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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第141話:落涙

第141話:落涙 作:光芒








「精霊の力がなんだと言うのだ!! 例え精霊であっても神には及ばない!!」
「本当に精霊の力が神を下回るか……試してあげるわ! 特殊召喚に成功した《覇王龍ズァーク》の効果を発動!! お願い、高海くん!」
―――はい、遊希さん!





《覇王龍ズァーク》
融合・ペンデュラム・効果モンスター
星12/闇属性/ドラゴン族/攻4000/守4000
【Pスケール:青1/赤1】
(1):このカードがPゾーンに存在する限り、相手フィールドの融合・S・Xモンスターは効果を発動できない。
(2):1ターンに1度、相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた時に発動できる。そのカードを破壊する。
【モンスター効果】
ドラゴン族の融合・S・X・Pモンスター1体ずつ合計4体
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。相手フィールドのカードを全て破壊する。
(2):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。デッキ・エクストラデッキから「覇王眷竜」モンスター1体を特殊召喚する。
(4):モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。





「覇王龍ズァークが特殊召喚に成功した時!」
―――相手フィールドのカードを全て破壊する!! それが例え、神であっても!! “覇王咆哮”!!

 ズァークが咆哮と共に強大な力の波動を放った。その波動を受けたライザーは瞬く間に消滅し、そしてラーの翼神竜もまた波動を受け続けた結果、微粒子レベルにまで砕かれて消えていった。ラーの翼神竜は確かに神のカードではあるが、相手の効果に対する耐性までは持ち合わせていなかったのである。

「バカな、ラーが敗れるだと?」
「神であっても、デュエルモンスターズである以上不死ではないということよ。これであなたのフィールドのカードは全て破壊された。もうズァークの攻撃を防ぐ術はない!」
―――終わりです。義父さん、覚悟はできていますか?
「……ふん、焦るな小僧共。ラーは太陽の化身。太陽は沈んでも再び昇るのだ。そう……不死鳥の如く!!」

 ズァークの効果によって一掃された遊厳のフィールドであるが、そのフィールドを金色に燃やしながら、地の底から全身を炎で纏った鳥のようなモンスターが悠然と舞い上がった。遊厳は前のターン、おろかな埋葬の効果であるカードを予め墓地へ送っていたのだ。それが3つに分かれたラーの翼神竜の最後の姿である。

「フィールドのラーの翼神竜が墓地へ送られた時。《ラーの翼神竜-不死鳥》は墓地から特殊召喚される!!」
「ラーの第三形態……!?」




《ラーの翼神竜-不死鳥(ゴッドフェニックス)》
特殊召喚・効果モンスター
星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000
このカードは通常召喚できず、このカードの効果でのみ特殊召喚できる。
(1):このカードが墓地に存在し、「ラーの翼神竜」がフィールドから自分の墓地へ送られた場合に発動する。このカードを特殊召喚する。この効果の発動に対して効果は発動できない。
(2):このカードは他のカードの効果を受けない。
(3):1000LPを払って発動できる。フィールドのモンスター1体を選んで墓地へ送る。
(4):エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送り、自分の手札・デッキ・墓地から「ラーの翼神竜-球体形」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。





―――攻撃力4000……俺と同じ?
「そうだ、ラーを倒したければ遊大。お前がその命を代償として捧げなければならない! 果たしてお前にできるかな? 自らの身体を、命を捨てて勝利を掴み取ることが! 失敗作のお前に!!」
「っ……」

 ラーの翼神竜-不死鳥は他のカードの効果を受けず、エンドフェイズに墓地へ送られる。だが、夜が終わり朝が迎えるのと同じように、眠りについた不死鳥はデッキ・手札・墓地から第一形態であるラーの翼神竜-球体形を召喚条件を無視して特殊召喚する。
 もし球体形を特殊召喚されてしまえば、遊厳にはまた攻撃力4000のラーの翼神竜の特殊召喚に繋げられてしまう。そうなればラーをズァークと相討ちさせることで、不死鳥の召喚条件を満たしてしまうのだ。そうなると遊希たちが負けないために取れる手段は一つしかない。

