交流(共通)
メインメニュー
クリエイトメニュー
- 遊戯王デッキメーカー
- 遊戯王オリカメーカー
- 遊戯王オリカ掲示板
- 遊戯王オリカカテゴリ一覧
- 遊戯王SS投稿
- 遊戯王SS一覧
- 遊戯王川柳メーカー
- 遊戯王川柳一覧
- 遊戯王ボケメーカー
- 遊戯王ボケ一覧
- 遊戯王イラスト・漫画
その他
遊戯王ランキング
注目カードランクング
カード種類 最強カードランキング
● 通常モンスター
● 効果モンスター
● 融合モンスター
● 儀式モンスター
● シンクロモンスター
● エクシーズモンスター
● スピリットモンスター
● ユニオンモンスター
● デュアルモンスター
● チューナーモンスター
● トゥーンモンスター
● ペンデュラムモンスター
● リンクモンスター
● リバースモンスター
● 通常魔法
永続魔法
装備魔法
速攻魔法
フィールド魔法
儀式魔法
● 通常罠
永続罠
カウンター罠
種族 最強モンスターランキング
● 悪魔族
● アンデット族
● 雷族
● 海竜族
● 岩石族
● 機械族
● 恐竜族
● 獣族
● 幻神獣族
● 昆虫族
● サイキック族
● 魚族
● 植物族
● 獣戦士族
● 戦士族
● 天使族
● 鳥獣族
● ドラゴン族
● 爬虫類族
● 炎族
● 魔法使い族
● 水族
● 創造神族
● 幻竜族
● サイバース族
● 幻想魔族
属性 最強モンスターランキング
レベル別最強モンスターランキング
レベル1最強モンスター
レベル2最強モンスター
レベル3最強モンスター
レベル4最強モンスター
レベル5最強モンスター
レベル6最強モンスター
レベル7最強モンスター
レベル8最強モンスター
レベル9最強モンスター
レベル10最強モンスター
レベル11最強モンスター
レベル12最強モンスター
デッキランキング
20:戦いは湯煙の中で 作:ほーがん
第20話「戦いは湯煙の中で」
睨み合うリンカとレイ。そしてタオルを抑えあたふたするクリスと、下を向いてどぎまぎするカケル。そんな中、先に動いたのはリンカだった。
「先攻は貰う!私のターン!手札から《強化恐竜ホイール・メガロ(☆4/闇/恐竜/1100・1100)》を特殊召喚!」
湯煙の中、轟音を引き連れ車輪の両足を持つ肉食獣が出現する。
「こいつは自分のフィールドにモンスターが存在しない時、手札から特殊召喚できる!さらに、《強化恐竜トキシック・ヴェロキ(☆4/闇/恐竜/1800・1400)》を召喚!」
もう一体の肉食獣が毒の鉤爪を光らせ、軽快に躍り出た。そして、その2体を指差し、リンカは叫ぶ。
「私はレベル4の《強化恐竜ホイール・メガロ》と《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》でオーバーレイ!!」
閃光の渦が広がり、2体の恐竜が飛び込んだ。
「絶対零度の大地より、その牙を振るい刻の流れを噛み砕け!!エクシーズ召喚!!来い、ランク4!《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ(★4/闇/恐竜/エクシーズ/2400・900)》!!」
浴場の床を踏み砕くように現れたのは、全身を氷の鎧に包んだ巨大な恐獣の姿。その咆哮が谺し、空間全体を揺さぶる。
「ほう、エクシーズ召喚か。面白い。」
恐獣を見上げ、不敵に笑うレイ。リンカはさらに手札にカードを取り出し、ディスクに叩き付ける。
「私は装備魔法、《遺伝子覚醒薬》を発動!これを《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》に装備する!これを装備したモンスターは相手の効果の対象にならず、攻撃力が600アップする!(ATK2400→3000)」
覚醒の力を与えられた恐獣は、再び咆哮を上げるとその能力を高めた。
「いきなり攻撃力3000のモンスター。なかなか、侮れないわね。」
息を飲むクリス。リンカはレイを指差し言った。
「私はこれでターンエンド!さぁ、次はお前のターンだ!」
デッキに手を伸ばし、レイは口を開いた。
「ふっ、戦士の戦いをその目に焼き付けるがいい!!私のターン、ドロー!!」
そして、身を振りかぶり、勢いよく引かれるカード。その瞬間、衝撃で身体に巻かれていたタオルが緩む。
「ちょ、ちょっと、レイ!タオル、タオル!」
「ん?タオル?」
一瞬、レイの素肌が露になるが、クリスがなんとか横からタオルを押さえ込んだ。そして、カケルの方を睨み、声を荒げる。
「見た!?」
「え、い、いや、見てねぇ!見てません!」
変わらぬ調子で顔を伏せるカケルが弁明する。その様子にリンカが苦言を呈した。
「おい、カケル!しっかりしろ!」
「わ、悪りぃ・・・。」
タオルを巻き直したレイは得意げに言う。
「私も自分の身体には自信のある方だ!男なら緊張するのも無理はない!だが、戦いの中ではそれが命取りになると知れ!私は手札から、《V・B(ヴィラン・ボッツ)ブラスト・ウェーブ(☆4/闇/機械/1900・1700)》を召喚!」
レイのフィールドに、銃の片腕を持つ悪のロボットが出現する。
「ヴィラン・ボッツ?カケルのブレイバーと似ているな・・・。」
その姿を見たリンカが呟く。レイは笑って言った。
「これこそが、闇夜に輝くダークヒーローの姿だ!《V・Bブラスト・ウェーブ》の効果発動!このターン、このカードの攻撃権を破棄する事で相手に400ダメージを与える!喰らえ、『ショック・ヴァイス』!!」
ロボットは左腕の銃口をリンカに向けると、エネルギー弾を放った。
「くっ!!この程度!!(LP4000→3600)」
エネルギー弾が残した煙を振り払い、リンカは歯を食いしばる。カケルは少し顔を上げると、そのロボットの姿を確認した。
「・・・おお!かっけぇな、あんたのモンスター!」
思わず興奮したカケルは顔を思い切り上げた。その瞬間、クリスが叫ぶ。
「あ!こっち見た!変態男!」
「ああ、ごめんなさい!」
慌てるカケルに、レイは笑って言う。
「はははっ!私のモンスターの魅力が分かるとは、なかなか見る目があるな!なら、もっと格好良いものを見せてやろう!このカードでな!」
そう口にしながら、取り出された1枚のカード。そのカードが表示されると、リンカは目を丸くした。
「魔法カード、《改造融合(カスタマイズ・フュージョン)》!!」
「何っ!?融合だと!?」
レイは、さらに手札をカードを取り出し、リンカ達に見せつけた。
「私はこのカードにより、手札の《V・A(ヴィランズ・アタッチメント)ブリッツ・ショッカー(☆4/闇/機械/ユニオン/0・2000)》と《V・Bブラスト・ウェーブ》を融合する!!」
飛び出した黒き高速巡洋艦が、変形を開始し、悪のロボットを包み込んで行く。
「闇夜に揺らめく狙撃手よ!星間を進む巨船よ!銀河の荒波をかき分け、怒濤の破壊者となれ!!改造融合!!浮上せよ、レベル7!!《V・B(ヴィランズ・ベルセルク)タイダル・ガンナー(☆7/闇/機械/融合/2700・2500)》!!」
無数の砲塔を内蔵した巨大ロボットと化したダークヒーローは、溢れんばかりのエネルギーを関節の隙間から光らせながら、フィールドを威圧した。
「で、でかい・・・!!」
思わずたじろぐリンカ。レイは高らかに宣言する。
「ふっははは!私は《V・Bタイダル・ガンナー》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊する!!『アルティメット・ディザスター』!!!」
巨大兵器は全身の砲塔を展開すると、四方に向けてエネルギー波を撃ち放った。だが、それと同時にリンカが叫ぶ。
「私は《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、相手の特殊召喚されたモンスター1体の効果をターン終了まで無効にする!」
恐獣の放った冷気に、巨大兵器の動きが停まる。不服そうにレイは顔を歪ませた。
「ちっ、まぁいい。戦いはまだ始まったばかりだからな!私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」
動かないカケルに対し、リンカは声を掛ける。
「おい、カケル!お前のターンだぞ!」
「・・・あ、そ、そっか!俺のターンか!ドロー!」
急いでカードを引くカケル。そして、浴場の床を見つめながら溜め息を付く。
「はぁ・・・参ったぜ。裸の女の子相手にデュエルだなんて・・・目のやり場に困って仕方ねぇよ。」
「ちょっと!変な事考えないでよね!」
クリスの忠告を聞き、カケルはさらに溜め息を付いた。
「俺は・・・モンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンドだ。」
「カケル!何故だ!?」
その行動にリンカが声を荒げる。
「え、何故って、何が?」
