天才少女・水花の極寒デュエル！①　作：はにわ

　
ーーそして放課後。
今日のメイン・デュエルとも言うべき時間がやって来た。

生徒会大戦挑戦者・透矢と、四天王・水花とのデュエル。

透矢が望んだように、実技試験の全てが終わった後、ホームルームを済ませた後で、すぐに始められる事になっていた。
場所はやはり体育館の特別デュエル・リング。
そしてこのデュエルは事前に生徒たちに公言されていたため、用事のある者以外、ほとんどの生徒たちが一同に体育館に集まっていた。

その中には当然、刹那を始めとした生徒会メンバー、真希や千鶴、そして凌斗の姿もある。

観客たちは既にデュエル・リングの上に立つ透矢と水花のデュエルの開始を今か、今かと待ち望んでいるのだった。

「うっふふ・・・すっごい賑わい」

「そりゃそうだろ。
過去の生徒会大戦で、二番手が出てくるなんて事は無かったんだからね。
とはいえ、超満員だねぇ・・・」

「これだけの人数・・・何か事が起きたら収拾がつきませんよ」

「先生方にはちゃんと話を通してあります。
問題はないわよ、地影」

刹那が『イベント』の盛り上がりように嬉しそうに笑うが、炎魅子と地影は満員の観客席を見て危機感を募らせる。
しかし刹那の言うとおり、先生が数名、監視役として体育館を見回っている。
刹那の鶴の一声が掛かれば、先生たちも職務を放り出して協力する。
これも生徒会長であり神楽坂刹那の『権力』である。


「ーー真希お姉ちゃん、凄い人だよ・・・」

「そうね。
全く透矢のヤツ・・・転入してまだ一ヶ月なのに、すっかり有名人ね」

「う、うん！お兄ちゃん、凄いよ」

真希と千鶴。
臆病な千鶴はごった返す生徒たちに、若干身を縮めながらの観戦。
もはや全生徒からの注目の的となりつつある透矢に、真希は少し誇らしげな表情で見つめていた。

「蒼井乃水花、か・・・。
『水属性』のデッキを操るって話だが・・・」

「流石くん。
あの子のデュエル、見たことある？」

「いえ。
見に行こうとしてもすぐに終わってしまうらしくて。
まぁ、あの歳で『天才少女』と話題になるぐらいですから、半端じゃないんでしょうね」

「ふぅん・・・『天才少女』、か」

真希の逆隣りには、なんと凌斗の姿もあった。
以前は真希にすれば凌斗は千鶴に近付かせたくない人物の筆頭だったが、先日の件で警戒を緩めているようである。
千鶴も凌斗が近くにいることに、緊張したりはしていないようだ。


ーーそして、デュエル・リング。
向かい合う透矢と水花。
水花はさすがにデュエルをする時はぬいぐるみをどこかに置いてきていて、左腕にちゃんとデュエル・ディスクを装着している。
小さい身体に合わせた、透矢のものより一回り小さいデュエル・ディスク。
もちろん性能は変わらない。

「よぉ、水花！
今日はよろしくな！」

「・・・よろしく・・・？」

透矢が歩み寄り、しゃがんで視線の高さを合わせながら、握手しようと手を差し出す。
しかしやはり無表情の水花は、透矢の為すことの意味が分からないらしく、首を傾げるだけだ。

「ははは、ま、楽しくやろうな！」

「うにゅ・・・」

握手してもらえず、空を切った形となった手で頭を撫でると、水花は少しびっくりしたように声を漏らした。
透矢は笑顔のまま満足したように、元の位置へと戻る。
いかんせん二人のフィーリングは噛み合ってはいないが、水花の境遇を少し知る透矢は特には気にしていないようだ。

「Ｈｉ、トーヤ！ａ～ｎｄミズカ？
準備ハ良イデスカ？デスの」

「クロエ先生！
いつも審判、ありがとうございまっす」

「Dｏ ｎｏｔ ｗｏｒｒｙ、トーヤ。
生徒ノ、大事ナでゅえるデスカラ、コレハ、先生ノ仕事デスの！」

「助かります」

審判兼立会人はやはりクロエ。
クロエは透矢の担任でもあるから、彼も安心できるのだろう。

「ソレデハ、Ａｒｅ ｙｏｕ ｒｅａｄｙ？」

「はい！」

「・・・」

クロエが改めてそう声を掛ける。
透矢ははつらつとした返事をしたが、水花は頷いただけ。
だが共にデュエル・ディスクを水平に構えたのを見て、意志を確かめたクロエはいよいよ開始の合図を告げた。

「Dｕｅｌ，ｓｔａｒｔ！デスわ！」

「デュエル！」

「・・・デュエル・・・」

開始の合図が響き、会場が湧く。
全生徒のほとんどが注目するデュエル。
水花は果たしてどんな戦術を見せるのかーー。