光と闇 会長・刹那の混沌を操る力！⑥　作：はにわ

　
ーー透矢！

ーーお兄ちゃん！

ーー遊戦名くん！

ーー先輩！

ーー観客席の一角、真希たちが座る席でそれぞれの声が重なった。

透矢に差し迫るは巨大な火球と化した『ミカエル』の武器・レヴァンテイン。
その攻撃力は４５００。
透矢の初期ライフ４０００を丸ごと奪い去ろうとしていた。

見上げた透矢の顔に一筋の汗が伝う。

「ーーって、こんな初っぱなから終わってたまるかよ！
リバース・トラップ、オープン！」

透矢のその声が上がるのと同時に、火球は弾けて透矢のフィールドに燃え広がる。
炎を司る大天使の神罰とも言えるその一撃に耐えられる者はそうはいない。

ーーだが。
場にリバース・カード１枚しか無かったはずの透矢の場に、一人の戦士が敢然と立ちはだかり、超熱量の一撃から透矢を護っていた。

ーー『白銀の盾』。

頼れる先陣にして、透矢を護る盾。
彼女が間一髪で危機を救ったのである。

「ーー危ねー、危ねぇ。
いくらなんでも、始まったばかりでやられちまったらカッコ悪すぎるもんな」

やがて炎が完全に消え去ると、安堵する透矢の姿が現れた。
それを見た刹那も笑顔で返す。
そこには己の攻撃を防いだ透矢に対する敬意と喜びが表れている。

「罠カード・・・ね？」

「ああ、『白銀の第二陣』を発動させてもらった！」

罠カード・『白銀の第二陣』。
それはこのターンに白銀の盾がフィールドを離れている場合に発動出来るカードであり、
デッキか手札から白銀の盾を特殊召喚するというもの。

最初にいた白銀の盾は『戦略的撤退』によって手札に戻されてフィールドを離れているため、
このカードの発動条件を満たし、それによって透矢はデッキから別の白銀の盾を守備表示で呼び寄せたのだ。

「ーーんで、白銀の盾は１ターンに１度、戦闘では破壊されない、ってな」

「さすがは透矢くん。
ミカエルの効果、攻撃を悉く空振らせたのはあなたが初めてよ」

「ま、ギリギリ、ってとこだけどな。
引きに助けられたぜ」

「その引き、が侮れないのよ。
ドローに愛されている人間は、勝ち運にも愛されてる事が多いもの。
過去の・・・伝説を作ったデュエリストがそうであるようにね」

「伝説のデュエリスト、っていうレベルには程遠いけどな」

「私が言いたいのはーー本当に『勝つ者』は全てを兼ね備えてる、ってこと。
デッキの構築は元より、デュエリストとしての能力、そして今言った引き運も含めて・・・全てをね」

刹那がまるで透矢を見下ろすようにそう語る。
そう、その『真に勝つ者』が自分であると宣言するかのように。
そしてその絶対的な自信が、相手を威圧し竦ませる武器となる。
事実、透矢も言い様のない圧力を感じ始めていた。

「ーー白銀の盾の召喚時効果を使う！
デッキから『三騎士 影縫いの微刃』をデッキの一番上に置くぜ」

「私はカードを４枚、場にセットして、ターン・エンドよ」

透矢が白銀の盾の効果で、影縫いの微刃をデッキトップに置くまでの間に、刹那は魔法・罠カードゾーンに４枚ものカードを裏側で出し、ターンを終了させた。

（セットカード、４枚・・・！）

透矢はふと地影の時の事を思い出していた。
地影は豊富なカウンター罠カードで、相手のカードを潰し、ペースを掴む戦術を得意にしていた。

だが、刹那の場に伏せられた４枚のカードはどうだろうか。
守備に念頭を置いているのか、それとも次の攻めを見据えた布石か、あるいはその両方か。

いずれにしても４枚もカードを伏せられては、対するプレイヤーは迂闊な行動はとれない。
そういう心理的圧迫の意味もあるのかーー。

「さぁ、まだまだ始まったばかりよ、透矢くん。
一緒に楽しみましょ・・・？
私たち二人だけの時間を、ねーー」

含んだような微笑みを浮かべる刹那。
だが透矢もこれには笑って返す余裕などない。

だが刹那の言うようにデュエルは始まったばかりである。
王者・刹那のデュエルにいかに立ち向かうか、透矢のデッキの全てが試される。