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6.サバイバー 作:お野菜のデーモン
観客席から様々な怒号が飛び交う。でもそれも仕方の無いことだろう。なんせもう3ターンもほぼ同じ盤面。リヴァーストームは戦闘破壊したがコロッサルマウンテンはそのまま。『護封剣士ートリニティ』と『シールウィッチ』の制圧効果で何とか命を繋いでいる状態だ。
「さっきからやけに長引かせやがって…何考えてんだお前はよ」
「質問すればその全てに答えが返ってくるなんてのは学生までだぜ、そんなこともわかんねぇのか?」
「んのやろォ…!」
(や、やべ〜…)
相手がキレやすいから優位を取れてるだけで、いい加減口も回らなくなってきた。
(『電光の天雷竜』…は、使えない。トリニティの効果も次の自分スタンバイフェイズに尽きる。そうなれば、ロードローラー持ちのコロッサルマウンテンが表側になりゲーム・セット…)
焦りが全身を支配する。冷静になれと脳が警鐘を鳴らすが、心臓は鳴り止んでくれない。
『いつまで遅延してんだカスデュエリスト!』
『勝ち目ないならとっととサレンダーしろやボケー!』
や、やばい、空気感も完全にアウェーだ。
本当にどうし
『金返せってんだ!この、クソ偽物野郎!!!』
「がっ……!!!」
──っ!!
【フィールド内に物を投げないでください。繰り返します、フィールド内に物を……】
『やべっ当たっちまった』
『いいよいいよあんなヤツ』
『もっと当てちまえ!』
「へっ、客にもさっさと消えろって言われてるぜ。お前」
…頭が、痛い。鈍い痛みが思考に入り込んでくる。流れてくる血で、物理的に視界が赤く染まる。
(……でも、逆にスッキリしたぜ)
不思議と怒りは湧いてこない。当然だ。
むしろ、焦りに支配されていた脳内が逆にクリアになっていく気さえ感じる。
結果が全ての世界で、ただの1度も結果を出していない俺はただのカス。客の言う通り、名前に負けてるただの凡骨デュエリストだ。
上手くいかない。思った通りにならない。
だが、まだ負けてはいない。勝ってないだけだ。
だから俺は…
「……カードを2枚伏せて、ターンエンド…!」
(勝って『俺』という存在を証明させてみせる)
「…ちっ、まだくたばらねえってんなら直接トドメを刺してやる。俺のターン、ドロー!…俺は手札から『無限起動ロックアンカー』を召喚、そしてその効果で手札から『無限起動キャンサークレーン』を特殊召喚だ!」
「シールウィッチの効果で、守備表示にする」
「意味ねぇんだよ!ロックアンカーの効果発動!自分のレベルと、キャンサークレーンのレベルを合わせた数値にする。これでレベル9が2枚…どういう意味か、わかるな?」
止まっていたフィールドが、また動き始める。
「その前に、キャンサークレーンの効果で墓地の無限起動を除外して『超接地展開』をサーチして発動しておく。そして、レベル9のモンスター2体オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚だ、現れろ『無限起動アースシェイカー』!」
そいつは地面を踏み荒らしながら、闇の向こうより現れる。無限の機動力を持つ巨大重機達の王『無限起動アースシェイカー』だ。
「勝った!!アースシェイカーの効果発動、X素材を2枚取り除きィ…『シールウィッチ』と『護封剣士ートリニティ』を破壊だ!消えろウザったらしいコバエ共!」
まずその毒牙にかかったのは、宣言されたことで再び怯え初めた魔法少女とどこか悟ったような表情をした剣士の2人だった。超巨大掘削レーンの前には男も女も関係なく。2人揃って巻き込まれ地面の赤黒い染みとなる。
「これで『護封剣士ートリニティ』がコピーしていた闇の護封剣の効果も消える…つまり、こいつを反転召喚できるって訳だ!もう一度起動しろ、『無限起動コロッサルマウンテン』!!」