―――遊希さん。不死鳥は自身の効果で墓地に送られなければ、球体形を呼び出すことはできません。つまり、戦闘で破壊してしまえばいいんです。

 ズァークと不死鳥の攻撃力は同じ4000。ズァークと不死鳥を相討ちさせることで、ラーの輪廻転生の流れを断ち切ることができる。しかし、ズァークを破壊させるということは、ズァークである遊大にも少なからずダメージが生じるということだ。

「……だめよ」
―――どうして?
「確かにあなたの言う通りにすれば、ラーは倒せる。でも、そうするとズァークが……高海くんが!!」
―――大丈夫です、俺は。
「大丈夫って、なんの根拠があってそんなことを!!」
―――……根拠はありません。だけど、遊希さんが俺を信じてくれるのであれば、俺はきっと戻ってこれる。そんな気がするんです。精霊というかデュエリストの……直感ですね。

 自分の生死を直感に任せてしまう、というのはやはり精霊になってしまったからなのだろうか。到底理解できない感情ながら、遊大は平然と続ける。

―――それにこのデュエルはあのラーさえ倒してしまえば勝てるんです。
「何だと? ラーを倒されると私が負けると言いたいのか?」
―――はい。あなたの手札にこのカードを止める手段はない。

 そう言ってズァークが指差したのは遊希たちのフィールドにセットされた1枚のカードであった。マジシャンたちがアストログラフ・マジシャンとクロノグラフ・マジシャンになった時、それと同時にセットされたカード。セットされるということは、速攻魔法か罠カードの類なのだろう。

―――お願いします、遊希さん。ここであなたが決心してくれない限り、誰も義父さんを止めることができなくなるんです。
「……私があなたを信じれば、あなたは無事なのよね?」
―――たぶん。

 そこは「はい!」と言い切って欲しかった。だが、もはや四の五の言っていられる状況ではなかったのもまた事実だった。

「いいわ……だったらあなたのその賭けに乗ってあげる! まず私は手札から速攻魔法《大欲な壺》を発動!!」

《大欲な壺》
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体を対象として発動できる。そのモンスター3体を持ち主のデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

「私は除外されているダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン、クリアウィング・シンクロ・ドラゴン、スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンの3体をデッキに戻し、1枚ドローするわ! そして……メインフェイズ1を終了。バトルよ!!」
―――遊希さん、ありがとうございます。俺……いや、覇王龍ズァークで、ラーの翼神竜-不死鳥を攻撃!!


覇王龍ズァーク ATK4000 VS ラーの翼神竜-不死鳥 ATK4000


「結局滅びの道を選ぶのだな、お前は……いいだろう、ならば望み通りに冥府へ送ってやる!! 迎撃せよ、ラーの翼神竜-不死鳥! “ゴッドフェニックス・ジャッジメント”!!」
―――例え不死鳥であろうと覇王の力で叩き伏せてみせる!! “覇王撃・五天昇竜(はおうりゅうげき・ごてんしょうりゅう)”!!


 天空へと舞い上がった不死鳥は全身を灼熱の炎に変えてズァークへと襲い掛かる。一方のズァークも自らの身体に眠るオッドアイズ、ダーク・リベリオン、クリアウィング、スターヴ・ヴェノムの魂を波動に変えて自身の力として撃ち出した。4体の竜が一つになった龍型の気功波は不死鳥の攻撃を受け止める。そして力を制御しきれなくなった不死鳥の炎が全てを焼き尽くしていく。

「高海くん!!」
―――遊希さん、そのセットカードを!! 俺が消える前に!!
「このタイミングでカードを発動するだと!?」
「リバースカードオープン!! 罠カード、発動!!」

