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HOME > 遊戯王SS一覧 > EP5 悪魔の影

EP5 悪魔の影 作:ター坊

葛川の自作自演事件から数日―

葛川は学校に居づらくなり、転校してしまった。一方で遊季都の学校生活は白朧院との交流が出来たことで多少は改善されつつあった。友達とまではいかないまでも、まともな話し相手がいることは遊季都にとって学校での清涼剤のようなものである。今日も遊季都は白朧院と共に昼食を摂っていた。
「それにしても、こうしてお話ししていると、赤崎さんの評判が嘘のようですわ」
「僕の評判?」
「あっ…その、ご気分を害されたのなら…」
「ううん。もう慣れっこだから良いですよ」
遊季都の評判とは卑怯者と罵られる事である。
「あの…。どうしてそのような風評が…」
「うん…。それが未だによく分からないんです…」
遊季都は昔の話を始める。







あれは僕が小学2年生の時でした。小学校低学年限定のデュエル大会というものがあったんです。テレビで全国中継されたくらいで、僕はお父さんの勧めで参加してました。
「いけー!だいれくとあたっく!」
「うわー!」
僕は頑張って勝ち進んで優勝しました。そして優勝者にはサプライズとしてプロとの特別デュエルが組まれたんです。
「よろしくね、ボク」
「はい!よ、よろしくおねがいします!!」
デュエルは一進一退の攻防でした。今思えば手加減してくれたと思うんですけど、その時の僕は嬉しさ一杯でデュエルしてました。
「ぼくのターン!」

ビィービィー!!

デュエル中に審判のホイッスルが鳴ったんです。
「君。こんな所にカードを隠し持ってちゃダメだよ?」
「えっ?」
審判のオジサンの手には見覚えがないカードがあったんです。
「おおっと!カードの隠し持ちです!これは厳しいですが、遊季都くん!不正行為により反則負けです!!」
小さい僕は反論をする余地もなく、反則を犯した卑怯者となったんです。






「そんな事があったんですの…」
「テレビが全国中継されてた事もあって僕は悪い意味で有名になったんです…。何処へ行ってもあの卑怯者って…」
「すいません!そんなお辛い事とは知らず…!」
「ううん。さっきも言ったけど慣れてますし」

キーン,コーン,カーン,コーン

「あっ、予鈴だ。帰らないとですね」
遊季都は足早にベンチを起つ。話を聞き終わった白朧院はしばらく遊季都の背中を見送った。
「…皆さんの誤解、早く解けるとよいのですが…」







