第113話：神意（修正・再掲版）　作：光芒

☆TURN02（林檎）

「私のターン、ドローよ！ 私は手札から魔法カード、オスティナートを発動！ 自分のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札・デッキの幻奏モンスター2体を墓地に送って幻奏融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚するわ！」

　林檎のデッキのモンスターは特殊召喚されることで真価を発揮する。そしてその真価を発揮するために必要な1枚こそがこのオスティナートというカードである。

「私はデッキから幻奏の音女アリアと幻奏の音女エレジーの2体を墓地に送り、幻奏の音姫マイスタリン・シューベルトを融合召喚！ シューベルトには互いの墓地のカードを3枚まで除外することで除外した枚数×200ポイント攻撃力をアップさせることができるけど……」
「私の墓地にかーどはありません。あなたの墓地にはかーどが3枚まで存在していますが……自分のかーどを除外することはかーどのしなじーがないかぎり推奨できません」
「ま、発動しなくても十分なんだけどね。バトル！ マイスタリン・シューベルトでセットモンスターを攻撃するわ！ ”ウェーブ・オブ・ザ・グレイト”！」

　シューベルトの歌声によって、香織のセットされていたモンスターが明らかになる。ふわふわと浮かぶ4体の子羊の亡霊のようなモンスターだった。

「せっとされていたのは《スケープ・ゴースト》です。りばーすもんすたーのスケープ・ゴーストの効果を発動致します」

《スケープ・ゴースト》
リバース・チューナー・効果モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻0/守0
(1)：このカードがリバースした場合に発動できる。自分フィールドに「黒羊トークン」（アンデット族・闇・星1・攻/守0）を任意の数だけ特殊召喚する。

（スケープ・ゴースト？ また珍しいモンスターを使ってくるのね）
「りばーすしたスケープ・ゴーストの効果。私のふぃーるどに黒羊トークンを任意の数だけ特殊召喚することができます。私は空いているもんすたーぞーんにとーくん4体を守備表示で特殊召喚致します」

幻奏の音姫マイスタリン・シューベルト　ATK2400　VS　スケープ・ゴースト　DEF0

「りばーすした後、スケープ・ゴーストは破壊されます」
「フィールドにトークン4体を残す形になっちゃったか……まあ仕方ないか。私はバトルフェイズを終了。カードを1枚セットしてターンエンド。そしてこのエンドフェイズにオスティナートの効果を発動。マイスタリン・シューベルトを破壊し、その融合素材一組を墓地から特殊召喚するわ！ 来なさい、アリア！ エレジー！」

　シューベルトが深々と一礼しながら消えると、その場所には代わって2体の幻奏モンスターが現れる。最もこれが林檎の得意戦術であった。

「特殊召喚に成功したアリアとエレジーが存在する限り、私の幻奏モンスターは戦闘と効果で破壊されず、効果の対象にならなくなるわ。そして攻撃力は300ポイントアップする。これでターンエンド」

幻奏の音女エレジー　ATK2000→ATK2300
幻奏の音女アリア　ATK1600→ATK1900


香織　LP8000　手札2枚
デッキ：35　モンスター：4（黒羊トークン×4）魔法・罠：2　墓地：1　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：0（0）
林檎　LP8000　手札5枚
デッキ：32　モンスター：2（幻奏の音女エレジー、幻奏の音女アリア）魔法・罠：0　墓地：2　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：14（0）


☆TURN03（香織）

「私のたーんです。どろー。私は黒羊トークン2体をりりーす致します」
（トークンを複数体用意したってことはやっぱり最上級をアドバンス召喚するデッキなのかな）
「トークン2体をりりーす。私はもんすたーをあどばんすせっと致します」
「はい？」

　香織の行動に思わず変な声が出てしまう林檎。最上級モンスターをセットする場合、普通にアドバンス召喚を行う時と同じようにそのレベルに応じたリリースが必要になる。しかし、大体の最上級モンスターは高ステータスであるため、特別な事情がある限り、セットする必要はまるでないと言えるのだ。

（アドバンスセット……やる人初めて見たんだけど）
「私はこれでたーんえんどでございます」


香織　LP8000　手札2枚
デッキ：34　モンスター：3（黒羊トークン×2）魔法・罠：2　墓地：0　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：0（0）
林檎　LP8000　手札5枚
デッキ：32　モンスター：2（幻奏の音女エレジー、幻奏の音女アリア）魔法・罠：0　墓地：2　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：14（0）


（……アドバンスセット、か。なるほど、大体読めたわ）

　紫苑は傍観者としてこのデュエルに接しながらも、香織のデッキの内容をだいたいではあるが把握した。アドバンスセットという珍しい方法のモンスターの召喚方法を行うデッキとなれば絞られる。2体のモンスターをリリースしてセットするということは、そのセットモンスターは最上級モンスターであることがわかる。

（あのモンスターは2種類のうちのどちらか。でも片方はより相性のいいモンスターが存在しているからあのような方法ではフィールドには出さない。となれば……林檎があのモンスターをどう対処するかだけど）


