによ!!」
キジマは鋭く言い放つ。
「いいから構えろ。負けたら、家でも何でもくれてやるから。」
「ふはは!!野郎、その言葉・・・後悔すんなよ!!」
背の高い方の男はディスクを構え、キジマと対峙した。リンカはカケルに訊ねる。
「カケル、キジマは強いのか?」
それを聞き、カケルは少し考えてから答えた。
「そうだな・・・キレたら、すごい、かな。」
カケルの言葉に疑問を浮かべながらも、リンカはキジマの背中を見つめた。そして、両者は叫ぶ。
『デュエル!!(LP4000 VS LP4000)』
先に動いたのは盗賊の男だった。
「先攻は俺のもんだ!!魔法カード《古のルール》を発動!!手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚するぜ!!」
男の場に魔法カードが表示される。
「来い!!《牛鬼(☆6/闇/悪魔/2150・1950)》!!」
突然、男の場に壷が出現する。その中より、牛の頭を持った悪魔が煙のように浮かび上がった。
「へぇ、わざわざステータスの低い通常モンスターを特殊召喚ってことは、何かあるな?」
キジマの言葉に男は笑う。
「ふん、さっそく見せてやろう!この俺の切り札をな!俺は、たった今召喚した《牛鬼》をリリースし、このモンスターを召喚する!!」
牛の悪魔は壷の中へと戻り、怪しく輝き始める。
「さぁ来い!!手札より、《大牛鬼(☆8/闇/悪魔/2600・2100)》を特殊召喚だぁ!!!」
光と共に壷が砕けると、牛の悪魔は蜘蛛の下半身を持った新たな姿で男の前に現れた。
「出たぜ!!兄貴のエースモンスターだ!!」
そのモンスターを見たキジマは、興味深そうに口を開く。
「なるほど、そいつを呼ぶ為の《牛鬼》だった訳か。」
「そう!!《大牛鬼》は自分フィールドの《牛鬼》をリリースして手札から特殊召喚できる!!てめぇにこいつが倒せるかぁ!!?」
牛の悪魔は鼻を鳴らし、キジマを見下ろす。男はさらに手札のカードを取り出した。
「まだだぜ!!永続魔法、《魔族結界ーデモンズ・バリアー》を発動!!このカードが存在する限り、自分フィールドの特殊召喚された悪魔族モンスターは相手の効果、及び戦闘では破壊されない!!」
男の場を邪悪な結界が包み込む。
「そして、カードを1枚セットしてターンエンドだ!!」
残る最後の手札を伏せた男は、ほくそ笑んだ。
「(ふっふっふ・・・今俺が伏せたカードは《聖なるバリア ーミラー・フォースー》!!例え、《大牛鬼》を超える攻撃力を持ったモンスターでダメージを狙おうとも、こいつでおじゃんだぜ!!こっちの守りは完璧なんだよ!!)」
男の視線を見たキジマは、その思惑を察して思う。
「(よほど自分の布陣に自信があるっぽいな。果たして、どう切り崩して行くか。)俺のターン!ドロー!」
引いたカードを確認し、キジマは笑う。
「・・・なるほど。じゃあ、このターンで決めますかね!!」
それを聞いた男は嘲る。
「てめぇ、馬鹿か!?この俺様の場を見て、良くそんな事が言えたもんだな!!」
なだめるようにキジマは言う。
「まぁまぁ、盗賊さんよ。いいから見てなって!俺は手札からチューナーモンスター《D=M(ディプライブ=マンティス)ー追葬のウルミ(☆2/地/昆虫/チューナー/800・800)》を召喚!!」
キジマの場に、鋭い鎌を備えた女型のカマキリモンスターが出現する。
「さらに!自分フィールドに昆虫族・地属性モンスターが存在する場合、《D=Mー連斬のスレイヴ(☆4/地/昆虫/1700・1700)》は手札から特殊召喚できる!」
新たなカマキリ型モンスターが素早く両腕を振りながら、仲間の隣に並んだ。
「行くぜ!!俺はレベル4の《D=Mー連斬のスレイヴ》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!」
羽を広げ飛び上がったカマキリ型モンスターを、光の輪となった仲間が包む。
「勇猛なる捕食者よ!孤高の剣を手に、地上の覇者となれ!!シンクロ召喚!!切り裂け、レベル6《D=Mーリポスト・ダガー(☆6/地/昆虫/シンクロ/2300・2300)》!!」
溢れ出した光を突き抜け、孤高の捕食者はその剣を輝かせた。