「私の場には攻撃力3000の《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》が居る!攻撃力2700の《V・Bタイダル・ガンナー》に攻撃すれば破壊できたんだぞ!」
カケルはガックリと肩を落とした。
「ああ、そうか。タッグデュエルだから味方のモンスターも使えるのか。すまねぇ。」
「ふふふ、どうやらその男は私達の姿に惑わされて、まともな判断もできないスケベ野郎らしいわね。」
クスクスと笑うクリスを、リンカは睨みつけた。
「私の仲間を馬鹿にするな!!」
「うっ・・・そ、そんなに怒らなくても・・・。まぁ、いいわ。私のターン!ドロー・・・っと。」
ディスクを填めた腕でタオルを抑えながら、クリスはゆっくりとカードを引いた。レイはクリスに向かって言う。
「クリス、私のモンスターを使え!」
「ええ、そうさせて貰うわ、レイ!私は《V・Bタイダル・ガンナー》の効果発動!1ターンに1度、手札を3枚まで墓地に送ることで、相手にその数×500ダメージを与える!私は手札を3枚墓地へ!」
取り出した手札をクリスは墓地へ送り込む。それに反応し、巨大兵器の砲塔が伸びてゆく。
「なっ・・・!3×500、合計1500のダメージだと・・・!」
苦虫を噛み潰したような表情で、リンカは砲塔の奥に輝くエネルギーを見つめる。
「喰らいなさい!『スパイラル・ディスペアー』!!!」
そして、螺旋状に放たれるエネルギー弾。その一撃はリンカとカケルを吹き飛ばした。
「うわあああっ!!!(LP3600→2100)」
倒れ込んだリンカはなんとか体制を立て直し、立ち上がる。そして、カケルに向かって手を伸ばすと言った。
「ぼうっとするな。立て、カケル。」
「・・・ああ、悪いな、リンカ・・・。」
その手を取り、カケルは床に足を付ける。その様子を見たレイは高笑いした。
「ふははは!今のは効いただだろう!長く苦しませるのは趣味じゃない、さっさと止めを刺してやろう!クリス!」
「ええ、そうね!私は墓地の《V・G(ヴィランズ・ガール)リンリン(☆3/闇/戦士/1400・300)》の効果発動!このカードが「ヴィラン」モンスターの効果を発動する為に、手札から墓地に送られた場合、このカードを特殊召喚する!!」
クリスの墓地が光り、その中から拳法家の姿をした中華娘が飛び出した。
「そして私は魔法カード《ヴィランズ・タッグスター》を発動!このカードの効果で、私は《V・Gリンリン》のレベルを《V・Bタイダル・ガンナー》と同じにする!(☆3→☆7)」
「レベル7のモンスターが2体・・・まさか!!」
自分がタオル1枚であることも忘れ、クリスは叫んだ。
「私はレベル7の《V・Bタイダル・ガンナー》と《V・Gリンリン》でオーバーレイ!!」
巨大兵器と拳法娘は光の帯となり、閃光の渦へ飛び込んだ。
「宵空を駆け抜ける妖艶の乙女よ!宇宙兵器の力を得て、地上最強の戦士となれ!!エクシーズ召喚!!出でよ、ランク7!!《V・G・B(ヴィランズ・ガール・ベルセルク)ジェノサイド・ブラスター(★7/闇/機械/エクシーズ/3200・3000)》!!」
巨大兵器の外装を身に纏った娘は、両腕のキャノンを振りかざし、二人の少女の前に降り立つ。
「融合モンスターを素材にエクシーズ召喚だと・・・!!それにこの攻撃力・・・この二人、一体何者だ・・・!?」
リンカの零した言葉に、ずり落ちたタオルを慌てて巻き直したクリスが答える。
「おっとと・・・ふん!言ったでしょ、私達は戦士だって!この程度、朝飯前よ!」
「そういうことだ!《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》の効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力を半分にする!!『アトミック・ハザード』!!」
クリスに続けてレイが叫ぶ。しかし、リンカも負けては居なかった。
「忘れたのか!!《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》の効果発動!オーバーレイ・ユニットを使い、特殊召喚されたモンスターの効果を無効にする!!」
再び、恐獣から暴風のような冷気が発生する。しかし、クリスは笑って言った。
「無駄よ!《ヴィランズ・タッグスター》の効果を受けたモンスターを素材にした《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》は、相手のモンスター効果を受けない!!」
「ちっ・・・私のモンスターが・・・!!(ATK3000→1500)」
力を半減され、恐獣はフィールドに膝を付いた。そして、間髪いれずクリスが叫ぶ。
「バトルよ!《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》で《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》を攻撃!!『デストロイ・テンペスト』!!!」
両腕のキャノンを合体させた巨大兵器は、その中心に組み込まれた娘が引いたトリガーにより、凄まじい光線を放った。一直線に向かう光は、恐獣の鎧を砕き、跡形も無く焼き尽くす。
「うぅううっ!!(LP2100→400)」
ダメージに悶え、リンカは膝を折った。心配したカケルが声を上げる。
「おい、リンカ!大丈夫か!」
「仲間の心配をしている余裕があるのかしら?私は《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》の効果発動!相手モンスターを戦闘破壊した時、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる!!」
クリスが狙ったのは、カケルのフィールド。
「私は《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》で、スケベ男の伏せモンスターを攻撃!!」
「なっ、お、俺のモンスターを!?けど、こいつは守備表示!ダメージは・・・」
言いかけたカケルを嘲るように、レイが口を開く。
「ダメージは無いとでも?甘いな!私達の《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》は守備モンスターを攻撃した時、相手に貫通ダメージを与える!!」
「なんだと!!」
もう一度、エネルギーの充填が始まる。そして、レイとクリスは声を合わせて叫んだ。
「「喰らえ!!『デストロイ・テンペスト』!!!」」
その時、カケルのモンスターがリバースし、正体が露になる。
「くっ、俺のモンスターは《I・Bマイデン(☆4/光/機械/1900・1500)》・・・!」
「ははぁ!!そのまま砕け散れぇえぇ!!!」
レイの笑いが谺する。迫りくる光線にカケルは目を瞑った。
だが、この状況で、まだ諦めぬ者が居た。
「・・・私は破壊された《遺伝子覚醒薬》の効果を発動!!このカードを装備したモンスターが戦闘で破壊されたターン、墓地のこのカードを除外する事で相手モンスター1体の攻撃力を半分にする!!」
刹那、力を奪われた巨大兵器のエネルギーが落ちる。クリスは驚愕した。
「そんな!私達のモンスターが・・・!(ATK3200→1600)」
紅蓮の勇者は攻撃に砕け散ったが、そのダメージは最小限に抑えられた。
「助かったのか・・・?(LP400→300)」
恐る恐る目を開けるカケルに、立ち上がったリンカが言う。
「全く、急に世話が焼ける奴になって。私を支えてくれた勇者はどこへ行った。」
「・・・すまねぇ。」
思い通りの結末にならなかったからか、ギリギリと歯を食いしばりながら、レイが唸る。
「くっ・・・しぶとい奴らめ。だが、貴様らのライフはわずか300!!私達の勝利は目前だ!!」
「そうよ!あと、どさくさに紛れて顔上げないでくれる、スケベ男!!」
クリスの言葉に萎縮し、カケルは再び目線を床に落とす。
「・・・ふん!私はターンエンド!」
ターン終了の宣言をしたクリス。そして、リンカはデッキに手を伸ばす前に、ふとカケルに訊ねた。
「なぁ、カケル。そんなに女が苦手か?」
突然の質問にカケルは困惑する。
「え?あぁ、まぁ・・・今までこんな事無かったし、なんか緊張しちまって・・・」
「なら、私でも緊張するのか?」
その言葉に下を向いたままカケルは答える。
「リンカで?・・・いいや。しないな。」
「そうか・・・なら。おい、クリス。タオルを一枚貸せ。」
リンカはフィールドを横切り、クリスへと歩み寄る。
「な、何よ急に?」
「一体、何のつもりだ。」
警戒するレイ。しかし、リンカは落ち着き払った態度で言う。
「これは賭けだ。もしかしたら、私ならカケルの弱点を克服できるかもしれない。」
「どういう意味だ?」
レイの問いに、リンカはおもむろに自分の服を脱ぎ始めた。