その日、学校から帰ってきて遊季都は自分の部屋に鞄を置いて制服から部屋着に着替えた時だった。

パァァ

制服のポケットから光が飛び出し、それがラズベリーになった。相変わらずのラフな格好に遊季都はドキドキしてしまう。
「ラズベリー…もう少し格好なんとかならない?」
「えー!遊季都くんもいい加減慣れてよー。それとも…使い魔のアタシには着るものを選ぶ自由も無いの?」ウルウル
「えっ!?いや、そういう訳じゃ…。お、女の子だからオシャレしたいもんね…。ごめん…」
「にゅふふ。優しい遊季都くん、だーい好き♪」
ラズベリーはぎゅっと遊季都に抱きつき、遊季都の顔を自分の胸に埋めるように寄せる。
「ぎゃーっ!や や や、止めてってば!」
遊季都も気絶こそしなくなったが、顔を真っ赤にしてラズベリーを振り払う。
「もう。いつまでも照れ屋さんなんだから。…そんな遊季都くんにプレゼントでーす♪」
「プレゼント?」
遊季都はラズベリーの言葉の意味を察しかねているとデッキケースが光だした。
「これは…?」
「見てごらん」
遊季都はラズベリーに促されてデッキを見る。
「なんだ…どれも見たことがないカードだ…」
「アタシを使いやすいようにカスタマイズさせてもらったよ☆」
遊季都のデッキは元々ドラゴン族デッキというある程度のまとまりがあったものの、はっきり言って寄せ集めでお世辞にも強力とは言えず、葛川戦もラズベリアが無ければ負けていたのだ。
「うん…なるほど。コイツをコッチにこう繋げて…」
遊季都は一心不乱にカードを眺め、コンボ性やラズべリアまで導く課程などの戦術を脳内でシミュレーションする。
「気に入ってくれた?」
「うん!ありがとう、ラズベリー」
「じゃあぁ…♪」
ラズベリーは少し屈む。
「えっと…」
「もう!頑張った使い魔にご褒美は?」
「ご褒美…」
ラズベリーは上目遣いで遊季都の動向を窺う。
「じゃあ…ありがとう、ラズベリー」ナデナデ
「にへへへ…」キューン
遊季都に頭を撫でられたラズベリーはニヤけてしまう。きっと羽や尻尾が生えてる状態だったらパタパタ動いてるだろう。
「それにしても急にどうしたの?僕の誕生日はまだ遠し…」
「…うーんと実はね」
ラズベリーは急に真剣な顔つきになる。
「遊季都くんの学校に微かだけど悪魔の気配がしたの」
「悪魔の気配…ラズベリーの仲間ってこと?」
「まぁそうだけど…。仲間って言っても人間みたいに全員仲良しって訳じゃないの。どっちかというとライバルみたいなものだから魔界にいた頃は結構殺り合ってたね。纏まるといえばそれこそ魔界と何処かの全面戦争みたいな事態くらいかなー」
「ふーん、そうなんだ…」
「人間界で会ったら目立たないようにデュエルモンスターズの中で殺り合うって事になるから、ちゃんと遊季都くんが戦えるようにと思ってやったのが本音だよ」
「そっか。それでも嬉しいよ。ありがとう、ラズベリー」
「遊季都くん…」
「遊季都ぉ。ラズベリーちゃぁん。ご飯出来たよぉ」
一通り話し終えた後、小町の呼ぶ声がする。
「はーい!今行くよ!」
「あのおばあちゃんのご飯美味しいのよねー」
遊季都とラズベリーは1階の食卓に向かっていった。






翌週。遊季都はやや憂鬱な気分での登校となった。
「はぁ…」
【遊季都くん?どうしたの?】
【ん?ああ。そう言えば今日から中間試験だったなーって】
【ちゅうかんしけん?あー、テストって言うやつだね】
そう。学校にいる以上誰しもが通る道である。遊季都の学校では国語・数学・英語の基本教科と理科・社会(理科は物理、化学、生物、地学から2科目と社会は世界史、日本史、地理、現代社会、政治・経済、倫理からの2科目の選択制)、それにデュエルモンスターズの筆記がある。遊季都はデュエルモンスターズの筆記くらいしか自信がなく、完全に気が滅入っていた。
【うん…】
【そうだ!アタシが答え教えてあげよっか?】
【えっ!?できるの?】
【ちょっと馬鹿にしてるのー?アタシは悪魔なんだから人間の学問なんか余裕余裕♪】
【そうなんだ…。でもそういうズルはしたくないし…遠慮するよ】
【もう、真面目なんだから】
ラズベリーとそんなテレパシートークをしていると