「シンクロ召喚・・・まるで、ユーガだな。」
リンカがぽつりと呟く。
「へっ、勢いよくシンクロ召喚して来ても、その攻撃力じゃ俺の《大牛鬼》は超えられねぇ!!」
男の言葉に、キジマは、チッチッと指を振る。
「まだまだ、こんなんじゃ終わらねぇぜ。こっからが本番だ!」
そして、キジマは新たなカードを取り出した。
「攻撃力の一番高いモンスターが相手フィールドに存在する場合、《D=Mー放胆のパタ(☆1/地/昆虫/300・300)》は手札から特殊召喚できる!」
人間と昆虫の中間といった容姿の少女が、元気よくフィールドに飛び出す。
「そして、墓地の《D=Mー追葬のウルミ》の効果発動!自分フィールドにチューナー以外の「D=M」が存在する場合、1000ライフ払う事でこのモンスターは手札・墓地から特殊召喚できる!!(LP4000→3000)」
墓地より復活した女型のカマキリは再び、キジマの元に足を付けた。
「この効果で特殊召喚した《D=Mー追葬のウルミ》は場を離れる時、除外される。俺は《D=Mー放胆のパタ》の効果を発動!1ターンに1度、自分フィールドの他の「D=M」1体を選択し、そのモンスターのレベル分、自身のレベルを上げる事ができる!俺はレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》を選択!これにより、《D=Mー放胆のパタ》のレベルは2つ上がる!(☆1→☆3)」
そして、キジマは得意げに叫んだ。
「もう一回だ!レベル3となった《D=Mー放胆のパタ》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!」
再び、光の輪がキジマの眼前に輝く。
「迅速なる捕食者よ!刹那の刃を振るい、怒濤の連撃を繰り出せ!!シンクロ召喚!!裁ち斬れ、レベル5《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ(☆5/地/昆虫/シンクロ/チューナー/2100・2100)》!!」
右腕の刃と左腕の鉤爪を振るい、新たな捕食者が姿を現した。
「れ、連続シンクロだと!!調子に乗りやがって!!」
男はキジマの連続展開を見て、苛立ちを覚える。キジマはお構いなしに言葉を続けた。
「この瞬間、シンクロ素材となった《D=Mー放胆のパタ》の効果発動!このカードを素材にシンクロ召喚したモンスターの攻撃力は、500アップする!!(ATK2100→2600)」
背の低い方の男は焦るように言う。
「こ、これで兄貴のモンスターと攻撃力が並んじまった!!相打ちされちまうぜ!?」
男は、後ろを振り向き声を荒げる。
「おい、よく見ろ弟よ!俺の場には戦闘破壊を防ぐ《魔族結界ーデモンズ・バリアー》が発動している!!相打ちなら不可能って話だ!!次のターンこっちから攻撃して、消し去ってやるまでよ!!」
「あっ、そ、そっか!!さすが兄貴だぜ!!」
そのやりとりを見ていたキジマは呆れたように呟く。
「・・・だから、このターンで終わらせるっての。俺は速攻魔法《ハンターズ・リミテッドリバイブ》を発動!!」
不敵に笑い、キジマは言い放った。
「いいか、よく聞け盗賊ども!!先に言っておくぞ!!この魔法カードはライフを半分払って発動するカードだ!そして、このカードを発動したターンのエンドフェイズ、自分フィールドの最も攻撃力の高いモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを自分は受ける事になる!!」
その言葉に男達は声を上げる。
「はいぃい!!?な、なんだそれ!!・・・兄貴、どういうこと!?」
「馬鹿か、弟よ!!奴のライフは3000!半分になったら、1500!!そして、奴のフィールドで最も攻撃力の高いモンスターは2600!!つまり、2600のダメージを受けてジ・エンドって訳だ!!血迷ったなぁ、家持ち野郎!!」
笑う男達。キジマは思わず溜め息を付く。
「はぁ、よくそんなんで生き残ったな・・・。終わらせるって聞こえなかったのか?《ハンターズ・リミテッドリバイブ》の効果発動だ!(LP3000→1500)」
魔法が表示されると同時に、キジマの墓地が光る。