 遊希がそのカードを発動すると同時に覇王龍ズァークとラーの翼神竜-不死鳥が光の中へと消えていく。大きな力と力の衝突は互いの力をより増幅させ、激しい爆発を起こした。


「っ!!……ラーを失ったか。だが、これでズァークも消えた。何を伏せていたが知らんが、お前たちに残された希望は潰えたも同然!!」
「……それはどうでしょうか?」

 爆発によって生じた煙の中から現れたのは、人間の姿に戻った遊大であった。ズァークとして受けたダメージが相当のため、全身がボロボロであったが、確かに彼はまだ生きている。そして遊希と遊大が並び、爆発の煙が晴れた時。二人のフィールドにはダーク・リベリオン、クリアウィング、スターヴ・ヴェノム、そしてオッドアイズの4体の【覇王眷竜】たちが並んでいた。

「なっ……何故モンスターが!!」
「セットしていたカードの効果よ。セットカードは……」
「罠カード、《覇王の逆鱗》です」


《覇王の逆鱗》
通常罠
(1):自分フィールドに「覇王龍ズァーク」が存在する場合に発動できる。
「覇王龍ズァーク」以外の自分フィールドのモンスターを全て破壊し、自分の手札・デッキ・EXデッキ・墓地からカード名が異なる「覇王眷竜」モンスターを4体まで召喚条件を無視して特殊召喚する。
(2):墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの「覇王眷竜」Xモンスター1体を対象として発動できる。自分の墓地のモンスター及び自分のEXデッキの表側表示のPモンスターの中から「覇王眷竜」モンスター2体を選び、対象のモンスターの下に重ねてX素材とする。


「覇王の逆鱗は、覇王龍ズァークがフィールドに存在する場合に発動できるカード。ズァーク以外の自分フィールドのモンスターを全て破壊することで、手札・デッキ・EXデッキ・墓地からカード名が異なる覇王眷竜を4体まで召喚条件を無視して特殊召喚できるんです」
「大欲な壺で除外されている3体のドラゴン、そしてメインデッキに残っていた最後のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。その4体が覇王眷竜として転生したのよ!」

 遊希がこのカードを発動したのは覇王龍ズァークがラーの翼神竜-不死鳥と相討ちになる前だ。そのため、その時点では覇王龍ズァークがフィールドに存在していることになるため、このカードの発動条件を満たしていたのである。
 そして大欲な壺を事前に発動することで、ズァークの召喚のために除外されたEXデッキの3体を戻し、覇王の逆鱗で特殊召喚できるようにしたのであった。

「……私が負ける? 私が……負けるだと!?」
―――そうだ、お前は敗北の汚泥に身を落とす。
―――てめえはやりすぎたんだよ、色々な。
―――まあ、覇王の逆鱗がセットされたのはデュエル外の要因だから納得できない気持ちはわかるけどね?
―――もしまたデュエルをするときがあったら、こんどは後腐れのないデュエルがしたいですね!
「いいわね、高海くん」
「はい。遊希さん」

 遊希と遊大は固く手を繋ぐ。そして二人同時に最後の指示を下した。





―――《覇王眷竜オッドアイズ》で、ダイレクトアタック!!―――








―――“覇王旋・虹彩”!!―――








覇王眷竜オッドアイズ ATK2500


 神秘的かつ禍々しい赤と緑の瞳が遊厳を捉える。そして放たれた螺旋状に渦巻く炎が彼を飲み込んでいった。





遊厳 LP100→LP0





















 デュエルに敗れた遊厳はその場に崩れ落ちる。全てが終わりを告げた。そして彼が倒せるのを見届けた遊大もその場に力なく倒れた。

「高海くん!? しっかりして!!」
「あはは……さすがに疲れましたね。精霊ってもっと万能なものだと思ってましたけどデュエルの後こんなに疲労がたまるとは思っていませんでした」
「もう……あなたったら!!」