ポヨン

何か柔らかいものにぶつかる。テレパシーに慣れてきたとはいえ、まだ歩きながらだとぶつかる事があるようだ。
「あっ!すいません」
「…んん?」
遊季都がぶつかった生徒は屈んでいたが、ぶつかったことで振り返る。その人の体格は力士のようにでっぷりと大柄で、小さい遊季都と比べるとまるで熊のようだった。
「誰だぁ?」
「ご、ごめんなさい!」
その迫力の見た目に遊季都は縮こまってしまうが、それはすぐに解けることとなる。
「いやぁ、オイラもこんな所で靴ひも直して迷惑だったなぁ。怪我ぁしてねぇかぁ?」
スローモーな喋りで恐そうな見た目とはかなりのギャップがある。
「あっ。大丈夫…です…」
「そっかぁ。それは良かったぁ」
大柄な生徒は気にすることもなくノタノタ歩きだす。
【デブでモテそうにないけど、嫌いではないかも】
【うん…。でも誰だったかな…。確か僕のクラスにいたような…】
遊季都が脳内の人物の顔を思い起こしている時だった。
「赤崎さん、ごきげんよう」
白朧院が声を掛けてきた。
「あっ、おはようございます」
「赤崎さん、大丈夫ですか?先程黒田さんとぶつかったようですけど」
「く、黒田さん?」
白朧院は立派なものでクラス役員ということもあり、クラスメイトの名前は全て把握していた。白朧院の話によると遊季都がぶつかった生徒は黒田盛雄(くろだ もりお)と言い、廊下側の一番後ろの席にいるらしい。
「へ、へぇ~…」
遊季都は自分から交友関係を広げるタイプではないので高校に入って以降、クラスメイトの名前を覚えようとは思っていなかった。白朧院や葛川などのような有名人は人並みに知っていたが、それ以外は苗字だけなどあやふやな場合が多いのだ。
【なにー?もしかして遊季都くんってボッチなのー?】
【う、うるさい、うるさい】





中間試験が終わって二日後。1年生の階の学生ホールに中間試験の結果が貼り出されていた。今時そういうのは珍しいようだが、この学校では競争心を掻き立てて全体の学力向上を図るためにこういう事をしている。その結果発表の掲示を見るために生徒が殺到している。
「よっしゃ!俺順位上がったぞ!」
「くっ!アイツに負けた…」
「やったー!20番以内♪」
「頑張ったぞ、俺!」
結果に一喜一憂する中で遊季都も前に出て自分の名前を探す。
「えーっと…」
【あった!あれあれ】

49位(1年生全体110人中) 赤崎 遊季都 508点(6教科8科目合計800満点中) 

【コメントしにくい順位ねぇ。おバカって訳じゃないけどそんなに高くもないって言うね】
【うっ…】
【でも意外だね。あの白朧院って子が在籍してる学校って事はみんな頭良いって訳じゃないんだ。ワースト7人全員0点だって】
【うわっ、ホントだ。…でも今回のテスト、そこまで難しかったかな…】
【遊季都くんがそれを言う?】
【あはは…。そうだね…】
ラズベリーにテレパシーで弄られていると後ろがざわめく。
「赤崎さん、どうでしたか?」
「白朧院さん」
やはりお嬢様もただの高校生。白朧院も自分の試験結果が気になるのか見に来たのだ。しかし令嬢と言うことで人混みを掻き分けることなどせず、まるでモーゼの神の十戒の如く生徒自らが道を譲るのであった。
「いや、僕は平凡って言うか…。そういう白朧院さんは…」
遊季都はきっと上位だろうと思い、上から探すと案の定すぐに見つかる。