闇が消えたことで、再び敵を視認したコロッサルマウンテンが鋼鉄の唸りを上げる。フィールドに残されたミミクリボーと電光の天雷竜は再びその圧に押され、萎縮してしまう。
「ははっ!このままでも十分勝てるが…とっておきのダメ押しってものを見せてやろう。『超接地展開』の効果発動。対象は『無限起動アースシェイカー』!X召喚だ…存在しない歴史より具現化し、目の前の敵を蹂躙せよ!」
しかし、それだけでは終わらなかった。
どこからかレールが伸び、アースシェイカーが牽引してくる形でそいつは姿を現す。
それは、今まで見てきた中で最もでかく、強く、恐ろしい武器を持つ超弩級列車砲。
「『超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ』…」
「正解だ。そろそろ終わりにしようか…このくだらない勝負も、お前のデュエリストとしての人生も!バトルフェイズ!」
遮るものは無くなった。そう言わんばかりに2体の巨大機械が俺のフィールドを見下ろす。
「…待ちな。その前に罠カード『ゴブリンのやりくり上手』と『非常食』を発動…まず非常食の効果で自分フィールドの魔法罠をリリースして回復し、ゴブリンのやりくり上手の効果でドローする」
「…ちっ、癪な真似を…だか、たかだか1000回復した程度で」
「3000だ、『電光の天雷竜』と自分の効果で特殊召喚されている『ミミクリボー』は通常魔法カードとしても扱われる…!」
本当なら、ミミクリボーは魔法カードを戻すために使いたかった。天雷竜ももっと上手く使ってやりたかった。だが勝つためには仕方ない。まずは非常食の効果処理。ミミクリボーと天雷竜、どこからか現れたゴブリンがそれぞれを象った姿のクッキーとなり俺のライフに追加される。そしてゴブリンのやりくり上手の効果。墓地から緑色のゴブリンと思しき手が伸び、デッキからカードを1枚ずつ引き俺に見せてくる。
1枚目は……別に今はいらない。
2枚目に……来た!
「…ゴブリンのやりくり上手の効果だ。俺は、手札のこのカードをデッキに戻す…!」
「…へっ、大量回復と聞いて一瞬ビビったが…冷静になって見て見りゃあお前のフィールドはがら空き!つまり、総攻撃チャンスだマヌケ!行けコロッサルマウンテン、ジャガーノート・リーベ!押し潰しちまいな!」
ソリッドビジョン越しとはいえ、結構ビビる2つの巨大機械による攻撃が襲い来る。
阿笠LP
4000→7000→900
「ちっ…仕留め損なったか。まぁいい。何ができるって訳でもないだろうしな。バトルフェイズ終了、そのままターンエンドだ」
実の所天雷竜の方は戻さなくても良かった。ミミクリボーの効果で戦闘破壊を先延ばしにしていれば、受けるダメージは2100だけで済んでいた。だが…
(ミミクリボーは、他のカードのためにとっておきたい。それに、フィールドが空いてる方が、俺にとっては都合がいい…!)
「俺のターン……ドロー!!」
引いたカードを見る…完璧だ。
ようやく、ツキが回ってきた。
「手札から魔法カード『焦げた指輪』を発動!墓地の『ライトニング・ボルテックス』2枚、『炎の護封剣』、『サンダー・ショート』2枚の計5枚をデッキに戻して1枚ドローする!」
赤茶け、焦げたはずの指輪に緑色の光が灯る。それは墓地に眠る5つの魔法カードをデッキに戻すと、最後にもう一度だけ眩い光を放つ。それが晴れる頃には指輪は元の姿に戻って墓地に送られ、代わりに俺の手札が1枚増えていた。正直な話、ここで手札に加わるカードはなんでもいい。どうせ使わない。
「…今デッキに戻した『ライトニング・ボルテックス』2枚、『サンダー・ショート』2枚、そして『ライトニング・ストーム』を墓地に送り、もう一度顕現しろ、『電光の天雷竜』!!」
そして再び、フィールドに雷が舞い降りた。
巨大重機に押され防御態勢をとりながらも、その目はしっかりと敵を見据えている。
