特別企画②たった1日のサバイバル　作：風鼠

ヒラーズ様案の特別企画

茜「今日の稽古は、外部からの特別稽古をしてもらうからね」

瑞樹「それで…なぜ森の中に…」

バスに揺られ２時間、天を覆うほどの草木が生えた樹海へと到着する

周りには当然建造物はなく、地面や草木のなどの自然の匂いが葵達を包み込む

だが茜のいう外部の講師らしき人物も存在しない。

瑞樹が口を開く

瑞樹「講師の方が見えないのですが…」

???「ここにいる。」

樹海の奥、木々の影から一人の若い男性が現れる。
その男性は迷彩服をきており、体格も服後しながらも引き締まっているのがよくわかる。

茜「この人が今日一日の講師、陸軍中尉の波怒 柏木（はど かしわぎ）さん」
???→柏木「柏木だ。皆は俺をカシワと呼んでいる。遠慮せずカシワと呼んでくれ」

柏木が軽く自己紹介をすると葵達も続いて自己紹介をする。
そして、瑞樹が口を開く

瑞樹「それで…どうして樹海に」

柏木「それは…今日一日だけこの樹海でサバイバルしてもらう」

「「え！」」

瑞樹「…なんとなくそんな気はしてたわ…」

柏木の言葉に全員が驚きの声をあげ、瑞樹は嫌そうな表情でため息をする。


柏木「各自このリュックサックを背負い、樹海に入ってもらう。なお最低限の調味料以外は食料は現地調達だ。」

カンナ「ふえぇ…重いですぅ…」

杏奈「持とうか？」

カンナ「え、いいんですか？じゃ、お言葉にあまえて…」

柏木「甘えるんじゃない！」

重いリュックサックをカンナから杏奈がうけとろうとした瞬間、柏木から怒声がとび鋭い眼
光が杏奈とカンナに飛ぶ。

柏木「リュックサックは一人一つだ。例外はみとめん」

カンナ「杏奈ちゃん…ごめんなさい」

杏奈「僕も…ごめんね」

葵「…すごく厳しい人みたい」

瑞樹「そうね。」

樹海に入り約一時間、草木をかき分け獣道を歩き続ける。

柏木は慣れているのかぐんぐんと進むが、葵達は息をきらしながらそのあとをついていく。

柏木「…川があるな。休憩にしよう」

葵「よかったぁ…」

先頭を歩いていた柏木は川を見つけ、葵達はその川の付近で腰を落とす。

そして柏木は葵達に川の水をろ過する方法を指導する。

柏木「これぐらいなら大丈夫だな。飲んでくれ」

柏木が一口飲んで確認した後、葵達もおいしそうに飲み始める。

葵「あ～身に染みる～♪」

カンナ「ですね～」

瑞樹「ふぅ…休憩したらお腹すいた…」

柏木「…食事にするか。」

杏奈「サバイバルってことは…」

柏木「…さすがに今日の分の食糧はリュックサックに入っている。それを調理するぞ」

椿「よかったでぇす…」

柏木は自身のリュックサックから真空パックに入ったベーコンや、缶に入ったクッキーやパンなどを取り出す。

柏木は手際よく火をおこし調理を始め、その場にベーコン等のいい香りが立ち込め始める。

葵「なんだかサバイバルってよりピクニックって感じ～♪」

杏奈「そうだね」

その匂いによって徐々にその場の雰囲気が和やかになっていく。

カンナ「カシワさんって、料理お上手なんですね」

柏木「あぁ、好きでよく料理するからな。それに…同じ非常食でも飽きないようにするためにな」

椿「ぉ？」

カンナが柏木と料理の話をし始め、葵達は料理の話題で盛り上がる中、ふと椿が迷彩服のズボンの裾からみえる柏木の花柄の靴下が見える。

椿「カシワさんは花柄がすきなんでぇすか？」

柏木「な！…よくわかったな」

カンナ「どうしてわかったんですか、椿ちゃん」

椿「花柄の靴下が見えるでぇす」

柏木「…やはり靴下も普段のにしてくるべきだったか。」

葵「あ、かわいい♪カシワさんってかわいい人ですね」

柏木「か、かわいいというな。恥ずかしい」

葵「あ～照れた～」

葵に言われ柏木は顔を少し赤くした後、恥ずかしさを隠すように料理の手を速める

