ｖｓＤ・Ｋ！ １ターンキルの恐怖！①　作：はにわ

　
ーーそして放課後。
透矢は一人、体育館の前まで来ていた。
いつもなら用事が無ければ真希や千鶴とさっさと帰るところを、二人には適当な理由を付けて先に帰ってもらったのである。
ただ、真希は透矢のそんな理由付けを少し訝しんでいたようであるが。

（今日・・・デュエル・キラーが現れるーー？）

炎魅子の誘い掛けによって、二人に嘘を付いてまで居残った透矢。
欺いた事からも分かる通り、この事は二人には秘密にしている。
もしデュエル・キラーが現れるとして、自分の好奇心のために二人を巻き込みたくは無かったからだ。

透矢は辺りに誰もいないことを確かめてから、扉に手をかけると、何の抵抗もなく扉は開いた。
炎魅子がメールをくれたように、鍵を開けておいてくれたようだ。

ーー電気の点いていない体育館。
窓から差す太陽の光だけが歩く頼りである。
もちろん中には誰もいないはずで、耳が痛くなるような静かな空間がそこにあった。

（ーーどうしたもんかな・・・）

体育館の中央にあるデュエル・リングまで歩き、透矢は困ったように頭を掻く。

炎魅子は今日の放課後、ここへ来ればデュエル・キラーについて何かが分かると仄めかしていただけで、デュエル・キラーが現れるとは言っていなかった。

しかしながら刹那が言った体育館のメンテナンスという話。
それも現状、何もそういう準備や予兆といったものが感じられないことから、やはり嘘ではないだろうか。

今日、ここで一体何が行われるというのか。
デュエル・キラーは姿を現すのだろうかーー。

ーー少し考えた透矢は、扉側から向かって右の観客席の下にある体育用具室の中に身を隠す事にする。
まるで自分が悪いことをしているみたいだーーいや、実際に刹那や先生の許可を得ずに、体育館に侵入しているわけだから、
もし見つかれば何らかのペナルティーを負わされるかもしれない。

それでももし、今日。
デュエル・キラーが姿を現すのだとしたらやはりその正体を確かめたい。
好奇心混じりの、また生徒会の『闇』をその目で見たいというある種の欲求。
そして透矢の中にある、デュエル・キラーに対する『ある思い』。
それが透矢を突き動かしていた。


ーーところが。

待てども待てども、体育館に誰かが現れる様子は無かった。
もちろん刹那の言う機器のメンテナンスなど始まりそうにもない。
用具室の中から扉を少し開けた状態で体育館を監視する透矢。
果たして待ち人は現れるのか。


（ーーさて、どうしようかな・・・。
もう帰った方がいいかもな・・・）

ーー体育館に入ってから一時間以上が過ぎた。
落ち始めた日に従って、体育館内も暗くなり始めている。
不安と期待を胸に、辛抱強く待っていた彼も、さすがにもう引き上げた方がいいのではないか、と思い始める。

むしろ彼には別の不安が芽生えたのだ。
入るときは確かに鍵が開いていた入り口の扉だが、見回りの先生がそれに気付いたら閉められてしまう可能性がある。
体育館の扉は鍵を閉められた場合、中からは開けられない。
つまり閉じ込められてしまうのだ。
そうなれば下手をすれば次の日までここから出られなくなり、目も当てられない惨事である。

ーー出よう。

炎魅子の言葉はどうあれ、とにかくこのままここで粘っていても仕方がない、と透矢は諦めて体育館が出ようと決断する。

ーーしかし、まさにその時だった。

入り口の方から、扉が重苦しい音を立てて開くのが体育館内に共鳴して、透矢の耳に入った。

ーー誰かが来た！

透矢は用具室の扉の影から、慎重に体育館の様子を伺う。
すると入り口から何者かが体育館中央のデュエル・リングの方へ歩みを進めている。

透矢が目を凝らしてその者の姿を見ると、フードの付いたマントを羽織り、顔には仮面を付けた大柄な人物が映る。

（ーー来た・・・のか？！）

透矢の心臓が高鳴る。
あの姿はまさに退学させられた生徒たちが語った、デュエル・キラーの容姿そのものだったからだーー。