「こういうことだ。」
「な、な、何よそれ!?あ、あんたも変態なの!?」
顔を真っ赤にするクリスに、リンカは呆れたように言う。
「まず、この場のどこにも変態などいない。カケルも含めてだ。これでカケルが過剰に反応しなければ、私の賭けは正しかった事になる。」
「むちゃくちゃやるな、貴様・・・。」
半ば感心したのか、レイは興味深そうに見つめる。そしてリンカは身体にタオルを巻き終えるとカケルの元へ戻った。
「よし、カケル。私の方を向いてみろ。」
「え?なんでだよ?」
しびれを切らしたようにリンカが声を荒げる。
「いいから、見ろ!早くしないと風邪を引く!」
「わっ、わーったよ!っと・・・。」
そして、恐る恐るカケルが顔を上げると。
「ど、どうだ・・・?」
そこには、裸体にタオル1枚だけになったリンカの姿があった。少し恥ずかしそうにするリンカに対し、カケルはキョトンとした顔で言う。
「お前、なんでそんな格好してんだ?寒いだろ、それじゃ。」
その様子を見たクリス驚愕する。
「ま、まさかの無反応・・・!」
「あの男にとって、あいつは眼中にないということか・・・?」
不思議そうに見つめる少女二人。リンカは勝ち誇ったように言った。
「ふっ、それでこそカケルだ!私が大丈夫なら、あの二人も大丈夫だろ?」
「おお、なんかそんな気がしてきた!」
そして、リンカはカケルを指差し言った。
「私達のライフはわずか300。だが、ユーガを思い出せ!どんなに自分のライフが低くても、あいつは決して諦めず、逆転に繋いだはずだ!!」
「ああ、そうだったな。・・・俺はどうやら大切なもの忘れてたみたいだぜ!あいつらを倒して、俺達は前に進む!」
完全に前を向いたカケルの目に揺るぎはない。思わず慌てたクリスが叫ぶ。
「ちょっと、こっち見ないでよ!!」
しかし、カケルは笑って言った。
「へっ、俺には大事な目的があるんだ!仲間を取り戻すって目的がな!その強い決意の前じゃ、女の裸なんて大した事ねぇぜ!!」
「なっ、何を・・・!私の身体を馬鹿にする気か!」
荒ぶるレイに、カケルは笑ってみせた。
「それに、全部リンカと同じって思っちまえば、楽勝じゃねぇか!!はっはっは!!」
「そっ、それはそれでちょっと傷つくぞカケル・・・。まぁいい、逆転の時だ!私のターン!!」
デッキからカードを引いたリンカ。それを見た彼女はニヤリと笑った。
「行くぞ!私は速攻魔法《リベンジ・チェンジ・エクシーズ》を発動!ライフを半分払い、自分の墓地からエクシーズモンスターを特殊召喚する!!蘇れ、《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》!!(LP300→150)」
リンカの場に氷の恐獣が復活を遂げた。
「そして、この効果で特殊召喚したモンスターをエクストラデッキに戻し、そのモンスターと同じランク・種族を持つエクシーズモンスターを、エクシーズ召喚扱いで特殊召喚する!!私が呼ぶのは、こいつだ!!」
瞬間、エクストラデッキが光り、その中から悪夢の爪が伸びる。
「恐怖の爪を携えし魔物よ!遥かなる太古より、その力を呼び覚ませ!!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン(★4/闇/恐竜/エクシーズ/3000・1500)》!!」
闇を突き破り現れたのは、両腕に巨大な爪を備えた恐獣だった。その恐獣は長く鋭利な爪を振り上げると、浴場の床に突き刺し、咆哮を轟かせた。
「こ、攻撃力3000のエクシーズモンスターがこのタイミングで・・・!」
身構えるクリス。リンカはさらに言葉を続ける。
「《リベンジ・チェンジ・エクシーズ》は発動後、特殊召喚したエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットになる!!そして《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》の効果発動!!」
爪を引き抜くと、恐獣は自身の周りを浮遊するオーバーレイ・ユニットに手を伸ばした。
「オーバーレイ・ユニットを一つ使う事で、《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》はこのターン、相手フィールドのモンスターの数だけ攻撃回数を増やす!!お前達のモンスターは1体!よって、2回の攻撃が可能!!」
勢いに乗るカケルが叫ぶ。
「っしゃあ、行けぇリンカ!!」
「ふっ、バトルだ!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》で《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》を攻撃!!『デッドリィ・ダイノエッジ』!!」
巨大な爪を引き摺りながら、恐獣は駆け出す。火花を散らしながら迫る魔物に、レイは唸りを上げた。
「ううぅ!!罠発動!!《弾幕壁(バラージ・ウォール)》!!このターン、自分へのダメージは半分になり、自分はデッキからカードを1枚ドローする!」
カードを引くレイ。しかし、恐獣の爪はすでに巨大兵器の砲塔を切り裂いていた。
「くっ!!(LP4000→3300)」
クリスはダメージによろける。しかし、リンカの追撃の手は止まらない。
「私にはまだ、後1回の攻撃が残っている!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》でダイレクトアタック!!」
爆発し、崩れ落ちる巨大兵器。その黒煙の中から魔物の爪が、クリスに向かって伸びた。
「あああっ!!!(LP3300→1800)」
倒れ込むクリス。荒い息を整えながら、レイは言った。
「《弾幕壁》のさらなる効果発動!このターンのバトルフェイズ終了時に、戦闘を行った全てのモンスターを破壊する!!」
「何だと!?」
罠カードより放たれた弾幕の雨は、恐獣の身体を突き貫く。
「これで、このターンのダメージは受け切った。さぁ、ターンを渡して貰おうか!」
リンカはレイを睨む。
「私の切り札が・・・くっ!ターンエンドだ!」
倒れたクリスに手を貸したレイは、彼女を立たせた。
「しっかりしろ、クリス。」
「ええ。た、タオル取れてないわよね?」
自分の身体を確認するクリスに、レイは言う。
「クリス、もうあの男に色仕掛けは通用しないぞ。タオルなど今更気にするな。」
「いや、あっちは良くても、私が良くないんだから!」
抗議するクリスを余所に、レイはデッキからカードを引いた。
「行くぞ、私のターン、ドロー!!ふっ、さっきの《弾幕壁》によるドロー。あれは私に良いカードをくれた!!私は装備魔法カード《再融合》を発動!!(LP1800→1000)」
レイの場に表示されるカード。リンカの身に悪寒が走る。
「《再融合》・・・!まさか!」
「そうだ!!800のライフと引き換えに、墓地の融合モンスターを特殊召喚しこのカードを装備する!!再び、浮上せよ!!《V・Bタイダル・ガンナー》!!」
巨大ロボットが床を突き破り、浮上する。再び、全身から溢れ出すエネルギーが光り始めた。
「まずい、あのモンスターには!!カケル!!」
焦りを見せるリンカ。しかし、カケルは目を閉じ、佇んでいる。
「そうだ!!このモンスターの能力!!それで貴様は終わりだ!!私は《V・Bタイダル・ガンナー》の効果を発動!!手札を1枚捨て、相手に500ダメージを与える!!『スパイラル・ディスペアー』!!」
展開される砲塔。そして、その奥には、あの螺旋状のエネルギー弾が充填されてゆく。
「カケル!!」
叫ぶリンカ。レイは高らかに宣言した。
「これで私達の勝ちだ!!ふはははっ!!!」
とうとう、砲身から凄まじいエネルギーが発射される。
ように見えた。しかし、カケルの瞳が開くと同時に、リバースカードが動く。
「速攻魔法発動!!《融合解除》!!」
寸での所で、巨大兵器の動きが止まる。レイは動揺の声を上げた。
「なっ、《融合解除》だと!!?」
砲口を前にして、カケルは笑う。
「ああ、そうさ!今までタイミングを逃して来たが、ようやく使う時が来たぜ!!さぁ、お家に帰りな、木偶の坊!!!」
悶えながら、煙のように消えて行く巨大兵器。その姿を前にレイは膝を折った。
「わ、私の《V・Bタイダル・ガンナー》が・・・!!」
「さぁ、どうする?もう打つ手無しか!?」
得意げに笑うカケルに、レイは苦しい顔で言った。
「私は・・・ターンエンド・・・・。」
リンカはカケルに笑い掛ける。
「カケル・・・ありがとう。」
「なーに、今まで腑抜けてた分のお返しさ。さぁ、行くぜ。俺のターン!」
引いたカードを見たカケルは、ハッとした顔をする。
「お前は・・・そうか、お前も戦いたいか!なら、行って来い!俺は手札から《I・Bハイドラー(☆4/光/機械/2100・1200)》を召喚!!」
