ｖｓＤ・Ｋ！ １ターンキルの恐怖！⑥　作：はにわ

　
「ーーラスト・ターンだ」

（そう・・・簡単に、やらせるかよ！）

ラスト・ターンーーすなわち、このターンで終わりにする、と宣言するデュエル・キラーに、透矢はなんとしても守り抜く、と気合いを高める。

透矢のフィールドには戦闘耐性を持つ『白銀の盾』に、伏せカード『白銀の護陣』が１枚。
デュエル・キラーの戦術を受け止めるには、あまりに心もとない防壁だった。

「メインフェイズだ。
まず『疾風の乙女（ハイソニック・レディ）』を召喚！」

デュエル・キラーの最初の一手はモンスターの召喚。
そのフィールドに、錫杖を携えた緑髪の少女が姿を現す。

レベルは４、攻撃力は１１００。

「疾風の乙女の効果を発動！
１ターンに１度、手札の速攻魔法カードをコストに、
デッキからレベル４以下の鳥獣族モンスターを特殊召喚する」

デュエル・キラーが宣言しつつ、手札から指定されたコストとなるカードを墓地へ送ると、
疾風の乙女が錫杖を天に掲げて、ゆっくりと杖の先を揺らし始める。

彼女の力だろうか、そこから生み出された風が彼女の左に自らの背丈ほどの渦巻きを作り出した。

「デッキより呼び出せしは、破壊の風を産み出す者！
出でよ、『砕破の乙女（サイクロン・レディ）』！」

疾風の乙女が作り出した渦巻きの中から姿を現したのは新たなモンスター、『砕破の乙女』。
臼緑色の布の上着に、独特の紋様のような柄の着いた腰巻きを身に付けた、疾風の乙女同様に緑色の髪を持つ、人外の女性。
背は疾風の乙女より二回り高く、腰には鞘に納まった剣を装備している。

レベルは４、攻撃力は１５００だ。

「疾風の乙女は、自身の効果で特殊召喚したモンスターの半分の攻撃力をエンドフェイズまで得る」

疾風の乙女の効果の続き。
特殊召喚した砕破の乙女の攻撃力、その半分の数値である７５０ポイントだけ攻撃力が上がる。
これで疾風の乙女の攻撃力は１８５０となった。

「白銀の盾の守備力を超えられたか・・・」

デュエル・キラーの場にモンスターが２体。
いずれも白銀の盾の守備力１１００を上回る。
白銀の盾は１ターンに１度戦闘では破壊されないが、２体で攻撃されれば倒されてしまう。

だが最後の伏せカードは『白銀の護陣』。
これで守れるはずーーそう思った矢先。

「更に砕破の乙女の効果！
特殊召喚成功時に、相手フィールド上の魔法・罠カードを１枚破壊する！」

「ーーくっ！
この、最後の伏せカードまでーーっ！」

砕破の乙女の効果が、疾風の乙女の効果に連動するように発動する。
すると破砕の乙女が円を描くように両手を動かし始めた。
そこから発生した風の渦は、徐々にその勢いを強めていき、
正に絵に描いたような小さな竜巻が形成される。

その風を操る力に思わず見入っていた透矢だが、
破砕の乙女がその両腕を突き出すのと同時に、生み出された竜巻が自分に向かって来るのを見て、現実に引き戻される。
しかし狙いは彼ではなく、意志ある動きを見せた竜巻は、透矢のリバース・カードを粉砕した。

「くく、最後の拠り所を失ったな」

「く・・・っ！」

「手札から魔法カードを発動！
『疾風の賜物（たまもの）』！」

伏せカードを破壊し、悔しがる透矢を嘲笑うデュエル・キラー。
そして手札から魔法カードが発動される。

「このカードは墓地の速攻魔法カードを２枚除外して発動。
デッキからカードを２枚ドローする」

「ここにきて・・・手札増強、か！」

墓地より『予期せぬ突風』、疾風の乙女のコストで墓地へいった速攻魔法カードと、合わせて２枚のカードを除外し、『疾風の賜物』の効果が適用。
デュエル・キラーは２枚ドローし、手札が増強される。
そしてそれを見たデュエル・キラーが含み笑いを溢した。