「このカードは自分の墓地、及び除外されているカードの中から、チューナーとそれ以外の「D=M」を1体ずつ特殊召喚する!!戻って来い、《D=Mー連斬のスレイヴ》《D=Mー追葬のウルミ》!!」
2体の昆虫はそれぞれ、墓地と次元の狭間より帰還した。
「その後、自分フィールドの「D=M」を素材にシンクロ召喚を行う!!俺はレベル6の《D=Mーリポスト・ダガー》にレベル2の《D=Mー追葬のウルミ》をチューニング!!!」
孤高の捕食者はその羽を羽ばたかせ、一気に飛び上がった。そして、それを追いかけるように光の輪となった仲間が囲む。
「豪壮なる捕食者よ!その鮮麗たる霜剣を振りかざし、抗う全てを喰らい尽くせ!!!シンクロ召喚!!!」
閃光を突き破り、捕食者は誕生の雄叫びを上げる。
「君臨せよ!!レベル8、《D=Mーギガテクス・バルムンク(☆8/地/昆虫/シンクロ/3000・3000)》!!!」
伝説の魔剣の名を持つ捕食者は、無数の脚で大地を踏み砕き、その体躯を誇示した。
「こ、攻撃力3000!!」
流石の男も、その姿に身震いする。
「俺は《D=Mーギガテクス・バルムンク》の効果を発動!!1ターンに1度、自分フィールドの他の「D=M」1体をリリースする事で、墓地の昆虫族モンスターを特殊召喚できる!!俺は、《D=Mー連斬のスレイヴ》をリリース!!」
強大なる捕食者は、連斬の刃を持つ仲間を掴み上げると、叫喚と共に粉々に握り潰した。
「そして、墓地より蘇れ!!《D=Mーリポスト・ダガー》!!!」
両腕の剣を振るい、孤高の捕食者は復活を遂げる。男は焦りを見せつつも叫んだ。
「へっ、そんなにモンスターを並べた所で、俺の《大牛鬼》は《魔族結界ーデモンズ・バリアー》の効果により破壊されない!!(それに、伏せた罠カードだってあるしな!!)どうやっても、このターンでの決着は不可能だ!!」
「それはどうかな!!魔法カード《シンクロ・E・ドレイン》を発動!!」
さらにカードを発動したキジマ。
「このカードは自分フィールドの同じ種族・属性のシンクロモンスター2体を対象として発動できる!!ターン終了時まで片方の効果を無効にし、その後、もう片方のモンスターに無効化した効果を与える!!俺は《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ》の効果を無効にし、代わりにその効果を《D=Mーギガテクス・バルムンク》に与える!!そして、このカードの発動後、効果を与えられたモンスター以外のモンスターは攻撃できない!!」
不敵な笑みで、キジマは言った。
「《D=Mーフラッシュ・ジャンビーヤ》は1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。よって、その効果を得た《D=Mーギガテクス・バルムンク》はこのターン、2回の攻撃が可能となったぜ!!さらに、《D=Mーリポスト・ダガー》の効果も発動だ!!1ターンに1度、相手モンスター1体を守備表示にできる!!」
その言葉を受け、孤高の捕食者は腕の剣を飛ばした。その切先は牛の悪魔に突き刺さり、地に膝を付かせた。
「わざわざ守備表示にするだと!?一体なんだ!?何を考えている!!?」
困惑する男をキジマは指差す。
「さぁ待たせたな!!フィニッシュの時間だ!!俺の家と、食い物と、仲間を奪おうとした罪!!思う存分悔いてもらうぞ!!!」
その姿を見たカケルが言葉を漏らした。
「あー・・・ありゃキレてんな、キジマ。」
「そ、そうなのか?」
リンカの疑問にカケルは無言で頷いた。
「バトルだ!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》で《大牛鬼》を攻撃!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》は守備表示モンスターを攻撃した場合、攻撃力が超えた分だけ貫通ダメージを与える!!」
捕食者は怒号と共に走り出した。男はキジマの狙いをようやく理解し、声を荒げる。
「ちっ、そう言う事か!!だが、甘ぇぜ!!俺はリバースカード・・・」
しかし。キジマはそれを遮り叫ぶ。
