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turn20:白の盟主、装介 作:どらっせ
翌日。オシリス・レッド寮廃寮まであと9日。必要勝数50、現在9人。
昨日の放課後、寮対抗デュエルでレッド寮がブルー寮2人に勝てた。今のところは順調…かもしれない。それより気掛かりなのは帰ってきていない装介だ。レッド寮に泊まり込んでいたけど、いつの間にブルー寮に帰ったのだろうか。しかし、そんな話は聞いていない。しかも寝る前には居たのを確認した。
不吉な予感がするが、今は考えても仕方ない。早朝ランニングも終わったことだし授業に行こう。
そういや1限は、蚕先生の生物の授業だったっけ。
「1時間目から授業があると、少ししんどいですね…。ですがそれでも生徒達が待ってますし、頑張らないといけませんね。…って。」
蚕先生が教室のドアを開けると、いつもは赤、黄、青の制服の生徒がびっしりと学年ごとに並んでいた筈だが…。なんと。
「こ、これは!?赤と黄しかいないじゃないですか!
ブルー寮の生徒は一体何処へ…」
ブルー寮の生徒が1人も居ない。何か用事があるとか、そういうことは一言も聞いていないのに、誰もいない。この状態で授業を進める訳にもいかないので、授業は自習になった。
蚕先生はブルー寮に向かうが、おかしな事が起きていた。
ブルー寮の生徒が全員、おかしな格好…というか真っ白になった制服を着て、ブルー寮を白ペンキで真っ白に塗装し始めている…。
「おい!そこ!白が薄くて水色になってるぞ!」
「そっちも水が薄いせいで色がのびてないぞ!」
一体何が…と慄いている蚕先生はブルー寮から外に出る1人の生徒を見て、慌てて木陰に隠れる。
「あの人は…まさか!装介さん!?」
その生徒は紛れもない、装介だった。しかし白い制服に身を包んでいる。
「白の盟主龍ヶ崎様、この寮を白く染め上げた暁には如何致しましょうか?」
「ブルーの生徒全てを我らが白の結社にしたのはいい。だがそれでもまだ足りん。
まずはイエロー寮の生徒も仲間に引き入れる。そうでなければ…次の目的、アカデミアの地下を占拠しにくいからね。」
腹心のように立ち回る数人の白い制服の生徒を連れた装介の会話を聞いてしまった蚕先生は、一目散にレッド寮に戻る。
既に授業は終わっており、遊児や誠弥、明鈴、欠流もレッド寮に戻っていた。戻ってきた蚕先生は、4人を集め、ブルー寮にて起こっていたことを語り始める。
「つまりよぉ、装介がブルーに戻ったってことでいいのか?」
「でも白くなってるんでしょ。それじゃブルー寮じゃなくてホワイト寮じゃない?
でもそれじゃホワイトになっちゃったブルー寮の生徒をデュエルで倒しても、50人に勝つって目標にカウントされないんじゃない?」
「ん?でもアイツらはブルーってことには変わんねぇだろ?」
「だとしたら私は帰ってはならぬ、という訳ではある。また暫く厄介になるな。」
「そんな事より!…装介が心配だ。なんであんな奴らのボスみたいになっちまってんだ!
あいつはあんなブルーの奴らとつるむ様な奴じゃない!きっと…。きっと何かあったんだ!それも昨日の間に!昨日、装介は帰ってこなかったんだよ。」
憤る遊児。誠弥と明鈴と欠流は遊児の気持ちを考えずに話し込んでいたことをすぐに後悔していた。
装介は遊児の昔からの友人で、デュエルも彼から教わった。それに加えて、遊児がアカデミアに入学したのは、アカデミアに装介が居たからだ。
「わ、悪ぃ。遊児。」
「アタシもごめんね、気を遣えなくてさ。」
「不覚。友の心にすら気づけぬとは…。」
「いや、いいんだよ。…俺が悪いのかもしれないんだ。装介が去っちまったのは、もしかしたら俺かもしれないんだよ。…何となく、だけどな。
昔から装介は気楽に見えるように振舞ってるけどさ、困り事があると人に相談しないで1人で抱え込んじまうんだよ。俺が気づいてやるべきだったんだ…。」
後悔と自責の念に囚われる遊児。暗くなる雰囲気に喝を入れたのは、蚕先生だった。
「顔を上げなさい、遊児さん!確かに、装介さんが去ってしまったのは貴方に非があるのかも知れません。ですが、例えそうだとして、後悔してれば装介さんは帰ってくるのですか!?
