第13話　コッペパンとデッキ　作：トマトところてん

前回のあらすじ
　王者の鼓動のカード一枚ずつ見ながらの雑談の続き

本編
　王者の鼓動って言ったらやっぱり一位で元キングなんだけど、れんげちゃん学校はどう？　スクールカーストとかあるの？　何位？　いじめとかない？　
　きなこが質問すると、れんげが応える。
　六位かな？　でもプロ野球の球団じゃ最下位だしそう思うと厳しい世界だね、バッシングも受けちゃうなんて。ていや、私はそんなのに巻き込まれてないよ。てことは私、孤立してるのかな？
　れんげが自問自答していると、きなこがつぶやく。
　れんげちゃんは末っ子なのに甘えるのもおねだりも下手であざとくないもんねぇ。みんなにカッケーとか思われてるんじゃないの？
　いや、だから遠回しにおねだりしてスマホとか手に入れたって前に言ったじゃん。学校では何故か私は差し障りなくあっさりとした状況説明を先生によくする羽目になるんだよね。私も場あたり的で無力でいじめの加担者側になってるかもしれない。
　れんげが遠くを見つめる。きなこが先走る。
　寺の住職を目指す人の学校でもいじめがあるんだねぇ。遠回しのおねだりってつまり何？
　
　実はれんげは小学生の頃いじめられ、トイレに閉じ込められたことがある。外に扉が開くタイプでほうきやデッキブラシを傾けてドアノブに引っかけて開けられないように錠のようにしてあとは身体でおさえるようにして閉じ込める。どうも原因はれんげが率先してトイレ掃除をしたのがきしょいということだった。そのことがあって、家で手伝いをして小遣いを貰っていたれんげが急に家でトイレ掃除をやらなくなったのを母親に不審がられ、うっかり学校でそういう目にあったと言ってしまったら、貧乏寺の住職の父が怒って、災いが起こるように呪ってやるかと住職らしからぬことを言ったので、れんげは泣いてそれを止めたのだった。以来、れんげは大事にならないように自分の気持ちを慎み隠すようになった。閉じ込められてパニックになって閉所恐怖症になったりだとかトイレが嫌いになったかといえばそんなこともなく。トイレには監視カメラがついてないから落ち着ける場所であったし、それで逆に令和になってもいじめがたえないのかもしれなかった。また、歪んで自分は率先してやらず楽をして、手柄を横取りするなんてこともなかった。
　そうして義務教育が終わって勉強はそんなにできないのに冷静で鋭く、高貴な役職などに必要とされる妙に大人っぽい公正さを貧乏な癖にもっていた。人としての道に外れぬ厳格さや、感情のコントロールはまだまだだが、それでいまや、れんげにごまをするやつまでいた。その期待に応えることになるのか、それとも。
　何かの物語のように誰かの為に勇気を振り絞るということはまだなく、もしかしたら親になって親心をもつまでそれはないのかもしれなかった。友情というものは夫婦の愛情なんかよりよっぽど稀有で尊いのかもしれない。親友はベストフレンド。ベストフレンドはキロロのヒット曲。つまり親友はヒット曲。三段論法だ。ん？　どこかで間違えたかな？

　二人はカードの長いテキストを読んでいたが、今回は他に関連書籍も読んでみようかということになった。ジャンプやカード付属の漫画。袋から取りだし、ペリペリとフィルムをはがしてペラペラとページをめくる。カップ麺と一緒に取り出していた菓子パンが残っていたので半分にわけて二人で食べることに。ピーナッツクリームのコッペパンだった。
　これで秋を感じるかい？　目を閉じてマロンクリームの味を想像して一口どうだい？
　きなこがそう言うが、
　うーん。無理だよね。家はクリスマスはケーキじゃなくてアイスクリームなんだけどモンブランの味にはほど遠いよね
　とれんげが応えた。

続く

余談

　端末が変わって括弧とか英数字の入力が難しくなったのでちょうどやめどきというか潮時なのかもしれない。二人が遊戯王をやってる女子としては子供のふりをしてるけど心は年老いたおばさんなのかそれとも、扱ってるデッキは子供向けなので大人のふりをしてるけど心は少年なのかと雑談する話と、人の弱みや欲望なんかにつけこんで勝つデッキはないかと探したりする話、他人の願いや欲望を叶えている内はうまくいっているのに、いざ自分の願いや欲望や夢を叶えようとすると、スキャンダルにあってしまった芸能人のように転がりおちるって話が残ってるんですが、端末変わって凄く書きにくいので保留にします。自分の夢を叶えるには意外にも、何かを自立させること、子育てや植木鉢みたいなことが大事なんですね。コンテンツなんかも育てていくのが難しく自分の限界も見えるらしい。吉本ばななのキッチンでありました。端末が変わるか、無性に書きたくなったときにまたいつか。