26枚目 影牢の呪縛　作：紅瑠璃

～クユリルの記憶と目線～

あの日、あのとき、いつもと変わらぬ１日になるはずだった…アイツが来なければ。私は当時、近所のパン屋のおばさんの所にいた。そのおばあさんは優しく皆の人気者だ。私の町は世界中から美食家が来るほど美味しい店が建ち並ぶ…この店もそうだ。

「あぁらいらっしゃい♪」
「おばさん！このジャムパン頂戴！」

あぁ…ジャムパン。当時この店で好きなものだったな…。現在そのパン屋は…そうだな、当然だな。ひどい有り様だ…店内には人の気配がしない。たまたま落ちているパンはカビがついている。また記憶が蘇る。

「230シリングね。」
「はーい！」

そのジャムパンを食べながら私はある場所で空を眺める。コレが毎日の習慣のようで体が勝手に動くほど行っていた。その道の途中…。

〈ズザンッ！〉

町に響き渡る何かが斬れる音。振り替えると近くの小高い建物が壊れている。逃げ惑う人々…私もその中の一人だ。訳も分からず逃げるが逃げた先で闇が立ち込める。中からいかにも怪力男が現れた。

「早く…星の源を差し出しな！」

星の源…。当時の私は聞いたことがないフレーズだった。誰も何も答えないのをイラついたのか壁を強く叩く。殴るとも言うのか…殴られた建物は倒壊した。私はなんとか逃げることができたが逃げ遅れた人はその下敷きになる。流れる血、匂う鉄…私の足はすくみ、立ち上がることが出来なかった。

「ラギル！派手にするのは寄せと…」
「良いじゃないか…。この街は美味しそうな匂いがするじゃないか…。私も星の源なんか探していなければグルメの旅に出たいものだな。」
「オ、オスクリタ様…。」

軍服の男…ラギル…オスクリタ。コイツらがこの街に現れた理由は星の源だろう。私たち市民は逃げた。どこへ逃げればわからないが生きるため逃げた。その度に何人もの市民が殺された。殺された中に…あのパン屋のおばさんもいた。友人もいた。お世話になっている人もいた。住民は10分の1までに減った。私が最後に逃げこんだ場所…それはこの町のシンボルとも言う時計塔。最後…と言うことは殺されたのか？いやいや、それでは困る。しかし、当時の私はいつ殺されるのか怖かった。恐れていた。闇が深くなっていくような感覚だったのは紛れもない確かなこと。震えが止まらなかった。最後と言う意味とは？私は心を病んでしまったのか…彼らが居るところに向かったのだ。彼らの行動パターンは代替理解していた…その時間帯彼らは私がいつも空を眺めている場所にいる…そして見つけた。闇の存在。

「なんだい…お嬢ちゃん。敵討ちかい？」
「…。」

敵討ち…確かにそれもしたい。だが今は命が欲しい。目的は命乞い…屈服した。ただでとは言わない。私は彼らの前で土下座し、こう口にした口にした。

「私は…あなたたちに付き、あなたたちの役に立つことを誓います！だから！この町を襲うのは止めてください…。」
「…無意味な…。」

声からして軍服の男が私の首筋に刃物を当てるが、一人の男…オスクリタが止めた。

「良いじゃないか…。仲間が増えるのは良いことだ。君が我々の仲間になることを認めよう。」
「オスクリタ様っ！」
「これほど探して見つからないんだ。これ以上の破壊は…再生に繋がらない。早速だが…君の名は？」
「クユリル…クユリル・シェイクバーン…。」

そして私は左肩に刻印を押された…。そして今に至る。私の約束通り、その日以来人々を襲うことはなくなった。が、クラヌがオスクリタの不在中にこの町から星の源を回収したと聞いた。そして他の二つと合わせ…融合の神、【維持極帝神皇－ヴィシュヌ】を復活させた。

～水上バー～

「このデッキ…おもしろい！【バイオ・ゲノム】デッキ面白いです！」
「そう！ヴァルコニア王国に帰ったらゴブリンに礼をしなきゃね。」
「みゃぅ…惜しかったよ。」

真保、蜜柑はデュエルを一通り終えたのか帰って来た。随分と長いことしていたが3勝2敗で真保が多く勝っている。このデッキは手札はコストで墓地は手札のような動きをする。

「さて、次の町にいきましょうか…。」
「次の町については何か聞きましたか？」
「あぁ…かつては美食家の町食の町…今は死人の町死の町。そんなとこよ。」
「にゃんていう所？」
「オードレアンよ。なぁにその次の町はちゃんと生きている町だから。」

何があったのか…それを知るのも旅だ。私たちはこの水上バーに別れを告げ、オードレアンを目指す。