「更に効果発動!言わなくてもわかるな?墓地の『ライトニング・ストーム』の効果をコピーする!さっき喰らわなかった分思う存分食らっていきな」
「ぐっ…!くそ!」
先程とは別個体のはず。なのに、まるで鬱憤を晴らすかのごとく全身の雷を迸らせ、そして相手フィールドへ放出する。相手フィールドの重機達は一瞬で粉砕され、もう跡形もない。
「…そして、魔法カード『無機融合』発動!3つの異なる力をその身に宿し、現れろ!無機物の魔獣『エレメントキマイラ』!」
がら空きとなったフィールド。そこに降り立つは素材となった『光の護封剣』と『闇の護封剣』の剣、『ライトニング・ボルテックス』の雷を纏った魔獣。あいつから受け取った新たなるエース『エレメントキマイラ』。
「おい、なんだよ…それは…!」
「さぁな、バトルフェイズだ!!やれエレメントキマイラ!」
俺の命令を聞き、魔獣は動き出した。全身の力を漲らせ、引き絞り…そして相手に向かって放出する。
鎌瀬
LP4000→1500
「ぐうっ!…へっ!だが、耐えたぞ。残念だったな、パワー不足だ!ビビらせやがって、結局無意味な…」
「なにを勘違いしてやがる。まだ俺のバトルフェイズだろうが…エレメントキマイラの戦闘終了時、効果発動…墓地の通常魔法カードを手札に加え、そして手札から魔法カードを発動する…!手札に加えるのも、発動するのも…『無機融合』」
「…はっ…!?な、お前」
再び魔力の奔流がフィールドを包み込む。先程の焼き直しのような光景の後、フィールドのエレメントキマイラの横にもう一体の『エレメントキマイラ』が舞い降りた。
「ま、まて」
「『エレメントキマイラ』で、攻撃」
「やめろ!」
「『エレメンタル・バースト』ォォォ!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉおぉぉおお!!!!」
叫ぶ鎌瀬を無情にも魔力の波動が包み込む。手札を、デッキを、墓地を、そしてLP全てを焼き付くし…ついに、勝者が決定した。
鎌瀬 Lose
LP1500→0
阿笠 Win
LP900
『………おおおおぉぉおおっっ!!!!』
数瞬の沈黙の末、割れんばかりの歓声がスタジアムを包む。
『まさか、まさかの結末!正しく劇的、阿笠遊理!初勝利は鮮やかな逆転勝利!!!今、スタジアム全体が激しく揺れています!!!!』
『やるじゃねーか阿笠ーー!!』
『酷いこと言って悪かった!よくやったぞー!!』
『スカッとする逆転だったぜ、ありがとー!!』
「……!!!」
ようやく、俺にも初勝利という実感が湧いてきた。この叫びたくなる衝動を、どうしても抑えきれない!
「…ぃょ…っしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
───────────────────────
最後は少し駆け足気味になっちまいましたが、今回のデュエルでやりたいことはとりあえず全部やりましたとさ。まる。
あと前にも言ったけど阿笠の情緒ヤバすぎんか。
薬やってらっしゃる?
「さっきからやけに長引かせやがって…何考えてんだお前はよ」
「質問すればその全てに答えが返ってくるなんてのは学生までだぜ、そんなこともわかんねぇのか?」
「んのやろォ…!」
(や、やべ〜…)
相手がキレやすいから優位を取れてるだけで、いい加減口も回らなくなってきた。
(『電光の天雷竜』…は、使えない。トリニティの効果も次の自分スタンバイフェイズに尽きる。そうなれば、ロードローラー持ちのコロッサルマウンテンが表側になりゲーム・セット…)
焦りが全身を支配する。冷静になれと脳が警鐘を鳴らすが、心臓は鳴り止んでくれない。
『いつまで遅延してんだカスデュエリスト!』
『勝ち目ないならとっととサレンダーしろやボケー!』
や、やばい、空気感も完全にアウェーだ。
本当にどうし
『金返せってんだ!この、クソ偽物野郎!!!』
「がっ……!!!」
──っ!!
