第125話：一輪　作：光芒

☆TURN03（遊大）

　キメラフレシアは攻撃力2500と最上級モンスターの中では低い方ではあるが、その効果は強烈だ。1つ目の効果は自身のレベル“以下”、即ちレベル7までのモンスターをゲームから除外するというもの。Xモンスターには効かないが、遊大のデッキの主戦力はレベル7のモンスターが大半を占めているため、キメラフレシアを残せばこの効果でモンスターを食い尽くされてしまう。
　そして2つ目の効果は相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時にそのモンスターの攻撃力を1000下げ、自身の攻撃力を1000アップさせるというもの。自分から攻める時限定とはいえ、攻撃力4500のモンスターまでなら処理できるのだ。仮にこちらからの攻撃で撃破されたとしても、墓地へ送られた次のスタンバイフェイズ時に3つ目の効果でデッキから融合もしくはフュージョンカード1枚をサーチする。遊章得意の融合召喚に繋げられるのだ。

（1体目のキメラフレシアの効果は発動する。そうなる前に融合素材になるキメラフレシア自体を処理しなければならない）
「俺のターン、ドロー！」
「ではこのスタンバイフェイズに前のターンに墓地に送られたキメラフレシアの効果を発動します。私はデッキから2枚目の融合を手札に加えます」

　置換融合は融合としても扱うため、本物の融合カードと合計して3枚までしかデッキに入れることはできない。そのため遊章のデッキに眠る融合が全て消えたことになる。

「俺のフィールドのモンスターはがら空きだが、手札とEXデッキにカードは揃っている！ 俺は手札からレベル7のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、EMペンデュラム・マジシャンを、EXデッキから慧眼の魔術師をペンデュラム召喚！」

　オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを中心に、2体の魔法使いがオッドアイズを護衛するが如く遊大のフィールドに現れる。最もこの3体の力だけでキメラフレシアは突破できないのは遊大が一番わかっていた。

「そしてペンデュラム召喚に成功したペンデュラム・マジシャンの効果を発動！ 自分フィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊したカードの数だけデッキからEMモンスター2体を手札に加える。俺はPゾーンの魔術師2体を破壊し、デッキから《EMリザードロー》と《EMギタートル》を手札に加える！ そして魔術師が破壊されたことで星霜のペンデュラムグラフの効果が発動！ デッキから《紫毒の魔術師》を手札に加える。まずはスケール6のギタートルをPゾーンにセッティング！」

《EMギタートル》
ペンデュラム・効果モンスター
星1/水属性/水族/攻300/守400
【Pスケール：青6/赤6】
「EMギタートル」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：もう片方の自分のPゾーンに「EM」カードが発動した場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。
【モンスター効果】
(1)：1ターンに1度、自分のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードのPスケールをターン終了時まで2つ上げる。

「そしてもう片方のPゾーンに同じくスケール6のEMリザードローをセッティング！」

《EMリザードロー》
ペンデュラム・効果モンスター
星3/地属性/爬虫類族/攻1200/守600
【Pスケール：青6/赤6】
「EMリザードロー」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：自分メインフェイズにもう片方の自分のPゾーンに「EMリザードロー」以外の「EM」カードが存在する場合に発動できる。このカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローする。
【モンスター効果】
「EMリザードロー」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカード以外の自分フィールドの表側表示モンスターが相手モンスターの攻撃または相手の効果で破壊された場合に発動できる。自分フィールドの「EM」モンスターの数だけ自分はデッキからドローする。

「もう片方のPゾーンにEMカードが発動した時、ギタートルのP効果を発動。俺はデッキからカードを1枚ドローする。そしてリザードローの効果も発動。もう片方のPゾーンにリザードロー以外のEMカードが存在する場合、このカードを破壊し、更にもう1枚デッキからカードをドローする！」
「星霜のペンデュラムグラフにペンデュラム・マジシャンの効果を加えて3枚ものカードを引き入れますか。見事なプレイングですね……」
「俺は手札の紫毒の魔術師を空いたPゾーンにセッティング」

《紫毒の魔術師》
ペンデュラム・効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻1200/守2100
【Pスケール：青1/赤1】
(1)：1ターンに1度、自分の魔法使い族・闇属性モンスターが戦闘を行うダメージ計算前に発動できる。そのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで1200アップする。その後、このカードを破壊する。
【モンスター効果】
このカードはルール上「フュージョン・ドラゴン」カードとしても扱う。
(1)：このカードが戦闘・効果で破壊された場合、フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

