第115話：継承（修正版）　作：光芒

☆TURN02（林檎）

「私のターン、ドロー！」
「ではこのスタンバイフェイズにセットしているカードを発動するでござる！ 永続罠、忍法 超変化の術でござる！」

《忍法 超変化の術》
永続罠
自分フィールド上の「忍者」と名のついたモンスター1体と相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを墓地へ送り、そのレベルの合計以下のドラゴン族・恐竜族・海竜族モンスター1体を自分のデッキから自分フィールド上に特殊召喚する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターをゲームから除外する。

「某のフィールドのHANZOの貴殿のフィールドのマイスタリン・シューベルトを墓地に送り、そのレベルの合計以下のレベルのドラゴン族・恐竜族・海竜族モンスター1体をデッキから特殊召喚するでござる！」

　華麗な身のこなしで飛び上がったHANZOがマイスタリン・シューベルトの後ろへと回り込む。マイスタリン・シューベルトがそれに反応する前にHANZOとマイスタリン・シューベルトの身体は煙に包まれて消えていった。そして千代のフィールドには白い龍を纏ったくノ一の姿をしたモンスターが現れていた。

「我がデッキより《白竜の忍者》を特殊召喚するでござる！」

《白竜の忍者》
効果モンスター
星7/光属性/ドラゴン族/攻2700/守1200
このカードを特殊召喚する場合、「忍法」と名のついたカードの効果でのみ特殊召喚できる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の魔法・罠カードはカードの効果では破壊されない。

「メインフェイズ1。まあ見え見えだったけど、実際にやられるときっついね……」
「どうだ、もどかしいであろう！ わかっているのに罠を防げないと言うのは！ 白竜の忍者が存在する限り、某の魔法・罠カードはカードの効果では破壊されないのでござる！」
「でも攻撃力はエレジーより下だから無意味だよね？ 私は《コーリング・ノヴァ》を召喚！」

《コーリング・ノヴァ》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1400/守800
(1)：このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから攻撃力1500以下の天使族・光属性モンスター1体を特殊召喚する。フィールドに「天空の聖域」が存在する場合、代わりに「天空騎士パーシアス」1体を特殊召喚できる。

コーリング・ノヴァ　ATK1400/DEF800→ATK2200/DEF1300

「そしてバトル！ エレジーで白竜の忍者を攻撃！」

幻奏の音女エレジー　ATK2800　VS　白竜の忍者　ATK2700

「なんの！ 某はもう1枚のリバースカードを発動する！ 白竜の忍者を対象に永続罠《安全地帯》を発動！」

《安全地帯》
永続罠
フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
(1)：このカードが魔法＆罠ゾーンに存在する限り、その表側表示モンスターは、相手の効果の対象にならず、戦闘及び相手の効果では破壊されず、相手に直接攻撃できない。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。

「白竜の忍者は安全地帯によって戦闘および効果では破壊されない！」
「でもダメージは受けてもらうわ！」

千代　LP8000→LP7900

「ぐっ、だがこれで白竜の忍者は強固な耐性を得た！ 肉を切らせて骨を断つとはこのことでござる！」
（白竜の忍者と安全地帯……使い古されたコンボとはいえ、いざ相手にすると面倒だなぁ。私のデッキにあれを突破できるモンスターはいないし……）
「ちょっと痛いけど、仕方ないわね！ コーリング・ノヴァで白竜の忍者を攻撃！」

コーリング・ノヴァ　ATK1400　VS　白竜の忍者　ATK2700

林檎　LP7800→LP6500

「破壊されて墓地に送られたコーリング・ノヴァの効果！ デッキから攻撃力1500以下の光属性・天使族モンスター1体を特殊召喚するわ！ 特殊召喚するのは攻撃力400の《幻奏の音女セレナ》よ！」

《幻奏の音女セレナ》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻400/守1900
(1)：天使族モンスターをアドバンス召喚する場合、このカードは2体分のリリースにできる。
(2)：このカードが特殊召喚に成功したターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに「幻奏」モンスター1体を召喚できる。

幻奏の音女セレナ　ATK400/DEF1900→ATK1200/DEF2400

「メインフェイズ2に移るわ。私はセレナをリリースして手札の《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》をアドバンス召喚！」

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》
効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2600/守2000
このカードの効果を発動するターン、自分は光属性以外のモンスターを特殊召喚できない。
(1)：1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。手札から天使族・光属性モンスター1体を特殊召喚する。

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト　ATK2600/DEF2000→ATK3400/DEF2500