【フィールド内に物を投げないでください。繰り返します、フィールド内に物を……】
『やべっ当たっちまった』
『いいよいいよあんなヤツ』
『もっと当てちまえ!』
「へっ、客にもさっさと消えろって言われてるぜ。お前」
…頭が、痛い。鈍い痛みが思考に入り込んでくる。流れてくる血で、物理的に視界が赤く染まる。
(……でも、逆にスッキリしたぜ)
不思議と怒りは湧いてこない。当然だ。
むしろ、焦りに支配されていた脳内が逆にクリアになっていく気さえ感じる。
結果が全ての世界で、ただの1度も結果を出していない俺はただのカス。客の言う通り、名前に負けてるただの凡骨デュエリストだ。
上手くいかない。思った通りにならない。
だが、まだ負けてはいない。勝ってないだけだ。
だから俺は…
「……カードを2枚伏せて、ターンエンド…!」
(勝って『俺』という存在を証明させてみせる)
「…ちっ、まだくたばらねえってんなら直接トドメを刺してやる。俺のターン、ドロー!…俺は手札から『無限起動ロックアンカー』を召喚、そしてその効果で手札から『無限起動キャンサークレーン』を特殊召喚だ!」
「シールウィッチの効果で、守備表示にする」
「意味ねぇんだよ!ロックアンカーの効果発動!自分のレベルと、キャンサークレーンのレベルを合わせた数値にする。これでレベル9が2枚…どういう意味か、わかるな?」
止まっていたフィールドが、また動き始める。
「その前に、キャンサークレーンの効果で墓地の無限起動を除外して『超接地展開』をサーチして発動しておく。そして、レベル9のモンスター2体オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚だ、現れろ『無限起動アースシェイカー』!」
そいつは地面を踏み荒らしながら、闇の向こうより現れる。無限の機動力を持つ巨大重機達の王『無限起動アースシェイカー』だ。
「勝った!!アースシェイカーの効果発動、X素材を2枚取り除きィ…『シールウィッチ』と『護封剣士ートリニティ』を破壊だ!消えろウザったらしいコバエ共!」
まずその毒牙にかかったのは、宣言されたことで再び怯え初めた魔法少女とどこか悟ったような表情をした剣士の2人だった。超巨大掘削レーンの前には男も女も関係なく。2人揃って巻き込まれ地面の赤黒い染みとなる。
「これで『護封剣士ートリニティ』がコピーしていた闇の護封剣の効果も消える…つまり、こいつを反転召喚できるって訳だ!もう一度起動しろ、『無限起動コロッサルマウンテン』!!」
闇が消えたことで、再び敵を視認したコロッサルマウンテンが鋼鉄の唸りを上げる。フィールドに残されたミミクリボーと電光の天雷竜は再びその圧に押され、萎縮してしまう。
「ははっ!このままでも十分勝てるが…とっておきのダメ押しってものを見せてやろう。『超接地展開』の効果発動。対象は『無限起動アースシェイカー』!X召喚だ…存在しない歴史より具現化し、目の前の敵を蹂躙せよ!」
しかし、それだけでは終わらなかった。
どこからかレールが伸び、アースシェイカーが牽引してくる形でそいつは姿を現す。
それは、今まで見てきた中で最もでかく、強く、恐ろしい武器を持つ超弩級列車砲。
「『超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ』…」
「正解だ。そろそろ終わりにしようか…このくだらない勝負も、お前のデュエリストとしての人生も!バトルフェイズ!」
遮るものは無くなった。そう言わんばかりに2体の巨大機械が俺のフィールドを見下ろす。
「…待ちな。その前に罠カード『ゴブリンのやりくり上手』と『非常食』を発動…まず非常食の効果で自分フィールドの魔法罠をリリースして回復し、ゴブリンのやりくり上手の効果でドローする」
「…ちっ、癪な真似を…だか、たかだか1000回復した程度で」
「3000だ、『電光の天雷竜』と自分の効果で特殊召喚されている『ミミクリボー』は通常魔法カードとしても扱われる…!」
本当なら、ミミクリボーは魔法カードを戻すために使いたかった。天雷竜ももっと上手く使ってやりたかった。だが勝つためには仕方ない。まずは非常食の効果処理。ミミクリボーと天雷竜、どこからか現れたゴブリンがそれぞれを象った姿のクッキーとなり俺のライフに追加される。そしてゴブリンのやりくり上手の効果。墓地から緑色のゴブリンと思しき手が伸び、デッキからカードを1枚ずつ引き俺に見せてくる。
1枚目は……別に今はいらない。
2枚目に……来た!
「…ゴブリンのやりくり上手の効果だ。俺は、手札のこのカードをデッキに戻す…!」
「…へっ、大量回復と聞いて一瞬ビビったが…冷静になって見て見りゃあお前のフィールドはがら空き!つまり、総攻撃チャンスだマヌケ!行けコロッサルマウンテン、ジャガーノート・リーベ!押し潰しちまいな!」
ソリッドビジョン越しとはいえ、結構ビビる2つの巨大機械による攻撃が襲い来る。
阿笠LP
4000→7000→900
「ちっ…仕留め損なったか。まぁいい。何ができるって訳でもないだろうしな。バトルフェイズ終了、そのままターンエンドだ」
実の所天雷竜の方は戻さなくても良かった。ミミクリボーの効果で戦闘破壊を先延ばしにしていれば、受けるダメージは2100だけで済んでいた。だが…
(ミミクリボーは、他のカードのためにとっておきたい。それに、フィールドが空いてる方が、俺にとっては都合がいい…!)
