第十六話・3　作：KOUBOU（旧名：光芒）

☆TURN04（結衣）

「私のターン、ドロー。このカードを入れられるとは思っていませんでしたが、入れられる以上使わせてもらいます。魔法カード《貪欲な壺》を発動」

《貪欲な壺》
通常魔法
(1)：自分の墓地のモンスター５体を対象として発動できる。そのモンスター５体をデッキに戻してシャッフルする。その後、自分は２枚ドローする。

「貪欲な壺か、いいタイミングで引いたね」
「初手で引かないだけマシなものです。私は墓地の重装兵２体、ネプトアビス、ディーヴァ、グングニールをデッキに戻しシャッフル。そして２枚ドローします」

　結衣はこのドローでセイクリッド・プレアデスを撃破できるカードを引きたい。しかし、強力なモンスターを出そうともプレアデスの効果でバウンスされてしまっては意味はない。そして《サンダー・ボルト》のような汎用除去カードはこのデッキには入っていない。そのためプレアデスを除去するには一工夫入れる必要があった。そして―――

「私は手札の水精鱗－ディニクアビスの効果を発動します。手札の海皇の重装兵を捨て、このカードを手札から特殊召喚します！」
「ディニクアビスに重装兵、今回ばかりは運が結衣さんに味方したようだね……」
「ディニクアビスと重装兵の効果を発動します！」

チェーン２（結衣）：水精鱗－ディニクアビス
チェーン１（結衣）：海皇の重装兵

「どうせ破壊されるのなら使っておくか……ディニクアビスの効果にチェーンしてプレアデスの効果を発動！」

チェーン３（遊大）：セイクリッド・プレアデス
チェーン２（結衣）：水精鱗－ディニクアビス
チェーン１（結衣）：海皇の重装兵

「チェーン３のプレアデスの効果でディニクアビスを手札に戻すよ」
「ディニクアビスの効果は無効になったわけではありません。ディニクアビスの効果でデッキからレベル４の水精鱗－アビスパイクを手札に加えます。そして、チェーン１の重装兵の効果でセイクリッド・プレアデスを破壊します！」

　プレアデスが消滅したことで遊大のフィールドにはモンスターは存在しない。

「私はアビスパイクを召喚します。そしてアビスパイクの効果を発動します。アビスリンデを墓地に送り、デッキから《水精鱗－アビスグンデ》を手札に加えます。そして手札のメガロアビスの効果を発動します！！」
「２枚目……！？」
「アビスグンデとディニクアビスの２体を捨ててメガロアビスを特殊召喚します。特殊召喚に成功したメガロアビスと水属性モンスターの効果を発動させるために墓地に送られたアビスグンデの効果を発動します！」

《水精鱗－アビスグンデ》
効果モンスター
星３/水属性/水族/攻1400/守 800
このカードが手札から墓地へ捨てられた場合、自分の墓地から「水精鱗－アビスグンデ」以外の「水精鱗」と名のついたモンスター１体を選択して特殊召喚できる。「水精鱗－アビスグンデ」の効果は１ターンに１度しか使用できない。

チェーン２（結衣）：水精鱗－アビスグンデ
チェーン１（結衣）：水精鱗－メガロアビス

「アビスグンデの効果で墓地のメガロアビスを特殊召喚します！ そして手札から特殊召喚されたメガロアビスの効果で《アビスケイル－ミヅチ》を手札に加えます！ そして手札から特殊召喚に成功したメガロアビスにミヅチを装備します！」

《アビスケイル－ミヅチ》
装備魔法
「水精鱗」と名のついたモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は８００ポイントアップする。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上で発動した魔法カードの効果を無効にする。その後、このカードを墓地へ送る。

水精鱗－メガロアビス　ATK2400→ATK3200

（……さすがだね。やはり結衣さんは遊希さんの一番弟子だ）
「バトルです！ ミヅチを装備したメガロアビスでダイレクトアタックです！！」

水精鱗－メガロアビス　ATK3200

遊大　LP3100→0





＊





「や、やりやがった……」
「プロデュエリストは一味違うね」

　先に遊大のもとにたどり着いたヴィルヘルムと柊人であるが、この二人は遊大に勝つことはできなかった。そういった意味では自分たちよりも遅く到着した結衣が、自分たちが勝てなかった遊大に土をつけたことになる。

（白幡が遊大先輩に勝ったが、俺は白幡に勝った……でも俺は遊大先輩に負けてるわけで……）
「ヴィル？」
「ああ、もう訳わかんなくなってきたぜ」

　一人混乱するヴィルヘルムを尻目に遊大は結衣と握手を交わしていた。ＲＰＧにおけるラスボス、魔王のような役割であることを考えると自分を倒した勇者ポジションの結衣の健闘を称えるのはおかしいかもしれないが、共に遊希に師事した弟子仲間ともいえる結衣が自分に勝ったことの方が嬉しかったのだ。

「ありがとうございます。ですが、だいぶドローに救われた感じはありますね。本当の意味で勝ったとは思えません」
「ストイックだね。俺もたくさん教えられたよ」
「……お疲れのところ申し訳ないですが、これからもっと疲れることになりますよ」
「えっ？」





―――遊舞ちゃん参上！ アタシの相手になるのは誰かな☆





　遊大は天を仰いだ。薄々感づいていたとはいえ、結衣と戦うということは遊舞とのデュエルも控えていることに。