「これで俺のPスケールは1から6までに広がった。最も俺は既にペンデュラム召喚を行っているため、このターンペンデュラム召喚をすることはできない。だが、これで準備は整った。俺はレベル4の慧眼の魔術師とペンデュラム・マジシャンでオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚！ 現れよ、漆黒の闇に潜みし反逆の牙！ ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン！」
「ここでダーク・リベリオンですか……」
「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果を発動！ 1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ取り除き、相手フィールドに存在するモンスター1体の攻撃力を半分にし、その分ダーク・リベリオンの攻撃力を上昇させる！ “トリーズン・ディスチャージ”！！」

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン　ORU：2→0

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン　ATK2500→ATK3750

捕食植物キメラフレシア　ATK2500→ATK1250

「そしてバトル！ オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで捕食植物キメラフレシアを攻撃！ ”螺旋のストライク・バースト”！」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン　ATK2500　VS　捕食植物キメラフレシア　ATK1250

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果を発動！ モンスターとの戦闘で与えるダメージを倍にする！ “リアクション・フォース”！」

遊章　LP8000→LP5500

「くっ……」
「そしてダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンでダイレクトアタック！ “反逆のライトニング・ディスオベイ”！」

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン　ATK3750

遊章　LP5500→LP1750

「……っ！！ 見事です」
「一手足りなかったか。できればこのターンで終わらせてしまいたかったが……バトルフェイズを終了。俺はこれでターンエンド」


遊大　LP5400　手札2枚
デッキ：30　モンスター：3（オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ORU：0）魔法・罠：1（星霜のペンデュラムグラフ）墓地：8　Pゾーン：青6（EMギタートル）/赤1（紫毒の魔術師）除外：0　EXデッキ：11（3）
遊章　LP1750　手札3枚
デッキ：29　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：9　Pゾーン：青/赤　除外：0　EXデッキ：13（0）


☆TURN04（遊章）

「私のターン、ドローです。スタンバイフェイズにキメラフレシアの効果を発動。デッキから超融合を手札に加えます」
「超融合……」
「遊大、君のフィールドのモンスター2体は闇属性。私のエースモンスターの召喚条件を満たしますが……それではさすがに芸がないですね。私は墓地の置換融合の効果を発動します。このカードを除外し、墓地の融合モンスターであるキメラフレシア1体をEXデッキに戻して1枚ドローです」

　置換融合の効果によるドローで、遊章の手札は一気に6枚にまで膨れ上がった。最もその6枚のうちの4枚は融合2枚とエッジインプ・シザー、そして超融合と捕食植物以外のカードで占めていることが明かされているのだが。ただまだわかっていない2枚の手札によってはこのデュエルの行く末が大きく変わると言っていいだろう。

「私は《捕食植物オフリス・スコーピオ》を召喚」

《捕食植物オフリス・スコーピオ》
効果モンスター（制限カード）
星3/闇属性/植物族/攻1200/守800
「捕食植物オフリス・スコーピオ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。デッキから「捕食植物オフリス・スコーピオ」以外の「捕食植物」モンスター1体を特殊召喚する。

「召喚に成功したオフリス・スコーピオの効果を発動します。手札1枚をコストにデッキからオフリス・スコーピオ以外の捕食植物1体を特殊召喚します。私は手札のエッジインプ・シザーをコストに、デッキから《捕食植物コーディセップス》を特殊召喚します」

《捕食植物コーディセップス》
効果モンスター
星1/闇属性/植物族/攻0/守0
(1)：自分スタンバイフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のレベル4以下の「捕食植物」モンスター2体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は通常召喚できず、融合モンスターしか特殊召喚できない。

「そして手札から魔法カード、融合を発動します！ 私はフィールドの闇属性モンスター、オフリス・スコーピオとコーディセップスを融合します！」
「フィールドの闇属性モンスター2体……あのカードか」
「“蜜を求めしもの惑わす花よ。命奪いて生きるものと一つとなりて、美しくも畏怖抱かせし花となりて生まれ変われ。” 融合召喚！ 花開きなさい―――《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》！！」

　二つの植物が一つに結び付き生まれたのは、紫色の身体に所々に口のようなものがついた禍々しい竜であった。このモンスターこそが遊章のエースであり、最も信頼の置けるモンスター―――スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンだ。

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》
融合・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2000
トークン以外のフィールドの闇属性モンスター×2
(1)：このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を選び、その攻撃力分だけこのカードの攻撃力をターン終了時までアップする。
(2)：1ターンに1度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時まで、このカードはそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。
(3)：融合召喚したこのカードが破壊された場合に発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。