現れたのは黒い翼を持つ、漆黒の勇者。その鷹の如き鋭い眼光が二人の少女を貫いた。
「何っ!?イモータル・ブレイバーはマイデンだけでは無かったのか!?」
そのモンスターの登場に驚くリンカ。カケルは呆れたように言う。
「おいおい、リンカ。2号ロボットは勇者のお約束だろ?」
「そ、そうなのか?よくわからんが・・・まぁいい!こいつで奴らに止めが!」
しかし、カケルは首を横に振る。
「いや、《I・Bハイドラー》は通常召喚したターンは攻撃できない。」
「何ぃ!?」
混乱するリンカ。その様子にクリスは笑った。
「あははっ!せっかく呼んだモンスターが攻撃できないなんて!無様ね!次の私のターンで・・・」
しかし、カケルは笑顔だった。
「・・・誰が、《I・Bハイドラー》で攻撃するって言ったよ?・・・なぁ、レイさんよ。あんたは融合使いなんだよな?」
その問いにレイが突き放すように答える。
「それがどうした!?」
「融合を使えるのは、何もあんただけじゃないんだぜ・・・?魔法カード《武装融合》発動!!」
カケルの場に表示されるカード。レイは思わず声を上げた。
「《武装融合》だと・・・!?」
手札のカードを取り出し、カケルはそれを墓地へ送る。
「俺は手札の《B・C(ブレイバー・キャリアー)バスターカーゴ(☆5/光/機械/ユニオン/2300・2000)》と《I・Bハイドラー》を融合するぜ!!」
飛び出したのは、超音速輸送機。それに合わせ、漆黒の勇者のスラスターが光ると、一気に空中へ飛び出した。
「鐵の翼、天に舞う時、新たな戦士の鼓動が始まる!!これが限界を超えた、勇者の姿だ!!武装融合!!飛び立て、レベル8!!《I・Bハイドラー/ステルスバスター(☆8/光/機械/融合/2500・2000)》!!!」
音速の力を手に入れた漆黒の勇者は、雄々しい姿となってカケルの前に足を着けた。
「くっ・・・!攻撃力2500!!」
「嘘・・・でしょ・・・!?」
そして、カケルは二人の少女を指差し、笑いながら言った。
「フィニッシュだ!!《I・Bハイドラー/ステルスバスター》でダイレクトアタック!!」
翼を広げ、飛び上がる漆黒の勇者。そして、急降下と共に光を放った。
「『ダークウィング・サンダーボルト』!!!」
二人の少女はその衝撃に吹き飛ばされた。
「ぐあああぁぁぁっ!!!(LP1000→0)」
『勝者:カケル・リンカ』
その瞬間、レイとクリスのタオルがはだける。
「!!」
瞬時にそれに気付いたリンカはギリギリの所で、カケルの目を隠した。
「お、おい!リンカ!何も見えねぇぞ!せっかく勝ったってのに!」
「み、見ない方がいい!流石にこれはカケルにも刺激が強いと思う・・・。」
それから、しばらくして。
「もう、いいぞカケル。」
リンカの声に、カケルは振り向いた。そこにはしっかりと服を来た3人の少女の姿が。
「はぁ、まぁなんだかんだ言っても、服着てもらってた方が安心するな。色々と。」
「ふっ、私の裸で結構楽しんでたくせに!」
そう言ってそっぽを向くクリスに、カケルは思わず苦笑いをする。ふと思い出したのか、レイはリンカに訊ねた。
「お前達はペンデュラムを使って来なかった。ということは奴らとは無関係なのか?」
「ペンデュラムだと!?そんな力を持っているのは奴らしか・・・」
その時、レイとリンカはハッとして言う。
「もしかして、その奴らというのは・・・」
レイの言葉に、リンカは答える。
「マサカー、か?」
「何よ、貴方達マサカーを知っていたの?」
クリスがカケルに詰め寄る。
「ああ、俺達の仲間を攫ったのは、そのマサカーだ。」
それを聞き、レイは笑った。
「なるほど、ということは私達の追う相手は一緒と言う訳だ。」
「ま、まさか、レイ!こいつらと手を組むなんて言うんじゃないでしょうね!?」
不安そうに言うクリスをなだめるように、レイは肩に手を置いた。
「今のデュエルで、こいつらの力量は計れた。遠征が終わるまでなら問題ないだろ?」
「い、嫌よ!ただでさえハル君に手を焼いてるのに、これ以上パーティに男が増えるなんて!」
二人の会話にリンカが口を挟む。
「私達の相手は強大だ、仲間が増えるに越した事は無い。手を貸してくれるなら素直に嬉しいが。だろ、カケル?」
「まぁ、そこのクリスさんは俺が嫌みたいだけど。この分ならキジマも嫌がられるんじゃねぇか?」
しかし、そんなやり取りも気にすることなくレイは歩き出した。
「よし!心強い仲間も増えたことだし、ハルのアホを探しに行くぞクリス!」
「ええ、待ってよ〜レイ!私まだ賛成してないんだけど!」
とぼとぼと後を歩くクリス。レイの勢いに乗せられ、カケルとリンカも温泉の外へと歩き出した。
その道中、リンカは小さな声でカケルに言う。
「・・・なぁ、カケル。」
「ん?なんだ、リンカ。」
少し間を置いてからリンカが口を開いた。
「ほ、本当に、その、私の身体を見て、何も感じなかったのか?」
「へっ、らしくねぇな、リンカ。そんな事聞くなんて。」
リンカは少し顔を赤くしながら問う。
「いいから、答えろ。」
その目を見たカケルは、やや照れくさそうに言った。
「・・・まぁ、その、なんだ。さっきはデュエル中だったから、そんな考える余裕もなかったけど、今思い返せば・・・綺麗だった・・・かな。」
意外な反応に目を丸くするリンカ。それから小さく笑うと、カケルに向かって掌を差し出した。
「な、なんだよ?」
「パン。」
今度ははっきりと笑って、リンカは言った。
「パン、あるだろ。食べたい。」
それを聞いたカケルは一瞬驚いたが、同じように笑うと鞄から要求された物を取り出した。
「・・・食い過ぎんなよ。」
「ふふっ、分かっている。」
そうして、二人は再び同じ方向を向き、歩く事に専念した。
その頃、ナナ達は長く暗い廊下を歩いていた。
「なぁ、ナナさん。正しいルートを知ってるんじゃ・・・」
「・・・人は誰しも間違うものよ。そんな時は寛大な心が大切だわ。」
マーナの手を引くキジマは溜め息を付いた。
その時。
「やぁ、奇遇だなぁ。こんな所で人に会うなんて。」
廊下の角から姿を現したのは、シルクハットを被った男。警戒したキジマはマーナをナナに預けると、ディスクを構えた。
「誰だ!?こんな所で何をしてる!?」
その男は帽子の鍔からちらつく瞳で、キジマを見つめる。
「僕はハル。実は・・・」
コツコツと足音をならして近づく男は、笑って言った。
「道に迷いまして。・・・・出口知ってます?」
次回第21話「罠を越えた先に」
睨み合うリンカとレイ。そしてタオルを抑えあたふたするクリスと、下を向いてどぎまぎするカケル。そんな中、先に動いたのはリンカだった。
「先攻は貰う!私のターン!手札から《強化恐竜ホイール・メガロ(☆4/闇/恐竜/1100・1100)》を特殊召喚!」
湯煙の中、轟音を引き連れ車輪の両足を持つ肉食獣が出現する。
「こいつは自分のフィールドにモンスターが存在しない時、手札から特殊召喚できる!さらに、《強化恐竜トキシック・ヴェロキ(☆4/闇/恐竜/1800・1400)》を召喚!」
もう一体の肉食獣が毒の鉤爪を光らせ、軽快に躍り出た。そして、その2体を指差し、リンカは叫ぶ。
「私はレベル4の《強化恐竜ホイール・メガロ》と《強化恐竜トキシック・ヴェロキ》でオーバーレイ!!」
閃光の渦が広がり、2体の恐竜が飛び込んだ。
「絶対零度の大地より、その牙を振るい刻の流れを噛み砕け!!エクシーズ召喚!!来い、ランク4!《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ(★4/闇/恐竜/エクシーズ/2400・900)》!!」
浴場の床を踏み砕くように現れたのは、全身を氷の鎧に包んだ巨大な恐獣の姿。その咆哮が谺し、空間全体を揺さぶる。
「ほう、エクシーズ召喚か。面白い。」
恐獣を見上げ、不敵に笑うレイ。リンカはさらに手札にカードを取り出し、ディスクに叩き付ける。
「私は装備魔法、《遺伝子覚醒薬》を発動!これを《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》に装備する!これを装備したモンスターは相手の効果の対象にならず、攻撃力が600アップする!(ATK2400→3000)」
覚醒の力を与えられた恐獣は、再び咆哮を上げるとその能力を高めた。
「いきなり攻撃力3000のモンスター。なかなか、侮れないわね。」
息を飲むクリス。リンカはレイを指差し言った。
「私はこれでターンエンド!さぁ、次はお前のターンだ!」
デッキに手を伸ばし、レイは口を開いた。
「ふっ、戦士の戦いをその目に焼き付けるがいい!!私のターン、ドロー!!」
そして、身を振りかぶり、勢いよく引かれるカード。その瞬間、衝撃で身体に巻かれていたタオルが緩む。
「ちょ、ちょっと、レイ!タオル、タオル!」
「ん?タオル?」
一瞬、レイの素肌が露になるが、クリスがなんとか横からタオルを押さえ込んだ。そして、カケルの方を睨み、声を荒げる。
