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13:邪悪な賢者 作:ほーがん
第13話「邪悪な賢者」
早朝。教会の扉を叩くものが居た。祭壇の前に立つ男は、渋々と扉に近づき、手を掛けるとノックした人物の顔を覗いた。
「リチャードか。」
「喜べ、ついに手に入ったぞ。」
その人物、リチャードは手に抱えた少年の腕を引っ張ってみせた。男はそれを見るや否や、リチャードに詰め寄る。
「そ、それは・・・まさか、主君への”鍵”か!!」
「そのとおりだ。我らの悲願がようやく叶う。」
横から顔を出したジェイミーが答える。男は膝を折って天を仰いだ。
「おお!我が主君よ!!ついに、ついに貴方に会える時が・・・!!」
リチャードは、捕らえた少年、ユーガの身体を教会の床へ放り投げた。
「ったく、散々駆け回らせやがってよ。」
両手をはたきながら、リチャードは悪態を付く。ジェイミーは男に言った。
「・・・リチャードが功を焦って、《記憶の扉》を無駄遣いした。」
男は立ち上がり、リチャードを一瞥する。
「貴重な手段を無駄にするとは・・・まぁ、良い。実物がここにあるならば、別の手段を取るまでだ。」
「ちっ・・・。なんだよ、その別の手段ってのは。」
背を向け、祭壇へと歩く男は二人に告げる。
「そいつを解剖し、脳を引き摺り出す。直接手を加える方が確実性が高い。」
「ひぇ~おっかねぇなぁ、科学者さんは。」
からかうようにリチャードが言う。男は意にも介さず、祭壇の側面に出っ張ったスイッチを押した。
それに反応し、祭壇が動く。その下に地下へと続く階段が現れた。
「”鍵”を持って来い。我らマサカーの屈辱を晴らす為にも、早く主君へと辿り着かねば。」
リチャードはユーガの腕を持ち上げると、麻袋のようにその身体を引き摺りながら、階段へと向かった。
「へいへい、承知しましたよ、偉大なる側近ヘラルド様。」
「ふん。おい、ジェイミー。お前はここに居ろ。」
祭壇の男、ヘラルドの言葉にジェイミーは起伏の無い声で言う。
「俺の役目は見張り番か。」
「分かっているなら、話が早いな。」
ヘラルドはリチャードを連れ、階段を降りて行く。一人、教会に残されたジェイミーは、近くの長椅子にどさっと腰を降ろした。
「・・・いずれ来る筈だ。畜生というのは嗅ぎ付けるのが早いからな。」
呟くジェイミー。地平線の彼方から現れた陽の光は、割れたステンドグラスの中を覗き込むように照らした。
教会の地下。ヘラルドの後を歩くリチャードは、薄暗い部屋に通された。
「なんだよ、ここ。こんな設備、元々無かったろ。」
ヘラルドは天井の照明装置をいじりながら言う。
「ああ、私が造った。時間があったからな。」
「へっ、暇があったら祈ってたんじゃねぇのかよ。」
その呟きにヘラルドは冷たく言い放つ。
「私に行動しろと言ったのは貴様だがな、リチャード。現にここも今、役に立とうとしている。」
照明がつき、リチャードの視界が光に覆われる。思わず目を瞑ったリチャードに、ヘラルドは命令を下した。
「さぁ、その”鍵”をこっちに置け。」
「ちっ、偉そうによ。」
目を開けたリチャードは、その光景を見て感嘆の声を上げる。
「へぇ~、こりゃ大層なこった。」
無数に並んだ実験器具。巨大なコンピュータ。そして、目の前の解剖台。
「感想はいい。早くしないか、リチャード。」
催促するヘラルドに、リチャードはわざと胡麻を擦るように言った。
「はいはい!仰せのままに、大科学者のヘラルド様!」
言葉と共に、リチャードはユーガを解剖台の上に荒々しく乗せた。白い手袋をはめ、ヘラルドはニヤリと笑う。
「さて、始めようか。ゲートを開ける時だ。」
一歩離れ、リチャードは壁に寄りかかる。
「(まぁ、腕は確かな筈だ。これでようやく・・・)」
麻酔薬の入った注射器を、ヘラルドはユーガの首に突き刺した。
「ヨシトの記憶・・・受け継がれている筈だ・・・あの時の記憶が・・・最終決戦の記憶がな・・・」
光を失っていたユーガの目が段々と閉じて行く。ヘラルドは注射器を置き、代わりに鈍く輝くメスを手に取った。