「無駄だ!!《D=Mーギガテクス・バルムンク》が相手モンスターと戦闘を行う時、そのバトルが終わるまで、相手はカードの効果を発動できない!!」
「なんだと!!?」
そして、捕食者はその腕の巨大な刃を振りかざした。
「『マキシマム・オーバーロード』!!!」
叩き潰すような捕食者の一撃が、牛の悪魔を襲う。結界の力により破壊は免れるも、衝撃の余波が男に降り注いだ。
「ぐぅううう!!!(LP4000→1000)」
なんとか耐えきり、男は安堵する。しかし、直後に自身のライフポイントを見て怪訝な顔をした。
「な、何故だ!?何故、こんなにライフポイントが減っている!?《大牛鬼》の守備力は2100、だったら900のダメージじゃねぇのか!?」
男は自分フィールドのモンスターのステータスを見て、困惑した。
「守備力、0だとぉ!!?何故だ!!てめぇ、一体何をした!?」
キジマは笑って答える。
「攻撃の瞬間、《D=Mーリポスト・ダガー》の効果が発動していたのさ。《D=Mーリポスト・ダガー》は、自分フィールドの「D=M」が相手の守備表示モンスターと戦闘を行う場合、相手の守備力を0にする・・・!!」
「な、なんだそれは!!」
ニヤリ顔でキジマは言葉を付け足した。
「おっと、忘れんなよ?《D=Mーギガテクス・バルムンク》はこのターン、もう1回攻撃できるんだぜ?」
「あ!!」
捕食者はもう一方の腕を振りかざした。牛の悪魔は冷や汗を垂らし、それを見上げる。
「チェックメイトだ。もう二度と来んなよ、盗賊共が。」
耳を劈く咆哮を上げ、捕食者は刃を振り下ろした。
「ば、馬鹿なぁぁぁあああぁぁ!!!(LP1000→0)」
衝撃と爆風に男達は吹き飛ばされた。
『勝者:キジマ・ナオト』
「あ、兄貴!!大丈夫か!!」
背の低い男は、倒れ込んだ男に駆け寄る。
「くっ、弟よ!こいつは相当ヤバい奴だ!!逃げるぞ!!」
直ぐさま立ち上がった男は、相方を連れ一目散に逃げ出した。
その後ろ姿を見ながらキジマは溜め息を付く。
「ったく、こんな世の中で盗賊なんかやりやがって。もっと、助け合って生きろっての。」
リンカは一歩前に出るとキジマに声を掛けた。
「キジマ、お前の実力見せて貰った。どうやら、心強い仲間ができたようだな。」
「そうかい?いやぁ、こう可愛い娘に褒められると中々嬉しいもんだな。」
その時、家の扉が開き、マーナが頬を膨らませて出て来た。
「ナオト兄ちゃん!!」
キジマは笑って言う。
「はっはっは!冗談だよ、冗談!そう怒んなって!」
笑い声の中、カケルが思いついたように口を開く。
「あっ!そうだ、さっきの奴らになんか聞とけばよかった!もしかしたら、マサカー関連の情報を持ってたかも・・・!」
それを聞いたキジマはハッとして、ジェットバイクの方へと走った。
「カケル、ナイス!ちょっくら追いかけて来るわ!!」
エンジンを入れ、ジェットバイクは急発進した。吐き出された黒い煙が辺りの空中を汚す。
「けほっ、けほっ。ひどいな・・・。」
リンカのぼやきに、マーナが呆れたように言う。
「全く、ナオト兄ちゃん、あのポンコツ捨ててって言っても、全然聞かないんだよ!『まだまだ乗れる!!』って!」
「ぽ、ポンコツって・・・マーナちゃん辛辣・・・。」
カケルは思わず苦笑いをした。
数分後、キジマは相変わらず黒い煙を吐くジェットバイクに乗ったまま、こちらへと戻って来た。
「で、どうだった?」
詰め寄るカケルにキジマは笑う。
「いやぁ、なんか良さそうな情報持ってたぜ、奴ら。」
「本当か!?それはなんだ!」
逸るカケルとリンカに、キジマは告げる。
「奴ら曰く、『ペンデュラム召喚らしき戦法を使うデュエリストを、「赤の教会」で見た』だってよ。」
「赤の教会?どこだ、それ。」
疑問を浮かべたカケルに、キジマは一枚の紙切れを差し出した。
「これを奴らに書いて貰った。単純な地図っつーか、まぁほとんど方角だけだな。ここから西南のずっと奥って書いてあるぜ。」
「ならば、早速!」
そのままの身で歩き出そうとしたリンカの肩を、キジマが掴んで止める。
「まぁ、待てって。これから旅に出るって事だろ。色々、準備しなくちゃな。」
「マーナも行く!」
飛び付いてきたマーナを、キジマは優しく撫でた。