「見た!?」
「え、い、いや、見てねぇ!見てません!」
変わらぬ調子で顔を伏せるカケルが弁明する。その様子にリンカが苦言を呈した。
「おい、カケル!しっかりしろ!」
「わ、悪りぃ・・・。」
タオルを巻き直したレイは得意げに言う。
「私も自分の身体には自信のある方だ!男なら緊張するのも無理はない!だが、戦いの中ではそれが命取りになると知れ!私は手札から、《V・B(ヴィラン・ボッツ)ブラスト・ウェーブ(☆4/闇/機械/1900・1700)》を召喚!」
レイのフィールドに、銃の片腕を持つ悪のロボットが出現する。
「ヴィラン・ボッツ?カケルのブレイバーと似ているな・・・。」
その姿を見たリンカが呟く。レイは笑って言った。
「これこそが、闇夜に輝くダークヒーローの姿だ!《V・Bブラスト・ウェーブ》の効果発動!このターン、このカードの攻撃権を破棄する事で相手に400ダメージを与える!喰らえ、『ショック・ヴァイス』!!」
ロボットは左腕の銃口をリンカに向けると、エネルギー弾を放った。
「くっ!!この程度!!(LP4000→3600)」
エネルギー弾が残した煙を振り払い、リンカは歯を食いしばる。カケルは少し顔を上げると、そのロボットの姿を確認した。
「・・・おお!かっけぇな、あんたのモンスター!」
思わず興奮したカケルは顔を思い切り上げた。その瞬間、クリスが叫ぶ。
「あ!こっち見た!変態男!」
「ああ、ごめんなさい!」
慌てるカケルに、レイは笑って言う。
「はははっ!私のモンスターの魅力が分かるとは、なかなか見る目があるな!なら、もっと格好良いものを見せてやろう!このカードでな!」
そう口にしながら、取り出された1枚のカード。そのカードが表示されると、リンカは目を丸くした。
「魔法カード、《改造融合(カスタマイズ・フュージョン)》!!」
「何っ!?融合だと!?」
レイは、さらに手札をカードを取り出し、リンカ達に見せつけた。
「私はこのカードにより、手札の《V・A(ヴィランズ・アタッチメント)ブリッツ・ショッカー(☆4/闇/機械/ユニオン/0・2000)》と《V・Bブラスト・ウェーブ》を融合する!!」
飛び出した黒き高速巡洋艦が、変形を開始し、悪のロボットを包み込んで行く。
「闇夜に揺らめく狙撃手よ!星間を進む巨船よ!銀河の荒波をかき分け、怒濤の破壊者となれ!!改造融合!!浮上せよ、レベル7!!《V・B(ヴィランズ・ベルセルク)タイダル・ガンナー(☆7/闇/機械/融合/2700・2500)》!!」
無数の砲塔を内蔵した巨大ロボットと化したダークヒーローは、溢れんばかりのエネルギーを関節の隙間から光らせながら、フィールドを威圧した。
「で、でかい・・・!!」
思わずたじろぐリンカ。レイは高らかに宣言する。
「ふっははは!私は《V・Bタイダル・ガンナー》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊する!!『アルティメット・ディザスター』!!!」
巨大兵器は全身の砲塔を展開すると、四方に向けてエネルギー波を撃ち放った。だが、それと同時にリンカが叫ぶ。
「私は《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、相手の特殊召喚されたモンスター1体の効果をターン終了まで無効にする!」
恐獣の放った冷気に、巨大兵器の動きが停まる。不服そうにレイは顔を歪ませた。
「ちっ、まぁいい。戦いはまだ始まったばかりだからな!私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」
動かないカケルに対し、リンカは声を掛ける。
「おい、カケル!お前のターンだぞ!」
「・・・あ、そ、そっか!俺のターンか!ドロー!」
急いでカードを引くカケル。そして、浴場の床を見つめながら溜め息を付く。
「はぁ・・・参ったぜ。裸の女の子相手にデュエルだなんて・・・目のやり場に困って仕方ねぇよ。」
「ちょっと!変な事考えないでよね!」
クリスの忠告を聞き、カケルはさらに溜め息を付いた。
「俺は・・・モンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンドだ。」
「カケル!何故だ!?」
その行動にリンカが声を荒げる。
「え、何故って、何が?」
「私の場には攻撃力3000の《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》が居る!攻撃力2700の《V・Bタイダル・ガンナー》に攻撃すれば破壊できたんだぞ!」
カケルはガックリと肩を落とした。
「ああ、そうか。タッグデュエルだから味方のモンスターも使えるのか。すまねぇ。」
「ふふふ、どうやらその男は私達の姿に惑わされて、まともな判断もできないスケベ野郎らしいわね。」
クスクスと笑うクリスを、リンカは睨みつけた。
「私の仲間を馬鹿にするな!!」
「うっ・・・そ、そんなに怒らなくても・・・。まぁ、いいわ。私のターン!ドロー・・・っと。」
ディスクを填めた腕でタオルを抑えながら、クリスはゆっくりとカードを引いた。レイはクリスに向かって言う。
「クリス、私のモンスターを使え!」
「ええ、そうさせて貰うわ、レイ!私は《V・Bタイダル・ガンナー》の効果発動!1ターンに1度、手札を3枚まで墓地に送ることで、相手にその数×500ダメージを与える!私は手札を3枚墓地へ!」
取り出した手札をクリスは墓地へ送り込む。それに反応し、巨大兵器の砲塔が伸びてゆく。
「なっ・・・!3×500、合計1500のダメージだと・・・!」
苦虫を噛み潰したような表情で、リンカは砲塔の奥に輝くエネルギーを見つめる。
「喰らいなさい!『スパイラル・ディスペアー』!!!」
そして、螺旋状に放たれるエネルギー弾。その一撃はリンカとカケルを吹き飛ばした。
「うわあああっ!!!(LP3600→2100)」
倒れ込んだリンカはなんとか体制を立て直し、立ち上がる。そして、カケルに向かって手を伸ばすと言った。
「ぼうっとするな。立て、カケル。」
「・・・ああ、悪いな、リンカ・・・。」
その手を取り、カケルは床に足を付ける。その様子を見たレイは高笑いした。
「ふははは!今のは効いただだろう!長く苦しませるのは趣味じゃない、さっさと止めを刺してやろう!クリス!」
「ええ、そうね!私は墓地の《V・G(ヴィランズ・ガール)リンリン(☆3/闇/戦士/1400・300)》の効果発動!このカードが「ヴィラン」モンスターの効果を発動する為に、手札から墓地に送られた場合、このカードを特殊召喚する!!」
クリスの墓地が光り、その中から拳法家の姿をした中華娘が飛び出した。
「そして私は魔法カード《ヴィランズ・タッグスター》を発動!このカードの効果で、私は《V・Gリンリン》のレベルを《V・Bタイダル・ガンナー》と同じにする!(☆3→☆7)」
「レベル7のモンスターが2体・・・まさか!!」
自分がタオル1枚であることも忘れ、クリスは叫んだ。
「私はレベル7の《V・Bタイダル・ガンナー》と《V・Gリンリン》でオーバーレイ!!」
巨大兵器と拳法娘は光の帯となり、閃光の渦へ飛び込んだ。
「宵空を駆け抜ける妖艶の乙女よ!宇宙兵器の力を得て、地上最強の戦士となれ!!エクシーズ召喚!!出でよ、ランク7!!《V・G・B(ヴィランズ・ガール・ベルセルク)ジェノサイド・ブラスター(★7/闇/機械/エクシーズ/3200・3000)》!!」
巨大兵器の外装を身に纏った娘は、両腕のキャノンを振りかざし、二人の少女の前に降り立つ。
「融合モンスターを素材にエクシーズ召喚だと・・・!!それにこの攻撃力・・・この二人、一体何者だ・・・!?」
リンカの零した言葉に、ずり落ちたタオルを慌てて巻き直したクリスが答える。
「おっとと・・・ふん!言ったでしょ、私達は戦士だって!この程度、朝飯前よ!」
「そういうことだ!《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》の効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力を半分にする!!『アトミック・ハザード』!!」
クリスに続けてレイが叫ぶ。しかし、リンカも負けては居なかった。
「忘れたのか!!《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》の効果発動!オーバーレイ・ユニットを使い、特殊召喚されたモンスターの効果を無効にする!!」
再び、恐獣から暴風のような冷気が発生する。しかし、クリスは笑って言った。
「無駄よ!《ヴィランズ・タッグスター》の効果を受けたモンスターを素材にした《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》は、相手のモンスター効果を受けない!!」