「見せろ、”鍵”よ。主君の・・・主君の居場所を・・・!!」
開かれる扉。紅が、ユーガの額を伝った。
今度はドリルを取り出し息を荒くするヘラルドに、後ろから眺めるリチャードが呟く。
「興奮しすぎだろ、ヘラルドの奴。一応、解剖なんだぞ、これ。」
そんな呟きすら届かないヘラルドは、コンピュータから伸びたプラグをユーガの頭脳に差し込んだ。赤く染まった手袋を外し、コンピュータのパネルを操作する。
「早く・・・早く見せるんだ・・・!」
ついに記憶の解析が始まる。いつの間にか、リチャードも興奮した面持ちでコンピュータの画面を見つめていた。
「ようやっと分かるのか・・・主君への道が・・・!」
一方、旅を開始したカケル達は。
「なぁ、キジマ。良かったのか、家は。」
前を歩くキジマにカケルは声を掛けた。キジマは手に握った鍵を見ながら口を開く。
「何、全部終わったらきっと帰って来るさ。きっとな・・・。」
後ろから見えるキジマの横顔が、少し寂しそうに笑う。旅出るということは、家を離れなければ行けないという事。それは、この荒れた世界において捨てる事と同義だった。
「・・・良いんだ。一緒に行くって言う約束を、曲げる訳にはいかないからな。それよりもな・・・」
キジマは横を歩くマーナに向かって言った。
「俺のジェットバイクまで捨てる事なかったんじゃないですかね、マーナさん!?」
「もう、いつまで言ってるのナオト兄ちゃん!しつこいよ!」
ツンとするマーナにキジマは涙声で訴える。
「だって、あいつは俺が丹精込めて改造に改造を加えた・・・」
「ポンコツでしょ!一人しか乗れないんだから、邪魔になるだけじゃない!」
それを聞き、がっくりと肩を落とすキジマ。
「ぽ、ポンコツって・・・」
「ま、まぁ、仕方ないさキジマ。実際、持って来てもあんまり意味なかったろうし・・・。」
とぼとぼと歩くキジマを見て、カケルは思わず苦笑いをした。
「・・・かなり歩いたが、あまり景色は変わらないな。」
カケルの横でリンカが呟く。
「あぁ、あの盗賊連中によると結構遠いらしいからな。まだまだ着かんだろうよ。」
「そうなのか・・・。」
涙を拭いながらキジマが言う。不安の表情に俯くリンカに、カケルは鞄の中からパンを取り出した。
「なぁリンカ、腹減ってないか?地下街から出る時、今後必要になると思ってさ、お前のファイトマネーで食料を調達しといたんだ。」
「そうだったのか。ありがとう・・・でも、今は、いい。」
あの事件。記憶の開示以降、リンカはあまりに食に関心を持たなくなっていた。
「(まだ・・・癒えないか・・・)」
パンを鞄へと仕舞い、カケルは歩く事に集中した。まだ東から出て来たばかりの朝陽は、周りに散らばる鉄の亡骸を眩く照らす。
「(赤の教会・・・ペンデュラム召喚・・・そして、マサカー・・・戦争・・・)」
カケルは今までの情報を整理し、分析していた。世界を滅ぼした戦争。その時、謎の敵が使った未知の召喚法。それと同じ力を行使する集団、マサカー。
「(やっぱり、敵軍の残党って事か・・・?でも、なんで”村”を襲う必要がある?そもそも、あの戦争で襲って来た最初の敵・・・あの軍勢の目的はなんだったんだ?)」
考えれば考えるほど、謎が深まるばかり。カケルは溜め息を付いた。
「はぁ・・・俺は、何も分かっちゃいないのか・・・。」
それに反応するように、キジマの口が開く。
「分かってなくても、仲間を助けたい。今はその気持ちがあればそれでいいさ。」
「キジマ・・・」
キジマは言葉を続けた。
「これから嫌でも奴らの核心に近づくんだ。いずれ全てが分かる時が来ると思うぜ。今は、お前の仲間を助ける。そうだろ、カケル?」
「・・・ああ、そうだな。」
真剣な面持ちでキジマは言う。
「・・・俺だって、世界が滅びた・・・いや、滅びなきゃいけなかった理由が知りたいしな。奴らは・・・そのマサカーって連中は何か鍵を握ってるに違いねぇ。」
その時。
「おい、あれはなんだ?」
リンカが指を指した先。その方向に目を向けたカケルが声を上げた。
「ありゃ・・・街か・・・!?」
