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第四話・2 作:KOUBOU(旧名:光芒)





「やっほー☆ さっきぶりだね、ゆいゆい♪」

 この部屋に辿り着くまで、結衣の頭の中にはルームメイトとどんな学生生活を過ごそうか、というワクワクに似た気持ちがあった。アカデミア入学後最初のデュエルで遊舞に惨敗するなど、出だしこそはあまりいいものではなかったかが、ベアトリスや遊大のような頼りになる先輩に囲まれた学生生活は楽しいものになるだろう。そんな期待が結衣の中にはあった。
 しかし、そんな期待はこの少女の締まりのない笑顔にあっさり吹き飛ばされてしまった。遊舞の顔を見た結衣は、まるで真紅のマントを目の前でヒラヒラとさせられた暴れ牛の如く部屋に押し入っていた。

「か、風花 遊舞ぁぁぁ!!」
「うわっ、いきなりどうしたのゆいゆい!? もしかしてそんなにアタシに会いたかったの? いやぁ、照れますなー☆」
「どうしてあなたがここにいるんですか!」
「どうしてってここがアタシの部屋だからだよ? まさかゆいゆいもこの部屋なの? やったー、ゆいゆいとルームメイトだー!」

 怒りの次にやってきたのは遊舞と今後3年間も共に過ごすという事実から来る立ち眩みだった。しかし、遊舞には聞きたいことが山ほどある。結衣は立ち眩みなどしている場合ではなかった。

「やったー、じゃありません! あなたには色々と聞きたいことがあるんです!!」
「聞きたいこと……? もしかしてアタシのスリーサイズ? えっと、それはいくらゆいゆいでも場数を踏まないと教えられないなぁ……」
「そんなものに興味はありません! あなたの持っているあのカード……! あのカードたちは何処で手に入れたんですか!」

 この学園で、いや世界で風花 遊舞一人だけが持つカード【ゲイルアイズ】。少なくとも結衣の記憶にそのようなカードは存在しない。ここに来る途中、スマートフォンでI2社のデータベースにアクセスしてみたが、当然I2社のデータにも存在していないカードを何故遊舞が持っているのか。結衣は何よりもそれが知りたかった。

「ゲイルアイズのこと? んっとねー……それはさすがにゆいゆいでも教えてあげられないかな?」

 しかし、薄々思ってもいた通り、遊舞はゲイルアイズについて話そうとはしなかった。

「なるほど……言えないような後ろめたさがあるということですか」
「でも違法カードじゃないのは確かじゃない? デュエルディスクには問題なく反応したんだしさ」
「確かに違法カードを使おうものならデュエルディスクがそれを拒絶します。ですが、そのデュエルディスクに細工を仕掛けたという可能性も否定できませんね」
「疑り深いなゆいゆいはー……そんなんだと若白髪になっちゃうよ?」

 結衣は誰のせいだ、と思わず怒鳴りたくなる。しかし、ここで怒り狂おうものならそれこそ彼女にあしらわれ続けるだろうし、 ずっとペースを握られたままになってしまうだろう。そういうのは結衣にとっては癪というものだ。

「と・に・か・く! あなたには釈明をする場を与えてあげます!」
「釈明?」
「今から私と一緒に新入生歓迎パーティーに行きましょう!」
「一緒に……? まさか、デート? やーん☆ ゆいゆい積極的っー!」

 そう言って手を差し出す結衣を見て、遊舞はなぜか頬を赤らめる。その様子からあらぬ妄想をしているのを察知した結衣はその手を引っ込めた。

「何がデートですか! 仮にデートだとしてもデートスポットは裁判所と言う名の生徒会室です。そこでベアトリス生徒会長や遊大さんにみっちり絞って貰いますからね!」
「うえっ!? そ、それだけは勘弁してほしいなぁ……さっきも遊大センパイから逃げてきたばっかなのに!」
「そうですか。ならば尚更連れて行く必要がありそうですね! 大人しくお縄につつきなさい!!」
「そういかないぜぇ! あーばよ、白幡のゆっつぁーん☆」

 まるで往年の人気漫画の主人公、何処ぞの大怪盗のような言い回しで遊舞は部屋の奥へと逃げていく。結衣が扉側に立っている以上、彼女に出る場所はない。そのはずなのだが、結衣が遊舞の逃げた方へと追いかけると、遊舞は開け放たれた窓の枠に座っていた。

「さあ、追い込みました。私と一緒に来てもらいますからね!」
「生憎だけどそういう訳には行かないんだよね。ここで捕まるくらいなら……アタシ、鳥になるから☆」

 そう言って遊舞は窓の外に身を乗り出す。まさかいくら逃げるためとはいえ、そこから飛び降りるということなのか。この部屋は5階建ての3階。少なくともそこから飛び降りれば運が良くても骨折、最悪死に至るもので、無傷で済むなどということはまずあり得ない。

