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EX-3後半 きっかけを与えてくれたもの 作:にしん
その日から恵那は、再び自分を二の次にした。おばあちゃんが退院して以来、学校にも行かず、遊びにも行かず、おばあちゃんのお世話を四六時中するようになった。
案の定毎朝のコンビニの時も、いつもなら補充を手伝わせているのだがずっとおばあちゃんのそばで腰をさすったり、支えるようにしたり、代わりにお金を受け取ったり・・・
おばあちゃん「恵那や、わたしゃ大丈夫だから、今日は学校へ行ってきんさい」
恵那「や、やだぁ」
おばあちゃん「今日から要さんがついていてくれるから安心してよい。だから学校へは活きんさいな」
恵那「で、でもぉ・・・」
かなめ「私の事は大丈夫だから。ほら、遅刻しちゃうよ恵那ちゃん」
恵那「うぅ・・・」
・・・
おばあちゃん「すまないねぇ、こんな年寄りの世話という残業までしてもらって」
かなめ「いえいえ。お父さんと遊二を送ったら私も暇なので」
恵那を安心させれば学校へ行ってくれる。だけど2人の思った通りには行かないのが恵那のトラウマによる影響だった。
恵那がとぼとぼと下を向いて帰宅した途端、鞄を床に放り投げて真っ先におばあちゃんの元へ行った。その顔は涙でくしゃくしゃになっていた。お互い何も言わず抱き合っていた。
かなめ「恵那ちゃん帰ってきたから、お夕飯作ってから帰りますね」
おばあちゃん「頼んだぞい。ほら恵那、お手伝いしておくれ」
恵那「・・・おばあちゃんのそばにいる。もうおばあちゃんを倒れさせたくないもん」
その次の日からいくら言っても恵那が学校に行くことはなかった。
数日後。おばあちゃんが診察とリハビリのための通院のため朝のラッシュ以降はコンビニ臨時休業。コルセットを巻いているので車の運転はなんとかできるが車の乗り降りは恵那が支えていた。
おばあちゃん「1時間ぐらいかかるから、ちゃんといい子で待ってるんじゃよ」
恵那「おばあちゃん・・・」
九良市で一番大きい病院なので待合室で1人待たされる恵那。テレビや自販機があるものの、貰った小遣いを使う余裕もなくただひたすらおばあちゃんの心配だけをしていた。と、そこに見知った顔の女性が現れた。
かなめ「あれ、恵那ちゃん?」
恵那「・・・?」
かなめ「ということは、桃井さん・・・おばあちゃん診察とリハビリ中かな」
恵那「う、うん」
恵那は要の母の影に隠れる1人のちょっと年上の少年を見て怖がる。それに気づいた要の母はニコッと笑ってその少年を無理やり恵那の前に出した。
かなめ「聞いたことあるでしょ。息子の遊二」
恵那「ゆ・・・ゆうじ?」
かなめ「この街じゃちょっとした有名人なのよ~。遊戯王っていって・・・」
要「ちょ、お母さん!それ言うのやめろよ!」
反抗期らしく親のお節介に反発する遊二。その時遊二のポケットから1枚のカードが床に落ちた。それを拾う恵那。
恵那「き、綺麗・・・」
要「あっ、それオレの・・・」
かなめ「綺麗でしょ。恵那ちゃんも気分転換に始めたら?実は私、おばあちゃんと一緒にたまーに遊んでるのよ」
恵那「お、おばあちゃんと?」
かなめ「そうよ。“遊戯王”っていうの。これのおかげでおばあちゃんと知り合いになったのよ」
恵那はもう1度そのカードをまじまじと見る。当時の彼女には書いてあることの意味が分からなかったが、綺麗でかわいいイラストがあるカードゲームと認識をしていた。
そのカードは<マドルチェ・プディンセス>。おばあちゃんの一件で落ち込み、引きこもっていた彼女とは正反対の、キラキラしていて元気を与えてくれるお姫様のような少女。
要「・・・も、もしよかったらそれ、やるよ。景品だったけどいらねえし」
恵那「い、いいの?でもやり方知らない・・・」
かなめ「ちょうどいいじゃない遊二。デッキ渡してルール教えてあげてよ」
要「ま、まぁ・・・そのデッキ作ったけど使うことなかったし、デッキごとあげるよ。る、ルールはだな・・・」
その時、おばあちゃんが診察とリハビリを終えて待合室に戻る。
かなめ「桃井さん。調子はどうですか?」
おばあちゃん「少しは楽になったんじゃよ・・・恵那、それ遊戯王じゃないかい」
恵那「う、うん。教えてもらったの。楽しいね」