「なんと、既に召喚権は使っているはず！」
「セレナは天使族モンスターをアドバンス召喚する場合、2体分のコストにすることができる。そして特殊召喚に成功したターン、幻奏と名のついたモンスターの召喚権を増やすことができるのよ！ そしてプロディジー・モーツァルトの効果を発動！ 手札から天使族・光属性のモンスター1体を特殊召喚するわ！ 私はアテナを特殊召喚！」

アテナ　ATK2600/DEF800→ATK3400/DEF1300

　アテナは1ターンに1度、自身以外の天使族モンスター1体を墓地に送り、アテナ以外の墓地の天使族モンスター1体を特殊召喚することができる。そしてアテナ以外の天使族モンスターの特殊召喚に成功するたびに相手に600のバーンダメージを与える効果を持っていた。

「アテナの効果を発動！ モーツァルトをリリースし、今リリースしたモーツァルトを特殊召喚！ そして天使族モンスターが特殊召喚されたことで効果を発動！ 相手ライフに600ダメージを与えるわ！」

千代　LP7900→LP7300

「私はこれでターンエンドよ！」

千代　LP7300　手札3枚
デッキ：32　モンスター：1（白竜の忍者）魔法・罠：2（忍法 超変化の術、安全地帯）墓地：2　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：15（0）
林檎　LP6500　手札1枚
デッキ：28　モンスター：4（幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト、アテナ、幻奏の音女エレジー、幻奏の音女ソナタ）魔法・罠：2（リビングデッドの呼び声、奇跡の光臨）墓地：4　Pゾーン：青/赤　除外：2　EXデッキ：14（0）

（林檎の幻奏モンスターは効果で破壊されず、モーツァルトとアテナは攻撃力3000超え。これで相手は迂闊に攻め込めない。でも何故かしらね、この胸騒ぎは……）


☆TURN03（千代）

「某のターン、ドロー！ 成程、攻撃力3000を超えるモンスターを含んだ計4体のモンスター、そして何れもが効果で破壊されない。見るからに穴のない布陣でござるな」
「一応こっちも色々と考えてデッキを作っているからね！ それだけ勝ちたいって思いが強いってことなのよ！」
「勝ちたい、か。それは某も同じでござる！ 例え蟻の巣穴の如き小さな穴であっても、そこから使命を果たす！ それが忍びというものでござる！ 相手フィールドに2体以上同じ属性のモンスターが存在する場合、このモンスターは手札より特殊召喚ができる！ 出でよ！《神禽王アレクトール》！」

《神禽王アレクトール》
効果モンスター
星6/風属性/鳥獣族/攻2400/守2000
相手フィールド上に同じ属性のモンスターが表側表示で2体以上存在する場合、
このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択する。選択されたカードの効果はそのターン中無効になる。「神禽王アレクトール」はフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

「アレクトール？ またまた珍しいモンスターを……」
「鳥獣族であるため忍法で特殊召喚できるのでござる。そしてアレクトールの効果。フィールド上に表側表示で存在するカード1枚の効果をターン終了時まで無効にする！ 対象はエレジーでござる！」

　アレクトールの放った突風によって、エレジーによる攻撃力アップと効果破壊耐性の二つが一時的にであるが消失する。それに伴い、攻撃力300アップの効果も失われる。

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト　ATK3400→ATK3100
アテナ　ATK3400→ATK3100
幻奏の音女エレジー　ATK2800→ATK2500
幻奏の音女ソナタ　ATK2000→ATK1700

（……エレジーとソナタの攻撃力が白竜の忍者を下回った。でも、こっちにはプロディジー・モーツァルトもアテナもいる。アレクトールを出しても何も変わらないはず）
「某は手札より《黄昏の忍者-カゲン》をPゾーンにセッティング！」

《黄昏の忍者-カゲン》
効果モンスター
星1/闇属性/戦士族/攻0/守2000
【Pスケール：青10/赤10】
(1)：自分は「忍者」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。
(2)：1ターンに1度、自分の「忍者」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。そのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで1000アップする。
【モンスター効果】
(1)：このカードをリリースし、自分フィールドの「忍者」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

「ペンデュラムモンスター！？」
「カゲンのP効果は忍者モンスター1体の攻撃力をダメージステップ終了時まで1000アップさせるもの！ バトルフェイズでござる！ 白竜の忍者でエレジーを攻撃！ そしてカゲンのP効果で白竜の忍者の攻撃力を1000アップさせるでござる！ “忍法 白竜の舞”！」

