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HOME > 遊戯王SS一覧 > 08:悪夢の爪

08:悪夢の爪 作:ほーがん

第8話「悪夢の爪」



「ん?あの人、どこへ行くんだ?」

試合直前だと言うのに闘技場の出口から姿を消したその人物を見たカケルは、思わず後を追いかけた。




闘技場、ステージの上。リンカは一歩前に出た。

「先攻は貰う、私のターン!私は《強化恐竜トキシック・ヴェロキ(☆4/闇/恐竜/1800・1400)》を召喚!」

毒の牙と爪を持ったハンターが、軽快な動きで場に躍り出る。

「さらに手札のモンスター《強化恐竜センシング・パラサウロ(☆4/闇/恐竜/1300・1900)》の効果!このモンスターは自分フィールドに「強化恐竜」が存在する場合、手札から特殊召喚できる!」

背中にレーダーを背負った恐竜が、特徴的なトサカからホーンを鳴らし出現した。

『おおっと、リンカちゃんはどうやら恐竜使いのようだ!さぁ、ここからどんな展開を見せてくれるのか!?』

煽る実況。それに応えるようにリンカは叫ぶ。

「ふっ、私はレベル4の《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》と《強化恐竜センシング・パラサウロ》でオーバーレイ!!」

2体の恐竜は眩い光の渦へと飛び込んだ。

「無数の棘を持つ魔物よ!永劫なる刻の流れを遡り、この現世に顕現せよ!!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4《超強化恐竜フィアードスパイク・ケントロー(★4/闇/恐竜/エクシーズ/2300・1000)》!!」

身体中に鋭い棘を持つ剣竜は咆哮と共に出現し、フィールドを踏みしめる。

『来たーッ!リンカちゃん、1ターン目からのエクシーズ召喚!!これは期待できそうか!?』

実況の声に観客がざわつく。

「へぇ、あのアマ、エクシーズを使うのか。」

「けどよ、ボガードの敵じゃねぇだろ。」

リンカは手札のカードを取り出す。

「私はカードを1枚セットして、ターンエンド!」


ターンが回る。対戦相手の男、ボガードは高笑いしながら言った。

「ふははは!その程度か、クソアマ!たかが1体のエクシーズ召喚でいい気になるなよ!てめぇなんざ、俺様のデュエルでぶっ壊してやる!!ドロー!!」

ボガードは引いたカードを確認すると、別のカードを手札から取り出した。

「俺は手札から《XXーセイバー ボガーナイト(☆4/地/獣戦士/1900・1000)》を召喚!」

光る剣を持った獣戦士が赤いマントを翻しながら、ボガードの前に降り立つ。

「この瞬間、《XXーセイバー ボガーナイト》の効果発動!このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「Xーセイバー」1体を特殊召喚できる!!俺はチューナーモンスター《N(ネクスト)Xーセイバー ドレッドバスター(☆3/地/戦士/チューナー/1500・300)》を特殊召喚だぁ!!」

真紅のスカーフを巻き、二振りの短剣を携えた戦士が仲間の隣に並んだ。

『これでボガードの場にチューナーとそれ以外のモンスターが揃ったぁ!!狙うはシンクロ召喚か!?』

実況の言葉に対し、ボガードは得意げに叫ぶ。

「へっ、まだだぜ!!このカードは自分の場に2体以上の「Xーセイバー」が存在する場合、手札から特殊召喚できる!!現れろ、《XXーセイバー フォルトロール(☆6/地/戦士/特殊召喚/2400・1800)》!!」

大剣を振るい、大柄の戦士が地響きを鳴らしフィールドに出現する。

「出たぜ、ボガードの大量展開パターンだ!!」

「行けぇぇボガード!!ぶっ壊せぇぇ!!」

会場が沸く。ボガードはその声に応えるように言い放った。

「さぁ見ていろアマ!!俺はレベル4の《XXーセイバー ボガーナイト》にレベル3の《NXーセイバー ドレッドバスター》をチューニング!!」

飛び上がった獣戦士の身体を光の輪が包む。

「残虐なるその刃で、希望の幕を引き裂き鮮血のステージを生み出せ!!シンクロ召喚!!現れろ、レベル7!!《NXーセイバー プラウドマンティス(☆7/地/昆虫/シンクロ/2600・1200)》!!」