おばあちゃん「そうかいそうかい。っと、坊ちゃんもいたのかい。恵那に遊戯王を教えてありがとうねぇ」
要「お、おう」
数日後。恵那がおつかい帰りにカードショップへ行くと、偶然デュエル大会が開かれていた。そしてこの前の彼・・・いや、“シノビのユージ”をこの目で見てしまった。
要「我が忍に・・・死角はなし。<影忍法・影縫いの術>。そして神風の如き素早き忍が敵を葬る・・・!」
相手デュエリスト「何も手がない・・・続きどうぞ」(直接攻撃されても<聖なるバリアーミラーフォースー>で返り討ちだ)
要「そして我が切り札<阿修羅>の指示により、全ての忍はその罠を踏むことなく対象を葬る!」
相手デュエリスト「マ、マジか・・・負けた・・・」
主催者「本日の九良市遊戯王大会の優勝は、“シノビのユージ”に決まりました!」
恵那「か・・・かっこいい・・・!そして強い・・・!」
数年後に黒歴史となる彼の姿に、恵那は見事に惹かれたのである。それと同時にある気持ちが芽生えた。
恵那「私、何でもできるようにならなくちゃ・・・」
恵那はカバンからあるものを取り出す。それは1つのデッキだった。それは、以前に遊戯王を教えてもらった少年から貰った<マドルチェ>のデッキ。この時はまだおばあちゃんの件で塞ぎ込んでいたのでデュエルの様子を遠目から見ることしかできなかったが、こないだとは様変わりし、まるで主人公のような立ち振る舞いをする彼を見て、自分も変わらなくちゃと決心した。
こうして恵那がコンビニ兼カードショップの主になりつつおばあちゃんの世話もしつつ学業も励み、遊びも大事にする万能コンビニ少女になるのは少し先の話。
ーーー
おまけ
病院で遊戯王で遊んだのにも関わらず遊二が恵那を覚えていない理由。この後遊二が高校3年間遊戯王からほとんど離れていた、かつ普通の高校生を目指したため。逆に恵那が遊二を要の母の息子ではなく“シノビのユージ”でしか知らなかった理由は、当時の遊二の髪型や服装が普通すぎて、かつ惹かれた時の超厨二モードである“シノビのユージ”にイメージを全て持っていかれたため。
案の定、晴れて普通の大学生になった遊二を見てあの時の彼とは分からなかった模様。
案の定毎朝のコンビニの時も、いつもなら補充を手伝わせているのだがずっとおばあちゃんのそばで腰をさすったり、支えるようにしたり、代わりにお金を受け取ったり・・・
おばあちゃん「恵那や、わたしゃ大丈夫だから、今日は学校へ行ってきんさい」
恵那「や、やだぁ」
おばあちゃん「今日から要さんがついていてくれるから安心してよい。だから学校へは活きんさいな」
恵那「で、でもぉ・・・」
かなめ「私の事は大丈夫だから。ほら、遅刻しちゃうよ恵那ちゃん」
恵那「うぅ・・・」
・・・
おばあちゃん「すまないねぇ、こんな年寄りの世話という残業までしてもらって」
かなめ「いえいえ。お父さんと遊二を送ったら私も暇なので」
恵那を安心させれば学校へ行ってくれる。だけど2人の思った通りには行かないのが恵那のトラウマによる影響だった。
恵那がとぼとぼと下を向いて帰宅した途端、鞄を床に放り投げて真っ先におばあちゃんの元へ行った。その顔は涙でくしゃくしゃになっていた。お互い何も言わず抱き合っていた。
かなめ「恵那ちゃん帰ってきたから、お夕飯作ってから帰りますね」
おばあちゃん「頼んだぞい。ほら恵那、お手伝いしておくれ」
恵那「・・・おばあちゃんのそばにいる。もうおばあちゃんを倒れさせたくないもん」
その次の日からいくら言っても恵那が学校に行くことはなかった。
数日後。おばあちゃんが診察とリハビリのための通院のため朝のラッシュ以降はコンビニ臨時休業。コルセットを巻いているので車の運転はなんとかできるが車の乗り降りは恵那が支えていた。
おばあちゃん「1時間ぐらいかかるから、ちゃんといい子で待ってるんじゃよ」
恵那「おばあちゃん・・・」
九良市で一番大きい病院なので待合室で1人待たされる恵那。テレビや自販機があるものの、貰った小遣いを使う余裕もなくただひたすらおばあちゃんの心配だけをしていた。と、そこに見知った顔の女性が現れた。
かなめ「あれ、恵那ちゃん?」
恵那「・・・?」
かなめ「ということは、桃井さん・・・おばあちゃん診察とリハビリ中かな」