白竜の忍者　ATK2700→ATK3700　VS　幻奏の音女エレジー　ATK2500

林檎　LP6500→LP5300

「そしてアレクトールでソナタを攻撃！」

神禽王アレクトール　ATK2400　VS　幻奏の音女ソナタ　ATK1700

林檎　LP5300→LP4600

「エレジーとソナタが存在しなくなったことで、モーツァルトとアテナの攻撃力は元に戻る」

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト　ATK2600/DEF2000
アテナ　ATK2600/DEF800

「それでもアテナの効果でエレジーやソナタを特殊召喚すればまだ……！」
「メインフェイズ2。これで決める！ 魔法カード、ブラック・ホールを発動！」
「ブラック・ホール！？」
「ブラック・ホールの効果でフィールドのモンスターを全て破壊する！ もちろん安全地帯に守られている白竜の忍者は守られるがな！！」

　フィールドの中心に空いた漆黒の大穴に吸い込まれていく互いのモンスターたち。アレクトールを捨て石にまでして林檎のモンスターたちを破壊するのはまさに主君のために時にその命を捨てて使命を遂行した忍びの精神に近いものがあり、忍びを自称する千代のデュエルはその決意に満ち溢れているのだ。

「そして2体目のHANZOを召喚！ その効果でデッキより《忍法 変化の術》を手札に加えてセットし、ターンエンド。さあ、辞世の句をしたためる時が来たでござる」


千代　LP7300　手札0枚
デッキ：30　モンスター：2（白竜の忍者、忍者マスター HANZO）魔法・罠：3（忍法 超変化の術、安全地帯）墓地：4　Pゾーン：青/赤10（黄昏の忍者-カゲン）除外：0　EXデッキ：15（0）
林檎　LP00　手札1枚
デッキ：28　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：10　Pゾーン：青/赤　除外：2　EXデッキ：14（0）


☆TURN04（林檎）

「悪いけど、まだ辞世の句を書くつもりはないから！ 私のターン、ドロー！」
「ではこの瞬間、セットしていた忍法 変化の術を発動！」

《忍法 変化の術》
永続罠
(1)：自分フィールドの表側表示の「忍者」モンスター1体をリリースしてこのカードを発動できる。リリースしたモンスターのレベル＋3以下のレベルを持つ獣族・鳥獣族・昆虫族モンスター1体を、手札・デッキから特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

「某はHANZOをリリースし、レベル7の鳥獣族モンスター、ダーク・シムルグを特殊召喚するでござる！」
「ダーク・シムルグ……っ、私は……ターンエンド」
（どうやらここまでかな。紫苑のためにカードを残したかったけど、ダムルグなんて出されちゃどうしようもない）


千代　LP7300　手札0枚
デッキ：31　モンスター：2（白竜の忍者、ダーク・シムルグ）魔法・罠：3（忍法 超変化の術、忍法 変化の術、安全地帯）墓地：5　Pゾーン：青/赤10（黄昏の忍者-カゲン）除外：0　EXデッキ：15（0）
林檎　LP4600　手札2枚
デッキ：27　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：10　Pゾーン：青/赤　除外：2　EXデッキ：14（0）


☆TURN05（千代）

「某のターン、ドローでござる。手札が悪かったのか、それとも御味方に託したのか……いずれにせよ香織殿と某を相手取ってここまで粘ったことは称賛に値する。ならば我が脳裏にその名を刻んだ上でお命を頂戴致す！ 某は《黄昏の忍者-シンゲツ》を召喚！

《黄昏の忍者-シンゲツ》
効果モンスター
星4/闇属性/戦士族/攻1500/守100
「黄昏の忍者－シンゲツ」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手は他の「忍者」モンスターを攻撃対象にできず、効果の対象にもできない。
(2)：このカードが戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「黄昏の忍者-シンゲツ」以外の「忍者」モンスター1体を手札に加える。

「そしてバトル！ まずはダーク・シムルグでダイレクトアタック！ “イビルウィンド・デスストーム”！」

ダーク・シムルグ　ATK2700

林檎　LP4600→LP1900

「そしてシンゲツでダイレクトアタック！ カゲンの効果でシンゲツの攻撃力を1000アップさせる！」

黄昏の忍者-シンゲツ　ATK1500→ATK2500

「っ、どうせなら忍者相手に言ってみたかったセリフを言って負けちゃおうかな。アイエエエッ！」
「それは某が言う側でござる！」

林檎　LP1900→0

　どうせなら、自分一人で美鈴を引っ張り出したかったな、と思いながら尽きる林檎のライフ。しかし、千代の言うように二人を相手取った連戦でここまで戦えたのは称賛に値することである。そして、そんな林檎の想いは紫苑へと継承された。