現れたのは4つの腕と刃を持つ巨大なカマキリ。鮮血のような紅に染まったマントをはためかせ、フィールドに舞い降りた。

「攻撃力2600・・・」

リンカはその巨大なカマキリを見上げ、呟く。

『出たーッ!ボガードお得意のシンクロ召喚だぁッ!!だが、奴はこれで終わる気は無さそうだぞーッ!?』

またしても煽る実況。ボガードは笑う。

「その通り!!まだまだ終わらねぇぞ、アマ!!俺は《XXーセイバー フォルトロール》の効果発動!!1ターンに1度、墓地からレベル4以下の「Xーセイバー」を特殊召喚できる!!蘇れ、《NXーセイバー ドレッドバスター》!!」

その言葉と同時に、ボガードの墓地より赤いスカーフの戦士が飛び出す。

「さぁ、いよいよ俺様の切り札の登場だぁッ!!」

叫んだボガード。観客から一斉に歓声が上がる。

「行くぜぇ!!俺はレベル6の《XXーセイバー フォルトロール》にレベル3の《NXーセイバー ドレッドバスター》をチューニング!!」

大柄の戦士はその場で踏ん張ると、勢いよく飛び上がった。その巨体を光の輪となった仲間が包む。


「白金の鎧輝かせ、抗う全てをその手で砕け!!シンクロ召喚!!」

眩い閃光の中から、そのモンスターは姿を現す。


「出でよ!!レベル9!!《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー(☆9/地/獣戦士/シンクロ/3100・2600)》!!」


両刃の大剣を二本携え、騎士団の団長は新たな姿で復活を遂げた。

「今度は攻撃力3100か・・・」

リンカの握る拳に汗が滲む。

「どうだぁ!!これが俺様の切り札よ!!シンクロ召喚に成功した事で《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》の効果発動だ!!」

ボガードはリンカの場を指差した。

「このカードのシンクロ召喚に成功した時、シンクロ素材とした「Xーセイバー」の数まで、相手フィールドのカードを破壊できる!!」

「何だと?」

眉を寄せるリンカ。ボガードは卑しい笑みを浮かべて言う。

「俺が素材にした「Xーセイバー」は2体!よって、クソアマのカードを2枚破壊するぜ!!」

騎士は大剣を振るい、衝撃波をリンカの場に撃ち放った。

「くっ、《超強化恐竜フィアードスパイク・ケントロー》は戦闘・効果で破壊される場合、代わりにオーバーレイ・ユニットを1つ取り除く事ができる!」

光の球を吸収し、衝撃に耐えた剣竜。しかしボガードは構わずに続ける。

「だが、その伏せカードは破壊させてもらう!!」

リンカの場に伏せられていたカードが吹き飛ぶ。

「さらにだ!!《NXーセイバー プラウドマンティス》の効果発動!!1ターンに2度まで、自分フィールドに「Xーセイバー」シンクロモンスターがシンクロ召喚された場合に、デッキからレベル4以下の「Xーセイバー」を特殊召喚できる!!」

その言葉と同時に、ボガードのデッキからカードが迫り出す。

「来い!!《Xーセイバー エアベルン(☆3/地/獣/チューナー/1600・200)》!!」

鋭い鉤爪を備えた獣が唸り声を上げ、フィールドに並ぶ。

「そして、墓地の《NXーセイバー ドレッドバスター》の効果発動!!このカードを墓地から除外する事で、墓地の「Xーセイバー」1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる!!」

ボガードの墓地が怪しく光る。リンカは思わず溜め息を付いた。

「ここまでやって、まだ続けるのか・・・」

そして、墓地から出たカードをボガードはディスクに叩き付けた。

「さぁ、蘇れ!!《XXーセイバー フォルトロール》!!」

再び、大剣を持った大柄の戦士はボガードの前に降り立った。

「復活した《XXーセイバー フォルトロール》の効果発動だ!!墓地より《XXーセイバー ボガーナイト》を特殊召喚!!」

墓地より蘇った獣戦士。これでボガードの場にモンスターが埋まった。

「おい、アマ!!てめぇのモンスターは、オーバーレイ・ユニットを使う事で破壊を免れる効果があるんだよなぁ?」

「それがどうした。」

睨むリンカをボガードは笑う。

「だったらよぉ・・・オーバーレイ・ユニットで肩代わりできなくなるまで、続けるだけだよなぁ!?俺はレベル6の《XXーセイバー フォルトロール》にレベル3の《Xーセイバー エアベルン》をチューニング!!」

