光と闇 会長・刹那の混沌を操る力！②　作：はにわ

　
「ーー先攻は俺だ！メインフェイズ！」

遂に開始された頂上決戦、透矢対刹那。
先攻を掴んだ透矢はまず自分の最初の手札を確認する。

（この手札なら・・・やる事はーー）

ーー悪くはない手札。
相手にターンを渡す分には、割と安心できる手札である。
だが、それは今までの戦ってきた経験に基づくものである。

相手は最強と言われる刹那。
その実力は未知数。

ただ、１つ言える事。

刹那と戦う前に倒してきた四天王。
いずれも四天王の名に恥じぬ強敵だったが、それぞれに特徴があった。

そんな彼女たちの頂点に立つ刹那は、恐らくその特徴を兼ね備えているのではないか。
すなわちこの戦いはこの生徒会大戦の集大成。
朝に自ら口にした『成長』がどれ程のものだったかが問われ、試されるのだ。

（何より俺は自分の組み上げたデッキをーー『お姉さん』のカードを信じる！）

今更、怖じ気付いたところで仕方ない。
ただまっしぐらに今自分が出せる全力をぶつけるのみーー。
透矢いつもの自分のスタイルを失わぬよう心を新たにし、手札のカードを握った。

「ーー手札からモンスター召喚！
『三騎士 白銀の盾』！」

初陣を切るのはやはりこの戦士ーー。

サポートと守備の両方をこなす頼れる女戦士。
レベル４で攻撃力は１４００とやや低めではあるが、能力がそれを補ってくれている。

「白銀の盾の効果！
召喚時にデッキから『三騎士』モンスターを選択してデッキトップに置く！
俺は『三騎士 女帝の聖杖』を選択！」

（やはり『女帝の聖杖』、かーー）

白銀の盾のサーチにより、女帝の聖杖がデッキ・トップに置かれ、次にドローするのがほぼ確定する。
刹那は予測していたか、それを見て頷く。
このデッキ・トップに置くというのが、直接手札に持ってこれないあたり一手間に感じるが、
この緩い条件でレベル制限なくサーチ出来る効果は中々に類を見ない。

（女帝の聖杖・・・そのカード自体の能力もだけど、それ以上にサポート・カードが厄介ーー）

炎魅子とのデュエルから、その力を見せ始めた女帝。
刹那は真希のデュエルは見てはいないが、内容は聞いている。
トライ・フォース・モンスターが乱舞するデュエルだったが、それ以上に目立ったのは女帝のサポート・カード。
効果もバリエーションに富み、脅威といえる。

（ふふ・・・今までにない経験が出来そうねーー楽しみ）

だが冷静に分析し、脅威であると認識しつつも、
刹那は扇状に広げた手札を唇に軽く当てつつ笑う。
強力なコンボが自分に襲いかかろうとしてる時に、如何にそれをねじ伏せるか。
その手段を模索するのが刹那にはこの上ない楽しみの一つ。
その辺りは透矢と非常によく似ている。

「カードを２枚セットして、ターン・エンドだ！」

透矢の滑り出しはいつも通り。
よくある１ターン目でありつつも、最善の手段を織り込んだ１ターンでもあった。

「ーーでは、私のターンね。
カード、ドローっ！」

大袈裟に動きを付けないスマートさを見せながら、それでも空を切り裂くような鋭いドロー。
どこか気品を感じさせる刹那らしさがデュエルでも顕れている。

そして刹那がドローするや、再び大歓声。
二年、三年生にとっては一年前の生徒会大戦以来、一年生には初めて見る事になる刹那のデッキ。
いよいよその１ターン目が始まるということもあり、早くそのカード、そしてそこから生まれる戦術を見たいと逸る。

体育館は『会長』コールに染まり、またそれが激しくこだますると、透矢の身体を打ち付けるように震わせたのであった。

「へへ・・・っ」

透矢は笑った。
楽しみにしていたのはこちらも同じ。
転入初日に会い、最強のデュエリストであるという刹那と知り合って今日まで、この時を待ち焦がれた。

人生最高ともなるデュエルを楽しめるかもしれないーー。
流石のため、負けられない戦いではあるものの、やはりデュエリストの性には逆らえないようだった。