28枚目 重機王ドボク・ザーク　作：紅瑠璃

回り込まれてしまった蜜柑たち。ここで終わりかと感じたそのときだった。地面を揺るがす何かが近づいてきた。

「にゃに…あれ。」

見れば大きい機械だ…幾つか砲台がついている。犬たちはその機械がなんなのか知っているのか、逃げ出してしまった。

「あんたら！早く乗りな！」

機械から人の声がする。機械生命体ではないらしく、扉が開いた。突然機械が現れ、乗りなと言われてもそりゃぁ警戒する。それを相手も悟ったのか一人の人間が降りてくる。歳は真保と同じぐらいの男で、デュエルディスクをつけていた。

「俺の名はラス・オント。ここにいると危ないだろ！シムアテに行くから来てくれ！」

真保はラスに腕を引っ張られ、その機械の中に入った。私たちはそれについていくように入っていった。

～シムアテ～

たどり着いた町は被害はすくなかったのか子供達が元気よく遊んでいる。そんな子供達はいつの間にか私たちの回りを囲んでいた。何も珍しいものを身に付けない。しかし、ふと聞いた子供の言葉に私…アスナ・キルディムは耳を疑った。

「大人だ！大人だ！久しぶりに大人を見た。」
「大人…ねぇ。君のお父さんとお母さんは？」
「いないよ。」
「っ！？…ど、どこに…。」

何かを言いたそうだが言葉が出てこないのか口を開けることはなかった。ラスは私たちを自宅へと連れていってくれた。家の中には大人が見当たらない。部屋の窓から大きな機械が見えた。真保はあれをバケットホーイルエクスカベーターだと教えてくれた。物に王と言うのはどうだろう。だが、王のようなどっしりと建っている。この町のシンボルなのか。

「ねぇ…ラス。ここに大人は…。」
「連れてかれちまったよ。ここにいる大人はみーんな。老いていようが関係なくな。」
「自己紹介が遅れたわね。私はアスナ・キルディム。この眼鏡ちゃんが宮野真保。この子が猫山蜜柑。」
「改めて…ラス・オント。何であんなとこに居たんだ？」
「オードレアンが酷い被害を受けたってかなり前に聞いてね。見に来たわけよ。んで、あなたに助けられ、今聞くと…大人が連れてかれたと。」
「あぁ。数日前だかな…。仮面をつけた連中が俺たちの両親を連れていったんだ…。あと、友達の兄も連れてかれたとか。歳は…そう！蜜柑と同じぐらいだったかな」

仮面の刺客は蜜柑のような年齢から大人と見なしているのか…なるほど。このシムアテで大人は私と蜜柑なのか。しかし、大人をつれていく辺り、酷いやつらだとわかる。

「ねぇ。ラス。お父さんとお母さんはどこに連れてかれたかわかる？」
「オードレアンのどこかってのはわかるんだが…。」
「オードレアンっ！？」

オードレアンは先程居たところではないか！アスナさんが割って入ってきた。

「ラスはこれからどうしたいと？」
「そりゃぁ助けにいく！今すぐにでもな！」

子供の答えだな…。

「そんな無謀な！相手は何をして来るかわからないのよ！？偵察など武具の強化…技術の進歩をするべきじゃない？」

真保らしい答えだ。

「そうね。大人を連れていったと言うことは教育をさせない。が大きいんじゃない？ここには大人が二人いるじゃない！」
「そんなことをしている暇は…。」
「無駄死にする気？」

ラスは言葉を失った…。私は蜜柑と真保に子供たちを連れてくるように頼んだ。

「ラス。あなた…機械を作るのは得意？」
「まぁ…簡単なものなら…。」
「１つ頼みたいな。」

～数分後～

二つの部屋に子供が集まった。その光景を見るとゾッとする。

「蜜柑…私たちが教育するのよ！」
「う、うん…。」
「蜜柑さん…私がついてるよ。」

～オードレアン～

「また…戻ってきちゃった。」

私…クユリルはまたオードレアンに戻ってきてしまった。今度は時計塔の中…さっきまでアイツ等と居たところだ。また、私が最後に逃げ込んだとこだ。

「ん？こんな扉あったっけ？」

私は覚えのない扉を見つけた。恐る恐る開けてみると地下に続くような階段があった。降りていくと機械音する。

「何…この光景。」

たくさんの大人が首に何かをつけられ、作業をしていた。巨大地下都市…そういってもよいほどだった。

「おぉ！クユリル！」
「この声は…ボマー！」

ボマー・ギムレ。私たちの仲間だ…。

「ボマー！この光景は！」
「まぁ、部屋にでも入って、お茶でもどうだい？」

私はボマーに誘われたが、断りここで話すよう言った。すると彼はため息を１つ溢し、話始めたのだった。