その言葉にリンカは驚きの声を上げる。

「こいつ、まさか・・・!?」

輝く光の輪から、その戦士はまたしても現れた。

「さぁ来い、2体目ぇ!!《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》!!」

同じモンスターがボガードの場に並ぶ。それと同時に騎士は大剣を振るった。

「効果でクソアマのカードを破壊だぁ!!」

先刻と同じ衝撃がリンカの場を襲う。

「《超強化恐竜フィアードスパイク・ケントロー》のオーバーレイ・ユニットを取り除き、破壊を無効にする!」

今一度、衝撃に耐える剣竜。しかし、これで剣竜の持つ光の球は無くなった。

「あーあ。ボガードの奴、マジでぶっ壊す気だな。」

「やっちまえボガード!!常識知らずの女にこの街のルールってのを教えてやれ!!」

観客の声に応えるようにボガードは言い放つ。

「おい、アマ!この街ではな、女なんて言う脆弱な生物は男にすがって生きて行くしかねぇんだよ!!その身がぶっ壊れるまで、男のおもちゃとしてな!!」

それを聞き、リンカは呆れた顔をする。

「・・最近同じような台詞を聞いたな。」

ボガードは叫んだ。

「てめぇは今ここで、俺様のおもちゃとしてぶっ壊れてもらうぜ!!《NXーセイバー プラウドマンティス》の効果発動だ!!デッキからレベル4以下の「Xーセイバー」を特殊召喚する!!現れろ、チューナーモンスター《NXーセイバー ソウルブレード(☆1/地/機械/チューナー/100・100)》!!」

ボガードの場に光の刃を持つ剣が出現する。

「この瞬間、《NXーセイバー ソウルブレード》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分フィールドの他の「Xーセイバー」の数だけ自身のレベルを上げる事ができる!俺の場には他に4体の「Xーセイバー」が存在する!!よって、《NXーセイバー ソウルブレード》のレベルは4つ上がる!!(☆1→☆5)」

光の剣はその刀身に星を宿し力を高めた。

「ラストだぁ!!俺はレベル4の《XXーセイバー ボガーナイト》にレベル5の《NXーセイバー ソウルブレード》をチューニング!!」

ボガードの場に浮かぶ光を輪を、リンカはぼけっと見つめた。

「(長いな・・・。)」


「3体目ぇ!!《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》!!」

同じ姿をしたモンスターが、ボガードの場に並ぶ。

「どうだぁ!!もう防げねぇだろ!!大人しく破壊されろ!!」

ボガードの声に合わせ、騎士は剣を振り下ろした。

「・・・これで私の《超強化恐竜フィアードスパイク・ケントロー》は破壊される。」

剣竜はついに耐えきれず、衝撃波に砕け散った。

『これでボガードの場には攻撃力3100のモンスターが3体!!対してリンカちゃんのフィールドはガラ空きだぁ!!これは10倍の配当金、諦めるも止む無しか!!?』

実況の声に観客から叫びが上がる。

「行けぇボガード!!ぶっ壊せ!!」

「ぶっ壊せ!!」

「ぶっ壊せ!!」

「ぶっ壊せ!!」

観客の声はいつしか一つとなり、闘技場全体を揺らすかのように響き渡った。

「(リンカ・・・)」

陰から見守っていたユーガは、思わずデュエルディスクを構える。

「ぶっ壊してやるぜクソアマ、バトルだぁ!!叩き切れ《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》!!!」

騎士は剣を構え、リンカの前へと飛び出した。その刃が眼前へと迫る。

その時、リンカは溜め息混じりに言った。

「はぁ・・・私は墓地の罠カード、《化石防壁》を発動。」

リンカの場にカードが表示され、騎士の動きが止まる。

「このカードを墓地から除外する事で、墓地の恐竜族1体につき、相手フィールドのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイント下げる。」

リンカは墓地のカードをボガードに見せつけた。

「私の墓地の恐竜族は3体。よって貴様のモンスターの攻撃力は3000ダウンする。」

それを聞き、観客の掛け声が止まる。ボガードは驚愕した。

「な、なんだと!?そのカードはさっき破壊した・・・!!」

ボガードのモンスターは見る見る内に力を失ってゆく。

「これで貴様の《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》の攻撃力は100、《NXーセイバー プラウドマンティス》の攻撃力は0だ。」

