第26話　こたつみかんとたき火の共演　作：トマトところてん

きなこの家のきなこの部屋にて

　きなこの家は金持ち家庭で姉はもう家を出て一人暮らしでアパートだったので、姉の部屋は空き部屋になっていた
　広いね、きなこちゃんの部屋
　と、れんげ。一人部屋なら六畳一間でも充分だろうが、セミダブルのベッドを部屋の隅の角に置いて、部屋の真ん中にこたつを置いて、ベッドとこたつを結んだ線の延長線、ベッドのある角の対角に勉強机を置いてもゆうにスペースがあった
　ま、病院で過ごすことになるからもったいないけどね。で、今回はね、実はまだ誰にも言ってない秘密があってね。いいかい？　誰にも言っちゃいけないよ？
　と、きなこが言うのでれんげは、
　ん？　それは秘密にしておいた方がいいんじゃない？　だって他の誰にも言ってほしくないなら秘密にしてたらよくない？
　れんげは距離を取る。じりじりときなこが寄ってくる。これはまずい、安易に部屋にやってくるべきではなかったか
　あのさ、
　と、きなこが言う
　あたしたち、親友だよね？
　ん？　うん、まあ
　微妙な距離感と沈黙の間が気になる
　ま、とりあえずこたつに入っててよ
　うん
　れんげがこたつに入ると、きなこはちょっと待っててと言って部屋を出ていってしまった
　こんなに豪華な部屋、落ち着かないな
　と、れんげは思った。冬休みに入って初めてきなこの家を訪れたが、れんげは自分の家との差に驚いていた
　しばらくして、きなこがあるものをもって部屋に戻ってきた
　うんしょ、重たいね
　持ってきたのは電気ストーブだった。しかし、暖炉風というかたき火を模したようなデザインのこったストーブだった。コンセントをさして電源を入れるとたき火が発光し、たき火のパチパチと燃える音まで出た
　凄いね、そのストーブ。本物のたき火のような感じで電気ストーブなんだね
　れんげが言うと、きなこが応える
　そうなんだよ。本当は一人でキャンプしたいけど、病弱なあたしには厳しいから買ってもらった。これでいつでもエアたき火をしながら暖がとれるよ。こたつみかんかたき火をしながら話すならどっちがいい？
　私はこたつに入ってるから、きなこちゃんはたき火の前で話して。時々交代しよう
　わかったよ。あ、みかんもあるよ
　そういってきなこはこたつの上にみかんが山になった深皿をおいた。さっそくれんげはみかんをとってむきはじめた。指先がオレンジ色になってしまう
　しばらくれんげは部屋の中央でこたつに入り、きなこは部屋の隅っこでエアたき火をしていた
　実はさ、
　と、きなこが言うのでれんげはまた秘密の話かと思って止める
　自分の荷物を相手に背負わせることになるし、頑張らないといけないよ。ガッツとか根性があれば乗りきれるよ
　うん、うん、
　きなこは目頭が熱くなってつい言ってしまった
　あたしってギャルなのかな？　これってさ、変身願望で結局自分は特別じゃないっていつか気づくのかな？　子供の夢なんていつか終わってしまって、昔を懐かしんでばかりになっちゃうのかな？　あたしは哀しい！　とにかく哀しいよ！
　きなこが嘆くので、れんげはなんとなく
　そうだね。今までギャルかどうかなんてでてこなくて唐突だけど、子供から大人になる年齢で遊戯王をやってるのも不思議だね。遊戯王がステータスってわけなのかな。いや、きなこちゃんが遊戯王やめたらさすがにこの作品も終わりだね。いや、うん、それで終わりにしようよ
　オーバートップクリアマインドならぬなんとかなるっしょというギャルマインドで病弱のまま遊戯王を唯一の楽しみにして生きてきたというのも哀しい
　れんげちゃんはどうして遊戯王やってるの？
　と、きなこがきくと
　うーん
　と、悩んで
　さぁね
　と、応えた
　一応、何かしら気付きがあって面白いなとは思ってるけど、まぁいっかだよ。真面目にやるのはそこまで好きじゃないような気がする
　しばらくたき火のパチパチとした音だけがなっていて、沈黙も気まずくなかった
　きなこちゃんは闇マリクや鬼滅の無惨とかの悪キャラを詰めこんだような主人公だけど、心の闇も遊戯王をやって浄化されて晴れてきたのかな
　そうだね
　それからきなこは少しだけ落ち着くと立ち上がって決め台詞を言う
　主人公はこのあたしだ！　依然かわりなく！
　きなこちゃんはろくなめにあってないよね
　それでもなんとなくきなこは元気を取り戻したのだった
　こたつみかんはしめきった部屋で人と仲良く過ごせるか、たき火は火の管理ができるか、この両方を解決した光景がそこにはあった

続く

おまけ

　秘密って、実はさ、彼氏ができたんだよね
　なん、、、だと？
　病院通いと煩悩をうち払い寺の住職を目指す二人に彼氏など無縁だと思われるが、彼氏ができた
　やっぱりデートは水族館、動物園、映画館とかかな？
　デュエルしろよ
　いや、彼氏君とデュエルするのはなんかいやなんだよね。彼氏君の買ってきたパックを開けたい。彼氏君のお金で買った箱が開けたいんだ
　パシリじゃん