「もちろんだ。マーナを一人置いて行く訳ないだろ?いざという時は、俺達が守ってやる。」
「私だって、もう戦えるもん!」
二人から太陽へと視線を移したカケルは、その輝きに目を細め、一人呟いた。
「・・・新たな出発か。待ってろよ、ユーガ。必ず、助けるから。」
次回 第13話「邪悪な賢者」
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57 | 01:生き残った戦士 | 1116 | 3 | 2016-01-26 | - | |
80 | 02:デッド・オア・アライブ | 1117 | 3 | 2016-01-27 | - | |
62 | 03:賞金稼ぎ・カケル | 1033 | 2 | 2016-01-28 | - | |
64 | 04:ゴミ溜めの地下街 | 1018 | 2 | 2016-02-02 | - | |
98 | 05:別次元の力 | 988 | 3 | 2016-02-03 | - | |
90 | 06:その時、何が起こったのか。 | 1009 | 3 | 2016-02-05 | - | |
73 | 07:レジスタンスの男 | 991 | 3 | 2016-02-08 | - | |
82 | 08:悪夢の爪 | 1149 | 4 | 2016-02-12 | - | |
93 | 09:純粋なる悪意 | 1032 | 3 | 2016-02-13 | - | |
112 | 10:過ち | 1092 | 3 | 2016-02-16 | - | |
112 | 11:分断された仲間たち | 927 | 2 | 2016-02-21 | - | |
100 | 12:新たなる出発 | 1123 | 2 | 2016-02-23 | - | |
116 | 13:邪悪な賢者 | 1005 | 2 | 2016-03-06 | - | |
126 | 14:忘却都市と生存兵 | 1171 | 4 | 2016-03-07 | - | |
96 | 15:悲しみの追憶 | 1040 | 2 | 2016-03-09 | - | |
154 | 16:強襲する黒羽 | 1155 | 2 | 2016-05-24 | - | |
88 | 17:第2の村 | 911 | 2 | 2016-05-25 | - | |
103 | EX:キャラ・設定まとめ※情報随時更新中 | 1053 | 0 | 2016-05-26 | - | |
100 | 18:月華の黒薔薇 | 1070 | 3 | 2016-05-27 | - | |
101 | 19:清潔を手に入れろ! | 1025 | 2 | 2016-05-30 | - | |
110 | 20:戦いは湯煙の中で | 1002 | 2 | 2016-06-01 | - | |
115 | 21:罠を越えた先に | 1027 | 2 | 2016-06-02 | - | |
116 | 22:渦巻くは、黒い欲望 | 944 | 2 | 2016-06-03 | - | |
61 | 23:極限のドロップ・ドロー・前編 | 912 | 2 | 2016-06-07 | - | |
94 | 24:極限のドロップ・ドロー・後編 | 968 | 2 | 2016-06-07 | - | |
85 | 25:秘められた殺意(ちから) | 964 | 2 | 2016-06-09 | - | |
73 | 26:闇の甲冑 VS 呪痕の牙 | 856 | 2 | 2016-06-10 | - | |
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オリカ投稿のD=Mを実際に回すとこんな感じになるのか。
さて、次回はとんでもないボスキャラの予感が。 (2016-02-24 10:38)
D=Mはどこかで使わせたいなーと思っていたので、いい機会でした。戦闘特化だけあってワンキル率高めかもしれませんね。
次回は、教会、そして祭壇とあって、ようやくあの人物が顔を出す・・・かもしれません。
(2016-02-24 14:28)