「ちょっ、ちょっと! あなたはなにを考えて……!?」
「アタシは色んなことを考えてるよ。例えば、ここから飛び降りて無事になる方法とかね☆ と、いうことで……I Can Fly!!」
「きゃっ!?」

 そう言って、窓の外に消える遊舞。まさか本当にここから飛び降りるなんて。色々聞きたいことは山積みであるし、まだデュエルでの借りも返していない。それなのにこんな最悪の形で別れを迎えてしまうのか。結衣は急いで窓の外から身を乗り出してみた。

「やっほー、こっこだよー☆」

 覗き込んだ結衣の顔の真下から声がする。遊舞は窓の縁に靴の先を引っ掛けながら逆さ吊りになってその場にぶら下がっていた。結衣は安心したと同時に本当に風花 遊舞という少女が自分と同じ人間なのか、とも思えてきた。少なくともクライミングやボルダリングの世界王者でも足の先でぶら下がるなんて芸当はできないだろう。

「アタシがあっさり落っこちると思った? ざーんねん、アタシはこう見えて凄いんだよ☆」
「……えっと、凄いのはわかりました」

 確かに彼女の運動神経はずば抜けているのかもしれない。それでも、彼女はもっと大切なことを忘れていた。

「わかりましたけど、今のあなたの服装が……」
「服装?……あっ」

 今の結衣と遊舞が着ているのはセントラル校の制服。女子の制服は当然のことながらスカートであり、スカートのまま遊舞は逆さでぶら下がっていることになる。よくアニメや漫画などではコンプライアンスなのか、それとも視聴者・読者への配慮なのか重力を無視してスカートがそのまま、ということがあるが現実にそんなことはまずあり得ない。

「わっ、わっ、わっ……」
「えっと。私も女なので……言いふらしたりはしませんから」

 スカートの中が全開になっているとなっては同性相手とはいえさすがに恥ずかしいのだろう。遊舞は顔を真っ赤にしてまるで外敵を追い払う蓑虫のようにぐにゃぐにゃと動く。

「やだ、ゆいゆいのエッチ! みないでよーっ!」
「あなたが見せてきてるんじゃないですか! って、そんなに暴れると足が……!」
「うわあっ!!」

 先程までは飄々としていた様子の遊舞だったが、さすがに動揺し過ぎたのだろう。恥ずかしさのあまり引っ掛けていた足が外れ、そのまま真っすぐに落ちていく。
 結衣は思わず悲鳴を上げて目を背けたが、幸い彼女の真下には木があり、ガサガサという音と共に春の新緑の中に吸い込まれていった。
 下に木があるから落ちても大丈夫―――それがわかっていたからこそ彼女は多少の無茶をしたのかもしれない。最も、そこまで考えられるのにスカートのことを忘れているあたり、ある意味で抜けている少女なのかもしれなかった。

「えっと……取り敢えず助けに行きますか」










「……それで窓から落ちて保健室送りと」
「はい……ルームメイトがこんなで先が思いやられます」
「アタシ悪くないもん! ゆいゆいがムッツリスケベだからー!」
「だ、誰がムッツリですか!!」
「そこまで。ここは保健室だから静かに……」

 そう言ってベアトリスと遊大から注意を受ける結衣と遊舞。もっとも結衣に関しては完全にとばっちりと言っていい。その様は《トポロジック・ボマー・ドラゴン》とのコンボで一気に禁止カードに追いやられた《フェニキシアン・クラスター アマリリス》レベルのとばっちり。結衣は内心で自分は悪くないと自己暗示をかけていた。

「そもそも遊大センパイが悪いんだよ! 遊大センパイがアタシのことをつけ狙うから……」
「えっ」
「第一遊大センパイだって去年データに無いカード使ってたじゃん!! だから遊大センパイにだけは言われたくないし☆」

 それとこれとは話は別でしょう、とツッコもうとした結衣であるが、当の遊大は少し難しそうな表情をしていた。

「うーん……それを言われると……」
「えっ、納得してしまうんですか?」

 結局、その日はろくな追及が行われずに終わってしまった。ベアトリスと遊大の人の好さをも頭に入れていた遊舞の作戦勝ち、ということなのかもしれなかった。

「ということで、これから宜しくね! ゆいゆい☆」
「……」

 そう言って小悪魔のような笑みを浮かべるギャルを脇目に結衣は一人天を仰ぐことしかできなかった。









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