「ちっ・・・私のモンスターが・・・!!(ATK3000→1500)」
力を半減され、恐獣はフィールドに膝を付いた。そして、間髪いれずクリスが叫ぶ。
「バトルよ!《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》で《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》を攻撃!!『デストロイ・テンペスト』!!!」
両腕のキャノンを合体させた巨大兵器は、その中心に組み込まれた娘が引いたトリガーにより、凄まじい光線を放った。一直線に向かう光は、恐獣の鎧を砕き、跡形も無く焼き尽くす。
「うぅううっ!!(LP2100→400)」
ダメージに悶え、リンカは膝を折った。心配したカケルが声を上げる。
「おい、リンカ!大丈夫か!」
「仲間の心配をしている余裕があるのかしら?私は《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》の効果発動!相手モンスターを戦闘破壊した時、オーバーレイ・ユニットを1つ使う事で、このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる!!」
クリスが狙ったのは、カケルのフィールド。
「私は《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》で、スケベ男の伏せモンスターを攻撃!!」
「なっ、お、俺のモンスターを!?けど、こいつは守備表示!ダメージは・・・」
言いかけたカケルを嘲るように、レイが口を開く。
「ダメージは無いとでも?甘いな!私達の《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》は守備モンスターを攻撃した時、相手に貫通ダメージを与える!!」
「なんだと!!」
もう一度、エネルギーの充填が始まる。そして、レイとクリスは声を合わせて叫んだ。
「「喰らえ!!『デストロイ・テンペスト』!!!」」
その時、カケルのモンスターがリバースし、正体が露になる。
「くっ、俺のモンスターは《I・Bマイデン(☆4/光/機械/1900・1500)》・・・!」
「ははぁ!!そのまま砕け散れぇえぇ!!!」
レイの笑いが谺する。迫りくる光線にカケルは目を瞑った。
だが、この状況で、まだ諦めぬ者が居た。
「・・・私は破壊された《遺伝子覚醒薬》の効果を発動!!このカードを装備したモンスターが戦闘で破壊されたターン、墓地のこのカードを除外する事で相手モンスター1体の攻撃力を半分にする!!」
刹那、力を奪われた巨大兵器のエネルギーが落ちる。クリスは驚愕した。
「そんな!私達のモンスターが・・・!(ATK3200→1600)」
紅蓮の勇者は攻撃に砕け散ったが、そのダメージは最小限に抑えられた。
「助かったのか・・・?(LP400→300)」
恐る恐る目を開けるカケルに、立ち上がったリンカが言う。
「全く、急に世話が焼ける奴になって。私を支えてくれた勇者はどこへ行った。」
「・・・すまねぇ。」
思い通りの結末にならなかったからか、ギリギリと歯を食いしばりながら、レイが唸る。
「くっ・・・しぶとい奴らめ。だが、貴様らのライフはわずか300!!私達の勝利は目前だ!!」
「そうよ!あと、どさくさに紛れて顔上げないでくれる、スケベ男!!」
クリスの言葉に萎縮し、カケルは再び目線を床に落とす。
「・・・ふん!私はターンエンド!」
ターン終了の宣言をしたクリス。そして、リンカはデッキに手を伸ばす前に、ふとカケルに訊ねた。
「なぁ、カケル。そんなに女が苦手か?」
突然の質問にカケルは困惑する。
「え?あぁ、まぁ・・・今までこんな事無かったし、なんか緊張しちまって・・・」
「なら、私でも緊張するのか?」
その言葉に下を向いたままカケルは答える。
「リンカで?・・・いいや。しないな。」
「そうか・・・なら。おい、クリス。タオルを一枚貸せ。」
リンカはフィールドを横切り、クリスへと歩み寄る。
「な、何よ急に?」
「一体、何のつもりだ。」
警戒するレイ。しかし、リンカは落ち着き払った態度で言う。
「これは賭けだ。もしかしたら、私ならカケルの弱点を克服できるかもしれない。」
「どういう意味だ?」
レイの問いに、リンカはおもむろに自分の服を脱ぎ始めた。
「こういうことだ。」
「な、な、何よそれ!?あ、あんたも変態なの!?」
顔を真っ赤にするクリスに、リンカは呆れたように言う。
「まず、この場のどこにも変態などいない。カケルも含めてだ。これでカケルが過剰に反応しなければ、私の賭けは正しかった事になる。」
「むちゃくちゃやるな、貴様・・・。」
半ば感心したのか、レイは興味深そうに見つめる。そしてリンカは身体にタオルを巻き終えるとカケルの元へ戻った。
「よし、カケル。私の方を向いてみろ。」
「え?なんでだよ?」
しびれを切らしたようにリンカが声を荒げる。
「いいから、見ろ!早くしないと風邪を引く!」
「わっ、わーったよ!っと・・・。」
そして、恐る恐るカケルが顔を上げると。
「ど、どうだ・・・?」
そこには、裸体にタオル1枚だけになったリンカの姿があった。少し恥ずかしそうにするリンカに対し、カケルはキョトンとした顔で言う。
「お前、なんでそんな格好してんだ?寒いだろ、それじゃ。」
その様子を見たクリス驚愕する。
「ま、まさかの無反応・・・!」
「あの男にとって、あいつは眼中にないということか・・・?」
不思議そうに見つめる少女二人。リンカは勝ち誇ったように言った。
「ふっ、それでこそカケルだ!私が大丈夫なら、あの二人も大丈夫だろ?」
「おお、なんかそんな気がしてきた!」
そして、リンカはカケルを指差し言った。
「私達のライフはわずか300。だが、ユーガを思い出せ!どんなに自分のライフが低くても、あいつは決して諦めず、逆転に繋いだはずだ!!」
「ああ、そうだったな。・・・俺はどうやら大切なもの忘れてたみたいだぜ!あいつらを倒して、俺達は前に進む!」
完全に前を向いたカケルの目に揺るぎはない。思わず慌てたクリスが叫ぶ。
「ちょっと、こっち見ないでよ!!」
しかし、カケルは笑って言った。
「へっ、俺には大事な目的があるんだ!仲間を取り戻すって目的がな!その強い決意の前じゃ、女の裸なんて大した事ねぇぜ!!」
「なっ、何を・・・!私の身体を馬鹿にする気か!」
荒ぶるレイに、カケルは笑ってみせた。
「それに、全部リンカと同じって思っちまえば、楽勝じゃねぇか!!はっはっは!!」
「そっ、それはそれでちょっと傷つくぞカケル・・・。まぁいい、逆転の時だ!私のターン!!」
デッキからカードを引いたリンカ。それを見た彼女はニヤリと笑った。
「行くぞ!私は速攻魔法《リベンジ・チェンジ・エクシーズ》を発動!ライフを半分払い、自分の墓地からエクシーズモンスターを特殊召喚する!!蘇れ、《超強化恐竜アイスファング・クリオロフォ》!!(LP300→150)」
リンカの場に氷の恐獣が復活を遂げた。
「そして、この効果で特殊召喚したモンスターをエクストラデッキに戻し、そのモンスターと同じランク・種族を持つエクシーズモンスターを、エクシーズ召喚扱いで特殊召喚する!!私が呼ぶのは、こいつだ!!」
瞬間、エクストラデッキが光り、その中から悪夢の爪が伸びる。
「恐怖の爪を携えし魔物よ!遥かなる太古より、その力を呼び覚ませ!!エクシーズ召喚!!現れろ、ランク4!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン(★4/闇/恐竜/エクシーズ/3000・1500)》!!」
闇を突き破り現れたのは、両腕に巨大な爪を備えた恐獣だった。その恐獣は長く鋭利な爪を振り上げると、浴場の床に突き刺し、咆哮を轟かせた。
「こ、攻撃力3000のエクシーズモンスターがこのタイミングで・・・!」
身構えるクリス。リンカはさらに言葉を続ける。
「《リベンジ・チェンジ・エクシーズ》は発動後、特殊召喚したエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットになる!!そして《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》の効果発動!!」
爪を引き抜くと、恐獣は自身の周りを浮遊するオーバーレイ・ユニットに手を伸ばした。
「オーバーレイ・ユニットを一つ使う事で、《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》はこのターン、相手フィールドのモンスターの数だけ攻撃回数を増やす!!お前達のモンスターは1体!よって、2回の攻撃が可能!!」
勢いに乗るカケルが叫ぶ。
