ｖｓＤ・Ｋ！ １ターンキルの恐怖！③　作：はにわ

　
「ーー遊戦名くん・・・どうして？」

ーー体育館の入り口。
異変を知った地影が、透矢に向けて不安そうな視線を向けた。

「透矢くんったら・・・どうやってここに入ったのかしら？
鍵は掛かっていた筈なのにーー」

「とうや・・・」

地影の隣りには水花を引き連れた刹那。
透矢の不可思議な乱入に首をかしげている。

「ーーあたしだよ」

すると地影と刹那の背後から、その間を割って入りつつ前に出ながら声を発したのは炎魅子。

「あたしが遊戦名に今日の事を教えた。
体育館の鍵もあたしが開けといた」

「炎魅子さん・・・？
どうしてそんなことを？」

聞かれる前に、神妙な面持ちで白状した炎魅子に、地影はまさか、と驚きをあらわにする。

「ーー炎魅子、どういうことかしら？」

刹那も炎魅子の背中に向かって問い掛ける。
自分にすら事前に言わなかった事に、刹那は眉を寄せて感情を表している。

「ーー刹那、あたしも認めるよ。
遊戦名の実力。
あいつなら、あたしにもあっさり勝っちまうかもしれない」

「・・・？」

問い掛けの答えになっていない炎魅子の言葉に、また小首を傾げる刹那。

「でも・・・たとえあたしに勝ったとしても、『風』には絶対勝てない。
今のままじゃ、ね」

「ふぅん・・・」

「だから今日の事はあたしが仕組んだ。
遊戦名に『風』のデッキを知ってもらうためにね」

遅れて、先の問い掛けの回答を口にした炎魅子。
頷きながら聞いていた刹那は、そこまで聞いて、不意に笑みを浮かべる。

「なんだ、炎魅子も透矢くんに入れ込んでるんじゃない」

「はは、そんなんじゃないよ」

「あら、違うの？」

「あたしはただ、期待してみたくなっただけさ。
ーー刹那。
本当にお前を倒せるかどうか・・・遊戦名に、ね」

「くすくす、そういうのを、入れ込む、というのよ」

刹那が前に歩み、炎魅子と並び立ちながら、小さく笑い声を上げた。
地影は今一つ納得がいかない、というように難しい表情で二人の背中を見ている。

「でも独断専行は感心しないわ、炎魅子」

「責任はとるさ」

きっぱりと言い切った炎魅子。
刹那が今度は困ったように顎に手をやりつつ笑う。

「・・・う～ん、炎魅子にそう言われちゃうとこれ以上責められないじゃない」

「だからここはあたしの好きにやらせてくれよ」

「ふふ、わかったわ。
ーー地影？」

「は、はい？！」

「今日の私刑は中止。
呼び出した生徒たちには帰るよう言っといてくれる？」

「りょ、了解です」

刹那は炎魅子の行動を容認したようだ。
となれば、と刹那が地影に素早く指示をだし、それに従った地影が携帯端末を取り出して操作する。

本来なら今日、また風紀面などで問題を抱える生徒がここへ呼ばれて、
『風』による私刑が執り行われるはずだった。

しかしそれは急遽中止、このエキシビションマッチとも言えるデュエルを優先させたのである。

（ふふ、まぁ確かに『風』のデッキは所謂、初見殺し、みたいなところもあるけどーー。
でもだからといって、そこばかりを警戒すれば、却って足を掬われる結果になってよ、透矢くん？）

入り口の扉の隙間からデュエルを見届けよう、という生徒会。

過去、私刑にあった生徒たちを悉く１ターンキルで沈めてきたという、四天王・『風』。
透矢は荒ぶる風を避け、意地を貫けるのかーー。