2位 白朧院 梓 784点

【わーぉ、さすがぁ。お嬢様は完璧って感じかな】
【うん…だね】
しかしそれ以上に1位はもっと凄かった。

1位 御門 アリス 800点

【うわー。全部満点ってこと?女の子みたいだけど、どんなガリ勉ちゃんなんだろ】
ラズベリーが気になってるとその本人はすぐに現れた。
「やっぱ、アリスって天才ぃ♪」
「はい!アリスちゃんは天才です!!」
小柄な体にクルクルツインテールの美少女が結果発表を見て自画自賛し、彼女が引き連れている男子生徒数人も讃えるように復唱する。
【えー?あの馬鹿っぽいのが1位?カンニングとかしたんじゃないの?】
【疑うのは良くないよ。…確かあの子は御門(みかど)アリス。現役デュエルアイドルで、最近テレビでよく見るよ。周りの男子はファンクラブじゃないかな】
この学校には大企業の子息令嬢の他にもこういった芸能関係の人間も入学しているのだ。
(あれ?黒田くんもいる。ファンクラブなのかな)
アリスのファンクラブの中にこの前見た大柄の生徒、黒田の姿もあった。
【…んっ!】
【どうしたの?】
【あの娘…なんか臭うわ】
【まぁ…確かに常識外れで信じなれないけど】
【いや、そうじゃなくて。あの娘…悪魔と契約してるかも】
【えっ!?】
ラズベリーの発言で遊季都はアリスを見て思わずぎょっとしていると
「…ん?」
アリスと目が合い、近づいてきた。
【ど、どうしよう!?】
【落ち着いて!向こうもいきなり喧嘩吹っ掛ける訳じゃないし、平静を装って話すの】
動揺しまくる遊季都を待ってくれる訳がなかった。
「ねぇ、君?お名前は?」
「ぼ、僕はゆ、遊季都って言いまひゅっ!」
アイドルをやってるだけあり、ラズベリーや白朧院とはまた違った女の子の可愛らしさがあり、胸が高鳴る。
「遊季都くん緊張してるの?…可愛いね。お隣のクラスだけどぉ、アリスとお友達になってくれると嬉しいな♪」ギュッ
「ふ、ふぇぇっ!?」
急に手を握られて遊季都の心臓は最高潮に達した時だった。
「お止めなさい!赤崎さんが困ってます」
助け船を出したのは白朧院だった。
「ん?貴方は…ハクロウ・コーポレーションの白朧院さん…ですか?」
「はい、そうです」
「もしかして付き合ってるからってヤキモチ?」
「ち、ちち、違います!違いますけど、クラスメイトが困ってる姿をほっとけないだけです!」
「ふーん。…ま、良いかな。ごめんね遊季都くん♪じゃあねー」テヘペロ
アリスはアイドルらしく可愛さを振り撒きながら去っていった。
「ふぅ…ありがとうございました…」
「い、いえ!クラスメイトを手助けするのは当然の役目ですし…。私も失礼致します」
白朧院足早に教室に戻って行った。
【んー】
【どうしたの?】
ラズベリーは今の接触で分かった事を話す。
【触れて解るかなぁって思ったけどなぁ】
【えっ!じゃあやっぱり】
【うん。あの娘は間違いなく悪魔と契約してるけど…誰とまでは特定出来ないかなー。向こうも正体が分からないまでもアタシの存在自体は察知したと思うし、戦う日は近いかもね】


その日の昼休み、屋上にて遊季都は白朧院とは違う人物と食事していた。
「ふーん。そうかぁ。分かんないのかぁ」
「はい。全然、見当がなくて…。たまたま、じゃないですかね?」
隣り合って座るのは黒田である。先程のアリスとのやり取りを見て羨ましがり、話してみたくなったらしい。遊季都も相手が男と言うことで緊張せずに話せている。
「良いなぁ、赤崎君は。オイラはグッズをいっぱい買ってやっとファンクラブに入れたのに」
「そうなんだ…」
「オイラ、テレビで見た時からアリスちゃんの歌と笑顔が好きになってなぁ。アリスちゃんの歌を聴くと落ち込んでても元気が出るんだぁ。この学校だって、少しでもアリスちゃんを近くで見たいと思って頑張って受験したんだぁ」
【ふーん。良いお客さんって訳だね】
【ラズベリー!そういう言い方は良くないよ】
【…はーい】
「ファンクラブに入ってアリスちゃんと交流を持つようになったけど…」

《黒田くーん?アリス喉乾いちゃったからジュース買ってきて欲しいなぁ》

《黒田くーん。今度の総選挙で負けたくないからぁ、アリスのCD、いーっぱい買ってね♪》

「ちょっとワガママだけど、頼られてるのが嬉しくてなぁ…」
【何それ、完全にパシリかつカモじゃん!】
【う、うん…。アイドルのファンって凄いね】
「オイラも赤崎君みたいにちっちゃかったら違ってたかなぁ…」
「んー、そうですかね?僕はむしろ黒田くんみたいにガッチリした体型が男らしくて良いなぁって思うんですけど」
「そ、そうかなぁ?オイラでっかくてトロいから人から嫌な風に見られる事が多いけど、そんな風に言われたのは初めてだぁ」
黒田は笑って頭を掻く。