「さて・・・バトルフェイズ、と行こうか。
先ずは砕破の乙女で、白銀の盾を攻撃する！」

準備は整い、バトルフェイズ。
まずは砕破の乙女へ攻撃命令が下される。
細身の剣を抜いた砕破の乙女は、背中に畳んでいた二対の翼を勇ましく羽ばたかせて、空中へと舞い上がる。

「ーー『斬空撃（ざんくうげき）』！」

白銀の盾に向かって急速に下降しながら、剣を大きく振り上げると、
白銀の盾の眼前まで迫ったところでそれは振り下ろされた。

だが白銀の盾はそれを盾でもって受け止める。
凄まじい勢いの砕破の乙女の斬撃にも、岩のようにその身体が後ずさる事はない。

「白銀の盾は、１ターンに１度、戦闘では破壊されない！」

「知っているとも。
続けて、疾風の乙女で攻撃する！」

続けて疾風の乙女の攻撃。
その場から動かずに錫杖を白銀の盾へ向ける。

「ーー『真空裂波斬』！」

杖の先から、風の刃が無数に放たれる。
砕破の乙女が身を引くのと同時に、迫ってきた風の刃に、
白銀の盾は今度は堪えることが出来ず、その身体をなますに切り刻まれて果てた。

「白銀の盾がーーっ！」

白銀の盾は破壊されたことに、透矢はその死を悼む。
が、彼女は透矢を身体を張って護り抜いた。
守備表示だからダメージもない。
デュエル・キラーの攻撃を凌いだはずだった。

「ーーまだだ！
手札から速攻魔法、『不意の追撃』！」

「何！？」

「俺のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動！
デッキから同じレベル・属性・種族のモンスターを１体、特殊召喚する！」

デュエル・キラーのバトルフェイズはまだ終わらない。
速攻魔法『不意の追撃』により、新たなモンスターを特殊召喚しようというのだ。

「出でよ・・・『烈風の乙女（トルネード・レディ）』！」

新たに召喚されたモンスター、『烈風の乙女』。
濃い茶色の羽根を纏った、腕と結合した両翼を持つ巨大な鳥。
獣のような逆立つ体毛に覆われた身体は女性の身体つきでもあるものの、顔は他の鳥の皮で作った面を敷いており、口元しか見ることは出来ない。

レベルは４、攻撃力は１６００となっている。

「新たに特殊召喚した烈風の乙女で追撃のダイレクトアタック！」

「うぅ、防ぎようがねぇ、かーー」

「ーー『烈風双翼殺（れっぷうそうよくさつ）』！」

バトルフェイズ中での特殊召喚により、攻撃が可能。
烈風の乙女は空中へと舞い上がると、直ぐ様攻撃態勢に入った。

そして獣のような掛け声と共に左腕を横に振るうと、その下の大地に小さな竜巻が突然形成される。

「『烈風の乙女』の効果だ。
攻撃宣言時に、相手ライフに６００ポイントダメージを与える」

まずは効果による一撃目。
小さな竜巻が大地を這うように動き、透矢を巻き込む。

「う・・・ぐ！」

効果ダメージは６００。
これでまず透矢のライフが３４００まで削られた。

「そしてダイレクトアタック！
１６００のダメージを受けるがいい！」

烈風の乙女が今度は右腕を振るうと、今度は一回り大きな竜巻が大地を蹴る。
それはダメージの余韻が残る透矢を容赦なく包み込み、更なる痛打を喰らわせた。
これでライフは一気に減り、１８００となる。

「ぐ・・・はっ！
かなり・・・、痛い思い、させられたが、
まだライフは残ってる・・・！」

怒濤の攻撃に倒れそうになりながらも、透矢は耐え抜いた。
そしてさすがにこれ以上の追撃はあるまいーーそんな『甘えた』考えを抱いた。

「ーーこれで終わりだ。
速攻魔法、『女王の大翼』を発動！」

「そ、そんな、まさかーーっ？！」

「自分フィールド上に存在する３体の風属性・鳥獣族モンスターをリリースして発動！
デッキ・手札・墓地から、『疾風の女王 ミサギ』を特殊召喚する！」

速攻魔法カード『女王の大翼』により、疾風、砕破、烈風の３体の乙女が生け贄となりーー。
それによって生み出された、風を司る女王・ミサギ。

デュエル・キラーのエース・モンスターがその姿を現す。
透矢の命の残り火を吹き消すために。