 こんな状況でも軽く苦笑いを浮かべる遊大を、遊希がぎゅっと抱きしめた。遊希の身体の熱が皮膚を通して遊大にも伝わってくる。

「ゆ、遊希さん!? さすがに恥ずかしいんですが……」
「嫌……しばらくこうさせて。こうでもしてないと……私おかしくなっちゃいそうだったから」

 遊大を抱きしめながら、全身を震わせる遊希。遊大はゆっくりと両手を彼女の背中と腰に回した。遊希の身体は小さく華奢で、そして柔らかかった。張りつめていた緊張の糸が切れてしまったのだろう。

「遊希さん……」
(……何か言葉をかけてあげたい。でも、どんな言葉をかけてあげた方がいいのかわからない)

 遊大はしばらくの間彼の胸の中で涙を流す遊希を抱きしめていた。右手で彼女の背中を、左手で彼女の頭を撫でる。まるで泣きじゃくる子どもをあやすように。もしここで自分が経験豊富な男であれば、きっと優しい言葉をかけてあげられたのだろう。しかし、今の遊大にはどんな言葉をかけていいのかがわからなかった。それでも、遊希は彼の言葉など待っていなかった。ただ、遊大と共にいれること。それだけが彼女の望んだ願いだった。
















「……落ち着きました?」
「ええ、手間を取らせてごめんなさい。後は私がやるからそこで休んでいて」

 遊大の胸の中で落ち着いた遊希は、彼をその場で休ませると、座り込んでいる遊厳の下へと歩み寄る。デュエルに敗れたことで、遊厳の「精霊を復活させて世界をその力の下で世界を管理する」という野望は潰えた。しかし、彼が行おうとしたことは未然に防いだとはいえ、世界を滅ぼしかねない愚行である。故に見逃すことはできなかった。

「終わりです、高海 遊厳さん。私はあなたを然るべき機関に突き出します」
「……そうか、終わりか。私はどこで間違えたのだろうな」
「あなたの願いは全ての人類が願ったことでしょう。これからはその罪を償い、そしてまた別のやり方でその願いを叶えるようにしてください」
「……そうだ、最後に試してみたいことがあるのだが」
「試してみたいこと?」
「ああ。遊大がズァークの力を制御できたのは、あくまで元となったズァークに復讐心といった負の心がなかったからだとする。ならば……






―――遊大にその心が芽生えた場合はどうなるのか、を―――





 遊厳はジャケットのポケットに入っていたスイッチを押した。すると、ビルの屋上を取り囲む柵のようなものがせり出し、四方を檻のように取り囲んだ。

「高海くん、逃げ―――!!」

 本能で危険を察した遊希は反転し、すぐに遊大のところへ駆け出そうとした。だが、そんな彼女の身体を柵の先端から放たれた一筋の光が貫いた。

「えっ?」

 一瞬の出来事に遊大は何が起きたのか理解できなかった。遊大の名を呼びながら駆け出した遊希はその場に力無く倒れる。そして彼女の身体に空いた風穴からはドクドクと夥しい量の鮮血が流れ出していく。貫かれたのは精霊に変容していない左胸で、人間の心臓がある場所だ。そんな場所を撃ち抜かれて生きられる生物などまず存在しない。

「えっ? えっ? なんで……どうして……?」

 何が起きたかわからない遊大は、まるで蛇のように這いながら遊希の元へと向かう。そんな彼を遊厳は光が失われた眼で見下ろしていた。

「よく言うだろう。獲物を前に舌なめずりをする者は三流であると。お前と天都 遊希が陳腐な恋愛劇を演じている間、私は密かに別の装置を作動させていた。精霊を制御できなかった場合に使うつもりだったズァークやラー……精霊や神のカードを使ったデュエルによって発生する力を取り込む装置だ」