「俺のターン……ドロー!!」
引いたカードを見る…完璧だ。
ようやく、ツキが回ってきた。
「手札から魔法カード『焦げた指輪』を発動!墓地の『ライトニング・ボルテックス』2枚、『炎の護封剣』、『サンダー・ショート』2枚の計5枚をデッキに戻して1枚ドローする!」
赤茶け、焦げたはずの指輪に緑色の光が灯る。それは墓地に眠る5つの魔法カードをデッキに戻すと、最後にもう一度だけ眩い光を放つ。それが晴れる頃には指輪は元の姿に戻って墓地に送られ、代わりに俺の手札が1枚増えていた。正直な話、ここで手札に加わるカードはなんでもいい。どうせ使わない。
「…今デッキに戻した『ライトニング・ボルテックス』2枚、『サンダー・ショート』2枚、そして『ライトニング・ストーム』を墓地に送り、もう一度顕現しろ、『電光の天雷竜』!!」
そして再び、フィールドに雷が舞い降りた。
巨大重機に押され防御態勢をとりながらも、その目はしっかりと敵を見据えている。
「更に効果発動!言わなくてもわかるな?墓地の『ライトニング・ストーム』の効果をコピーする!さっき喰らわなかった分思う存分食らっていきな」
「ぐっ…!くそ!」
先程とは別個体のはず。なのに、まるで鬱憤を晴らすかのごとく全身の雷を迸らせ、そして相手フィールドへ放出する。相手フィールドの重機達は一瞬で粉砕され、もう跡形もない。
「…そして、魔法カード『無機融合』発動!3つの異なる力をその身に宿し、現れろ!無機物の魔獣『エレメントキマイラ』!」
がら空きとなったフィールド。そこに降り立つは素材となった『光の護封剣』と『闇の護封剣』の剣、『ライトニング・ボルテックス』の雷を纏った魔獣。あいつから受け取った新たなるエース『エレメントキマイラ』。
「おい、なんだよ…それは…!」
「さぁな、バトルフェイズだ!!やれエレメントキマイラ!」
俺の命令を聞き、魔獣は動き出した。全身の力を漲らせ、引き絞り…そして相手に向かって放出する。
鎌瀬
LP4000→1500
「ぐうっ!…へっ!だが、耐えたぞ。残念だったな、パワー不足だ!ビビらせやがって、結局無意味な…」
「なにを勘違いしてやがる。まだ俺のバトルフェイズだろうが…エレメントキマイラの戦闘終了時、効果発動…墓地の通常魔法カードを手札に加え、そして手札から魔法カードを発動する…!手札に加えるのも、発動するのも…『無機融合』」
「…はっ…!?な、お前」
再び魔力の奔流がフィールドを包み込む。先程の焼き直しのような光景の後、フィールドのエレメントキマイラの横にもう一体の『エレメントキマイラ』が舞い降りた。
「ま、まて」
「『エレメントキマイラ』で、攻撃」
「やめろ!」
「『エレメンタル・バースト』ォォォ!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉおぉぉおお!!!!」
叫ぶ鎌瀬を無情にも魔力の波動が包み込む。手札を、デッキを、墓地を、そしてLP全てを焼き付くし…ついに、勝者が決定した。
鎌瀬 Lose
LP1500→0
阿笠 Win
LP900
『………おおおおぉぉおおっっ!!!!』
数瞬の沈黙の末、割れんばかりの歓声がスタジアムを包む。
『まさか、まさかの結末!正しく劇的、阿笠遊理!初勝利は鮮やかな逆転勝利!!!今、スタジアム全体が激しく揺れています!!!!』
『やるじゃねーか阿笠ーー!!』
『酷いこと言って悪かった!よくやったぞー!!』
『スカッとする逆転だったぜ、ありがとー!!』
「……!!!」
ようやく、俺にも初勝利という実感が湧いてきた。この叫びたくなる衝動を、どうしても抑えきれない!
「…ぃょ…っしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
───────────────────────
最後は少し駆け足気味になっちまいましたが、今回のデュエルでやりたいことはとりあえず全部やりましたとさ。まる。
あと前にも言ったけど阿笠の情緒ヤバすぎんか。
薬やってらっしゃる?
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