恵那「う、うん」
恵那は要の母の影に隠れる1人のちょっと年上の少年を見て怖がる。それに気づいた要の母はニコッと笑ってその少年を無理やり恵那の前に出した。
かなめ「聞いたことあるでしょ。息子の遊二」
恵那「ゆ・・・ゆうじ?」
かなめ「この街じゃちょっとした有名人なのよ~。遊戯王っていって・・・」
要「ちょ、お母さん!それ言うのやめろよ!」
反抗期らしく親のお節介に反発する遊二。その時遊二のポケットから1枚のカードが床に落ちた。それを拾う恵那。
恵那「き、綺麗・・・」
要「あっ、それオレの・・・」
かなめ「綺麗でしょ。恵那ちゃんも気分転換に始めたら?実は私、おばあちゃんと一緒にたまーに遊んでるのよ」
恵那「お、おばあちゃんと?」
かなめ「そうよ。“遊戯王”っていうの。これのおかげでおばあちゃんと知り合いになったのよ」
恵那はもう1度そのカードをまじまじと見る。当時の彼女には書いてあることの意味が分からなかったが、綺麗でかわいいイラストがあるカードゲームと認識をしていた。
そのカードは<マドルチェ・プディンセス>。おばあちゃんの一件で落ち込み、引きこもっていた彼女とは正反対の、キラキラしていて元気を与えてくれるお姫様のような少女。
要「・・・も、もしよかったらそれ、やるよ。景品だったけどいらねえし」
恵那「い、いいの?でもやり方知らない・・・」
かなめ「ちょうどいいじゃない遊二。デッキ渡してルール教えてあげてよ」
要「ま、まぁ・・・そのデッキ作ったけど使うことなかったし、デッキごとあげるよ。る、ルールはだな・・・」
その時、おばあちゃんが診察とリハビリを終えて待合室に戻る。
かなめ「桃井さん。調子はどうですか?」
おばあちゃん「少しは楽になったんじゃよ・・・恵那、それ遊戯王じゃないかい」
恵那「う、うん。教えてもらったの。楽しいね」
おばあちゃん「そうかいそうかい。っと、坊ちゃんもいたのかい。恵那に遊戯王を教えてありがとうねぇ」
要「お、おう」
数日後。恵那がおつかい帰りにカードショップへ行くと、偶然デュエル大会が開かれていた。そしてこの前の彼・・・いや、“シノビのユージ”をこの目で見てしまった。
要「我が忍に・・・死角はなし。<影忍法・影縫いの術>。そして神風の如き素早き忍が敵を葬る・・・!」
相手デュエリスト「何も手がない・・・続きどうぞ」(直接攻撃されても<聖なるバリアーミラーフォースー>で返り討ちだ)
要「そして我が切り札<阿修羅>の指示により、全ての忍はその罠を踏むことなく対象を葬る!」
相手デュエリスト「マ、マジか・・・負けた・・・」
主催者「本日の九良市遊戯王大会の優勝は、“シノビのユージ”に決まりました!」
恵那「か・・・かっこいい・・・!そして強い・・・!」
数年後に黒歴史となる彼の姿に、恵那は見事に惹かれたのである。それと同時にある気持ちが芽生えた。
恵那「私、何でもできるようにならなくちゃ・・・」
恵那はカバンからあるものを取り出す。それは1つのデッキだった。それは、以前に遊戯王を教えてもらった少年から貰った<マドルチェ>のデッキ。この時はまだおばあちゃんの件で塞ぎ込んでいたのでデュエルの様子を遠目から見ることしかできなかったが、こないだとは様変わりし、まるで主人公のような立ち振る舞いをする彼を見て、自分も変わらなくちゃと決心した。
こうして恵那がコンビニ兼カードショップの主になりつつおばあちゃんの世話もしつつ学業も励み、遊びも大事にする万能コンビニ少女になるのは少し先の話。
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病院で遊戯王で遊んだのにも関わらず遊二が恵那を覚えていない理由。この後遊二が高校3年間遊戯王からほとんど離れていた、かつ普通の高校生を目指したため。逆に恵那が遊二を要の母の息子ではなく“シノビのユージ”でしか知らなかった理由は、当時の遊二の髪型や服装が普通すぎて、かつ惹かれた時の超厨二モードである“シノビのユージ”にイメージを全て持っていかれたため。
案の定、晴れて普通の大学生になった遊二を見てあの時の彼とは分からなかった模様。
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