第三十一話：雪辱　作：KOUBOU（旧名：光芒）

☆TURN03（結衣）

「私のターン、ドローです。スタンバイフェイズ、除外状態の最果てのゴーティス、シフ、キーフがフィールドに戻ってきます」
「最果てのゴーティスの攻撃力はお互いの除外状態のモンスターの数×５００になるんだよね？」
「はい」

最果てのゴーティス　ATK2500

　現在除外されているモンスターは結衣のアリオンポスと豪雨の結界像にゼップ、遊舞のスノーウィンド・ドラゴンとハリケーン・ドラゴンの計５体。よって攻撃力は２５００となる。強化の無いテンペスト・ドラゴンと相討ちになる攻撃力だ。

「残念☆ ちょっと足らなかったね」
「足らないですか。それならば、無理やりにでも上げるまでです！ 私は墓地のハープナーと手札のゴーティスの月夜サイクスを除外し、手札からスノーピオスを特殊召喚します！」

　フィールドに触腕をうごめかせながら現れたスノーピオス、そして結衣の手札から除外されたサイクスが異次元の壁を突き破って現れる。

「除外されたサイクスの効果、そして特殊召喚に成功したスノーピオスの効果をゲイルアイズ・テンペスト・ドラゴンを対象として発動します！」

チェーン２（結衣）：ゴーティスの陰影スノーピオス　対象：ゲイルアイズ・テンペスト・ドラゴン
チェーン１（結衣）：ゴーティスの月夜サイクス

「チェーン２のスノーピオスの効果でテンペスト・ドラゴンはフィールドを離れた場合、除外されます。そしてチェーン１のサイクスの効果、フィールドのキーフを除外し、除外状態のこのカードを特殊召喚します！ 特殊召喚に成功したサイクスの効果で、デッキからゴーティスの灯ペイシスを手札に加え、ペイシスをそのまま除外します。これで除外状態のモンスターが２体増えました。よって最果てのゴーティスの攻撃力は１０００アップします！」

最果てのゴーティス　ATK3000

「攻撃力3000！？」
「まだです！ 私はレベル６・水属性のスノーピオスに、レベル２・水属性のシフをチューニング！ "星の海を揺蕩う影よ。次元の壁を越え、全てを食らう白き王となりて転生せよ！”」

☆６＋☆２＝☆８

「シンクロ召喚！ 轟け！《白闘気白鯨》！！」

《白闘気白鯨（ホワイト・オーラ・ホエール）》
シンクロ・効果モンスター
星８/水属性/魚族/攻2800/守2000
水属性チューナー＋チューナー以外の水属性モンスター１体以上
(1)：このカードがＳ召喚した時に発動できる。相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する。
(2)：このカードは１度のバトルフェイズ中に２回までモンスターに攻撃できる。
(3)：このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
(4)：このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地から他の水属性モンスター１体を除外して発動できる。このカードをチューナー扱いで特殊召喚する。

「Ｓ召喚に成功した白闘気白鯨の効果を発動します！ 相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊します！ "ホワイト・ウェイブ”！！」

　白闘気白鯨の巨体によって起こされた大波が２体のゲイルアイズを瞬く間に飲み込んでいった。Ｐモンスターはフィールドで破壊された場合はＥＸデッキに表側表示で加わるが、スノーピオスの効果の対象になっていたテンペスト・ドラゴンはＥＸデッキに加わることはなく除外されていった。

「墓地のシフを除外し、最果てのゴーティスを対象として発動します。最果てのゴーティスの攻撃力をターン終了時まで５００アップします。そして除外状態のモンスターはさらに増えたことで、最果てのゴーティスの攻撃力はさらに上がります！」

最果てのゴーティス　ATK4000

「……あれ？ アタシのフィールドのカードはどこに？」

　結衣のフィールドにはＰゾーンに置かれたガストウィンド・ドラゴンのみ。Ｐデッキにありがちなことではあるが、フィールドにカードが残る仕様上、無限泡影や拮抗勝負というカードが活きにくいのが欠点でもあった。

「もうこれであなたを守るものはありません！ バトル！ サイクス、白鯨、最果てのゴーティスで一斉攻撃！！」

ゴーティスの月夜サイクス　ATK2400
白闘気白鯨　ATK2800
最果てのゴーティス　ATK4000

遊舞　LP8000→LP0

「や～ら～れ～た～！」



＊



「……あなたのデッキ、一見すればとても強いですが、どんなデッキにも欠点はあります。今回はそれをうまく突くことができました」
「アタシのデッキの弱点、気づいてたんだ。まあゆいゆいならわかるよね……」

　遊舞も自覚していた【ゲイルアイズ】デッキの欠点。それは相手ターン時の妨害の少なさだ。
　エースカードのテンペスト・ドラゴンのバウンス効果で相手フィールドのカードを戻し、ハリケーン・ドラゴンとサイクロン・ドラゴンを効果で特殊召喚しては強化された３体のゲイルアイズでの総攻撃。防御の薄いデッキであればそれだけで相手のライフを削り切れる。
　しかし、今回のように相手を後攻ワンターンキルできなかった場合、または《クリボー》や《速攻のかかし》のようなカードで与えるダメージを減らされてしまった場合。相手のフィールドや手札次第では次のターンを耐えきれないリスクが生じてしまうのだ。

「だからこそ、スノーウィンド・ドラゴンみたいなモンスターが大事になるんだけどね」
「……というか融合モンスターなんて隠し持ってたんですね」
「どう？びっくりした？びっくりした？」
「……驚かなかったといえば嘘になりますね」
「やった☆」
「正直、あなたとデュエルをしていると驚かされることばかりです。ですが、あなたのおかげでちょっとしたことでは驚かなくなったのも事実です。そのことについては感謝しています」
「じゃあ、これでランクアップ決定だね☆」
「断言しないでください。そういうのは言ってしまうと途端に叶わなくなるんですから」
「……アタシ、未来が見えるんだよ☆」
「はいはい」



＊




―――放送席、放送席。勝利デュエリストインタビューです。見事な勝利を収めました、白幡 結衣さんです。おめでとうございます。

―――ありがとうございます。

―――ランク昇格がかかったデュエル、危なげなく勝利することができましたね。

―――……緊張しましたが、まずは無事に終わって良かったです。家族や友人たちにいい報告ができそうです。

―――白幡さんは今春からデュエルアカデミア・セントラル校に進学されましたが、そこでの学びが活かされたということでしょうか。

―――そうですね。このデュエルに備えて友人からはアドバイスを色々と貰っていたので、彼女たちには感謝したいです。

―――ご友人たちも今日のデュエルを見てくれているかもしれませんね。

―――ゴールデンウイークなので、自分たちの時間を過ごしていると思いますけどね。みんな色々と自由ですから。

―――充実した学生生活を送られているようですね。最後にファンの皆さんに一言お願いします。

―――はい。今日は会場まで足を運んで頂きありがとうございます。こうして皆さんに私のデュエルをお見せできる機会は多くありませんが、皆さんに喜んでもらえるようなデュエルができれば、と思っています。これからもよろしくお願いします。

　会場からは歓声と暖かい拍手が巻き起こった。

「ゆいゆいも勝ったし……さーて、アタシも出掛けよっと」

　結衣の勝利を見届けた遊舞は席を立つ。彼女の勝利を脳裏にしっかりと刻んで。