キーン,コーン,カーン,コーン…

「あっ。いけねぇ。もう昼休み終わりなのかぁ。ごめんなぁ」
「い、いえ。一緒に教室行きましょうか」
「おぉ」
遊季都と黒田、体格差がありすぎる凸凹な二人は屋上をあとにした。





その日の翌日。遊季都が登校して下駄箱を開けると何か軽い物が落ちた。
「ん?」
遊季都がそれを拾い上げる。それは手紙のようでハートマークのシールで封をされていた。
【何々ラブレター?】
【ま、まさか!ぼ、僕にそ、そんな…】
遊季都ははやる心を抑えつつトイレに駆け込む。個室の洋式便所に座り、シールを剥がして文章を見る。

《遊季都くんへ
突然のお手紙、ビックリしたかな?
実は遊季都くんに大事なお話があるんだけど、ドキドキして上手に話す自信がないからお手紙にしちゃいました。でも、この気持ちは手紙じゃなくて直接言いたいので、ワガママかもしれないけど落ち着くまで時間を下さい。
今日の放課後、体育館裏で気持ちを落ち着かせて待ってます。絶対絶対来てください
アリスより》

【これって…】
【愛の告白じゃなくて果たし状かもねー】


そして放課後。夕焼けが眩しい中、遊季都は暗闇となった日影の体育館裏にやって来た。
「来てくれたんだ。アリス、嬉しいな♪」
その暗闇の中、一人の少女―アリスは微笑む。
「あの…御門さん」
「もー。アリスで良いよー、遊季都くん♪」
「…それで僕に何の用事が…」
「じゃあね…」
アリスは不意に自分の上の制服の裾を捲っていく。
「のわっ!?」
【あれは!遊季都くん、あれ!】
【で、でも!】
遊季都は突然の事で目を瞑ってしまう。
【大丈夫!ブラは見えてないから見てよ!】
ラズベリーの急かし具合からただならぬ事と思い、遊季都は薄く目を開けていく。
「あっ!」
アリスの臍の横辺り、そこにヤギの顔をモチーフにしたような紋章が描かれていた。
「遊季都くん…やっぱりこれが見えるんだぁ♪じゃあ君も悪魔と契約してるんだね?」
「…だとしたら、どうする気ですか?」
「ふふふ…それはね」
初めての別の悪魔との接触に緊張感が高まる。



「お待ちなさい!」
張り詰める空気を裂く一言を放つ誰かが現れた。
「は、白朧院さん!それに、黒田さんも!どうしてここに!」
「なんとなく怪しいと思ってついて来てみたら、お、お腹を見せたりなど、不純異性交遊です!」
【あらら。梓ちゃんってばややこしーく勘違いしてるねぇ】
「オイラもアリスちゃんの様子が変だったから気になって…」
「それに悪魔と契約だとか、何を訳の分からない事を!」
白朧院が悪魔と言うワードを言った瞬間であった。