ボガードは歯を食いしばった。その隙間から唸り声が漏れる。

「ヴヴゥゥ・・てめぇ・・・」

「どうした、早く私をぶっ壊してみろ。」

リンカは笑いながらボガードに言う。ボガードは苦い顔をしながら、リンカを指差した。

「・・・俺は《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》3体でダイレクトアタック・・・」

3体の騎士はよろけながら歩き、なんとかリンカの前に辿り着くと弱々しく小突いた。

「ふん・・・。(LP4000→3700)」

その攻撃を鼻で笑うリンカ。予想外の展開に会場がざわつく。

「おいおい、ボガードの猛攻をあっさり躱しちまったぞ。」

「女のくせにやるじゃねぇか。」

ボガードは唸りながら言った。

「けっ!所詮、女は女だ。どうせ何も出来やしない。このターンの終わりに俺のモンスターの攻撃力は元に戻るからな!」

「言いたい事は終わったか?」

リンカの言葉にボガードは荒々しく言った。

「けっ、次だ!!次のターンで必ず仕留めてやる!!ターンエンド!!」


『さぁ、まさかの防御でボガードの攻撃を凌いだリンカちゃん!!しかし、相手のフィールドには依然、3100と2600の攻撃力を持つモンスターが!!ここから逆転できるのかぁ!?』

リンカはデッキに手を伸ばした。

「私は何時だって、逆境を凌ぎ、喰らい付いて生きてきた・・・太古の恐竜達のように!!この程度のピンチなど、蹴散らしてくれる!!私のターン、ドロー!!」

引いたカードを見たリンカはニヤリと笑う。

「私は手札から《強化恐竜サルベージ・エラスモー(☆4/闇/恐竜/1500・1500)》を召喚!」

背中にサルベージクレーンを背負った首長竜が水しぶきを上げ、リンカの前に現れる。

「《強化恐竜サルベージ・エラスモー》の効果発動!このカードの召喚に成功した時、墓地の「強化恐竜」1体を特殊召喚できる!蘇れ、《強化恐竜センシング・パラサウロ》!!」

首長竜はクレーンを降ろすと、墓地より仲間の恐竜を釣り上げた。

「そして、魔法カード《遺伝子の残骸》を発動!!墓地の恐竜族モンスターを効果を無効にして特殊召喚する!!戻って来い、《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》!!」

毒爪のハンターは金切り声の咆哮と共に復活する。

「へっ、そんな雑魚を並べた所で・・・!」

ボガードの言葉にリンカは透かさず返した。

「私のデッキに雑魚などいない!この仲間達と共に、私は荒れ果てた世界を生き抜いてきた!!その生命力、身をもって知れ!!私はレベル4の《強化恐竜サルベージ・エラスモー》《強化恐竜センシング・パラサウロ》《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》でオーバーレイ!!」

その叫びに呼応するように、3体の恐竜は光の渦へ飛び込む。


「悪夢の爪を携えし魔物よ!我が魂と共に生き、この世界を闊歩せよ!!エクシーズ召喚!!」


薄暗い闘技場に、その鋭利な爪が光る。


「現れろおぉぉ!!ランク4!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン(★4/闇/恐竜/エクシーズ/3000・1500)》!!!」


恐獣はフィールドに怒号を響かせ、姿を現した。揺らめく残像を引き連れ、その爪が怪しく輝く。

「(杞憂だったか・・・。)」

ユーガはリンカの様子を見ると小さく笑い、ディスクを仕舞い込んだ。

『ここでリンカちゃん、新たなエクシーズモンスターを召喚だぁぁ!!』

実況の声と共に、会場のざわつきが大きくなってゆく。

「私は《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》の効果を発動!!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、相手フィールドのモンスターの数だけ攻撃回数を増やす!!」

光の球を吸収した恐獣はその力を解放した。

「貴様のモンスターは4体!よって《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》は5回の攻撃が可能となる!!」

ボガードは笑って口を開く。

「へっ、女は計算もできねぇのか!!?クソアマ、てめぇのモンスターの攻撃力は3000!!《NXーセイバー プラウドマンティス》は倒せても、《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》は倒せねぇ!!どっちにしろ、てめぇの不利に変わりはねぇんだよ!!」