食事を終え、夕暮れになるまで休憩をはさみつつ歩き続け、樹海の中心ふきんにあった湖にたどり着く。

そして葵達はここで一晩過ごすことになり、テントを立てる。

テントを立て終わったころにはすでに暗くなり、空には雲一つない星空が広がる

葵「ふああ…すごい星空」

葵達は食事を終えた後就寝までの間自由行動をし始める

葵は樹海の草木の間から見える星空を目を輝かせながら見上げる

瑞樹「そうね。最近星空みてなかったわね」

カンナ「偶にはこういうのもいいですね。…あれ？あそこ歩いてるの…カシワさんじゃないですか？」

葵達が星空を見ていると湖の反対側に柏木と思われる迷彩服の男性が樹海に入っていく。

葵達は気になりそのあとを追いかける。

月明かりが木の葉の間からこぼれ、少し開けた場所に柏木が精神を研ぎ澄ますように瞑想をしている

その後、すこし息を吐きストレッチを始める。

葵「…日課なのかな？」

瑞樹「みたいね」

葵達は木の陰に隠れながらその光景を見てほっと胸を撫で落とす

柏木「…そこにいるのは誰だ」

葵「ひ！」

柏木は人の気配を感じ、右手の掌から仕込み刃を出し葵達に近づいていく

葵達は観念して手を挙げながら柏木に姿を現す。

柏木「…お前たちか。どうかしたのか？」

葵「いや～じつはですね～」

柏木に質問され葵達は柏木のあとをつけた経緯を話す。

柏木「たく…お前たちは…」

葵「それにしても、掌のやつ、すごい刃ですね」

柏木「あぁ、これか…これはな、昔改造手術を受けて自由自在に出せるようにしたんだ」

葵「ほえ～かっこいいです！」

葵は自由に掌の刃を出入りさせる柏木を見て目を輝かせる

瑞樹「まったくこの子は…どうしてそんな手術を…」

柏木「護身とナイフがないときの代用だな。」

瑞樹「はぁ…」

柏木「…ま、話はこれぐらいにして、もう寝るぞ。」

葵「はぁ～い」

柏木の指示で葵達はテントへと寝床につく。

葵「カシワさん、一人で外でいいんですか？」

柏木「…女だらけのテントで寝るのは、な。」

葵達は全員テントの中で寝袋に寝ることになったが、柏木は一人外で寝袋に入る

葵「え～、カシワさんの話いっぱい聞きたかったのに…」

葵は少し不満そうな口調だったが瑞樹が葵をテントの中に引きずり込む。

翌朝…

葵「ふあぁ…あ、カシワさんおはようございま～す」

柏木「ん、あぁ。葵か。おはよう」

日が明け、葵達が起きると柏木が自身の荷物の片づけを終え、準備運動を始めていた。

葵達が顔を洗い、自身の荷物をまとめ、それぞれ荷物を背負い始め、樹海を抜け元居た場所へと向かう。

葵「ふあぁ！やっとぬけたぁ」

そして数時間後歩き続け樹海を抜ける。

抜けた先には茜が笑顔で待っており、帰路用のバスがすでに準備されていた。

茜「柏木さん、今日はありがとね、わざわざここまで来てもらって…」

柏木「なに、茜さんの頼みじゃこれぐらい大丈夫ですよ」

瑞樹「茜さんとカシワさんってお知り合いなんですか？」

茜「ん？あぁ、昔ね私が一人旅してた時に、空腹で倒れそうな時を助けたんだ」

柏木「あの時はほんとに助かりましたよ」

茜と柏木が昔を思い出しながら、楽しそうな口調で微笑む

葵「ほえ～茜先輩そんな過去があったんですね～」

茜「まぁ、昔はやんちゃしてたからねぇ～」

杏奈「茜先輩にそんな時期が…」

カンナ「柏木さん、ありがとうございました。」

柏木「いいって。じゃあ俺はここで」

茜「うん、ありがとね。また旅でもするの？」

柏木「えぇ。じゃ。」

葵達が一日だけの稽古の講師に頭を下げると柏木は軽く言葉を交した後、その場を後にし道路を歩き始める

葵達は声をあげ手を振る。

茜「じゃ、私たちも帰ろうか」

「「「はい！」」」

葵達はバスに乗り込り一座の稽古場へと戻る。