 デュエリストであれば、全ての決着はデュエルでつける。デュエリスト同士の不文律だ。しかし、そんな綺麗事が通用する相手ではないことをすっかり失念してしまっていた。

「今の閃光は言わばレールガン……電磁砲の応用だ。精霊の力を発射のエネルギーに転換し、音速で撃ち出す。精霊対策に備えていたものだ、人間が喰らえば一たまりもないだろうな。お前たちはすぐに私を捕縛すべきだったのだ。そうすれば彼女は死ななくて済んだ。天都 遊希を殺したのは、紛れもなくお前だ」
「そんな……嘘だ……嘘だ……!!」

 遊厳の言葉は詭弁である。遊希の命を奪ったのは遊厳であり、遊大には何の罪もないだろう。しかし、その詭弁を突き崩せる冷静さは遊大には残されていなかった。自分のせいで、この世で誰よりも大切な―――愛している人の命が奪われてしまった。





―――嘘だ……嘘だああああ!! アアアアアァァァァァ!!!―――






 彼の中から果ての無い絶望と怒りが叫びとなって現れる。遊大の身体を漆黒のオーラが包み始めた。元となったズァークに復讐や怒り、絶望という気持ちがないのであれば、遊大の中にそれを作ってしまえばいい。そうすれば遊大はズァークとして再度覚醒し、その怒りの力を破壊に使うだろう。

「そうだ! 怒れ、叫べ、絶望しろ!! そして全てを破壊しつくすのだ―――覇王龍ズァーク!!」

 ビルの屋上を囲む装置から発生したエネルギーが遊大の身体に浴びせかけられる。元々のズァークの力に加え、ラーやビシバールキンの力までもが含まれている。この力が全て注ぎ込まれれば、もはやこの世で遊大を、ズァークを止められるものはいない。全てが滅びへと向かう。

(これで……これで……全てが救われる!!)














―――そうはさせません。














 遊大がズァークとして再覚醒を遂げようとしたその瞬間である。屋上を取り囲んでいた装置が全て切り裂かれたのは。何が起きたのか、と遊厳が周囲を見回していた。そんな時、天空から一人の鎧を纏った騎士のような者が舞い降りた。4枚の翼を持った光り輝くその姿は神や天使と呼べるほど神々しいものであった。

「なんだ、貴様は!!」
―――高海 遊厳、貴様は世界の理を冒した。故に私は貴様を討ち果たす。
「まさか……貴様もデュエルモンスターズの精霊?」
―――察しがいいな。そうだ、私は世界の調和を図るためこの世界とは別の世界よりさる方の命によって遣わされた者だ。そして、私と共にこの2体の竜がお前に裁きを下す。現れよ、そして開け! 精霊界の門よ!!

 自身を精霊界からの遣い、と呼んだ精霊は手に持った槍で空間を切り裂く。その空間には二つの大穴が開き、そこからは2体のドラゴンが現れた。1体は三つの首を持った黄金の身体のドラゴン、そしてもう1体は青く光輝く身体をしたドラゴンであった。そのドラゴンはどちらもあのズァークに匹敵するだけの力を放っていた。

「精霊が3体だと……?」
―――これは、聞きしに勝る有様だな……そして……

 三つ首の龍は血の海に沈んで動かなくなった遊希を悲しそうな眼で見つめる。彼はかつて似たような少女と出会ったことがあったからだ。そして彼は隣に立つもう1体の青いドラゴンの方へと視線を送る。青いドラゴンは倒れている遊希の傍にしゃがみ込むと、彼女の顔を覗き込んでいた。


―――遊希……まさか、こんな形でお前と再会することになるとはな……おい、そこの人間。お前に一つ言いたいことがある。お前は決して犯してはならない罪を犯してしまった。我々の手でお前を滅してやる。


 青いドラゴンは憤怒の表情を浮かべる。そして遊厳を鋭い眼光で睨みつけてこう告げた。










―――この代償は重いぞ!! 懺悔の用意は出来ているか!!!!―――














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ター坊
ズァークを支配できないからって、ズァーク暴走させるためにヒロイン撃ち殺すとは一番の犯罪だな。遊大じゃなくてもブチギレ案件です。
ズァークが暴走する寸前で現れた精霊達、明らかに彼らですね。懺悔させるのも良いですが遊希も復活して欲しいです。