遠方に見えて来たのは、街。それも残骸ではない。大きな建物の集合体、まさに前文明における街の形装を保っていた。
盗賊に描かせた地図を見ながら、キジマが言う。
「あれは・・・オブリビオン・シティ・・・だそうだ。かつてペンデュラム軍によって制圧され根城にされた街、だってよ。」
「根城に・・・だから破壊されてないのか。」
リンカはキジマに訊ねる。
「行くのか、あそこへ。」
「うーん、通った方が近道だが、危険だから迂回した方が良いってさ。」
それを聞き、カケルは呟く。
「そんな事まで地図に書いてるのか・・・意外と親切だな、あの盗賊達。」
「ねぇねぇ、ナオト兄ちゃん、なんであの街が危ないの?」
裾を引っ張るマーナ。キジマは肩を竦めた。
「いや、理由までは書いてないな。」
「微妙に不親切だ・・・。」
ぼやくカケルにキジマは訊ねる。
「で、どうするカケル。あのオブなんとかシティを突っ切るのか?」
問いに、カケルは迷いを見せた。
「近道なら通りたいけど、リンカやマーナを守れるか・・・」
その言葉にマーナは胸を張る。
「カケル兄ちゃん!マーナはもう立派に戦えるんだよ!」
リンカもディスクを構える仕草をした。
「心配するなカケル。自分の身くらいは守れる。」
「リンカ・・・マーナ・・・」
見かねたキジマが肩を叩いた。
「ったく、俺が居るのを忘れるなよカケル。いざという時は俺が皆を守る。お前は、ユーガの元へ行く事を考えていればいい。」
「キジマ・・・すまない・・・」
手に持った地図をポケットに押し込み、キジマは街の方へと向き直った。
「さぁ、行こうか。オブなんとかへ!」
「・・・オブリビオン・シティだろ、キジマ・・・。」
そして、一行は向かった。そこに待ち受ける、試練も知らずに・・・。
次回 第14話「忘却都市と生存兵」
早朝。教会の扉を叩くものが居た。祭壇の前に立つ男は、渋々と扉に近づき、手を掛けるとノックした人物の顔を覗いた。
「リチャードか。」
「喜べ、ついに手に入ったぞ。」
その人物、リチャードは手に抱えた少年の腕を引っ張ってみせた。男はそれを見るや否や、リチャードに詰め寄る。
「そ、それは・・・まさか、主君への”鍵”か!!」
「そのとおりだ。我らの悲願がようやく叶う。」
横から顔を出したジェイミーが答える。男は膝を折って天を仰いだ。
「おお!我が主君よ!!ついに、ついに貴方に会える時が・・・!!」
リチャードは、捕らえた少年、ユーガの身体を教会の床へ放り投げた。
「ったく、散々駆け回らせやがってよ。」
両手をはたきながら、リチャードは悪態を付く。ジェイミーは男に言った。
「・・・リチャードが功を焦って、《記憶の扉》を無駄遣いした。」
男は立ち上がり、リチャードを一瞥する。
「貴重な手段を無駄にするとは・・・まぁ、良い。実物がここにあるならば、別の手段を取るまでだ。」
「ちっ・・・。なんだよ、その別の手段ってのは。」
背を向け、祭壇へと歩く男は二人に告げる。
「そいつを解剖し、脳を引き摺り出す。直接手を加える方が確実性が高い。」
「ひぇ~おっかねぇなぁ、科学者さんは。」
からかうようにリチャードが言う。男は意にも介さず、祭壇の側面に出っ張ったスイッチを押した。
それに反応し、祭壇が動く。その下に地下へと続く階段が現れた。
「”鍵”を持って来い。我らマサカーの屈辱を晴らす為にも、早く主君へと辿り着かねば。」
リチャードはユーガの腕を持ち上げると、麻袋のようにその身体を引き摺りながら、階段へと向かった。
「へいへい、承知しましたよ、偉大なる側近ヘラルド様。」
「ふん。おい、ジェイミー。お前はここに居ろ。」
祭壇の男、ヘラルドの言葉にジェイミーは起伏の無い声で言う。
「俺の役目は見張り番か。」
「分かっているなら、話が早いな。」
ヘラルドはリチャードを連れ、階段を降りて行く。一人、教会に残されたジェイミーは、近くの長椅子にどさっと腰を降ろした。
「・・・いずれ来る筈だ。畜生というのは嗅ぎ付けるのが早いからな。」
呟くジェイミー。地平線の彼方から現れた陽の光は、割れたステンドグラスの中を覗き込むように照らした。