本当に責任を感じているなら、行動で償ってください。それが…。今貴方に出来ることです!」
「先生…。うん、わかったぜ。」
うつむいていた顔を上げる遊児。迷いを振り切ったのか、その瞳にはもう曇りがない。
「悪かったな。誠弥、明鈴、欠流。急にナイーブになっちまってさ。そうだよな。何があったのか本人に聞かなきゃだよな!」
「ケッ!やっぱテメェはぐずってるよりは前しか見てねぇカッコが似合うぜ!」
「気にしてないよ、お互い様だもん!行こうよ、ブルー寮、もとい、ホワイト寮に!」
「善は急げ、だ。いざ!」
5人はホワイト寮に向かう。ホワイト寮の生徒達は未だ、ブルー寮を白く染めている最中だった。
「おーい!装介はどこだ!龍ヶ崎 装介は!お前らのボスはどこに居るんだー!」
大声で装介の名を呼ぶ遊児の前に現れたのは、装介だった。白い制服に身を包み、複数の部下を連れている彼は紛れもない、装介だが…。
「遊児。君か。この美しき白の結社の門を叩くのは。
しかし君達をこの白き居城に入れるには、此処も、君達も、まだ白くない。穢れたままだ。」
「…ええっと、何言ってんだ?装介。」
紛れもなく彼本人だが、喋る言葉の一つ一つがよく分からなく遊児は混乱している。状況を掴めていない。
「オレから説明してやるよ。クックック!」
複数の部下の中から顔を出したのは死縞(兄)こと、渡流だった。彼も白い制服に身を包んでいる。
「兄者!貴様も白の結社の軍門に下ったというのか!」
「弟ォ!違うぜぇ?オレがこの龍ヶ崎様をこの白の結社の盟主としたのだよ!」
「何!?」
久々の死縞兄弟の邂逅、しかしそんな事を気にしている場合ではない。装介を盟主に仕立てあげたのは兄、渡流だと言うのだ。
「この白の結社は白く、美しく、光に満ち溢れていなければならないのだ!
規律と純白さ、それらを保つには我ら結社にはそれを治めるものが必要となるんだよ。」
「まさかそのために…装介を!?装介!なんでこんな奴らのボスなんて柄じゃねぇことやってるんだよ!」
「それもオレが答えてやるよぉ!昨日、白く染っていない龍ヶ崎様とオレがデュエルしたんだよ。
その結果、龍ヶ崎様は自ら、白の結社の盟主になると仰せ仕ったのだよ!」
「な、なんて事ですか…。」
「蚕先生。信じ難いと思うのも無理もないと思います。ですが私はこの白の結社の盟主である。それは事実だ。今日の所はお引取り願おう。」
「な!装介!どういうことかちゃんと説明しやがれ!」
装介の合図と共に、後ろに控えていたホワイト生徒達が遊児達を取り押さえ、寮からつまみ出す。まだ話したいことは沢山あった筈だが、抵抗虚しく遊児達はレッド寮に返された。
昨日の放課後、寮対抗デュエルでレッド寮がブルー寮2人に勝てた。今のところは順調…かもしれない。それより気掛かりなのは帰ってきていない装介だ。レッド寮に泊まり込んでいたけど、いつの間にブルー寮に帰ったのだろうか。しかし、そんな話は聞いていない。しかも寝る前には居たのを確認した。
不吉な予感がするが、今は考えても仕方ない。早朝ランニングも終わったことだし授業に行こう。
そういや1限は、蚕先生の生物の授業だったっけ。
「1時間目から授業があると、少ししんどいですね…。ですがそれでも生徒達が待ってますし、頑張らないといけませんね。…って。」
蚕先生が教室のドアを開けると、いつもは赤、黄、青の制服の生徒がびっしりと学年ごとに並んでいた筈だが…。なんと。
「こ、これは!?赤と黄しかいないじゃないですか!
ブルー寮の生徒は一体何処へ…」
ブルー寮の生徒が1人も居ない。何か用事があるとか、そういうことは一言も聞いていないのに、誰もいない。この状態で授業を進める訳にもいかないので、授業は自習になった。
蚕先生はブルー寮に向かうが、おかしな事が起きていた。
ブルー寮の生徒が全員、おかしな格好…というか真っ白になった制服を着て、ブルー寮を白ペンキで真っ白に塗装し始めている…。
「おい!そこ!白が薄くて水色になってるぞ!」
「そっちも水が薄いせいで色がのびてないぞ!」
一体何が…と慄いている蚕先生はブルー寮から外に出る1人の生徒を見て、慌てて木陰に隠れる。
「あの人は…まさか!装介さん!?」
その生徒は紛れもない、装介だった。しかし白い制服に身を包んでいる。
「白の盟主龍ヶ崎様、この寮を白く染め上げた暁には如何致しましょうか?」
「ブルーの生徒全てを我らが白の結社にしたのはいい。だがそれでもまだ足りん。
まずはイエロー寮の生徒も仲間に引き入れる。そうでなければ…次の目的、アカデミアの地下を占拠しにくいからね。」
腹心のように立ち回る数人の白い制服の生徒を連れた装介の会話を聞いてしまった蚕先生は、一目散にレッド寮に戻る。
既に授業は終わっており、遊児や誠弥、明鈴、欠流もレッド寮に戻っていた。戻ってきた蚕先生は、4人を集め、ブルー寮にて起こっていたことを語り始める。
「つまりよぉ、装介がブルーに戻ったってことでいいのか?」
「でも白くなってるんでしょ。それじゃブルー寮じゃなくてホワイト寮じゃない?
