turn35:光の幕引き　作：どらっせ

　「おのれ…！幻魔が減ったことで《覚醒の三幻魔》の効力が…！」

　「発動した効果の無効化も《ブレイズ・バンカー》には効かない！攻撃力だって戦闘する時に上がるから《ラビエル》も怖くないぜ！」


　「ならばこれでどうだァ！《失楽園》の効果で2枚ドロー！…グフフフフ！これで貴様らも終わりなのであるゾ！《次元融合殺》発動！
　三幻魔を融合させる！」

　「バカな！お前の場には《ウリア》が居ないぞ！」

　「いるのであるゾ！我が手札に！さらに既に2枚目の《ハモン》も墓地になァ！」

　ボナパルト教頭が公開した手札の1枚は、1枚ずつしか無いはずの三幻魔の一体、《神炎皇ウリア》だった。さらに墓地には《ラビエル》まで。手札コストで墓地に送っておいたようだ。

　『こいつ、幻魔を複製したとは言ったけどまさか1枚ずつじゃないとはねぇ。』

　「人間どもよ！精霊どもよ！全ての生命よ！我の手により消え去るがいい！出てよ！《混沌幻魔アーミタイル－虚無幻影羅生悶》！」

《混沌幻魔アーミタイル－虚無幻影羅生悶》
星１２/闇属性/悪魔族/攻撃力0
「神炎皇ウリア」＋「降雷皇ハモン」＋「幻魔皇ラビエル」
①:このカードはモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「混沌幻魔アーミタイル」として扱う。
②:１ターンに１度、自分メインフェイズに発動できる。このカードのコントロールを相手に移す。
③:このカードのコントロールが移ったターンのエンドフェイズに発動する。自分フィールドのカードを全て除外する。その後、このカードの元々の持ち主は自身のＥＸデッキから「混沌幻魔アーミタイル」１体を召喚条件を無視して特殊召喚できる。

　手札、フィールド、墓地。異なる次元の歪みの中で溶け合う幻魔。やがて混沌と混じりあったモンスター＿＿＿＿＿いや、あれをモンスターと呼んでいいものだろうか？おぞましい姿の幻魔がその姿を現す。そしてその融合と同時期に、教頭の様子もおかしくなっていた。

　「あの幻魔…！それにあの様子！ここまでヤバくなってたのか…！あの教頭、きっと破滅の光に完全に意識を乗っ取られている！」

　「なんだって!?どうにか出来ないのかよ、アンタなら倒したことあるんだから出来るだろ？」

　「我はターンエンド！」

　「なんだと!?…って!?なんだコレは！」

　ターン終了の宣言と同時に、遊児達は自らの背後に《アーミタイル》が鎮座していることに気づく。

　「《混沌幻魔アーミタイル－虚無幻影羅生悶》の効果発動！貴様らの場のカード全てを除外するのだ！無へと帰すがいい！」

　現れて幻のように遊児達の場の全てを道連れに消え去り、遊児達の場には全てが居なくなってしまった。相棒達も、頼みの綱のセットカードも、何もかも。
　しかし、諦めていない男がいる。

　「俺のターン！ドロー！」

先攻　ボナパルト(破滅の光)　　LP6200
手札×0
モンスター:《幻魔皇ラビエル》
魔法・罠:《七精の解門》《失落の霹靂》《ハイパーブレイズ》《覚醒の三幻魔》
フィールド魔法:《失楽園》

後攻　謎の男&遊児　 LP1800
謎の男　手札×2
遊児　　手札×0

　「な、何故…何故諦めないのだ…!?
　貴様らの場は何も無い！モンスターも！精霊も！セットカードも！何もかも！白く美しく染め上げたハズなのにィィ!!」

　「わからないのかよ、破滅の光！
　まだ俺達のライフは残ってる！ライフがある限り、デュエリストに与えられているチャンスは無限なんだ！」

　「おっ、遊児！わかってきたみたいだな！それが楽しむことだ。何が起きるかわからない可能性にかけて、ワクワクすること。いつまでもその気持ち、忘れるなよ！」

　2人の表情からは笑顔が消えない。昇る太陽のように消えることなく、破滅の光に立ち向かう。

　「手札から《平行世界融合(パラレル・ワールド・フュージョン)》 発動！遊児！今度はお前の力借りるぜ！」

《平行世界融合》
通常魔法
①: 除外されている、「Ｅ・ＨＥＲＯ」融合モンスターカードによって決められた自分の融合素材モンスターをデッキに戻し、その融合モンスター１体をエクストラデッキから融合召喚する。

　「な、何!?貴様らのカードは全て無にしてやったと言うのに…！」

　「素材は除外状態をデッキに戻すんだぜ。いくぜ！《シールド・バンカー》！《フレイム・ウィングマン》の力を得て力強く舞い上がれ！《E・HERO's　ライジング・フレア・ウィングマン》!!」

《E・HERO's　ライジング・フレア・ウィングマン》
星8/炎属性/戦士族/攻撃力3100
「HERO's　シールド・バンカー」+｢E・HERO　フレイム・ウィングマン｣
①:このカードが融合召喚した場合に発動する。相手フィールドの魔法・罠カードの効果は無効化され、このターン、相手はセットしたカードの効果を発動できない。
②:このカードはバトルフェイズ中、攻撃力が自分の墓地の罠カード及び「ＨＥＲＯ」モンスターの種類×300アップし、戦闘・効果では破壊されない。

　『これは…！《フレイム・ウィングマン》の力を感じる…！』

　「遊児！お前のお陰だ！こんなすげぇ力がお前と《シールド・バンカー》に眠ってたとはな！」

　謎の男が融合の力で引き出したのは《シールド・バンカー》の力。荒々しくも美しい紅き翼が《シールド・バンカー》を猛々しく彩り、空を翔ける。

　「こいつが《シールド・バンカー》…すげぇよアンタ！」

　「ぐぐ…おのれおのれ！！！《覚醒の三幻魔》の効果でライフを…」

　「無駄だ！《ライジング・フレア・ウィングマン》の効果でお前の魔法・罠の効果は無効になっている！」

　「そ、そんなバカなァ！！」

　幻魔から溢れていた光が消えていく。《覚醒の三幻魔》の効果が無効になったからだろうか。

　「手札から《スカイスクレイパー・シュート》 発動！《ライジング・フレア・ウィングマン》より高い攻撃力のお前のモンスターを全て破壊！」

《スカイスクレイパー・シュート》
通常魔法
①:自分フィールドの「Ｅ・ＨＥＲＯ」融合モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターより攻撃力が高い相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。その後、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える。自分のフィールドゾーンに「摩天楼」フィールド魔法カードが存在する場合、相手に与えるダメージは、この効果で破壊され墓地へ送られたモンスター全ての元々の攻撃力の合計分となる。

ボナパルト(破滅の光)
LP6200→1200

　「グァァーーッ！！しかしまだライフは…」

　「バトル！決めろ！《ライジング・フレア・ウィングマン》！効果によって、俺たちの墓地のHEROと罠の数だけ攻撃力アップだ！」

《Ｅ・ＨＥＲＯ's　ライジング・フレア・ウィングマン》
攻撃力3100→5200

　「「ライジング・シューーート！！！」」

　炎を纏った攻撃が破滅の光に炸裂する。

ボナパルト(破滅の光) LP1200→0

　猛る炎が破滅の光を焼き尽くし、ボナパルト教頭に取り憑いていた光が消え去った。全ては今、終わった。