「っしゃあ、行けぇリンカ!!」
「ふっ、バトルだ!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》で《V・G・Bジェノサイド・ブラスター》を攻撃!!『デッドリィ・ダイノエッジ』!!」
巨大な爪を引き摺りながら、恐獣は駆け出す。火花を散らしながら迫る魔物に、レイは唸りを上げた。
「ううぅ!!罠発動!!《弾幕壁(バラージ・ウォール)》!!このターン、自分へのダメージは半分になり、自分はデッキからカードを1枚ドローする!」
カードを引くレイ。しかし、恐獣の爪はすでに巨大兵器の砲塔を切り裂いていた。
「くっ!!(LP4000→3300)」
クリスはダメージによろける。しかし、リンカの追撃の手は止まらない。
「私にはまだ、後1回の攻撃が残っている!!《超強化恐竜ナイトメアエッジ・テリジノン》でダイレクトアタック!!」
爆発し、崩れ落ちる巨大兵器。その黒煙の中から魔物の爪が、クリスに向かって伸びた。
「あああっ!!!(LP3300→1800)」
倒れ込むクリス。荒い息を整えながら、レイは言った。
「《弾幕壁》のさらなる効果発動!このターンのバトルフェイズ終了時に、戦闘を行った全てのモンスターを破壊する!!」
「何だと!?」
罠カードより放たれた弾幕の雨は、恐獣の身体を突き貫く。
「これで、このターンのダメージは受け切った。さぁ、ターンを渡して貰おうか!」
リンカはレイを睨む。
「私の切り札が・・・くっ!ターンエンドだ!」
倒れたクリスに手を貸したレイは、彼女を立たせた。
「しっかりしろ、クリス。」
「ええ。た、タオル取れてないわよね?」
自分の身体を確認するクリスに、レイは言う。
「クリス、もうあの男に色仕掛けは通用しないぞ。タオルなど今更気にするな。」
「いや、あっちは良くても、私が良くないんだから!」
抗議するクリスを余所に、レイはデッキからカードを引いた。
「行くぞ、私のターン、ドロー!!ふっ、さっきの《弾幕壁》によるドロー。あれは私に良いカードをくれた!!私は装備魔法カード《再融合》を発動!!(LP1800→1000)」
レイの場に表示されるカード。リンカの身に悪寒が走る。
「《再融合》・・・!まさか!」
「そうだ!!800のライフと引き換えに、墓地の融合モンスターを特殊召喚しこのカードを装備する!!再び、浮上せよ!!《V・Bタイダル・ガンナー》!!」
巨大ロボットが床を突き破り、浮上する。再び、全身から溢れ出すエネルギーが光り始めた。
「まずい、あのモンスターには!!カケル!!」
焦りを見せるリンカ。しかし、カケルは目を閉じ、佇んでいる。
「そうだ!!このモンスターの能力!!それで貴様は終わりだ!!私は《V・Bタイダル・ガンナー》の効果を発動!!手札を1枚捨て、相手に500ダメージを与える!!『スパイラル・ディスペアー』!!」
展開される砲塔。そして、その奥には、あの螺旋状のエネルギー弾が充填されてゆく。
「カケル!!」
叫ぶリンカ。レイは高らかに宣言した。
「これで私達の勝ちだ!!ふはははっ!!!」
とうとう、砲身から凄まじいエネルギーが発射される。
ように見えた。しかし、カケルの瞳が開くと同時に、リバースカードが動く。
「速攻魔法発動!!《融合解除》!!」
寸での所で、巨大兵器の動きが止まる。レイは動揺の声を上げた。
「なっ、《融合解除》だと!!?」
砲口を前にして、カケルは笑う。
「ああ、そうさ!今までタイミングを逃して来たが、ようやく使う時が来たぜ!!さぁ、お家に帰りな、木偶の坊!!!」
悶えながら、煙のように消えて行く巨大兵器。その姿を前にレイは膝を折った。
「わ、私の《V・Bタイダル・ガンナー》が・・・!!」
「さぁ、どうする?もう打つ手無しか!?」
得意げに笑うカケルに、レイは苦しい顔で言った。
「私は・・・ターンエンド・・・・。」
リンカはカケルに笑い掛ける。
「カケル・・・ありがとう。」
「なーに、今まで腑抜けてた分のお返しさ。さぁ、行くぜ。俺のターン!」
引いたカードを見たカケルは、ハッとした顔をする。
「お前は・・・そうか、お前も戦いたいか!なら、行って来い!俺は手札から《I・Bハイドラー(☆4/光/機械/2100・1200)》を召喚!!」
現れたのは黒い翼を持つ、漆黒の勇者。その鷹の如き鋭い眼光が二人の少女を貫いた。
「何っ!?イモータル・ブレイバーはマイデンだけでは無かったのか!?」
そのモンスターの登場に驚くリンカ。カケルは呆れたように言う。
「おいおい、リンカ。2号ロボットは勇者のお約束だろ?」
「そ、そうなのか?よくわからんが・・・まぁいい!こいつで奴らに止めが!」
しかし、カケルは首を横に振る。
「いや、《I・Bハイドラー》は通常召喚したターンは攻撃できない。」
「何ぃ!?」
混乱するリンカ。その様子にクリスは笑った。
「あははっ!せっかく呼んだモンスターが攻撃できないなんて!無様ね!次の私のターンで・・・」
しかし、カケルは笑顔だった。
「・・・誰が、《I・Bハイドラー》で攻撃するって言ったよ?・・・なぁ、レイさんよ。あんたは融合使いなんだよな?」
その問いにレイが突き放すように答える。
「それがどうした!?」
「融合を使えるのは、何もあんただけじゃないんだぜ・・・?魔法カード《武装融合》発動!!」
カケルの場に表示されるカード。レイは思わず声を上げた。
「《武装融合》だと・・・!?」
手札のカードを取り出し、カケルはそれを墓地へ送る。
「俺は手札の《B・C(ブレイバー・キャリアー)バスターカーゴ(☆5/光/機械/ユニオン/2300・2000)》と《I・Bハイドラー》を融合するぜ!!」
飛び出したのは、超音速輸送機。それに合わせ、漆黒の勇者のスラスターが光ると、一気に空中へ飛び出した。
「鐵の翼、天に舞う時、新たな戦士の鼓動が始まる!!これが限界を超えた、勇者の姿だ!!武装融合!!飛び立て、レベル8!!《I・Bハイドラー/ステルスバスター(☆8/光/機械/融合/2500・2000)》!!!」
音速の力を手に入れた漆黒の勇者は、雄々しい姿となってカケルの前に足を着けた。
「くっ・・・!攻撃力2500!!」
「嘘・・・でしょ・・・!?」
そして、カケルは二人の少女を指差し、笑いながら言った。
「フィニッシュだ!!《I・Bハイドラー/ステルスバスター》でダイレクトアタック!!」
翼を広げ、飛び上がる漆黒の勇者。そして、急降下と共に光を放った。
「『ダークウィング・サンダーボルト』!!!」
二人の少女はその衝撃に吹き飛ばされた。
「ぐあああぁぁぁっ!!!(LP1000→0)」
『勝者:カケル・リンカ』
その瞬間、レイとクリスのタオルがはだける。
「!!」
瞬時にそれに気付いたリンカはギリギリの所で、カケルの目を隠した。
「お、おい!リンカ!何も見えねぇぞ!せっかく勝ったってのに!」
「み、見ない方がいい!流石にこれはカケルにも刺激が強いと思う・・・。」
それから、しばらくして。
「もう、いいぞカケル。」
リンカの声に、カケルは振り向いた。そこにはしっかりと服を来た3人の少女の姿が。
「はぁ、まぁなんだかんだ言っても、服着てもらってた方が安心するな。色々と。」
「ふっ、私の裸で結構楽しんでたくせに!」
そう言ってそっぽを向くクリスに、カケルは思わず苦笑いをする。ふと思い出したのか、レイはリンカに訊ねた。
「お前達はペンデュラムを使って来なかった。ということは奴らとは無関係なのか?」
「ペンデュラムだと!?そんな力を持っているのは奴らしか・・・」
その時、レイとリンカはハッとして言う。
「もしかして、その奴らというのは・・・」
レイの言葉に、リンカは答える。
「マサカー、か?」
「何よ、貴方達マサカーを知っていたの?」
クリスがカケルに詰め寄る。
「ああ、俺達の仲間を攫ったのは、そのマサカーだ。」
それを聞き、レイは笑った。
「なるほど、ということは私達の追う相手は一緒と言う訳だ。」
「ま、まさか、レイ!こいつらと手を組むなんて言うんじゃないでしょうね!?」
不安そうに言うクリスをなだめるように、レイは肩に手を置いた。
「今のデュエルで、こいつらの力量は計れた。遠征が終わるまでなら問題ないだろ?」
「い、嫌よ!ただでさえハル君に手を焼いてるのに、これ以上パーティに男が増えるなんて!」
二人の会話にリンカが口を挟む。
「私達の相手は強大だ、仲間が増えるに越した事は無い。手を貸してくれるなら素直に嬉しいが。だろ、カケル?」
「まぁ、そこのクリスさんは俺が嫌みたいだけど。この分ならキジマも嫌がられるんじゃねぇか?」
しかし、そんなやり取りも気にすることなくレイは歩き出した。
「よし!心強い仲間も増えたことだし、ハルのアホを探しに行くぞクリス!」
「ええ、待ってよ〜レイ!私まだ賛成してないんだけど!」
とぼとぼと後を歩くクリス。レイの勢いに乗せられ、カケルとリンカも温泉の外へと歩き出した。