とうとうしびれを切らしたリンカは叫んだ。

「アマ、アマとそれしか言えないのか貴様は!!今止めを刺すから、黙って見ていろ!!!」

その形相に、ボガードは思わず萎縮する。リンカは鼻を鳴らすと、ボガードのモンスターを指差した。

「ふん、バトルだ!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》で《NXーセイバー ガトムズ・ディバイダー》共を攻撃!!」

咆哮を上げると、恐獣は両手の鉤爪を掲げて走り出した。

「そして、この瞬間オーバーレイ・ユニットになっている《強化恐竜センシング・パラサウロ》の効果発動!!このカードを素材にエクシーズ召喚したモンスターが、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを攻撃する時、その相手モンスターの攻撃力を0にする!!!」

ボガードのモンスター達はまたしても力を失い、その場にへたり込んでしまう。

「ば、馬鹿な!!俺様のモンスターが・・・!!」

「砕け!!『デッドリィ・ダイノエッジ』!!!」

リンカの叫びと同時に、恐獣は爪を振り下ろした。その斬撃は騎士の甲冑を切り裂き、巨大なカマキリの刃をも砕いた。


「この、この俺様が、こんなクソアマにぃぃいいい!!!(LP4000→0)」


斬撃の余波はボガードを襲い、その巨体をステージの端まで吹き飛ばした。



『勝者:リンカ』



静寂。誰もが予想だにしなかった結果に、会場は困惑し静まり返っていた。

『か、勝ったのは・・・謎の美少女、リンカちゃんだぁぁぁあああ!!!』

実況の声が会場に谺する。観客からふつふつとわき上がる声は、やがて大きな歓声に変わった。

「すげぇぇええ!!あのボガードを倒しちまった!!!」

「やるじゃねぇか、リンカちゃんよぉぉおおお!!!」

「かっこよかったぜぇぇ!!!」

喝采。リンカの勝利は、この闘技場に大きな衝撃を与えていた。

ステージから降りたリンカは、下に居たユーガに気付いた。

「そこで見ていたのか。」

「ああ。いざという時の為にな。まぁ、その必要もなかった訳だが。」

小さく微笑み、ディスクを構える仕草をしたユーガを見て、リンカは眉間にしわを寄せる。

「私があんな男に負ける訳ないだろう。」

「・・・」

リンカはユーガの横を通り過ぎ、歩き去ろうとした。しかし、途中で足を止めると小さく言葉を付け足す。

「・・・だが、次の私の試合があったら、またそこで見ていろ。」

「・・ああ。」

ユーガの返答を聞き、リンカは再び歩き出した。

『さぁ、次の試合に移るとしようか!!次の試合は、さすらいの旅人ユーガ VS 謎の参加者、”仮面の男”だ!!野郎共、掛け金の準備を頼むぜ!!』

実況の声を聞き、ユーガは足を動かした。

「さて、次は俺の番か。」






一人、会場を出たカケルは。

「おーい、ジェイミーさん!そんなとこで何やってるんだ?もうリンカの試合始まってるぜ?」

前方に見えたジェイミーにカケルは声を掛けた。しかし、その瞬間。ジェイミーの手に握られていたものを見て、カケルは硬直する。


「・・・半分モンスターで半分魔法・・・あれって・・・!!」





次回 第9話「純粋なる悪意」
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ター坊
超余裕を見せて勝つリンカちゃん、もうポンコツとは呼べそうにないかも。それに「またそこで見ていろ」と軽くデレ(?)も見せてくれました。 (2016-02-12 07:54)
ギガプラント
長い!刃君だってここまで長くはなかったw
しかしそれをなんなく倒しちゃうリンカちゃん流石です。 (2016-02-12 09:31)
ほーがん
>ター坊さん
なんだかんだで、リンカは仲間思いなのでユーガの事はかなり信用しています。今回はちょっとデレの部分を書いてみました。可愛く書けましたかね?
>ギガプラントさん
ソリティアというものの描写に挑戦してみましたが、中々難しいですね。結構雑になってしまったので、次回はもうちょっと細かく描写できたらいいなと思います。 (2016-02-12 23:46)
ほーがん
ター坊さん、ギガプラントさんコメントありがとうございました。 (2016-02-12 23:47)

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