でもそれじゃホワイトになっちゃったブルー寮の生徒をデュエルで倒しても、50人に勝つって目標にカウントされないんじゃない?」
「ん?でもアイツらはブルーってことには変わんねぇだろ?」
「だとしたら私は帰ってはならぬ、という訳ではある。また暫く厄介になるな。」
「そんな事より!…装介が心配だ。なんであんな奴らのボスみたいになっちまってんだ!
あいつはあんなブルーの奴らとつるむ様な奴じゃない!きっと…。きっと何かあったんだ!それも昨日の間に!昨日、装介は帰ってこなかったんだよ。」
憤る遊児。誠弥と明鈴と欠流は遊児の気持ちを考えずに話し込んでいたことをすぐに後悔していた。
装介は遊児の昔からの友人で、デュエルも彼から教わった。それに加えて、遊児がアカデミアに入学したのは、アカデミアに装介が居たからだ。
「わ、悪ぃ。遊児。」
「アタシもごめんね、気を遣えなくてさ。」
「不覚。友の心にすら気づけぬとは…。」
「いや、いいんだよ。…俺が悪いのかもしれないんだ。装介が去っちまったのは、もしかしたら俺かもしれないんだよ。…何となく、だけどな。
昔から装介は気楽に見えるように振舞ってるけどさ、困り事があると人に相談しないで1人で抱え込んじまうんだよ。俺が気づいてやるべきだったんだ…。」
後悔と自責の念に囚われる遊児。暗くなる雰囲気に喝を入れたのは、蚕先生だった。
「顔を上げなさい、遊児さん!確かに、装介さんが去ってしまったのは貴方に非があるのかも知れません。ですが、例えそうだとして、後悔してれば装介さんは帰ってくるのですか!?
本当に責任を感じているなら、行動で償ってください。それが…。今貴方に出来ることです!」
「先生…。うん、わかったぜ。」
うつむいていた顔を上げる遊児。迷いを振り切ったのか、その瞳にはもう曇りがない。
「悪かったな。誠弥、明鈴、欠流。急にナイーブになっちまってさ。そうだよな。何があったのか本人に聞かなきゃだよな!」
「ケッ!やっぱテメェはぐずってるよりは前しか見てねぇカッコが似合うぜ!」
「気にしてないよ、お互い様だもん!行こうよ、ブルー寮、もとい、ホワイト寮に!」
「善は急げ、だ。いざ!」
5人はホワイト寮に向かう。ホワイト寮の生徒達は未だ、ブルー寮を白く染めている最中だった。
「おーい!装介はどこだ!龍ヶ崎 装介は!お前らのボスはどこに居るんだー!」
大声で装介の名を呼ぶ遊児の前に現れたのは、装介だった。白い制服に身を包み、複数の部下を連れている彼は紛れもない、装介だが…。
「遊児。君か。この美しき白の結社の門を叩くのは。
しかし君達をこの白き居城に入れるには、此処も、君達も、まだ白くない。穢れたままだ。」
「…ええっと、何言ってんだ?装介。」
紛れもなく彼本人だが、喋る言葉の一つ一つがよく分からなく遊児は混乱している。状況を掴めていない。
「オレから説明してやるよ。クックック!」
複数の部下の中から顔を出したのは死縞(兄)こと、渡流だった。彼も白い制服に身を包んでいる。
「兄者!貴様も白の結社の軍門に下ったというのか!」
「弟ォ!違うぜぇ?オレがこの龍ヶ崎様をこの白の結社の盟主としたのだよ!」
「何!?」
久々の死縞兄弟の邂逅、しかしそんな事を気にしている場合ではない。装介を盟主に仕立てあげたのは兄、渡流だと言うのだ。
「この白の結社は白く、美しく、光に満ち溢れていなければならないのだ!
規律と純白さ、それらを保つには我ら結社にはそれを治めるものが必要となるんだよ。」
「まさかそのために…装介を!?装介!なんでこんな奴らのボスなんて柄じゃねぇことやってるんだよ!」
「それもオレが答えてやるよぉ!昨日、白く染っていない龍ヶ崎様とオレがデュエルしたんだよ。
その結果、龍ヶ崎様は自ら、白の結社の盟主になると仰せ仕ったのだよ!」
「な、なんて事ですか…。」
「蚕先生。信じ難いと思うのも無理もないと思います。ですが私はこの白の結社の盟主である。それは事実だ。今日の所はお引取り願おう。」
「な!装介!どういうことかちゃんと説明しやがれ!」
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