(2018-12-05 15:19)
光芒
ター坊さん
波乱オブ波乱の一話となりましたが、ご安心ください。
某バトルシップ的映画風に言わせれば「精霊が簡単に死ぬか!」です。
最も未遂とはいえ重傷を負わせた時点で遊大激怒不可避なのですが……

>ズァークが暴走する寸前で現れた精霊達、明らかに彼らですね。
はい、彼らです。前作を読んでいない方にはわからないと思いますが……ちなみに彼らは展開関係なくクライマックスに登場する予定でした。
(2018-12-05 17:20)
ヒラーズ
ヒロインを射殺するとは外道だな・・・。
これはブチギレ寸前になりますね。
さて、どんな懺悔が聞けるやら・・・(ゲス顔)。 (2018-12-05 19:44)
光芒
ヒラーズさん
外道キャラを書いたことがなかったので、書いてみると書いてみると思いの外モヤモヤが残るものですね。まあ後味が悪い分カタルシスも凄いことになると思いますので…… (2018-12-05 22:44)

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155 第73話:憤怒 1332 5 2017-11-18 -
104 第74話:反攻 1206 2 2017-11-22 -
94 第75話:夢追 1197 2 2017-11-27 -
90 第76話:剣閃 1254 2 2017-12-02 -
92 第77話:膠着 1076 2 2017-12-09 -
83 遊大たちが1月制限について語るようです 1311 4 2017-12-11 -
78 第78話:豹変 1274 2 2017-12-17 -
130 第79話:親心 1246 4 2017-12-22 -
107 第80話:疾風 1252 2 2017-12-30 -
95 番外編:隠想 1268 3 2018-01-01 -
93 第81話:異能 1123 2 2018-01-08 -
156 第82話:要塞 1184 2 2018-01-13 -
112 第83話:相反 1176 3 2018-01-17 -
111 第84話:特異 1198 5 2018-01-22 -
89 第85話:忌避 1309 4 2018-01-29 -
136 第86話:転生 1359 4 2018-02-06 -
82 第87話:変貌 1345 4 2018-02-14 -
126 第88話:祭典・1 1235 4 2018-02-22 -
96 第89話:祭典・2 1244 4 2018-02-28 -
104 第90話:祭典・3 1247 4 2018-03-10 -
172 18年4月制限について語るようです 1492 4 2018-03-14 -
103 第91話:閉幕 1182 4 2018-03-22 -
131 第92話:令嬢 1183 4 2018-03-31 -
115 第93話:共闘 1203 4 2018-04-07 -
138 第94話:古豪 1078 3 2018-04-15 -
94 第95話:護心 1108 2 2018-04-19 -
75 番外編:裏話 1269 4 2018-04-29 -
148 第96話:転機 1267 4 2018-05-03 -
133 第97話:敬意 1093 0 2018-05-13 -
81 第98話:遺托 1131 4 2018-05-17 -
139 番外編:青春 1328 2 2018-05-23 -
141 第99話:疾駆 1317 6 2018-06-12 -
143 遊大たちが18年7月制限について語ります 1118 0 2018-06-14 -
153 第100話:戦士 1141 0 2018-06-19 -
136 第101話:懐古 1149 2 2018-06-24 -
77 第102話:降竜 1019 0 2018-06-30 -
61 第103話:乱入 1028 3 2018-07-06 -
137 第104話:奮起 1242 0 2018-07-15 -
82 第105話:白翼 1134 0 2018-07-22 -
134 第106話:夢境 1524 3 2018-07-30 -
115 第107話:紫苑 1176 4 2018-09-12 -
92 遊大たちが10月制限について語ります 1128 2 2018-09-14 -
128 第108話:猛毒 1236 2 2018-09-17 -
86 第109話:変身 1091 2 2018-09-21 -
94 第110話:共闘 1103 4 2018-09-25 -
100 第111話:油断 910 2 2018-09-27 -
112 第112話:浸食 1271 2 2018-09-30 -
67 第113話:神意(修正・再掲版) 1048 2 2018-10-03 -