教会の地下。ヘラルドの後を歩くリチャードは、薄暗い部屋に通された。
「なんだよ、ここ。こんな設備、元々無かったろ。」
ヘラルドは天井の照明装置をいじりながら言う。
「ああ、私が造った。時間があったからな。」
「へっ、暇があったら祈ってたんじゃねぇのかよ。」
その呟きにヘラルドは冷たく言い放つ。
「私に行動しろと言ったのは貴様だがな、リチャード。現にここも今、役に立とうとしている。」
照明がつき、リチャードの視界が光に覆われる。思わず目を瞑ったリチャードに、ヘラルドは命令を下した。
「さぁ、その”鍵”をこっちに置け。」
「ちっ、偉そうによ。」
目を開けたリチャードは、その光景を見て感嘆の声を上げる。
「へぇ~、こりゃ大層なこった。」
無数に並んだ実験器具。巨大なコンピュータ。そして、目の前の解剖台。
「感想はいい。早くしないか、リチャード。」
催促するヘラルドに、リチャードはわざと胡麻を擦るように言った。
「はいはい!仰せのままに、大科学者のヘラルド様!」
言葉と共に、リチャードはユーガを解剖台の上に荒々しく乗せた。白い手袋をはめ、ヘラルドはニヤリと笑う。
「さて、始めようか。ゲートを開ける時だ。」
一歩離れ、リチャードは壁に寄りかかる。
「(まぁ、腕は確かな筈だ。これでようやく・・・)」
麻酔薬の入った注射器を、ヘラルドはユーガの首に突き刺した。
「ヨシトの記憶・・・受け継がれている筈だ・・・あの時の記憶が・・・最終決戦の記憶がな・・・」
光を失っていたユーガの目が段々と閉じて行く。ヘラルドは注射器を置き、代わりに鈍く輝くメスを手に取った。
「見せろ、”鍵”よ。主君の・・・主君の居場所を・・・!!」
開かれる扉。紅が、ユーガの額を伝った。
今度はドリルを取り出し息を荒くするヘラルドに、後ろから眺めるリチャードが呟く。
「興奮しすぎだろ、ヘラルドの奴。一応、解剖なんだぞ、これ。」
そんな呟きすら届かないヘラルドは、コンピュータから伸びたプラグをユーガの頭脳に差し込んだ。赤く染まった手袋を外し、コンピュータのパネルを操作する。
「早く・・・早く見せるんだ・・・!」
ついに記憶の解析が始まる。いつの間にか、リチャードも興奮した面持ちでコンピュータの画面を見つめていた。
「ようやっと分かるのか・・・主君への道が・・・!」
一方、旅を開始したカケル達は。
「なぁ、キジマ。良かったのか、家は。」
前を歩くキジマにカケルは声を掛けた。キジマは手に握った鍵を見ながら口を開く。
「何、全部終わったらきっと帰って来るさ。きっとな・・・。」
後ろから見えるキジマの横顔が、少し寂しそうに笑う。旅出るということは、家を離れなければ行けないという事。それは、この荒れた世界において捨てる事と同義だった。
「・・・良いんだ。一緒に行くって言う約束を、曲げる訳にはいかないからな。それよりもな・・・」
キジマは横を歩くマーナに向かって言った。
「俺のジェットバイクまで捨てる事なかったんじゃないですかね、マーナさん!?」
「もう、いつまで言ってるのナオト兄ちゃん!しつこいよ!」
ツンとするマーナにキジマは涙声で訴える。
「だって、あいつは俺が丹精込めて改造に改造を加えた・・・」
「ポンコツでしょ!一人しか乗れないんだから、邪魔になるだけじゃない!」
それを聞き、がっくりと肩を落とすキジマ。
「ぽ、ポンコツって・・・」
「ま、まぁ、仕方ないさキジマ。実際、持って来てもあんまり意味なかったろうし・・・。」
とぼとぼと歩くキジマを見て、カケルは思わず苦笑いをした。
「・・・かなり歩いたが、あまり景色は変わらないな。」
カケルの横でリンカが呟く。
「あぁ、あの盗賊連中によると結構遠いらしいからな。まだまだ着かんだろうよ。」
「そうなのか・・・。」
涙を拭いながらキジマが言う。不安の表情に俯くリンカに、カケルは鞄の中からパンを取り出した。
「なぁリンカ、腹減ってないか?地下街から出る時、今後必要になると思ってさ、お前のファイトマネーで食料を調達しといたんだ。」
「そうだったのか。ありがとう・・・でも、今は、いい。」