「融合召喚に成功したスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの効果を発動。ターン終了時まで相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をアップさせます。対象はダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンです」

　ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンは自身の効果で攻撃力を上昇させており、その効果に時限はない。だが、それが災いしてしまった。

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン　ATK2800→ATK6550

「攻撃力6550！？」
「そしてスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンのもう一つの効果。相手フィールドのレベル5以上のモンスターを対象として発動します。ターン終了時までスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンをそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得ます。対象は……言うまでもありませんね」

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン＝オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

「柔よく剛を制す。相手の力を上手く利用することも戦いにおいては必要なことなのですよ。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果、モンスターとの戦闘で発生したダメージを倍にする効果を得ます」
「オッドアイズの効果を……！！」
「もう少し楽しみたかったですが……終わりにしましょうか。バトルです」

　スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンとダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの攻撃力の差は2800。しかし、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果を得たスターヴ・ヴェノムがダーク・リベリオンを破壊すれば、発生するダメージは2800×2＝5600。遊大のライフは残り5400。この一撃で勝負が決まってしまう。

「終わらせない！ 俺は手札から《Emダメージ・ジャグラー》を捨てて効果を発動！」

《Emダメージ・ジャグラー》
効果モンスター（制限カード）
星4/光属性/魔法使い族/攻1500/守1000
「Emダメージ・ジャグラー」の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードを手札から捨てて発動できる。その発動を無効にし破壊する。
(2)：自分または相手のバトルフェイズにこのカードを手札から捨てて発動できる。このターン自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする。
(3)：自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「Emダメージ・ジャグラー」以外の「Eｍ」モンスター1体を手札に加える。

「ダメージ・ジャグラーの2つ目の効果！ バトルフェイズにこのカードを手札から捨てることで俺が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする！」
「……そうこなくては。ですが、ダーク・リベリオンを残しておいていいことはありませんので。スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンでダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを攻撃。“貪食のタイラント・ドレイン”」

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン　ATK6550　VS　ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン　ATK3750

「ダメージ・ジャグラーの効果でダメージは発生しない！」
「まあいいでしょう。ですが……私の手札にはこのカードがあることを忘れてはいけませんよ？ 手札1枚をコストに、速攻魔法・超融合を発動します！」
「超融合……まさか2体目のスターヴ・ヴェノムを？」
「それもできますが、スターヴ・ヴェノムの効果は相手フィールドにモンスターが存在しなければ意味がありません」

　スターヴ・ヴェノムには正統進化形ともいえるグリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンが存在している。しかし、その融合素材は元々のレベルが8以上の闇属性モンスターであり、遊大のオッドアイズのレベルは7。グリーディー・ヴェノムの融合召喚は不可能なのだ。

「私はスターヴ・ヴェノムと遊大のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを融合します」

　激しい光を放ちながら渦巻く渦にスターヴ・ヴェノムとオッドアイズが吸い込まれるように消えていく。絶対無敵、究極の力とまで言われ、どのようなモンスターであっても融合素材にしてしまう超融合から逃れられる者はいない。

「遊大、そう言えば君はI2社のデータベースにもないカードを持っていると聞きましたが……」
「……だったら何」
「覇王烈竜……その力がどれほどのものかは私は知りません。実際に相対したことはありませんからね。だから私にもわかるように説明して頂きたいのです。このカードと相対することで！！」

　遊章の手に握られていたのは、融合モンスターでありながらペンデュラムモンスターでもある1枚のモンスターカードであった。そのカードを見た遊大、そして遊希の顔色が変わる。

（父さん……あなたが何を考えているかはわかりません。ですが、この力を私に与えたということは、私がこの未知なるカードを我が物にできるということなのでしょうね。今それを証明してみせます）





―――“飢えた牙持つ毒竜よ。二色の眼持つ神秘の竜よ。二つの竜は一つとなりて、悲哀の涙溢れる戦場に咲く一輪の美しき花となる！”―――






―――禍々しき毒竜よ。今、神秘の力を以て転生せよ！！―――






―――融合召喚！！ 我が元に咲きほこれ！！―――










―――《覇王紫竜オッドアイズ・ヴェノム・ドラゴン》！！―――











　禍々しき毒の竜は、美しい花となった。そして、その美しき一輪の花は―――対峙する遊大に牙を剥いた。