間章 全ての始まり②　作：はにわ

　
「クロエ先生！おはようございます！」

「ＯＨ、マキ！
ぐ、もーにん！デスわ」

独特の白い肌、浅黒い色混じりの金髪、高い鼻。
そして極めつけは明らかな片言の話し口調。
透矢が最初に察した通り、その教諭は外国人であった。

「クロエ先生、転入生連れてきたよ」

「WＯw！アリガト、デスわ」

「透矢、あたしたちの担任、クロエ先生だよ」

「お、おはよう、ございます？」

真希が間に入って二人を引き合わせる。
すると透矢はまるで何かを打診するかのような、不自然な第一声。
真希が透矢の思うところを察したか、可笑しそうに笑う。

「大丈夫だよ、透矢！
クロエ先生、日本語話すのはまだこんなんだけど、あたしたちが話す事はちゃんと分かるから」

「トーヤ ユセナ君、デスわね？
ワタシは、まなせりあ・とぅ・くろえーる、ト申シマスデスの。
ないすみーちゅー！デスわ」

「お、オゥ・・・せ、せんきゅー、べりーまっち？」

「あはは！
だから、日本語で大丈夫だってば」

マナセリア・トゥ・クロエールと言う名前の先生。
非常ににこやかな笑顔で差し出してきた手を、透矢は思い付いた英語を口にしながら握る。
真希は幼馴染みの戸惑いが面白いようだ。

「今日カラ、ワタクシガ、トーヤ君ノ、ほーむるーむ・てぃーちゃー、ヲ務メマスの。
ヨロシク、オネガイシマース、デスわ」

「よ、よろしく、お願いしマース」

日本語は片言だが、時折挟む英語はやはり早いため、慣れていない透矢は聞き取るのが大変なようである。

「クロエ先生。
こいつ、あたしの幼馴染みだから、あたしになんでも聞いてね」

「WＨＡＴ、『オサナナジミ』！
ワタシ、知ッテマスデスの。
日本ノ文化、勉強シマスタ、デスわ」

「へぇ？幼馴染みが日本の文化？」

「Ｙｅｓ！
『オサナナジミ』ハ、いこーる、『モエモエ』、『ゾクセイ』！
日本ノ皆サン、Ｅｖｅｒｙｂｏｄｙ、ソウ言ッテマース、デスの」

「まーた、変なサイトでも覗いたんですか、先生・・・。
偏った知識植え付けられないように気を付けてくださいね」

自信満々に腕を組みながらそんな事を口にするクロエ。
透矢はいまいち言っていることの意味が分からなかったが、その喋り方が面白いらしく、自然と笑っていた。

そんなやりとりの中で、アカデミア内に予鈴が鳴り響く。

「Ｏｈ、モウスグ授業ガ始マリマス、デスの！
Ｈｅｙ、トーヤ！
先生ト一緒ニ、教室ニ、Ｌｅｔ,ｇｏ！デスわ」

「はい！
先生、今日からよろしくお願いしまっす！」

透矢が深々と頭を下げながらも大きな発声で、最初の挨拶とする。

ーー再会した幼馴染み二人、少し変わった口調の外国人の先生。
そして異様な雰囲気、他者を圧倒する存在感の生徒会、その会長。

転入してきたばかりの遊戦名 透矢がこのアカデミアで、新たな、そして大きな波を生み出すこととなるとは、本人はもちろん、まだ誰も知る由もない。

そして透矢が『お姉さん』より託されたデッキ。
その新の意味するところもまたーー。