１sｔデュエル トライ・フォース！⑧　作：はにわ

　
ーーヴァルバレアの攻撃。
炎を纏うその大剣を地に打ち付けるようにすると、大地がひびを割って裂け、ジグザグに軌跡を残しながらポイズン・リザードへと向かう。

裂けた地からは赤い炎が天に向かって突き抜けていく。
限界まで高めたヴァルバレアの攻撃は、正に地を揺るがす一撃である。

攻撃力は３４００ーー。
攻撃力２１００のポイズン・リザードを倒すのには充分すぎる。

「ふははーっ！！
だがな、そう簡単にうまくいかないのがデュエルってもんだぜ！
罠カード、発動！
『底無しの毒沼（ポイズン・ホール）』！」

しかし凌斗の対策は抜かりなかった。
ヴァルバレアの攻撃に反応して、罠カードが発動されたのである。

「このカードは相手モンスターの攻撃時に、俺の場の『ポイズン』モンスターを生け贄に発動！
攻撃モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与えるぜ！」

前のターン同様に、再び罠カードに引っ掛かろうという透矢のモンスター。
しかも今回は強力なモンスター破壊罠カードである。

「俺はポイズン・ビーストをリリースして、発動しろ、底無しの毒沼！」

発動するためのコストとして、ポイズン・ビーストが生け贄になり、罠カード・底無しの毒沼が光を発する。
するとヴァルバレアの真下の地面が急にぬかるみ始め、そこから紫色の毒々しい泥が姿を見せる。
ヴァルバレアの足が沈み始め、このまま彼女を毒沼に引きずり込むつもりか。

「はっはっはっ！
前のターンといい、また罠にかかるとは迂闊な奴め！
学習能力が足らない奴は、デュエルに勝つなんて無理なんだよ！」

凌斗が勝ち誇ったように高笑いを上げる。
ヴァルバレアの迫力に圧され、１度は静んでいた取り巻きたちも、一斉に声を上げた。

「へへ・・・っ」

「ーー？
な、なんだ！
何を笑ってやがる！」

「ありがとな。
ヴァルバレアに更に見せ場をくれるんだからよ」

「見せ場？」

「ヴァルバレア、最後の効果、発動！」

透矢が一人冷ややかに笑ったかと思うと、再び墓地から轟炎の剣を１枚抜き、それをデッキに戻す。

ーーするとその瞬間、発動したはずの罠カード・底無しの毒沼が突然砕け散った。
同時にヴァルバレアを呑み込もうとしたぬかるみも消えて、足場を取り戻す。

「な、何だと！
な、何が起きたんだ！？」

「ーーいっけぇえええ！」

驚愕する凌斗を余所に、ヴァルバレアの一撃が遂にポイズン・リザードを真っ二つに切り裂いた。
長い舌を出しながらひっくり返った醜悪な魔物は、マグマのような赤い炎に焼き付くされ、場から消滅する。

同時にヴァルバレアとポイズン・リザードの攻撃力の差、１３００が凌斗のライフから削られ、無傷の４０００から２７００となった。

「ぐ、ぐぐ・・・お、俺のポイズン・リザードが・・・」

「まだだぜ。
ヴァルバレアが２つ目の効果を使った時に相手モンスターを戦闘で破壊した場合、その攻撃力分のダメージを与える！」

「ぽ、ポイズン・リザードの攻撃力は・・・２１００」

ポイズン・リザードを切り裂いた地から迸る赤い閃光が、更に凌斗をも切り裂く。
凌斗の苦悶の声が上がり、２７００のライフが更に６００にまで下がる。

「終わりだぜ！
白銀の盾でダイレクトアタック！
『ブレイド・オブ・アイン』！」

「ぐぬぬ・・・こ、こんなことがーー」

既に凌斗の場にカードはない。
すかさず白銀の盾が地を蹴り、ヴァルバレアのダメージの余韻が残る凌斗に、一閃の引導を渡す。

白銀の盾の攻撃力１４００がそのままダメージとなり、凌斗のライフは０。

凌斗はたまらず膝を付くーー決着である。

「よっしゃああ！
勝っちまったぜ！」

透矢が勝ち名乗りを上げるとギャラリーが湧く。
凌斗の取り巻きはまさかの展開に茫然とするだけである。

凌斗にとどめを刺した白銀の盾が透矢の元へと還ると、ヴァルバレアと二人、透矢の方へ振り返り、小さく笑いかけてくる。

「・・・お疲れさん、二人とも。
次も頼むぜ」

透矢が労うと、二人の戦士はそのままデュエル・ディスクに吸い込まれるように姿を消す。
ディスクにセットしたカードを回収し、デッキに戻した透矢は、
まだ地に伏したままの凌斗を見て、その場所へと近付く。