24枚目 モンスター・パイ　作：紅瑠璃

「…」

コツコツと足音が響く。ここは闇の中…。私はクユリル・シェイクバーン…。さて、私はこんな闇の中、どこへ向かうのか…。

「うぅ…クユリル。待って…お腹すいた。」

私の目の前に現れたのはいまにも倒れそうなフローム・ゲーテだった。こないだの戦いで疲労して今でも倒れそうだ…まぁ元々運動なんてしないひきこもりタイプだし。仕方ないか。

「わかったわよ。フローム。」

～キッチン～

私はフライパンを手に肉を焼く。闇の世界なのにキッチンがあるなんて初めは驚いたが今はなんともない。

「ねぇ～え。クユリルは何処に行こうとしたの？」
「まぁ、里帰りみたいなものよ。」
「ふぅ～うん。初めて闇を見た場所だっけ？あの日…あんなことが無ければあなたは闇に居なかったのかもね。」
「…。」
「力に恐れ屈従。」

私はその言葉に手を止める。その当時の記憶が頭をよぎる。

「クユリル…お肉が焦げるわよ？」
「ふぅ…。」
「あんた…よく、クラヌと要るけど。変なこと考えてないわよね？」
「変なことって？」

フロームは静かに「変なこと」を口にする。

「オスクリタ様を殺すことよ…」

緊張感が部屋一帯に広がる。冷や汗も出てしまう。

「ふふっ私の思い過ごしかもね…そんな馬鹿な事、しないと信じてるわ♪」
「あんたに信じられてもな…。ほら、ステーキよ。」

フロームはこれまた美味しそうにステーキを食べる。人が美味しそうに食べてくれるのを見るのが私にとっては嬉しい。

「それじゃ…行ってくるわ。…冷蔵庫にパイがあるからさ、皆で食べてな。」

私の故郷…アンブル。初めて闇をその目にし、身も心も負けた…そして染まってしまった場所…。

「冷蔵庫…これかしら？…何これ？下手物？」

冷蔵庫をあると言うパイは…少々グロテスクだが…クユリルの料理は不味いものがない。まぁ、ボマー辺りにあげれば良いか。

～船の上～

この船には賑やかな旅の者がいる。アスナ・キルディム。猫山蜜柑。宮野真保。オジネクスを出てまだ隣の国にたどり着かない。そのせいか真保の様子がおかしい。指で机をカチカチ叩き、貧乏ゆすりをしている。

「ね、ねぇ…真保…どうしたのかな？」
「にゃんで私にいうの。」
「本人に言えないじゃん！」

小声での会話がイラつくのか…無言でこちらを向く。異様に怖い。

「にゃ、にゃんでご機嫌が…その…。」
「…抹茶…。」
「「…？」」
「抹茶がないのよ！もう…何日飲んでないのかしら…。」

真保は抹茶を飲んでないことにイラついている。蜜柑はその抹茶を知っているがアスナ・キルディムには抹茶がどんなものか知らない。

「どんなものか私は知らないけどもっと大きいとこならあるんじゃないかな。」
「…。」
「はぁ…。あそこの水上バーに行きましょっか。もしかしたらあるかもね。」

聞いたことない…水上バー。まぁ聞いた通り、海に浮かぶ飲み場だろう。そのバーは目的地とは少々離れているが行ってみる価値はある。私たちは水上バーに向かうことにした。