あの事件。記憶の開示以降、リンカはあまりに食に関心を持たなくなっていた。
「(まだ・・・癒えないか・・・)」
パンを鞄へと仕舞い、カケルは歩く事に集中した。まだ東から出て来たばかりの朝陽は、周りに散らばる鉄の亡骸を眩く照らす。
「(赤の教会・・・ペンデュラム召喚・・・そして、マサカー・・・戦争・・・)」
カケルは今までの情報を整理し、分析していた。世界を滅ぼした戦争。その時、謎の敵が使った未知の召喚法。それと同じ力を行使する集団、マサカー。
「(やっぱり、敵軍の残党って事か・・・?でも、なんで”村”を襲う必要がある?そもそも、あの戦争で襲って来た最初の敵・・・あの軍勢の目的はなんだったんだ?)」
考えれば考えるほど、謎が深まるばかり。カケルは溜め息を付いた。
「はぁ・・・俺は、何も分かっちゃいないのか・・・。」
それに反応するように、キジマの口が開く。
「分かってなくても、仲間を助けたい。今はその気持ちがあればそれでいいさ。」
「キジマ・・・」
キジマは言葉を続けた。
「これから嫌でも奴らの核心に近づくんだ。いずれ全てが分かる時が来ると思うぜ。今は、お前の仲間を助ける。そうだろ、カケル?」
「・・・ああ、そうだな。」
真剣な面持ちでキジマは言う。
「・・・俺だって、世界が滅びた・・・いや、滅びなきゃいけなかった理由が知りたいしな。奴らは・・・そのマサカーって連中は何か鍵を握ってるに違いねぇ。」
その時。
「おい、あれはなんだ?」
リンカが指を指した先。その方向に目を向けたカケルが声を上げた。
「ありゃ・・・街か・・・!?」
遠方に見えて来たのは、街。それも残骸ではない。大きな建物の集合体、まさに前文明における街の形装を保っていた。
盗賊に描かせた地図を見ながら、キジマが言う。
「あれは・・・オブリビオン・シティ・・・だそうだ。かつてペンデュラム軍によって制圧され根城にされた街、だってよ。」
「根城に・・・だから破壊されてないのか。」
リンカはキジマに訊ねる。
「行くのか、あそこへ。」
「うーん、通った方が近道だが、危険だから迂回した方が良いってさ。」
それを聞き、カケルは呟く。
「そんな事まで地図に書いてるのか・・・意外と親切だな、あの盗賊達。」
「ねぇねぇ、ナオト兄ちゃん、なんであの街が危ないの?」
裾を引っ張るマーナ。キジマは肩を竦めた。
「いや、理由までは書いてないな。」
「微妙に不親切だ・・・。」
ぼやくカケルにキジマは訊ねる。
「で、どうするカケル。あのオブなんとかシティを突っ切るのか?」
問いに、カケルは迷いを見せた。
「近道なら通りたいけど、リンカやマーナを守れるか・・・」
その言葉にマーナは胸を張る。
「カケル兄ちゃん!マーナはもう立派に戦えるんだよ!」
リンカもディスクを構える仕草をした。
「心配するなカケル。自分の身くらいは守れる。」
「リンカ・・・マーナ・・・」
見かねたキジマが肩を叩いた。
「ったく、俺が居るのを忘れるなよカケル。いざという時は俺が皆を守る。お前は、ユーガの元へ行く事を考えていればいい。」
「キジマ・・・すまない・・・」
手に持った地図をポケットに押し込み、キジマは街の方へと向き直った。
「さぁ、行こうか。オブなんとかへ!」
「・・・オブリビオン・シティだろ、キジマ・・・。」
そして、一行は向かった。そこに待ち受ける、試練も知らずに・・・。
次回 第14話「忘却都市と生存兵」
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それにしてもその教会が悪の根城って感じですね。全員の大物感が半端ない。
そして次の街に到着しそうなカケル一行。待ち受ける試練…危ういフラグが立った。 (2016-03-07 02:54)
解剖しているのは科学者なので、とりあえず大丈夫・・・なはず。
この3人はマサカーの中でも階級の高い幹部なので、大物感を感じて頂けたのなら嬉しいです。
次回は、新しい街へ到達しますが、この街で起こる試練は一つだけじゃなかったり・・・。お楽しみに。 (2016-03-07 04:42)