その道中、リンカは小さな声でカケルに言う。
「・・・なぁ、カケル。」
「ん?なんだ、リンカ。」
少し間を置いてからリンカが口を開いた。
「ほ、本当に、その、私の身体を見て、何も感じなかったのか?」
「へっ、らしくねぇな、リンカ。そんな事聞くなんて。」
リンカは少し顔を赤くしながら問う。
「いいから、答えろ。」
その目を見たカケルは、やや照れくさそうに言った。
「・・・まぁ、その、なんだ。さっきはデュエル中だったから、そんな考える余裕もなかったけど、今思い返せば・・・綺麗だった・・・かな。」
意外な反応に目を丸くするリンカ。それから小さく笑うと、カケルに向かって掌を差し出した。
「な、なんだよ?」
「パン。」
今度ははっきりと笑って、リンカは言った。
「パン、あるだろ。食べたい。」
それを聞いたカケルは一瞬驚いたが、同じように笑うと鞄から要求された物を取り出した。
「・・・食い過ぎんなよ。」
「ふふっ、分かっている。」
そうして、二人は再び同じ方向を向き、歩く事に専念した。
その頃、ナナ達は長く暗い廊下を歩いていた。
「なぁ、ナナさん。正しいルートを知ってるんじゃ・・・」
「・・・人は誰しも間違うものよ。そんな時は寛大な心が大切だわ。」
マーナの手を引くキジマは溜め息を付いた。
その時。
「やぁ、奇遇だなぁ。こんな所で人に会うなんて。」
廊下の角から姿を現したのは、シルクハットを被った男。警戒したキジマはマーナをナナに預けると、ディスクを構えた。
「誰だ!?こんな所で何をしてる!?」
その男は帽子の鍔からちらつく瞳で、キジマを見つめる。
「僕はハル。実は・・・」
コツコツと足音をならして近づく男は、笑って言った。
「道に迷いまして。・・・・出口知ってます?」
次回第21話「罠を越えた先に」
現在のイイネ数 | 111 |
---|
↑ 作品をイイネと思ったらクリックしよう(1話につき1日1回イイネできます)
同シリーズ作品
イイネ | タイトル | 閲覧数 | コメ数 | 投稿日 | 操作 | |
---|---|---|---|---|---|---|
138 | プロローグ:終わりの始まり | 1169 | 2 | 2016-01-25 | - | |
57 | 01:生き残った戦士 | 1116 | 3 | 2016-01-26 | - | |
81 | 02:デッド・オア・アライブ | 1119 | 3 | 2016-01-27 | - | |
62 | 03:賞金稼ぎ・カケル | 1033 | 2 | 2016-01-28 | - | |
65 | 04:ゴミ溜めの地下街 | 1020 | 2 | 2016-02-02 | - | |
98 | 05:別次元の力 | 988 | 3 | 2016-02-03 | - | |
90 | 06:その時、何が起こったのか。 | 1009 | 3 | 2016-02-05 | - | |
74 | 07:レジスタンスの男 | 993 | 3 | 2016-02-08 | - | |
82 | 08:悪夢の爪 | 1149 | 4 | 2016-02-12 | - | |
93 | 09:純粋なる悪意 | 1032 | 3 | 2016-02-13 | - | |
112 | 10:過ち | 1092 | 3 | 2016-02-16 | - | |
112 | 11:分断された仲間たち | 927 | 2 | 2016-02-21 | - | |
100 | 12:新たなる出発 | 1124 | 2 | 2016-02-23 | - | |
116 | 13:邪悪な賢者 | 1005 | 2 | 2016-03-06 | - | |
126 | 14:忘却都市と生存兵 | 1171 | 4 | 2016-03-07 | - | |
97 | 15:悲しみの追憶 | 1042 | 2 | 2016-03-09 | - | |
154 | 16:強襲する黒羽 | 1156 | 2 | 2016-05-24 | - | |
88 | 17:第2の村 | 911 | 2 | 2016-05-25 | - | |
103 | EX:キャラ・設定まとめ※情報随時更新中 | 1053 | 0 | 2016-05-26 | - | |
100 | 18:月華の黒薔薇 | 1070 | 3 | 2016-05-27 | - | |
102 | 19:清潔を手に入れろ! | 1027 | 2 | 2016-05-30 | - | |
111 | 20:戦いは湯煙の中で | 1003 | 2 | 2016-06-01 | - | |
115 | 21:罠を越えた先に | 1027 | 2 | 2016-06-02 | - | |
116 | 22:渦巻くは、黒い欲望 | 944 | 2 | 2016-06-03 | - | |
61 | 23:極限のドロップ・ドロー・前編 | 912 | 2 | 2016-06-07 | - | |
94 | 24:極限のドロップ・ドロー・後編 | 968 | 2 | 2016-06-07 | - | |
85 | 25:秘められた殺意(ちから) | 964 | 2 | 2016-06-09 | - | |
73 | 26:闇の甲冑 VS 呪痕の牙 | 856 | 2 | 2016-06-10 | - | |
177 | 27:戦いの涙 | 1891 | 2 | 2016-06-10 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/10/25 新商品 SUPREME DARKNESS カードリスト追加。
- 11/22 08:43 SS 第25話:爆撃連打
- 11/22 07:58 評価 5点 《葬角のカルノヴルス》「レベル6のシンクロチューナー。 攻撃宣…
- 11/22 07:47 一言 何気なく見に来たらウチのSSの読者がいて涙を禁じ得ない デュエルしな…
- 11/22 03:01 評価 6点 《ブラック・ソニック》「総合評価:攻撃宣言時のため、BFの数を…
- 11/22 02:53 評価 4点 《BF-竜巻のハリケーン》「総合評価:ローレベルで展開能力があ…
- 11/22 02:47 評価 3点 《ブラック・リベンジ》「総合評価:《ゴッドバードアタック》で相…
- 11/22 02:14 評価 7点 《赤酢の踏切》「「使用後、場に残り続けるフリーチェーン除去」と…
- 11/22 01:39 評価 10点 《頼もしき守護者》「なんと、下級《エクソシスター》を《大霊術…
- 11/22 01:18 評価 10点 《ピラミッドパワー》「《妖精伝姫-カグヤ 》《妖精伝姫-シラユ…
- 11/22 00:06 評価 10点 《大寒気》「《ハーピィの狩場》の自壊を防ぐ他《女神ヴェルダン…
- 11/22 00:02 コンプリート評価 クリムゾン・ノヴァさん ⭐QUARTER CENTURY LIMITED PACK⭐
- 11/21 23:05 評価 5点 《Evil★Twin チャレンジ》「ちょっと弱すぎる。 一応相手…
- 11/21 20:56 評価 8点 《紅蓮魔獣 ダ・イーザ》「 相手が後攻を選択し、しかも《強欲で…
- 11/21 20:30 評価 10点 《スキルドレイン》「 遊戯王を脳筋フィジカルゲーにできる、超…
- 11/21 19:51 デッキ ガイア
- 11/21 19:47 評価 8点 《青眼の究極亜竜》「《青眼の究極竜》《真青眼の究極竜》に続く同…
- 11/21 19:34 評価 7点 《Evil★Twin イージーゲーム》「永続罠でキスキルかリィラ…
- 11/21 18:56 SS 79話 天道虫 その②
- 11/21 18:49 一言 リンクペンデュラムのオリカを作りたいんですがやっぱり不可能ですかね…
- 11/21 17:23 評価 8点 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》「 『混沌を制す者』シリ…
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。
ちょうどダークヒーロー系が出てきてカケルと良い感じの対比になってましたね。そして女性メンバーが増えたぞ!
次回はレイ曰くアホのハルとの邂逅ですな。 (2016-06-01 09:07)
だいぶ荒療治ですね。きっとカケルの信頼がなせる技でしょう。ぜひ、私も掛かってみたいものですw
ダークヒーローの登場とタッグデュエルはいつか書いてみたかった内容でしたね。最後まで描写できて良かったです。
さて、次回はハルのデュエルが展開されますが、ちょっと変わった彼の戦術、お楽しみ頂けたら幸いです。
(2016-06-02 04:47)