天才少女・水花の極寒デュエル！④　作：はにわ

　
ーー迫る『四龍』・ゼロ・プリズナー。
その攻撃力４０００。
対して透矢のモンスターはそのゼロ・プリズナーが変えた、氷の彫刻（トークン）と化した『守護の鎧』。
攻撃力は０。
つまりこの攻撃が通ればゲーム・オーバーとなるが。

透矢はもう一方の、凍り付けにされていない守護の鎧を見る。
するとその目配せに気付いた守護の鎧が１つ頷いた。

「ーー守護の鎧、効果発動！」

「・・・？！」

「自分フィールド上に存在するモンスターが相手モンスターの攻撃対象となった時、発動！
デッキの守護の鎧を１枚墓地へ送り、その攻撃を無効にする！」

透矢がデッキから抜き取った別の守護の鎧カードを墓地へ送ると、
フィールドにいた守護の鎧が、その重厚な鎧を物ともしない素早い動きで、ゼロ・プリズナーの正面に出る。
そしてその大きな盾で、勢いよく迫ってきたゼロ・プリズナーの牙を受け止めたのだ。

ーー尚も圧してくる巨大な氷柱の牙。
だが守護の鎧も頑強に持ちこたえ、遂にゼロ・プリズナーの攻撃を弾き返したのだった。

「ひぇ～、助かったぜ。
いきなりやられたらカッコ悪いもんな」

「・・・バトル終了。
水花のバトルフェイズ終了時に、ゼロ・プリズナーの最後の効果、発動」

胸を撫で下ろす透矢を気にせず、どんどんターンを進めていく水花。
そう宣言すると、ゼロ・プリズナーは突然、光に包まれてフィールドから消え去った。

「なんだ、消えちまったぞ？」

「ゼロ・プリズナーは攻撃したターンのバトルフェイズ終了時にゲームから除外されるの」

「マジか？
結構、キツいデメリットだな」

「大丈夫だよ？
次の水花のスタンバイ・フェイズに帰ってくるから」

「げっ・・・一時的に姿を消すだけかよ」

「あとね、この効果でゼロ・プリズナーが除外されている間は、水花に対する魔法・罠・モンスター効果が無効になるの。
ほら・・・」

「え・・・っ、って、ああっ？！」

ゼロ・プリズナーの最後の効果を確かめていた透矢だが、水花に注視するように促されて初めて気付く。
いつの間にか水花の周りを薄く光る青い半球状の『壁』が水花を包み込んでいる。

ーーこれがゼロ・プリズナーの置き土産。
水花、つまりプレイヤーに対する魔法・罠・モンスター効果を無効にする壁。
プレイヤーに対する効果と言えば、効果ダメージ、手札やデッキの増減などが挙げられるが、それが一切効かないということだ。
これらの手段をコンセプトにデッキを構成している者には、正に脅威となる効果である。




「ーーでもお姉ちゃん、今ので水花ちゃんのモンスターがいなくなっちゃったから、ピンチじゃないかな？」

ーー観客席。
ふと千鶴が真希に聞いた。

「ーー確かにね。
ただモンスターが消えたというデメリットは、『ある意味』ではメリットでもあるのよ」

「どういうこと？お姉ちゃん」

「いくら罠カードが効かない攻撃力４０００モンスターとは言っても、相手にターンを渡せば常に除去されるリスクはあるからね」

「そっか・・・例えば魔法カード、とかで？」

「うん。
だからゼロ・プリズナーは除外ゾーンに『逃がした』という解釈にも取れるの。
ついでに自分を護る壁も張ってね」

「そっか・・・しかもまた、次のターンに帰ってくるんだもんね・・・」

「透矢から見れば、罠カードの効かないモンスターを相手ターン中に倒すのは難しいわよ。
強力なモンスターを出して壁にしたり、迎撃を狙おうにも、ゼロ・プリズナーの効果で攻撃力０のトークンにされちゃうんだから」

千鶴の質問に真希は的確で丁寧な回答を施す。
千鶴もそれを聞いて納得しながら自分の中で整理し、自分ならどうするか、と思案を巡らす。

「ーーそれに、自分の場にモンスターがいなくなる可能性も対策してるだろうさ。
何せ、蒼井乃 水花は『天才』、なんだからな」

凌斗がそう繋げた。
ゼロ・プリズナーの持ち主である水花がむざむざ場をがら空きにしたままにはしないだろう、と。

それは水花の強さは『四龍』モンスターの力によるものだけでなく、彼女本来のデッキにあると示唆していたのだった。