「そこまで聴かれた以上、タダでは帰せんな」
アリスの鞄から光が飛び出し、それが徐々に大きくなって変形する。
「こ、これは…」
「ば、化け物だぁ!!」
身長は2.5メートルくらいだろうか。赤い目が光る羊の頭蓋骨、骨格だけの体、ボロボロの赤い外套、そしてその長身の2倍近くはあろうかという長い骨の腕―まさに化け物だ。
「逃がさん!」
「きゃっ!」
「うわぁっ!」
化け物は長い腕を伸ばして白朧院と黒田を握り捕らえる。
「ど、どうしよう!」
【うーん。アタシが止めるしかないかなー】
動揺する遊季都のポケットに収まっていたカードのラズベリーが姿を現す。
「やはり貴様だったか…この世界では違う名だったな」
「ラズベリーよ。そういうアンタは随分馬鹿っぽい奴に拾われたじゃない」
「ふっ…。同情してくれるか?」
やはり共に天使から逃げ延びた後の再会なのか、親しげに語り合う。その様子に苛立つ者が一人いた。
「ちょっとポップロック!!何相手の悪魔と仲良く話してんのよ!」
今までの可愛らしい素振りも声色も何処に行ったのか、アリスは自身が従える化け物―ポップロックを汚く怒鳴り散らす。
「アンタが学校にいる悪魔と手を組めたら強大になれるっていうからお膳立てしてあげたのよ!?ならその悪魔をちゃっちゃと引き込みなさいよ!」
「…と、我の主は言っているがラズベリーよ。我と共に来るか?」
「冗談。あんなのよりこっちの遊季都くんって子が好みかなぁ。優しいしー、可愛いしー、広ーい住処もあるし♪」
「ふむ…そちらの方が良いかもしれんな。だが…」
「ポップロック!アンタ御主人様のアリスに逆らうっていうの!?」
「…というわけだ。我は主を裏切る訳にはいかぬ」
「そう。なら交渉は決裂かな」
「キィーッ!何よあの痴女悪魔!いちいちムカつく!じゃあ、アンタの御主人様に差し上げるって言わせてやる!ポップロック!二人をアリスの前に!」
アリスの指示でポップロックは白朧院と黒田を握り締めたまま差し出す。
「はぁ…はぁ…」ガタガタ
白朧院は怯えきり、軽く過呼吸を起こしている。
「アリスさぁ、入学した時からアンタが大っ嫌いだったの。世間知らずのお嬢様でさー。内心全員貧乏人とか見下してたんじゃない?」ズイッ
「ひっ!そ、そんな事は…」ガクブルガクブル
アリスは白朧院の恐怖心を煽るように言葉で捲し立て、ゲスな表情で迫り、手を白朧院の肩に置いた。
「奪ってやる…!〔力の略奪者(タレント・バンデット)〕!!歩行、発声!」


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ギガプラント
というわけで出てきました別の悪魔さん。
一昔前の少年漫画であった感じの展開ですね。正直好きです。
前回のドラゴンデッキからデッキを新調してもらった模様。こちらがメインのデッキになるのかな?どんなデッキか楽しみです。 (2017-09-29 01:18)
ター坊
ギガプラントさん、コメントありがとうございます。
王道的なストーリーの方がなんやかんやでメリハリがあり、分かりやすいと思いベタな展開ながらやりました。
ドラゴンデッキはどのような進化を遂げたのか…ご期待下さい。
実は次に登場予定の新ドライヴモンスターは既にオリカの方に投稿済みだったりします。 (2017-09-29 07:01)
光芒
本人はどう思っているかは別として、ラズベリーのおかげで陰惨としていた遊季都の学園生活にも一筋の光が。黒田君からGXの隼人臭がするのですが気のせいですかね(奇しくもリンクスにGXが実装されたタイミングですし)

そして第二の悪魔・ポップロックさん登場。元々ラズベリーとは因縁があったようですが、デュエルモンスターズに転生した二人(?)がどのようなデュエルを繰り広げるのかが気になりますね。 (2017-10-01 10:29)
ター坊
光芒さん、コメントありがとうございます。
遊季都の扱いがリアルだと鬱っぽいのでそろそろ救いの手を差し伸べなければと思いました。
黒田くんはのんびりとしたキャラで、歴代主人公の仲間内ではあまりいないタイプと思いこれを採用しました。隼人…そう言えばそんなコアラ顔もいたな。ちなみに私はリンクスやってません。
ポップロックの能力及びデュエルは次回になります。お楽しみに。 (2017-10-01 10:35)

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