turn25:白に抗う　作：どらっせ

　｢蚕先生が装介とデュエルしてるってマジなのかよ!?｣

　｢ホントだって！お姉ちゃん、遊児が倒れたのに責任を感じてるんだよ！｣

　誠弥と明鈴は大急ぎでデュエル場に向かっていた。血相変えてレッド寮に飛び込んできた大禍津先生が伝えたのだ。

　｢蚕先生と装介のデュエルが始まっておるぞォ！
蚕先生が負けたらホワイト寮に入れられるそうじゃ！｣

　…と。それを聞き、一目散に寮を飛び出した。いの一番に飛び出したのは明鈴だった。それを追うように、誠弥も走ってきた。
　しかし2人がデュエル場に着いた時は最早時すでに遅し。蚕先生のフィールドは全滅し、装介の場には白い《KINGレックス》…いや、《恐獣装　WHITEレックス》が立ちはだかっている。

　｢お姉ちゃん…！やっぱり無茶だよ！遊児はお姉ちゃんのせいであんなことになったんじゃないよ！｣

　｢蚕センテメェ！俺達を信じねぇで何勝手に1人でカチコミ入れてやがる！俺ら生徒を信じてねぇのかよ！何とか言えコラァ！｣

　叫ぶ2人の声は、LP900となりボロボロの蚕先生の耳には届いていなかった。

　｢…まだです。私は貴方を連れ戻すと決めたのです！生徒の模範となる教師と言う立場である以上は、自分で決めた約束を破るわけにはいかないんです！｣

　｢その心意気は素敵です。ですが貴方の場は全てが滅び、美しい無へと還った。
　これ以上は無駄ですよ。サレンダーを推奨しますよ。｣

　サレンダー。それは｢降伏｣ということである。互いのデュエリストが了承すれば成立し、その時点でデュエルは終了、サレンダーを行ったデュエリストの敗北ということになる。

　｢宣言するのは貴方です！ターンの終了の宣言を！｣

　しかし蚕先生はサレンダーを宣言せず、ボロボロになりながらも立ち上がった。

　｢言っても無駄なようですね…。ターン終了です。｣

　｢私のターンです！ドロー！｣

先攻　蚕　　LP900
手札×1

後攻　装介　LP4000
手札×3

フィールド:《恐獣装　WHITEレックス》
魔法&罠:《恐獣装甲　サイクロン・レシプロ》《恐獣装甲　エボリューション・モノリス》《恐獣装甲　バスター・ロケット》《白のヴェール》（全て《恐獣装　WHITEレックス》に装備中）

　｢私は…。手札から《インネスト・グラープ》を召喚し…効果を発動します…！｣

《インネスト・グラープ》
星2/地属性/昆虫族/攻撃力200
①:このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。デッキから｢蟲蝕｣魔法・罠カード1枚を手札に加える。その後、自分の手札1枚を選んで捨てる。

　｢手札に加えるのは《蟲蝕の蹂林》です。…そしてそれを捨てます。｣

　｢手札に加え、それを捨てる…？やっぱりおかしくなっちまったのかよ…！見損なったぞ蚕セン！｣

　｢いや、違うよ！お姉ちゃんはデュエルを諦めていない！
　捨てたカードは罠カード《蟲蝕の蹂林》！場の｢インネスト｣をコストにしてデッキのレベル7｢インネスト｣を特殊召喚する墓地の効果を持ってるんだ！｣

《蟲蝕の蹂林》
通常罠
②:このカードを墓地から除外して発動できる。自分フィールドの｢インネスト｣モンスター1体をリリースし、そのモンスターのレベルより高いレベルを持つ｢インネスト｣モンスター1体を墓地・除外状態から特殊召喚する。

　｢墓地の《蟲蝕の蹂林》の効果！…私の《インネスト・グラープ》をコストに…。《インネスト・ミミクリスクィーン》復活です！｣

　前のターンで除外された《ミミクリスクィーン》が場に戻ってくる…。

　｢《ミミクリスクィーン》！お姉ちゃんのエースモンスターだ！｣

　｢ん？蚕先生のエースって《インキュベイトモス》じゃないのか？｣

　「《インキュベイトモス》はホントのエースを出すために必要なモンスターなんだよ！」

　「俺はその前座にやられたってのかよ…。」

　ギャラリーが一喜一憂してもデュエルは続く。場には互いのエースが一体ずつ…。

　「《ミミクリスクィーン》の更なる効果です…！装備カードを装備したモンスターの攻撃力を…その数×500下げます！」

②:自分メインフェイズに発動できる。装備カードを装備している相手フィールドのモンスターの攻撃力は、相手フィールドの装備カードの数×800ダウンする。その後、相手フィールドの装備カードを1枚選んで破壊する。

《恐獣装　WHITEレックス》
攻撃力5500→2300

　「さらに《サイクロン・レシプロ》も破壊します！
　…装備カードが減ったことで《WHITEレックス》の攻撃力はさらにダウンです！」

　次々と《WHITEレックス》が弱り、腰に装着されていた《サイクロン・レシプロ》も破壊される。

《恐獣装　WHITEレックス》
攻撃力2300→1800

　「ふむ…。満身創痍ながら頑張ったと思いますよ先生。ですが貴方には勝ち目はありませんよ？」

　「だとしても…。まだデュエルは終わってません…！バトル！《ミミクリスクィーン》！《WHITEレックス》を攻撃です！」

《インネスト・ミミクリスクィーン》
攻撃力2400
《恐獣装　WHITEレックス》
攻撃力1800

　「よし！これで装介の場にモンスターが居なくなる！お姉ちゃんが有利になる！」

　しかし《ミミクリスクィーン》の攻撃か《WHITEレックス》に向かう直前、白い竜がそれを遮る！

　「な!?」

　「残念でした。墓地の《ホワイト・グローツラング》の効果を発動。除外することで、相手モンスターを守備表示に変更！」

③:自分フィールドの「恐獣装」モンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に、このカードを墓地から除外して発動できる。戦闘を行う相手モンスターの表示形式を変更する。

《インネスト・ミミクリスクィーン》
攻撃力2400→守備力900

　「こ、これじゃ攻撃が止められちまう…！」

　「く…」

　気力を振り絞り、宣言した攻撃も虚しく徒労に終わってしまう。

　「…最早言葉を発する気力すらありませんか。
　もうターンエンド、ということですかね。では私のターン。」

先攻　蚕　　LP900
手札×0
フィールド:《インネスト・ミミクリスクィーン》

後攻　装介　LP4000
手札×4

フィールド:《恐獣装　WHITEレックス》
魔法&罠:《恐獣装甲　エボリューション・モノリス》《恐獣装甲　バスター・ロケット》《白のヴェール》（全て《恐獣装　WHITEレックス》に装備中）

　「…バトルです。《WHITEレックス》。白き世界に《ミミクリスクィーン》を誘え。」

《恐獣装　WHITEレックス》
攻撃力1800

《インネスト・ミミクリスクィーン》
守備力900

　「…《WHITEレックス》には貫通効果があります。終わりです。」

蚕　LP900→0

　「うぅ…あぁーッ!!」

　吹き飛ばされ、倒れ込む蚕先生。誠弥と明鈴が駆け寄るも、既に手遅れでホワイト寮に連れていかれてしまった。
　相変わらずホワイト寮は他の生徒・教師は立ち入り禁止になっており、蚕先生がどうなったのかは知ることができなかった。

　…この事を遊児が知るのは、目が覚めた次の日だった。