天才少女・蒼井乃水花②　作：はにわ

　
「ーーへぇ、財閥グループの神楽坂家と蒼井乃家かぁ。
てことは、二人は相当お金持ちなんだな」

「ふふ、そんな自慢できる程では無いけどね」

「ま、会長さんは納得だな。
雰囲気からして違うもんな」

「こら！また『会長さん』言う！」

「だってその方が呼びやすいんだよ」

透矢もソファに腰を下ろし、始まった話。
まず最初に話されたのは刹那こと神楽坂家と、水花こと蒼井乃家は共に財閥グループでしかも親密な繋がりがあるということ。

刹那がいわゆるいいところのお嬢様、というのは透矢も何となしに耳にはしていた。
今回本人から聞いて、透矢も妙に納得してしまう。

更に話を聞いていくと、神楽坂と蒼井乃の両家はデュエル・モンスターズに深く関わり合い、積極的な支援・投資に力を入れているという。

そんな両家だからか、自然とデュエル・モンスターズには他者と比べてもより馴染み深く、その実力も相当なものだという。
このアカデミアにおいて最上位のデュエリストに数えられているのも、ある意味自然と言えた。

「ーーそれでね、水花は２歳でルール覚えて、４歳の頃には１５歳までが参加するジュニアの大会で優勝したこともあるの」

「よ、４歳？！
俺、デュエル覚えたのいくつだったかな・・・。
いや、んなことはどうでもいいや。
とにかく、すっげぇな！」

「そうなの。
デュエルに関する知識もプロ顔負け！
それで特別に飛び級で、このアカデミアに入学してきたというわけなの」

透矢は仕切りに感心するばかり。
水花はまだ九才だという。
自分の半分くらいの年の女の子が、既にあの地影に肩を並べる程のデュエリストであるなど、末恐ろしい限りだ。

だが透矢は同時にそんな水花とデュエル出来るということに、大きな喜びを覚え、またどんなデュエルするのか楽しみで仕方ないようだ。

「よぉし、じゃ水花！
いつデュエルする？
俺はいつでもいいんだぜ？」

「・・・水花と・・・デュエル・・・する、の？」

透矢は明るく水花に話しかけてみるが、水花はやはり無表情で声の調子も一定。
すると水花は判断を委ねるように刹那の方を向くと、刹那が頷いて透矢に対する。

「明日はデュエル・リングが空けられないからダメね。
でも明後日は金曜日で実技試験の日だわ。
透矢くんさえ良ければ、その後放課後に使えるように手を打つけど？」

「あ、ああ！
俺は構わないぜ」

「そう、なら決まりね。
ーー水花？
デュエルは明後日よ？大丈夫？」

「・・・分かった」

透矢が応じたあとで、水花にも確かめると小さく頷いて応えた。
水花のその反応、そして今までの立ち振舞い考え見て、どうしても『その事』が気になってしまう。

「何ていうか・・・あんまりしゃべらないんだな？」

水花という女の子。
普通ならば透矢という自分より大きな人を見て、明るい表情を見せる子もいるだろう、怖がる子もいるだろう、また無口に振る舞う子もいるだろう。

だが水花はあまりに表情を出さなさすぎる、と。
まだ九才という子供ならば、感受性も豊かでもっと色んな反応を示してもいいのではないか。

もっとも子供とは言っても千差万別あるから一概にはそうは言えないがーー。

ただ刹那にも透矢の言わんとする事が分かったのだろう。
１つ頷いてから、その表情が暗く沈んだ。

「会長・・・さん？」

何故、刹那は悲しげに顔を伏せたのか。
それは水花が幼くして抱えざるを得なかった境遇に、すべての理由が隠されていたのだった。