116 第114話:忍者 1096 2 2018-10-06 -
91 第115話:継承(修正版) 1015 3 2018-10-08 -
85 第116話:征圧 1009 2 2018-10-10 -
145 第117話:両雄(修正版) 1062 3 2018-10-15 -
106 第118話:負担 1046 2 2018-10-17 -
106 第119話:確信 960 2 2018-10-20 -
109 第120話:無限 1030 4 2018-10-22 -
118 第121話:必然 927 2 2018-10-25 -
111 第122話:悲劇 1108 2 2018-10-28 -
163 第123話:鬼気 1083 2 2018-10-31 -
83 第124話:捕食 1062 3 2018-11-02 -
134 第125話:一輪 1036 2 2018-11-05 -
143 第126話:後悔 1130 3 2018-11-07 -
87 第127話:神話 1028 2 2018-11-10 -
122 第128話:仮説 1159 3 2018-11-12 -
88 第129話:伝心 1099 3 2018-11-14 -
113 第130話:対立 1110 2 2018-11-16 -
130 第131話:残酷 1049 3 2018-11-18 -
114 第132話:涙雨 1085 3 2018-11-20 -
104 最終章予告 965 3 2018-11-21 -
117 番外編:歓喜 1021 5 2018-11-22 -
103 第134話:決戦・1 1003 2 2018-11-23 -
91 第135話:決戦・2 1085 2 2018-11-25 -
107 第136話:決戦・3 1456 2 2018-11-27 -
88 第137話:決戦・4 1021 3 2018-11-28 -
98 第138話:決戦・5 1082 3 2018-11-30 -
85 第139話:覇王 1142 3 2018-12-02 -
85 第140話:精霊 1233 3 2018-12-04 -
131 第141話:落涙 1070 4 2018-12-05 -
120 第142話:命脈 1105 3 2018-12-07 -
67 第143話:終焉 1062 3 2018-12-08 -
124 第144話:帰還 1135 3 2018-12-10 -
98 遊大たちが19年1月制限について喋ります 1180 3 2018-12-11 -
100 第145話:三様 1108 2 2018-12-12 -
109 第146話:光明 932 2 2018-12-15 -
115 第147話:竜星 1041 3 2018-12-16 -
111 第148話:斬撃 995 3 2018-12-18 -
126 第149話:神竜 1072 3 2018-12-20 -
91 第150話:新竜 929 3 2018-12-21 -
118 第151話:共鳴 959 3 2018-12-24 -
125 第152話:前夜 1116 3 2018-12-25 -
103 第153話:星竜・1 1059 3 2018-12-28 -
96 第154話:星竜・2 1045 3 2018-12-29 -
111 第155話:星竜・3 1176 3 2018-12-31 -
126 エピローグ:雪夜 1354 6 2019-01-01 -
86 番外編:甘露 1042 2 2019-02-14 -
102 遊大たちが19年4月制限について喋ります 969 3 2019-03-12 -
57 エイプリルフールに間に合わなかったので 850 0 2019-04-01 -
101 番外編:夏想・1 847 4 2019-04-17 -
102 番外編:夏想・2 921 2 2019-04-19 -
104 番外編:夏想・3 682 2 2019-04-22 -
98 番外編:夏想・4 945 2 2019-04-25 -
99 番外編:夏想・5 886 0 2019-05-01 -
82 番外編:師弟・1 819 2 2019-05-04 -
96 番外編:師弟・2 920 2 2019-05-08 -
82 番外編:師弟・3 775 0 2019-05-13 -
101 番外編:師弟・4 778 2 2019-05-17 -
69 番外編:師弟・5 808 3 2019-05-21 -
96 10万アクセス記念企画 1007 4 2019-09-24 -
91 番外編:聖夜 1225 2 2019-12-25 -

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