☆TURN04（林檎）

「私のターン、ドロー！」
（あのセットされたモンスターが何かわからないけど……セットするってことはリバースモンスターのはず。でもリバースさせたところで特殊召喚されたアリアとエレジーの壁を崩せるモンスターはそうはいない。だったら攻めるだけよ！）
「私のフィールドに幻奏モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できるわ！ 来て、幻奏の音女ソナタ！ 特殊召喚したソナタがフィールドに存在する限り、私のフィールドの天使族の攻撃力・守備力は500ポイントアップする！」

幻奏の音女エレジー　ATK2300/DEF1200→ATK2800/DEF1700
幻奏の音女アリア　ATK1900/DEF1200→ATK2400/DEF1700
幻奏の音女ソナタ　ATK1200/DEF1000→ATK2000/DEF1500

「なんと、攻撃力2000を超えるもんすたーばかり……」
「それでいて効果の対象にならず、戦闘・効果で破壊されない。この子たちがいる限り、私に攻撃は届かないわ！ バトルよ！ アリアとソナタで黒羊トークンを攻撃するわ！」

幻奏の音女ソナタ　ATK2000　VS　黒羊トークン　DEF0

幻奏の音女アリア　ATK2400　VS　黒羊トークン　DEF0

「トークンを狙いましたか」
「残しとく理由はないしね。そしてエレジーでそのセットされたモンスターを攻撃！ 幻音の哀歌！」

　エレジーの悲哀が込められた歌声がフィールドに響き渡る。その歌声に呼応するかのように、セットされていた香織のモンスターが表側表示になる。まるでご来光を感じさせるような光と共に現れたのは和装の美しい女性のような姿をしたモンスターだった。そのモンスターの姿を見た瞬間、林檎の時が止まる。

「あなたのもんすたーの歌声は大層美しいもので御座いました。しかし、その美しい歌声が故に眠りに付かれていた我が国の最高神を目覚めさせてしまったようですね。せっとされていたもんすたーは《天照大神》です」

《天照大神（アマテラス）》
スピリット・効果モンスター
星9/光属性/天使族/攻3000/守3000
このカードは召喚・特殊召喚できない。
(1)：裏側表示のこのモンスターを対象とする魔法・罠・モンスターの効果を相手が発動した時、このカードを表側守備表示にして発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。
(2)：このカードがリバースした場合に発動する。このカード以外のフィールドのカードを全て除外する。
(3)：このカードがリバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。

「天照大神……！？ あなたのデッキはもしかして【スピリット】！？」

　スピリットモンスターは特殊召喚できず、召喚・反転召喚に成功したターンの終了時に自分の手札に戻ってしまうモンスターである。
　召喚権を消費したのにも関わらず、ターンの終了時に自分の手札に戻ってしまうというのはなんとも癖の強い効果ではあるが、その分強力な効果を持ったモンスターが多い。
　そしてそれらのモンスターはこの日本の神話に伝わる神々をモチーフにしたものが多く、如何にも大和撫子といった外見をした香織が使うにはある意味イメージ通りであるといえた。

「はい。私たちの命と大地を育まれた神々のかーどを使わせて頂いております。ではりばーすした天照大神の効果を発動致しますが……まずは、音無さんに戦闘だめーじを受けて頂きます」

幻奏の音女エレジー　ATK2800　VS　天照大神　DEF3000

林檎　LP8000→7800

「そして天照大神がりばーすした場合、天照大神以外のふぃーるどのかーどを全て、除外させて頂きます」
「除外……」

　アリアとエレジーの2体で防げるのはあくまで破壊および対象に取る効果。しかし、天照大神のリバース時の効果は自身以外全てのカードをゲームから除外する効果で、もちろん対象を取る効果ではない。そのため、アリア・エレジーでも防ぐことはできないのだ。

「天照大神の効果により、全てのかーどを除外致します。“天照す神の御力”」

　太陽の化身たる最高神の光が一切を消し去った。自分のセットカードも含め、フィールドに存在していた天照大神以外のカード5枚が異空間へと消される。自身のカードを発動もせずそのまま除外してしまうという香織という第一印象に似合わない豪快な戦法に林檎は空いた口が塞がらなかった。

「……まさかこんなにあっさり私の幻奏たちが」
「今は音無さんのたーんです。如何致しますか？」
「バトルフェイズを終了。私は……カードを2枚セットしてターンエンドよ」
（このたいみんぐでかーどをせっとされますか）
「ではたーんの終了時にりばーすした天照大神は手札に戻ります」


香織　LP8000　手札3枚
デッキ：34　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：1　Pゾーン：青/赤　除外：2　EXデッキ：0（0）
林檎　LP7800　手札3枚
デッキ：31　モンスター：0　魔法・罠：2　墓地：2　Pゾーン：青/赤　除外：3　EXデッキ：14（0）







○後書き
効果に重大な瑕疵がありましたので、前回版は削除し、修正版を再掲載させて頂きました。申し訳ありませんでした。